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Nikon O-12.5 [天文>機材>アイピース]

12mmクラシックアイピース見比べ企画での参加アイピースとして、この往年の銘アイピースは外せませんでした。我が家で初めてのニコンのアイピースとなり、ツァイスサイズでありながら古さを感じさせないデザインにPentaxと並ぶニコンのセンスの良さを感じます。

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手に入れる前はこのアイピースの形式はプローセル系らしいと言う事しか知らなかったのですが、後に調べてみるとどんなプローセルかと言う事が少し分かってきました。twitterでこもロハスさんより見せて頂いた資料(地人書館『天体望遠鏡のすべて'87年版』)によればBrandonに似た非対称の改良プローセル設計(O-5のみ3群5枚のアストロプラン設計)となっており、abe1998さんのブログ(Zeiss_Telementor_World:https://abe1998.blog.fc2.com/)を読むと、かつてA.ケーニヒがプローセルの視野レンズ側を凸面にした改良プローセルの設計を考案し(ケーニヒが考案した多くのアイピース設計の一つとして)、これを採用したのがかの有名なフランスのClaveとの事で、これに対しアイレンズ側を凸面に設計したのが米国のBrandonであり、ニコンOはこれに対し視野レンズを凹面にした設計を採用しています。これを略図で表すと、

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設計 視野レンズ側  アイレンズ側 
 Konig/Clave凸面平面
 Brandon平面凸面
 Nikon凹面凸面
表:各プローセルの設計の違い

このような違いがあり、プローセルを元により優れたアイピースを作ろうと世界各地で模索されてきた経緯を知ると、後発のニコンがClaveやBrandonに対してどの程度勝負できるプローセルを作ったのか、見比べが一層楽しみになりました。因みにテレビューのプローセルはこれら3種とも違う、アイレンズ側を凹面とした(恐らくは視野レンズ側も)設計を採用していたり、北軽のRPLのような広角を実現した意欲的な設計のプローセルもあり、市場には多種多様なプローセルの亜種が出回っているのかも知れませんね。

ニコンのオルソ(以下ニコンOと呼称)のラインナップはO-5/O-7/O-9/O-12.5/O-18の種類が存在し、手持ちの天文ガイドで確認する限りでは、10cmEDや8cmEDではO-7、O-12.5、K-25が標準付属アイピースとなっており、O-12.5は比較的入手し易い方、なのかも知れませんが、これらは中古市場では既に定価の2~3倍のプレミアが付いています。

肝心の見え味に関してはやはりとても良く見える印象で、今回見比べた他の国産クラシックアイピースより頭一つ抜きん出ている気もします。特に印象的なのが視野のバックグラウンドの暗さで迷光処理が優秀なお陰か、土星の立体感や木星の表面模様などの表現力に優れたアイピースの印象を受けました。Brandonとの見比べでは当初はBrandonが上回っている印象でしたが、見比べる回数を重ねるごとにニコンOが追い上げている気がします。

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来年の惑星観望シーズンで更に見比べる予定ですが、30年前の製品ながら現在でも十分通用する優秀なアイピースである事は間違い無さそうです。

ACクローズアップレンズ自作アイピース(広角化編) [天文>機材>アイピース]

今回は例のACクローズアップレンズNo.17を使用した自作60mmアイピースにACクローズアップレンズNo.5、更にMCクローズアップレンズNEO No.4を足す事で、見掛け視界を60度程度に広角化させてみました。これにより焦点距離は45mm程度に短縮されています。

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構成は、

----<アイカップ部分>
・ノーブランド 55mm→37mmステップダウンリング
・ノーブランド 58mm→55mmステップダウンリング
・ノーブランド 58mm継手リング(メスーメス)
----<本体部分>
・ケンコー MCクローズアップレンズ NEO No.4 58mm
・ケンコー ACクローズアップレンズ No.5 58mm
・ノーブランド 58mm継手リング(オスーオス)
・ケンコー ACクローズアップレンズ No.17 58mm
・ノーブランド 58mm継手リング(メスーメス)
・BORG M57→M58AD【7407】
・BORG 50.8→M57/60AD【7425】

となり、これによりレンズ構成は6群7枚、重量は約414gと、見た目も普通の2インチ広角アイピースの風格が出てきました笑。

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広角化のきっかけとなったのはふと見掛けた古い天文ガイドの元祖マスヤマアイピースの広告で、マスヤマアイピースのラインナップの中で25mmのみ広角のモデルが存在していましたが、そのレンズ構成図を見たところではマスヤマアイピースの基本となる構成(アストロプラン設計)の手前に平凸レンズを一枚足しただけのように見えました。

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また以前12mmクラシックアイピース対決で使用したSVBONYのWA-12mmのレンズ構成も2群3枚のケーニヒの構成にやはり手前側に平凸レンズを足したような構成でしたので、これは標準視界のクラシックな構成のアイピースの手前に平凸レンズを足せばお手軽広角アイピースになるのでは?と考えて手元にあったACクローズアップレンズNo.9をNo.17にかざしてみたところ予想通り見掛け視界が70度程度に大きく広がり、これはいけるかも!?と期待に胸が膨らみます。

実際にブランカ70EDTでオリオン座周辺をPentax XL40と見比べてみたところまずまずの見え味でしたが、周辺像の崩れが大きかったのでNo.9では値が大き過ぎると判断、今度はAC No.5で試してみると見掛け視界は60度弱に下がったものの周辺像の崩れも少なく、これならもう少し広角にできるのでは?と欲が出て、更にMC No4を足してみたところ見掛け視界65度弱となり周辺像もまずまず、これによりアイレリーフも短縮し、ブラックアウトも殆ど発生しなくなり格段に覗き易くなったのでこの組み合わせで完成させる事にしました。

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また視野最周辺の星像の崩れが少し気になったのでほんの少し絞れないかと考え、2インチバレル部分を構成する50.8→M57/60AD【7425】の内側に48mmのフィルターネジが切ってある事を利用して、この内側から2インチフィルターの枠のみ取り付ける事で丁度良い絞り環となり、見掛け視界は60度程度に下がりましたが普通のアイピースと変わらない視野環がくっきりとした見え方となりました。

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出来上がったアイピースの性能を確かめようとミニボーグ60ED-BINOを使用し、XL40とサイドバイサイドで見比べたところ、周辺像はこちらのアイピースが上回ってましたが微光星の見え味で結構な差があり、やはりレンズを追加した事により透過率が下がってしまった可能性があるので素直に60mmアイピースとして使う方が無難だったかも知れません。しかしクローズアップレンズを適当に組み合わせたこのアイピースがPENTAXの高性能アイピースにまともに勝負ができる時点で既に驚きと言えましょう。

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後日ヌプカの観望会にこのアイピースを持参し、再び施設のPentax 150EDで覗かせてもらえましたが、導入されていたペルセ二重星団がかなり綺麗に見えました。鏡筒のFがかなり長い事もあって周辺の崩れは認められず、透過率が特に悪いようにも感じられませんでしたので、高性能アイピースとサイドバイサイドで見比べなければこれでも十分実用になるように思えました。

あわよくばXL40からこのアイピースに乗り換えられればと考えていましたが、そこまでは行かなかったとしても構成を組み替えるだけで60mm~40mmの間で焦点距離を可変できる非常にユニークなアイピースとして今後の活躍も見込めそうです。