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総アクセス100万PV突破+MY望遠鏡ランキング [天文>日記]

当ブログの総アクセスが100万PVを突破しましたので感謝絵を描かせて頂きました。

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一応証明写真(?)がこちらです。

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このブログは2015年の7月に始めて、50万PVが2020年の4月でしたのでその後閲覧ペースが若干上がった模様ですが、天体写真が殆ど無い天文ブログでありながらたくさんのお客さまに来て頂いて感謝しかありません。本当にありがとうございます。

機材欲が無くなれば更新が止まりそうなこのブログですが、慢性的に重度のポチリヌス菌に感染し、買わない買わない詐欺で周囲を欺いて、隙を見つけては清水ダイブをくり返す生活が続いていますのでまだ暫くは存続しそうな気配です。



折角ですのでここで唐突にこれまで自分が所有していた望遠鏡のランキングを発表したいと思います。自分は望遠鏡の性能は惑星(特に木星)を観る際に見え味を損なわない範囲で最高何倍まで掛けられるかを一つの判断基準にしています。故に高倍率性能のランキングと言えるかも知れません。

鏡筒名 点数 
 オライオンUK VX250L83点
 笠井 BLANCA-150SED79点
 タカハシ TSA-12074点
 タカハシ FC-100DL66点
 笠井 BLANCA-102EDP64点
 ビクセン FL-90S61点
 INTES-MICRO ALTER-760点
 セレストロン C6XLT56点
 笠井 BLANCA-70EDT54点
 ビクセン A62SS48点
 Zeiss C50/54046点
 ビクセン VMC110L35点

点数は完全に自己満足のフィーリングで付けていますので余り真面目に受け取らない方が良いかも知れません。ただ自分はこのブログで望遠鏡の見え味を評価する際、悪くなければ単に「良く見える」と言う表現を多用しますのでこれでは分かり難いかも知れず、各々の鏡筒に対してどの程度見えると評価しているかを知る上での参考程度に考えて頂ければ幸いです。

但し上のランキングは言ってみれば見え味だけで評価したものですが、望遠鏡のトータル性能のランキングとなるとまた話は違ってきます。例えば車にはパワーウェイトレシオと言う概念がありますが、自分も望遠鏡には見え味使い勝手レシオ(?)の様な評価基準を持っていて、例えば鏡筒の体積や重量は操作性や機動性と言った要素に影響し、また温度順応の早さ、シーイングの影響の受け難さと言った要素はその鏡筒の性能の出し易さに影響してきます。

個人的にこれらの要素と見え味(上の点数)の比で望遠鏡の総合性能を測るのですが、この考えで行けば文句無しの見え味ですがとにかく大きいVX250よりもベランダ観望も可能な150SEDが総合性能で上回り、その上を行くのはやはりTSAです。車で言えば余裕の走りを見せる大排気量車と小排気量ながら高性能を叩き出すチューニングマシンの違いの様なものでどちらが好みかは扱う人の使用環境や価値観などに左右され、一概にどちらが良いとは言えないところだと思います。

機材に対する欲求はその人にとっての最高の望遠鏡を手に入れたい欲求そのものであり、このブログがそのヒントや一助になればいいなあとの想いで今後も続けていければと思うところです。

UW9mm 68° [天文>機材>アイピース]

R200SS-BINOでの最高倍率用アイピースとして当初XWA9mmを使用していましたが、自作したヘリコイド付きの接眼部には少々重く鏡筒の仰角によっては無視出来ないたわみが生じてしまう為、同じ9mmでもう少し軽く、安価でそこそこ広角なアイピースは無いものかと探して見つけたのが今回のアイピースです。

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SVBONYなどでも扱われている中華アイピースと恐らく同じと思われますがレンズ構成は4群6枚との事で、見掛け視界は68度と十分に広角で、重さも実測107gとこれであれば接眼部に負担が掛かる事はまずありません。周辺像をミニボーグ50を使用した室内環境でチェックすると歪曲は視野周辺まで感じられず、星が点像で見える意味での良像範囲は視野の8割から崩れ始め9割から大きく崩れる感じですが、F5の対物で見ている事を考えれば十分に優秀で、バローを入れて合成Fが7強のR200SS-BINOでは周辺まで崩れは感じませんでした。アイレリーフも公称13mmとなっており、ブラックアウトなども生じず普通に覗き易い印象です。

このアイピースの焦点距離ラインナップは6mm/9mm/15mm/20mmとなっていますが、自分的にはこれを見てスコープタウンやBORGでかなり以前から販売されていた中華広角アイピースと同じ製品かと考えたのですがこちらは見掛け視界が66度と今回のシリーズとスペックが僅かに違います。実は今でも今回の68度のシリーズとは別に66度のシリーズも販売されていますので別物なのかも知れません。

何れにしてもリーズナブルで良質な中華アイピースと言った印象で、当初ナグラー9mmを買い戻すか、DeLite9mmなどの購入も検討していましたが今回の自分の要求にはこれで十分で、究極性能までは拘らない方には問題無くオススメ出来るアイピースと思いました。

SVBONY アイピース 接眼レンズ 天体望遠鏡用 9mm 68° 31.7mm径
Amazon

天文ショップさんの送料比較(2022年8月時点) [天文>日記]

先日某天文ショップさんで注文した商品の送料に思うところがあり、各ショップさんの送料を比較してみる事にしました。自分がよく利用するショップさんのリンクも兼ねています。


 ショップ名
 (敬語略) 
通常送料(税込) 遠隔地送料 送料無料ライン 

 KYOEI東京660円1320円33000円

 KYOEI大阪660円1320円33000円

 EYEBELL550円(商品1万円未満)
1100円(1万~3万)
(同左)30000円

 シュミット770円1320円33000円

 国際光器770円990円25000円

 笠井トレーディング 無料(同左)

