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笠井 BLANCA-150SED [天文>機材>望遠鏡]

TSA-120は見え味と使い勝手のバランスが傑出していて非の打ち所の無い鏡筒と言う自分の中での評価に変わりはありませんが、FC-100DLとの2cmの口径差が徐々に微妙に感じ始め、FCもとても良く見える鏡筒だった事からより見え味の差が大きい、より大口径のアポへステップアップしたい気持ちが強くなっていきました。

しかし国産、欧米製の大口径アポは価格的に自分には非現実的でしたので、ここ最近大口径の選択肢も増えてきた中華アポに狙いを定め、当初候補としたのはAPMのZTA140 SDアポでした。対物レンズの硝材が最近評判のFPL-53とランタン素材の組み合わせで、中華アポはとにかく製造品質が心配でしたが、TMB時代からアポ製造の高い実績を持つAPMの製品であれば品質管理面で比較的安心できそうと考え、ほぼこの鏡筒への乗り換えを決め掛けていました。

そんな折、ZTA140と同じFPL-53(+ランタン素材)を採用しつつ15cmF8のスペックを引っ下げて突如笠井から発売されたのがこのBLANCA-150SEDでした。大口径アポ導入に当たり、高倍率性能、惑星の見え味を最重要視する自分にとってはZTA140はF7とやや短焦点である事が唯一気になる点でしたが、よりFも長く、かねてより15cmアポへの憧れも持っていた自分にとっては150SEDのスペックは正に理想的で、それでいて価格も同じ(その後、ZTA140の価格は若干下がった模様です)と言う事で、これはもう買うしかないでしょ!と急遽方針転換したのでした。

しかし考える事は皆同じなのか、150SEDの初回ロットは何と発売後数日で『瞬殺』完売してしまい、このスペック、価格の鏡筒が待ち望まれていた事が窺えます。自分も本来ネットで評判を見聞きするまではいきなり新製品に手を出す事はしないのですが、笠井のBLANCAシリーズに関しては既に所有している70EDTがとても良く見える事、観望仲間の方が所有するビノテクノ102SED-BINOも高倍率性能が高く、125SEDもTSA-120とも遜色無い見え味とのもっぱらの評判でしたので、笠井がこの基準で販売する製品を選定しているのであれば150SEDにも期待できると判断し、通算n回目の清水ダイブを決行したのでした。

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次ロット納期は3ヵ月後の9月予定との事でしたが、実際に届いたのは更に3ヵ月後の12月に入ってからでした。サイズ200オーバーの巨大な箱が玄関に届いた時は眩暈がしましたが、それでもこの鏡筒にはアルミケースが付属していない事が逆に自分にとっては幸いでした。保管や運搬には適当なソフトケースを見繕うつもりでいましたので、巨大で重いアルミケースが付属していても持て余す事が目に見えていたからで、この部分もこの鏡筒の購入を後押しした小さくない理由でした。

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本体もやはり重く大きく、TSAの手軽さは失われた感はありましたが、GPX赤道儀に載せると無理なく運用できそうな感触で、2枚玉なので極端にトップヘビーではなく、15cmアポとしては扱い易い部類なのではないかと思います。重量を測るとバンドアリガタ込みで11kgを切っており(+キャリーハンドルで約11.3kg)、FPL-53を使用した15cmアポとしては最軽量の部類と思われ、アリガタもビクセン規格のものが装着されていましたので、ビクセン規格のアリミゾの架台しか持っていない自分的には面倒が無くて助かりました。

以下の写真は150SED、FC-100DL、BLANCA-70EDTを並べたところです(でかい!)。

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鏡筒表面の処理は70EDTと同様の少しザラザラな仕上げ(サテンホワイトフィニッシュ)で質感は可もなく不可もなくと言ったところで、特に高級感がある訳でもありませんが安っぽくも無く、中華鏡筒でありながら造りに雑に感じるところが特に見受けられないのは大いに評価できるポイントだと思います。ストロークが大きめの伸縮式フードの移動も滑らかで縮めると思いの外コンパクトになり、ソフトケースに入れて自分のコンパクトカーの後部座席に横にして置く事も可能で、これにより運搬の労力が格段に軽減されるので遠征用の機材としても活躍してくれそうです。

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接眼部は2.5インチのラックアンドピニオンですが、今まで笠井鏡筒の接眼部にはあまり良い印象が無く、具体的には重量アクセサリーを取り付けた場合にドロチューブのテンションを締め付けるとデュアルスピードフォーカサーの微動が空回りする現象がとても使い難いと感じていましたが、150SEDの接眼部では双眼装置を含めた重量アクセサリーをフルで取り付けても微動が問題なく使用でき、不満を感じずに使える中華接眼部に初めて出会えた気がします。最近は大口径アポには3インチや4インチと言った太い接眼部の採用も多く見受けられますが、眼視オンリーの自分的にはこの控え目な2.5インチ接眼部が鏡筒重量の軽量化にも寄与していると考えれば丁度良い大きさに思えました。

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見え味に関しては惑星シーズンが終わってしまったので、今年の惑星シーズン到来までどうこうは言えませんが、光軸に関してはしっかり調整されており、300倍超でリゲルやシリウスを見ても焦点内外像から中心に像が収束していく様子は見ていて気持ちが良く、焦点像も十分シャープに感じられ、これであれば惑星もかなり見えそうな手応えが感じられます。

後日の観望会にこの鏡筒を持ち出して半月の欠け際を350~400倍で観察しましたが、これまで見た事が無いようなクレーターの詳細が見え(月は個人的にあまり見ていない事もありますが)、解像度にはまだ余裕が感じられ、15cmアポの実力が垣間見えました。過剰倍率での像のシャープさ、ヌケやキレに関してはTSAには及ばない気がしますし、色も僅かにあったかも知れませんが、そこに完璧を求めるとなるとやはりTOA-150の様なハイエンドアポが必要になると思いますし、この鏡筒が15cmの2枚玉である事を考えると十分良好な収差補正がなされている様に感じました。

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ただ現時点では見え味云々よりも心配していた調整面に問題を感じなかったので気持ち良く使える点を評価したいところです。外観や可動部分を含めた全体を通して不満に感じる部分が(現時点では)特に無いと言う点も、大口径の中華アポと言うリスクが高そうな鏡筒である事を考えれば実はすごい事かも知れません。光学系にも期待できそうですので今年の火星木星土星が揃い踏みの惑星シーズンが今から楽しみです。



その後アリガタに落下防止対策を施しました。

その後ようやく好シーイングに恵まれて見え味を評価する事が出来ました。

その後ロンキー像を撮りました。