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ハイゲンスからの単レンズアイピース自作における焦点距離の選定 [天文>機材>アイピース]

究極にシンプルなアイピースと言えばレンズを1枚しか使わない単レンズのアイピースですが、個人的にはボールレンズに魅せられた一方でやはり元祖と言えばケプラー式望遠鏡であれば両凸レンズになるのかと思います。

ケプラー接眼レンズについての自作、考察についてはtwitterのフォロワーさんのLambdaさんがブログで書かれていますが、ケプラーの単レンズは両凸では無く平凸レンズを使用するアイデアもあったそうで、Lambdaさんはこちらを採用されていますが、ブログにも書かれている様に中心像は侮れない、むしろ独特の素晴らしい見え味との事で、自分も雑に自作した水晶玉アイピースを覗いた印象からしても良く見えるであろう事は想像に難くありません。

その様な訳で自分もケプラーの自作に興味が湧きましたが、ドロンドの場合はプローセルを単に半分にすれば良いと言う自作のし易さがありましたが、ケプラーにはこのアイデアは通用しません。アイピースを自作する時はレンズの調達よりもむしろ筐体、鏡胴の調達に頭を悩ませる事が自分的には多いですが、単レンズを上手く収める筐体の調達に難を感じて結局自作には至りませんでした。

そんな折同じくtwitterのフォロワーさんのnagano kinyaさんがハイゲンスの視野レンズを取り払う方法で単レンズアイピースを自作されて楽しまれている事を知り、確かにハイゲンスであれば視野レンズとアイレンズの保持が別々であり(自分の知る限り)、視野レンズだけを外してもアイレンズも一緒にポロっと落ちる様な事はありませんのでこれは単レンズアイピースを自作する手法としてはとてもシンプル且つ合理的ではないかと思いました。

問題は焦点距離を何ミリのハイゲンスを調達すれば、目的の焦点距離の単レンズアイピースが出来上がるのか、と言う点です。この場合目的の焦点距離は勿論12mmです笑。これを求めてみようと考察したのが今回の本題になります。

まず一つのレンズの焦点距離は誰でもイメージが湧くと思いますが、複数のレンズを使った場合のトータルの焦点距離はどうやって求まるのか、と言う部分が疑問で調べた結果、吉田正太郎先生の書籍(望遠鏡光学・屈折編)にヒントが載っていました。二つの光学系(二系)が光軸上に並んでいる時、前群レンズの焦点距離をf1、後群レンズの焦点距離をf2、前群と後群の間の距離をdとすると、二系の合成焦点距離fは、

f=f1xf2/(f1+f2ーd) ・・・①

となるそうです。今回の場合ハイゲンスですので、f1が視野レンズの焦点距離、f2がアイレンズの焦点距離、dがレンズ間隔として合成焦点距離を求める事が出来ます。

nk-210719_3.jpg

ここでハイゲンスは倍率の色消しが成立する光学系の為、

d=(f1+f2)/2 ・・・②

の関係が成り立ちます。実際にはハイゲンスのf1:d:f2の比率は4:3:2、もしくは3:2:1との事で、ここから、

f1=2xf2 ・・・③ (視野レンズ焦点距離がアイレンズ焦点距離の2倍)

もしくは

f1=3xf2 ・・・④ (視野レンズ焦点距離がアイレンズ焦点距離の3倍)

と導けます。目的の『視野レンズを外して、アイレンズのみにした時に焦点距離が12mmとなる』、つまりf2=12を代入して求まる合成焦点距離のハイゲンスを調達すれば良い事になります。これらの式から最終的には、

③式が成り立つハイゲンスの場合 → f=4/3xf2

④式が成り立つハイゲンスの場合 → f=3/2xf2

となり、アイレンズのみの12mmの単レンズアイピースとするには、前者の場合16mm、後者の場合は18mmのハイゲンスを調達すれば良い事が解りました。

しかしここで調達に動き出したところで更なる問題が・・・と言うのはハイゲンス(ミッテンゼーハイゲンスでも可)で16mmや18mmのアイピースは中古市場でも余り見掛けないのです。16mmは殆ど見つからず、18mmはたまに見掛けますが、もし買ってみても視野レンズとアイレンズの焦点距離の比が2:1の設計なのか、3:1の設計なのかまでは窺い知る事は出来ません。

一か八かで買ってみて実測してみればどちらの設計かは分かるかも知れませんが、そこまでやるのもなあ・・・と言ったところで二の足を踏んでいるのが今の現状です(^^;

ただお手軽に単レンズアイピースを自作する方法としては可逆的な改造で新たな部品の調達も必要無く、細かい焦点距離に拘らなければ単レンズアイピースの見え味を楽しむ方法としては有用ではないかと思います。