 スコーピオ800円
1300円(100サイズ以上)
1600円
2600円(100サイズ以上)
無し

 スコープタウン600円(同左)5000円

 スタークラウド700円(同左)10000円

 天文ハウスTOMITA 500円(同左)33000円

 アストロストリート650円980円(北海道、九州)
1500円(沖縄)
2500円(離島)
10000円

 スターベース東京 880円1320円33000円

上の表には書き切れなかった例外条件などもありますので、正確なところは各ショップさんのHPで改めてご確認ください。送料設定はそこそこのお店の事情もありますのであまりとやかくは言えないところですが、道民の自分的には遠隔地送料の罠によく嵌まっています笑

惑星デジタルスケッチ 2022/07/03 [天文>デジタルスケッチ]

ようやく待望の惑星観望シーズンが到来、と言いたいところですが6月以降壊滅的に晴れない日々が続き、この日久々の晴れ間が見えた事で現在制作中のビクセンの6cmF15アクロマートのCustom-60Lを使った双眼望遠鏡で土星木星を観望したところ想像以上にシーイングが良く、スケッチしてみたのがこちらです。

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BINOとは言え長焦点アクロマートの見え味は予想以上で色収差は殆ど感じませんでした。上の土星はカッシーニと本体の縞がうっすら見えていた様子を表現してみました。

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木星も結構細かい模様が見えていて、太い2本の縞にフェストーンらしき青っぽい模様も見えていました。

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このBINOの特徴はダイアゴナルに笠井のペンタプリズムを使用している点で、いつも惑星スケッチは裏像で見たままのイメージで描いていましたが、今回は倒立像となっています。

土星木星は昨年よりも南中高度が上がり、土星は大丈夫ですが木星の高度がかなり高く、ベランダ観望が出来るのか心配していましたが今年は何とか大丈夫そうです。ただ今年接近中の火星は木星より更に高く、ぎりぎり屋根に掛からず見えるかどうかと言ったところで、庭先観望に切り替える必要が出てくるかも知れません。

FL-90Sオフセット双眼望遠鏡 [天文>機材>望遠鏡]

自分的に惑星観望用の機材はアポ屈折+双眼装置の組み合わせが鉄板でしたが、観望仲間の方のアポ屈折による双眼望遠鏡の惑星像がとても印象深かったので、自分の機材でもアポ双眼での惑星も見てみたい欲求に駆られた結果、自分が学生時代から使っている望遠鏡、ビクセンFL-90Sを双眼望遠鏡としてみたのが今回のBINOです(以降FL90S-BINOと呼称)。

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この形式はオフセット双眼望遠鏡と呼ばれるタイプで、2つの鏡筒を上下にオフセット(段差をつける)する事で鏡筒の左右間隔を狭める事が出来、松本式正立ミラー等を使わずに通常のダイアゴナル使用で双眼視を可能とするものです。Twitterのフォロワーのminoruさんがその名付け親で、自分も天文ガイドかネットかは失念しましたが、minoruさんのBINOでその存在を知りました。

オフセット双眼望遠鏡の長所と短所は以下の様なところです。

《長所》
・ごく普通の天頂ミラーを使用できるので安価に構築出来る。
・反射が一回で済むので像の劣化が最小限に抑えられる。
・目幅調整をダイアゴナルの傾斜で対応すれば構造が簡略化できる。

《弱点》
・天頂ミラー使用の場合裏像になる。
・10cm以上の中口径鏡筒では構築が難しい。
・下段鏡筒のバックフォーカスを大きく引き出す必要があり、場合によっては鏡筒切断などの改造が必要。

このFL-90SのBINO化は当初EMSを使う方法を検討していましたが、元々所有していた側の鏡筒は接眼部を2インチ化する為に鏡筒切断し、それも判断ミスで短縮し過ぎた(10cm強)のが仇となり、双眼用にもう一本鏡筒を入手しても長さの違う鏡筒を並べてBINO化するのは色々と問題が多かったのに対して、オフセット双眼であればこのアンバランスな状態を逆に活かしたBINOに出来る事に気が付いて、渡りに船のこの方式に助けられる事となりました。

今回のBINO構築で悩んた部分、工夫した部分を挙げてみます。

《目幅調整》
EMS使用の双眼望遠鏡では目幅を調整する方法として片方鏡筒をスライドさせるか目幅調整ヘリコイド付きのEMSを使用する方法が一般的と思いますが、今回のオフセット双眼では下側鏡筒のダイアゴナルを傾斜させる事によって目幅を変更する方法を採用しています。勿論片側のダイアゴナルのみを傾斜させれば左右の像で回転方向のズレが生じますが、オフセット双眼では下側鏡筒の回転軸からアイポイントまでの距離が大きく離れる事から、目幅調整程度のアイポイントの横シフト(±5mm)程度では左右の像の一致が妨げられる程の視野回転が生じない事を利用した手段です。この方法は他の方法に比べても格段に機構が簡略で安価に済み、この方法が採用できるのもオフセット双眼の大きなメリットと個人的には考えています。

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目幅最大時
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目幅最小時

例えば鏡筒間隔を65mm、目幅変更によるアイポイントの横シフト量を±5mmとする事で、目幅調整範囲を60~70mmと想定すれば、下側ダイアゴナルの回転軸からアイポイントまでの距離は例としてXW20を使用した場合実測約260mmとなる事から、横シフト量を最大の5mmとした場合の傾斜角θは、

