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ビクセン VMC110L [天文>機材>望遠鏡]

お手軽観望用のTG-S経緯台の出動回数が増えるにつれて、月惑星観望はブランカ70EDTで満足できる見え味が得られていましたが星雲星団にはやはり力不足なのでこの架台に載る口径の大きな鏡筒が次第に欲しくなっていきました。

ブランカに2インチ天頂ミラー、双眼装置を付けるとTG-Sの積載重量的にいっぱいいっぱいな感じがありましたので、同程度の重量で口径を求めるとなるとやはりカセグレン鏡筒しか選択の余地がありません。そこで口径8cm~12.7cm程度のカセグレン鏡筒をピックアップし比較検討しましたが、このクラスになると2インチ接眼部を持たない機種が多く、MarkV双眼装置での観望を想定していた為、この重量を支えきれないと思われるこれらの鏡筒は選択肢から外れていきました。

そこで更に物色している内に見つけたのがこのVMC110L、着目すべきはその接眼部で、直視側と直角視側の2つの接眼部が備わっており、内蔵のフリップミラーで光路を切り替える構造の為、外付けのダイアゴナルを必要としません。これによりアイピース挿し込み部分も本体に直付けされており、MarkVの重量でも関係無く使える事が選定の決め手となりました。

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本体を見るとアリガタプレートを取り付ける場所が2箇所設けられており、個人的にどちらの位置でも使うケースが考えられたので純正のアリガタプレートは外し、BORGのVプレート60S【3164】を2箇所に取り付けました。これにより使わない方のアリガタが持ち手になって持ち運びにも便利です。

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手にしてみるとこの11cmと言う口径はTG-Sには実にマッチしますし、重量もVMCの重量は公称2.1kgとなっていましたが実測は1.9kg弱と軽く、ブランカの様に2インチ天頂ミラーや2インチ→31.7mmADを使わなくて済む分、総重量ではVMCの方がかなり軽くなります。

使用感はやはり天頂ミラーを取り付ける手間が無いのはセッティングに掛かる時間が全然違い、本体を設置して双眼装置を挿すだけなので非常に楽です。また架台に載せると接眼部がアリガタの対面に位置するので、鏡筒の向きを変えても接眼部の高さが変わらないナスミス焦点の様な使い方も可能です。

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見え味は木星を見たところブランカより模様のコントラストが低く、シャープネス、解像度も劣ります。光量はある一方倍率を上げても解像度が付いてこない感じですが、はっきりとでは無いですが大赤斑も確認できますし、土星もカッシーニが見えるかどうかと言った具合で、月などは大変立派に見えます。最高倍率は140倍位までが適性でしょうか。

一方星雲星団は口径なりに見え、小さくは無い中央遮蔽に太めの湾曲型スパイダーの採用など購入前にこの鏡筒の余り良くない評判も目にしていたのですが、ブランカなど優秀な鏡筒と比べなければ普通に見える、と言うのが正直な感想で、実売価格を考えればコストパフォーマンスは高いと思わせる見え味です。

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また光軸は直視側ではほぼ合っていますが、直角視側では少し光軸がずれていました。となるとフリップミラーの角度調整が上手く行っていないのかも知れませんがそれ程大きなズレでもなく、これを直すとなるとかなり細かい角度調整が必要となりそうで、これだけバタバタと大きく稼動する部品にそこまでの精度の動きを要求するのも価格帯を考えると酷な気がします。

またこの鏡筒でミラーシフトを初めて体験しました。ピントを行き来する時に位置がカクっと動くのですが移動量は土星の視直径程度で、通常使用ではそれ程気になりませんでした。

ケースは例によってアイリスオーヤマのAM-45Tを使い、側面と底面にクッションを入れています。口径が小さいのにC6と同じケースとなったのが釈然としませんが、入れてみると意外に余裕は無く、丁度良い大きさです。(C6の方がギリギリすぎるだけかもですが)

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TG-Sでの高倍率観望はブランカで満足しているので、VMCには口径を活かした中倍率観望で使えれば良いと考えていましたが、VMCは双眼装置がバロー無しで合焦する事が分かり、4xバロー併用が必須となるブランカより低い倍率で双眼観望出来る事で、当初思い描いていた使い分けが出来るようになりました。何より軽くてセッティングが楽なのでブランカよりお手軽な鏡筒として対象を選ばず活躍してくれる事でしょう。