・tanθ=5/260

から

・θ≒1.1°

となり、より全長の長いアイピースではこれより角度が小さくなり、この程度の像の回転では双眼視には全く影響しない印象です。

《L字プレート》
毎度お馴染みの強度には信頼の置ける中華L字プレートをベースに、アリガタの短さを補う為に2段重ねとし、また上鏡筒を取り付ける為のアリミゾを低重心の微動雲台を介して装着し、ここで視軸を調整します。

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また二つの鏡筒の内側にデッドスペースが存在し、このBINO全体を動かすハンドルも欲しかった事からこの部分にMoreBlueのプレート(AU016)を縦に装着、この空間から導入対象を狙えるようにファインダーアリミゾ、更に自作の覗き穴ファインダーも装着させました。

プレート部の全重量は約2750gと上鏡筒(約3.2kg)と下鏡筒(約3.8kg)を合わせると総重量は約10kgとなりますが、Tマウント経緯台で無理なく運用出来ます。

《接眼部》
上側鏡筒用としてノーマルのFL-90Sを手に入れたのですが、接眼部を笠井の蔵出しでたまに販売されるφ90mm径ネジに取り付け可能なクレイフォード接眼部に無加工で換装しています。これで両鏡筒共に2インチ対応に出来ました。

《ダイアゴナル》
上側鏡筒のダイアゴナルにはBBHSミラーを使用し、下側鏡筒のダイアゴナルは光路消費の関係からバーダーのT2プリズム(#01C)を使用、M42→M48延長筒を介して光路を上に伸ばしてダイアゴナルとアイピースとの間隔を十分に開ける事で、2インチアイピース使用でもケラレが生じない設計としています。因みにスムーズな目幅調整を実現する為にT2プリズムと2インチバレルの間にはM42の回転装置を挟んでいます。

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火星を高倍率で見た印象では見え味でブランカ150SED+双眼装置にはやはり及ばず、重量は同程度で扱い易さは150SEDの方が上ですので一見こちらのBINOの存在意義が危ぶまれそうですがそんな事は無く、150SEDやTSA等の単鏡筒での双眼観望は高倍率に限定されるのに対して、今回のBINOは高倍率から中低倍率まで幅広い領域をシームレスに双眼観望出来る部分が最大の強みと言えます。

これまでこの鏡筒の強みは高倍率性能と思っていましたが、高性能アポ双眼による低倍率観望はオフセット双眼による一回反射の強みも相俟って、星雲などは非常に解像度やコントラストが高く、何より星像が針で突いた様に鋭い事から特に散開星団が美しく見えます。接眼部を2インチ対応とした事でイーソス17mmの双眼が使える事も大きく、これで見るM42、二重星団、アンドロメダ、そして月なども見蕩れる程の見え味です。

自分的にはこれまで低倍率での天体観望ではアポクロマートまでは必要無いと考えていて、これまでアクロマート対物のBINOを使用しても特に不満を感じる事はありませんでしたが、今回のBINOのヌケの良さ、星像の美しさを見てしまうとアポクロマートの収差補正は低倍率域、DSO観望においても見え味の向上に少なからず寄与しているのではと思うようにもなりました。

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アイピースは低倍率用がイーソス17mm(倍率47.6倍、実視界2.1度)以外でもSWA32mm(25.3倍、2.77度)、そしてこれまで中々活躍する舞台が見出せなかった自作ACクローズアップレンズアイピース(焦点距離48mm、見掛け視界56度、倍率16.9倍、実視界3.32度)もこの長焦点BINOでは活かす事が出来るようになりました。

中~高倍率はXWA9mm(90倍、1.11度)、自作可変バローレンズEWV-16mmを使用して5mm相当(162倍、0.52度)、もしくは12mmクラシックアイピースを組み合わせて3.8~3.2mm相当(倍率は216倍~253倍)で使用する事で惑星や重星観望にも対応しています。アイピースの見比べにおいても従来は単鏡筒+双眼装置にとっかえひっかえで行っていたのに対し、このBINOではサイドバイサイドで見え味の比較が可能な部分も我が家の他の機材では出来ない強みとなっています。

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予め片方鏡筒が大きく切断されていた事情から選択せざるを得ない方式ではありましたが、実際に構築してみてオフセットビノの合理的な設計思想に感心させられる事が多く、自分もすっかりその魅力の虜となってしまい、双眼望遠鏡をより身近にする手段の一つとしてもっと広まっても良い方法だと感じました。何より愛着のあるFL-90Sをこれ以上無く性能を高める道が見付かって、今後も末永く(生涯)愛用していければと思うところです。

Nikon 双眼装置(顕微鏡用→望遠鏡用改造) [天文>機材>双眼装置]

今回はNikonの双眼顕微鏡の双眼装置部分を望遠鏡用の双眼装置として使えるように改造してみました。

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これまで我が家で孤軍奮闘していたMk-V双眼装置の性能には全く不満はありませんが、唯一弱点があるとすればやはり重いところかも知れません。この重さはアメリカンサイズのフル口径を使用したアイピースでもケラレが生じない大型のプリズムを採用している事が一因となっており、自分の12mmクラシックアイピースを主に使用する惑星観望においてはオーバースペックだった事もあって、少々開口径が絞られても影響が無いのでもう少し軽い双眼装置が欲しいと思うようになりました。

そんな折一昨年バーダーからMk-V双眼装置の弟分とも言えるMaxBright2双眼装置が発売され、アイピースの保持機構や望遠鏡側の取り付け方法などMk-Vと同等の仕組みを採用しており、使い勝手がそれ程変わらずに595gとMk-Vより大幅な軽量化を実現していた事から昨年こちらを注文しました。しかし折からの世界的な半導体不足などの影響からか入荷する目途が立たない日々が続き、余りに待たされる中でアイピースは顕微鏡用を流用する事に抵抗が無くなり、性能的にも高く評価出来るものが少なくなかった事から双眼顕微鏡用の双眼装置部分を望遠鏡用に流用出来ないかを考えるようになりました。

調べるとこの様な改造はハイアマチュアの天文家の方でも実行されている例がいくつも見受けられ評価も高く、顕微鏡用となるとZeissやLeica、Nikonやオリンパスと言った高い実績を持つメーカーの製品が使えるのが何より魅力的で、その中でも入手が比較的容易で、現在望遠鏡用では殆ど無いと思われる日本製の光学エレメントを採用していると思われた、何よりNikonで設計、製造された信頼感が得られる今回の双眼装置を入手したのでした。

この双眼装置は23.2mm径の接眼レンズの使用を想定しているので入射口径、射出口径共に小さめですが、先述した様にバローを併用した惑星観望では何の不都合もありません。このサイズの接眼レンズに対応している時点でかなり古い製品の可能性がありますが、逆にそれが日本製の光学パーツが隆盛の頃の製品とも考えられ、アイピースでもツァイスサイズのペンタOニコンO等の性能の高さを鑑みると逆に期待出来る部分もありました。

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結果的に構成は対物側から以下の様になっています。

・2インチバレル-M42オスAD
・接続アダプター(自作)
・Nikon双眼装置本体
・23.2mmバレル-M42オスAD
・Baader ClickLockアイピースホルダー(#08)

今回の改造のキモは双眼装置本体と2インチバレルを接続するアダプターの自作でした。当初この部分を特注で業者さんに作ってもらおうと考えていたのですが、この接続部分のネジ間隔が特殊でノギスで測っても正確な値が割り出せず、設計が出来ないので特注も出来ない状況に陥って計画が一時頓挫し掛かけたのですが現物を見ながら悩んだ結果、自力でタップを立てる技術があれば位置決めは現物合わせでアダプターの自作が可能と思われたので、意を決してネットで調べ、工具を揃え、試作を重ねた事で何とか技術を会得出来て無事アダプターを完成させる事が出来ました。

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もう一点改造しようか悩んだ部分は接眼側で、アイピースホルダーを双眼装置本体に最短光路長で接続するアダプターが作れれば理想的でしたがそこまでは自分にはハードルが高く、光路長は伸びる事を許容した上で接眼部にM42へ変換するアダプターを接着し、そこにアイピースホルダーを接続する本体には手を加えない方法を採用しました。

この構成で光路長はMk-Vより少し長く、重量は約604g(ノーズピース含まず)と目標の600g弱は達成できず、バーダーのClickLockアイピースホルダーが2個で笠井のBS双眼装置よりも高価だったりと当初の想定より短くも軽くも安くもなりませんでしたが、それでもMk-Vに比べると200g程度軽量ですのでやはり全然軽くて扱い易いと感じます。

肝心の見え味に関しては木星や土星を見る限りでは像の明るさはMk-Vに軍配が上がる印象ですが、模様の見え具合、解像度に関しては全く引けを取らない印象で、この見え味であれば安心して惑星観望に使用出来る性能と感じました。実はこの双眼装置には左右のガラス内を通る距離を一致させる為の補償ガラス(Compensation Slide)と呼ばれるガラスシリンダーが右接眼部に内蔵されているのですが、これはかなり強硬な手段を用いなければ外せないと判断したのでそのままですが、実際の見えには殆ど影響していない様に感じました。

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Mk-V双眼装置は重くて高価な面で扱いに気を遣う部分がありましたが、今回の双眼装置であれば何かトラブルがあっても比較的取り返しがつく面もありますので(実はこの本体部分をもう一個体バックアップで確保しています)、性能を損なわずに手軽に使える双眼装置として今後活躍する機会が増えそうです。

Zeiss West Germany Kpl20x(顕微鏡用接眼レンズ、12.5mm相当) [天文>機材>アイピース]

冷戦時代にZeissが東西ドイツで分かれていた時代の西ドイツ側のZeissで製造された顕微鏡用接眼レンズです。

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東ドイツ側のCarl Zeiss Jena(略してCZJ)の望遠鏡製品は民生品も販売されていたのに対し、西ドイツのZeissからはアマチュア向けの製品は製造されておらず、こうした顕微鏡用の接眼レンズを流用する方法でなければ西独Zeissのレンズで星を眺める事は難しいかと思われます。その点で貴重な見えを味わえる接眼レンズと言えるかも知れません。

レンズ形式は不明ですが、KplのKはコンペンゼーション、plはプラン対物向けの接眼レンズと解釈すれば、絞り環が視野レンズより対物側に設置されている事からやはりケルナーに近いデザインなのではと推測しています。また絞り環径をノギスで測ると8mmですので見掛け視界は約37度と算出しています。因みにこの接眼レンズは2本1セットで入手しましたが、片方の接眼レンズにはスケールが内蔵されていて、星見に使う上でスケール版が絞り環に接着されていたのを剥がす一手間が掛かっています。

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惑星観望における見え味は本当に素晴らしく、我が家の12mmアイピースの中でも文句無しのトップクラスです。CZJの12,5-OPK20xに比肩し、優秀な国産アイピースと比較しても一段模様が詳しく見える驚異の見え味で、Zeissの接眼レンズには特別な何かがあると思わせる、元々Zeissに強い想い入れを持っておらず、強い期待もしていなかった(失礼)自分にそう感じさせる程確かな実力を持った接眼レンズと評価しています。

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勿論この接眼レンズは天体用ではありませんので周辺像は多少崩れますがPK20x程ではなく、コーティングのお陰か迷光もそれ程感じないトータルバランスでも非常に優れた接眼レンズの印象です。何度も書いていますが周辺像に関しては天体用の12,5-Oが完璧です(もしくはペンタO)。

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東西ドイツ統一後のZeissでは天体用アイピースとしてZAOが市販された一方、顕微鏡用接眼レンズは自分が探す限りでは20xは存在しなくなったので、この焦点距離に拘るならば冷戦以前の製品に頼らざるを得ませんが、東西どちらでも手を出しても文句の出ない実力を有していると個人的には確信するところです。

笠井 GuideFinder-50 その2 [天文>機材>ファインダー]

自作3cm10.5度ファインダーは圧倒的な実視界の広さで重宝していたものの、おとめ座の銀河巡りをしていた時に明るい星が無く、また対象そのものもファインダーでは見えない事から、対象から少し離れた明るめの星から望遠鏡の視界でスターホッピングするケースが多く、狭い望遠鏡の視野では結果としてトータルでのホッピング回数が増えてしまう事があり、やはりもう少し大きい口径のファインダーもあった方が良いかも知れないと考えて試行錯誤した結果、最終的にGuideFinder-50が復活する事となりました。但し以前と大きく違うポイントはアイピースが賞月観星のUF24mmを採用した点です。

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以前はこのファインダーのアイピースにビクセンのNPL25mm(見掛け視界50度)を使用していましたが、より広角のアイピースが使えないかとMeadeのSP26mm(見掛け視界52度)、笠井のEF-27mm(見掛け視界53度)辺りを試した時に周辺減光を感じた事からNPLがストレス無く使える限界と考えていましたので、これらより遥かに広角のUF24mmがケラレ無く使えるはずがないと思い込んでいましたが試しに組み合わせてみたところケラレも周辺減光も感じられず、おまけに良像範囲も8割程度とUFの強みも活かした見え味で、肝心の実視界はこれまでNPL25mmでは6.25度(8倍)だったところがUF24mmでは7.8度(8.3倍)と大幅に広くなり、この口径と視界のバランスであれば対象によっては導入のし易さでこちらが逆転するように感じました。

笠井のGuideFinderは6cmや8cmのモデルもありますが、対空正立ユニットのダイアゴナルは共通ですので、そちらに組み合わせるアイピースとしてもUF24mmは最適解となりうるかも知れません。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

賞月観星UF24mm
価格:19800円(税込、送料別) (2022/6/28時点)



ビクセン 三脚アジャスター [天文>機材>アクセサリー]

昨年辺りから我が家の一階の雨漏りが酷くなり、調べてもらったところいつもの観望場所となっている2階ベランダの床のコンクリに多数のヒビが入っており、恐らくここが原因との事で防水加工工事をお願いする事になりましたがその結果として床がゴム質の柔らかい素材となり、以前の様に三脚を直接設置すると石突で床を傷付けてしまう事から急遽その足場として手に入れたのがこの三脚アジャスターです。

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ビクセンのオンラインストアのみで販売されていると思われるこのアジャスターですが、以前はLEDが内蔵されているなど現行品より+αの機能が搭載されていましたが、自分の記憶では一度ディスコンになり、その後機能がスポイルされて再版されたのが現行品ではないかと思っています。

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内部を見ると以前の製品でLEDを点灯させるスイッチの部分が埋められていたり、電池スペースがそのまま空いていたりとその名残が見受けられます。

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底面を見ると真っ平ではなく3個所の突起が存在しますがその先は鋭く尖ってはいませんので今回の使用でも床を傷付ける事はありません。

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当初足場は木の板でも良いかと考えたのですがここは自分にとって最も頻繁に使用する観望場所ですので耐久性、耐候性を鑑みて今回製品に白羽の矢を立てましたが、必要十分の機能は果たしてくれそうで今後長い付き合いとなりそうなパーツです。

シンワ ルーペ T-2スケール付き(射出瞳径測定用) [天文>機材>その他]

射出瞳径を測定する自分的に分かり易い方法は無いだろうかと模索した結果、スケール付きのルーペが有用とのネットの評判を見てお試しに買ってみたのがこちらです。

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但しこのルーペに標準装備されているスケールは中央に四角の窓が開いているタイプで射出瞳に目盛りを重ねる事が難しく、瞳径を測るのには今一つ向いていませんでした。

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そこでスケールのみ交換出来ないものかと探した結果、Peakと言う(有名)メーカーのスタンダードなルーペ目盛板が良さそうだったので取り寄せたのですが、運が良ければスムーズに交換出来るかも?と思いましたがそうは問屋が卸さず、思案した結果テープで貼り付ける事にしました。

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やや強引な方法でしたが、やはり透明板に目盛りが刻まれているこのタイプに交換する事で瞳径が格段に測り易くなりました。

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まずは気になっていたところで、先日防振双眼鏡12x36ISにテレコンビノを装着する改造を施しましたが、テレコンビノ装着で対物口径がケラレていないかが気になっていたのでまずはテレコンを外したノーマル状態で射出瞳径を測ったところきっかり3mmでした。射出瞳径と対物口径の関係は、

[口径]=[瞳径]×[倍率]

となっていますので、瞳径3mmで倍率が12倍ですので口径は3×12=36mmとスペックに一致します。次にテレコンを装着した状態で測ると約2.2mmで、この時の倍率は1.6倍のテレコン装着により12×1.6=19.2倍となる事から口径は、2.2×19.2=約42mmと算出され、やはり口径が少しアップしている事が確認出来ました。

また別の例では、現在制作中の9cmのオフセット双眼望遠鏡で31.7mm径の天頂プリズムを使用しつつ2インチアイピースを使えるように設計したものの口径がケラレていないかが気になってこのルーペで測定しましたが、計算値通りの射出瞳径でケラレていない事が分かるなど、当初の予想以上に色々な局面で役に立つ事が分かって重宝しています。

OPTICS ASIA 天体望遠鏡ケース 30インチ(R200SS用) [天文>機材>アクセサリー]

R200SS用の鏡筒ケースで良いものはないものかと物色していてAmazonで見つけたのがこのソフトケースです。

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普段自分は鏡筒用のケースは三脚用のものを使う事が多いのですが、このケースはブランド名に"OPTICS"の名を冠しているように望遠鏡向けに作られているのが特徴的です。

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大きさが縦32cm×横75cm×高さ26cmとR200SSを入れるのにピッタリの寸法で品質もとても良く、チャックに紐が付いて指の掛かる部分にクッションで保護がされている等ここまで気を遣ったケースはあまり見た事がありません。全体的に格安中華ケースにありがちな縫製の雑さが無く、素材も良く、しっかりしたクッション(12mm厚)も入っており、信頼して使えるソフトケースの印象です。

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チャックはケース底部まで開ける事が出来るので、鏡筒の出し入れもスムーズに行えます。チャックの品質も安いものは嚙み易いものがあったりしますが、その部分もスムーズで上質に感じます。

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中にはアクセサリーポーチ、ケース外側にもポケットが用意されており、ダイアゴナルなどをここに仕舞っています。

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他にもカセグレン用のケースなどもラインナップされており、個人的にはこの様な丁寧な製品を作るメーカーは応援したいですので今後も注目していきたいブランドです。


機材一覧 [天文>機材一覧]

《望遠鏡》
名称 形式 口径 焦点距離 F値 リンク

笠井 BLANCA-150SED 2枚玉アポ屈折 150mm 1200mm F8
笠井 BLANCA-102EDP 2枚玉アポ屈折 102mm 1122mm F11
笠井 BLANCA-70EDT 3枚玉アポ屈折 70mm 420mm F6
タカハシ TSA-120 3枚玉アポ屈折 120mm 900mm F7.5
タカハシ FC-100DL 2枚玉アポ屈折 100mm 900mm F9
セレストロン C6XLT シュミットカセグレン 150mm 1500mm F10
INTES-MICRO ALTER-7 マクストフカセグレン 180mm 1800mm F10
ビクセン FL-90S 2枚玉アポ屈折 90mm 810mm F92
ビクセン VMC110L マクストフカセグレン 110mm 1035mm F9.4
ビクセン A62SS 4枚玉アクロマート屈折 62mm 520mm F8.4
Zeiss C50/540 2枚玉アクロマート屈折 50mm 540mm F10.8
75mm口径拡張太陽望遠鏡 Hα太陽望遠鏡 75mm 560mm F7.5
ミニボーグ50太陽望遠鏡 Hα太陽望遠鏡 40mm 250mm F6.3
ミニボーグ45ED太陽望遠鏡 Hα太陽望遠鏡 40mm 325mm F8.1
オライオンUK VX250-L ニュートン反射 250mm 1600mm F6.3

※機材名が太字のものは現在所有中


《双眼望遠鏡》
名称 タイプ 口径 F値 像 接眼部リンク

R200SS-BINO 反射双眼 200mm F4 裏像 31.7mm 
FL90S-BINO オフセット双眼 90mm F9 裏像 2インチ 
ミニボーグ45ED-BINO 正立P双眼 45mm F7.22 正立像 2インチ 
ミニボーグ60ED-BINO 正立P双眼 60mm F5.83 正立像 2インチ 
ミニボーグ50-BINO 正立P双眼 50mm F5 正立像 2インチ 
ミニボーグ55FL-BINO 正立P双眼 55mm F4.55 正立像 2インチ 
ミニボーグ71FL-BINO 松本式双眼 71mm F5.63 正立像 2インチ 
CUpレンズNo4-BINO 正立P双眼 45mm F5.55 正立像 31.7mm 
CUpレンズNo5-BINO 正立P双眼 39mm F5.13 正立像 2インチ 
GuideFinder50-BINO 正立P双眼 50mm F4 正立像 31.7mm 
カスタム60L-BINO オフセット双眼 60mm F15.2 倒立像 31.7mm 

※機材名が太字のものは現在所有中


《双眼鏡》
名称 形式 アイレリーフ 実視界 重量 リンク

Nikon WX10x50 ダハ 15.3mm 9度2505g 
Nikon 8x30EII ポロ  13.8mm 8.8度 575g
Fujinon HC8x42 ダハ 18mm 8度 788g
APM MS25x100ED ポロ 16mm 2.7度 4080g
APM MS20x80 ポロ 16mm 3.3度 2500g
賞月観星 プリンスED6.5x32WP ポロ 21mm 10度 730g
ヒノデ 6x21-N1 逆ポロ 13mm 7.2度 155g
コーワ SV25-8 ダハ 15mm 6.2度 260g
ビクセン meglass H6x16 ダハ 14mm 8.3度 140g
ミザール SW-525 ダハ 9mm 15.5度 470g
SkyRover 2x54ビノ ガリレオ式 - 36度 384g
笠井 ワイドビノ28 ガリレオ式 - 28度 290g
セレストロン SkyMaster 15x70 ポロ 18mm 4.4度 1360g
Bosma DF12x56ED ポロ 19mm 6.1度 1500g
自作 TC-E2ビノ テレコンビノ - 30度? -g
自作 VCL-1452ビノ テレコンビノ - 60度? -g
Zeiss 7x42T*FL ダハ  16mm 8.6度 740g
Swarovski NL Pure 10x32 ダハ  18mm 7.5度 640g
Canon 10x30IS II 防振双眼鏡 14.5mm 6度 600g
Canon 12x36IS III 防振双眼鏡 14.5mm 5度 660g

※機材名が太字のものは現在所有中


《対空双眼鏡》
名称 形式 口径 焦点距離 F値 リンク

APM10cmSA対空双眼鏡 31.7mmEP交換式/45度対空 100mm 550mm F5.5
APM120mmSA対空双眼鏡 31.7mmEP交換式/90度対空 120mm 660mm F5.5

※機材名が太字のものは現在所有中


《アイピース》
名称 レンズ構成 見掛け視界 アイレリーフ 重量バレル径

笠井AP-12.5mm 3群5枚 50° 10.6mm 90g31.7mm
笠井HC-Or12mm 2群4枚 42° 9.6mm 100g31.7mm
笠井EWV-16mm 3群5枚 85° 9.6mm 120g31.7mm
笠井EWV-32mm 3群5枚 85° 20mm 480g50.8mm
笠井EF-19mm 3群5枚 65° 19mm 110g31.7mm
笠井KONIG-40mm 3群4枚 70° 26mm 320g50.8mm
笠井SWV-24mm 5群8枚 94° 14mm 490g50.8mm
 
CZJ 12,5-O(前期モデル) 2群4枚 40° - 91g24.5mm
CZJ 12,5-O(後期モデル) 2群4枚 40° - 53g24.5mm
CZJ PK20x/w(10) 3群4枚? 46° - g30.0mm
 
ZWG Kpl10x/16 - 37° - g23.2mm
ZWG Kpl20x - 37° - g23.2mm
 
Clave 12mm 2群4枚 51° - 50g31.7mm
 
Leica 20x/12 10446356 - 55° - 48g30.0mm
 
LOMO K20x - 41° - g23.2mm
 
INTES-MICRO ST-12mm 1群3枚 28° 24mm -31.7mm
 
TMBモノセン12mm 1群3枚 30° 10.2mm 70g31.7mm
TMBモノセン18mm 1群3枚 30° 15.1mm 80g31.7mm
 
VS Brandon12mm 2群4枚 45° 9.6mm 41g31.7mm
VS Brandon16mm 2群4枚 45° 12.8mm 45g31.7mm
 
TV PL15mm 2群4枚 50° 10mm 70g31.7mm
TV PL32mm 2群4枚 50° 22mm 180g31.7mm
TV Panoptic24mm 4群6枚 68° 15mm 230g31.7mm
TV Nagler9mm 4群7枚 82° 12mm 190g31.7mm
TV Nagler16mm 4群6枚 82° 10mm 204g31.7mm
TV Nagler22mm 5群7枚 82° 19mm 695g50.8mm
TV Ethos13mm - 100° 15mm 590g兼用
TV Ethos17mm - 100° 15mm 725g50.8mm
TV NZ2-4mm 3群5枚 50° 10mm 160g31.7mm
 
賞月観月 UF15mm 5群8枚 65° 16mm 136g31.7mm
賞月観月 UWA16mm 4群7枚 82° 12mm 167g31.7mm
賞月観月 XWA9mm 6群9枚 100° 15mm 415g31.7mm
 
Explore Scientific ES24mm 4群6枚 68° 18.4mm 329g31.7mm
 
谷Or18mm 2群4枚 44° 14.4mm 75g31.7mm
谷Or25mm 2群4枚 45° 20mm 90g31.7mm
谷Er25mm 3群5枚 62° 21mm 130g31.7mm
 
スコープタウン Or9mm 2群4枚 45° 7mm 53g31.7mm
スコープタウン Or14mm 2群4枚 53° 12mm 70g31.7mm
スコープタウン Ke12mm 2群3枚 ° 4mm g24.5mm
スコープタウン Ke25mm 2群3枚 45° 18mm 76g31.7mm
スコープタウン AH40mm 2群3枚 33° 35mm 55g24.5mm
 
国際光器 HD-OR12.5mm 2群4枚 42° 10.4mm g31.7mm
国際光器 WS20mm 3群5枚 84° 12mm 182g31.7mm
 
Meade SP12.4mm 2群4枚 52° 8mm 88g31.7mm
Meade SP20mm 2群4枚 52° 14mm 110g31.7mm
Meade SP32mm 2群4枚 52° 21mm 145g31.7mm
Meade SP40mm 2群4枚 44° 27mm166g31.7mm
Meade UWA24mm 4群6枚 82° 17.6mm 850g50.8mm
 
Celestron Omni PL12mm 2群4枚 52° 8mm 52g 31.7mm
Celestron Omni PL40mm 2群4枚 43° 31mm 155g 31.7mm
 
Nikon O-12.5 2群4枚 45° 10mm 46g 24.5mm
Nikon UW20x - 69° - 73g 30.0mm
Nikon E20x 2群3枚 55° - 44g 30.0mm
 
PENTAX O-12 2群4枚 42° mm g31.7mm
PENTAX XW3.5 5群8枚 70° 20mm 405g31.7mm
PENTAX XW5 5群8枚 70° 20mm 395g31.7mm
PENTAX XW7 6群8枚 70° 20mm 390g31.7mm
PENTAX XW10 6群7枚 70° 20mm 390g31.7mm
PENTAX XW20 4群6枚 70° 20mm 355g31.7mm
PENTAX XW40 5群6枚 70° 20mm 700g50.8mm
PENTAX XL40 5群5枚 65° 20mm 380g50.8mm
 
Docter UWA12.5mm - 84° 18mm 520g兼用
 
タカハシ TPL-12.5mm 2群4枚 48° 9mm 90g31.7mm
タカハシ LE12.5mm 3群5枚 52° 9mm 103g31.7mm
タカハシ MC Or12.5mm 2群4枚 42° - g24.5mm
 
LongPerng Plossl 12.5mm 2群4枚 55° 7.5mm g31.7mm
 
自作 Kepler12mm 1群1枚 10° mm g31.7mm
自作 Dollond12mm 1群2枚 20° mm g31.7mm
自作 Hastings12.5mm 1群3枚 30° mm g31.7mm
 
EO RKE12mm 2群3枚 45° 9.7mm 60g31.7mm
EO RKE28mm 2群3枚 45° 21mm 80g31.7mm
 
APM UF30mm 5群9枚 72° 22mm 556g50.8mm
 
AstroStreet SWA32mm 4群5枚 70° 24mm 370g50.8mm
 
大井光機 Masuyama32mm 3群5枚 85° 20mm 437g50.8mm
 
ビクセン HM12.5mm 2群2枚 40° - 38g 24.5mm
ビクセン SSW14mm 4群7枚 83° 13mm 210g 31.7mm
ビクセン NPL25mm 2群4枚 50° 19.5mm 130g 31.7mm
ビクセン LVW42mm - 65° 20mm 545g 50.8mm




《三脚・架台》
名称 形式 耐荷重 リンク

ユーハン Tマウント経緯台 片持ちフォーク経緯台 15kg?
アイベル APポルタ経緯台 片持ちフォーク経緯台 7kg?
自作 片持ちフォークSP赤道儀 片持ちフォーク赤道儀 7kg?
笠井 AZ-3経緯台 特殊経緯台 7kg+12kg?
タカハシ TG-S経緯台 片持ちフォーク経緯台 3.5kg?
ビクセン ミニポルタ経緯台 片持ちフォーク経緯台 3kg?
ビクセン ポルタII経緯台 片持ちフォーク経緯台 5kg
ビクセン SP赤道儀 ドイツ式赤道儀 6kg?
ビクセン GP2赤道儀 ドイツ式赤道儀 7kg
ビクセン GP-X赤道儀 ドイツ式赤道儀 14kg?

※機材名が太字のものは現在所有中

Canon 12x36IS III その2(テレコンでパワーアップ編) [天文>機材>双眼鏡]

Canonの防振双眼鏡の12x36ISの対物レンズ前に同じくCanonの1.6倍のテレコンバーター、TC-DC52Bを装着する事で、19.2倍の防振双眼鏡としてパワーアップさせました。

bn-cnn12x36is-tlcn_1.jpg

双眼鏡での天体観望における防振の効果は絶大で、揺れが止まって微光星が浮き出てくるこの見え方を体感してしまうともう普通の双眼鏡に戻る事は出来ません。個人的にはそれ故に対象天体によってはもう一声倍率が欲しいと感じる事がありより倍率の高い15x50ISや18x50ISにも食指が動く中、Twitterのフォロワーさんが対物レンズ前にテレコンバーターを取り付ける事によって倍率を上げる裏技を紹介されていて(どなたかは失念<(__)>)、試しに12x36ISの前に自作テレコンビノのVCL-1452ビノをかざしてみたところ普通に倍率が上がって見え味も防振性能もほぼそのままでこれはイケる!と感じたもののVCL-1452の外径が大きい為に12x36ISの対物レンズの幅に合わせる事が出来ず、もっと外形が小さいテレコンは無いものかと物色する事になりました。

調べるとCNに防振双眼鏡とテレコンを組み合わせるスレッドが存在し(本当あちらは何でもありますねw)その中でも評価の高かった今回のテレコンに自分も狙いを定めたもののやはりそこはとっくの昔にディスコンになった製品、そう簡単には見つからず、その後一年以上掛かってようやく2本揃える事が出来ました。

bn-cnn12x36is-tlcn_10.jpg

このテレコンを2つ並べた間隔が12X36ISの対物レンズの間隔以内に収まるかが第一の懸念点でしたが、何と共に約70mmのジャストの寸法で冷や冷やしましたが、ある意味理想的と言える組み合わせかも知れません。但し先のCNのスレッドで、テレコンに組み合わせる防振双眼鏡は対物にフィルターネジを装備した10x42LIS、15x50ISと言った機種が主でフィルターネジが存在しない12x36ISに取り付ける話は存在しませんでした。

そこでこの双眼鏡に取り付ける方法を思案した結果、Euro EMCの太陽フィルターの取り付け方法からヒントを得て双眼鏡の対物フードに引っ掛ける方法を考えて色々試した結果、ハクバの52mm径レンズフードの対物側の内径が双眼鏡の対物フード外形とほぼ一致(φ58mm)している事が分かり、双眼鏡側がラバーの分だけ僅かに大きかった事が奏功し、レンズフードを逆向きに対物フードに押し込む事でかなりしっかりと取り付ける事が出来て、ここに52mm径の継手リングを介する事でテレコンを取り付ける事が出来ました。

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テレコンでの倍率強化に於ける注意点として、まず左右の視軸が維持されるのかが心配でしたが、今回の組み合わせでは特に問題ありませんでした。但しより倍率が高くなればズレが許容出来なくなる事も予想されるのでやはり1.5倍前後のものに留めておくのが無難ではないかと思います。また無限遠のピント位置がかなりシフト(後退?)し、近距離でピントを合わせる事が出来なくなりましたのでこれ以上の拡大率のテレコンでは無限遠でもピントが合わない(双眼鏡のピント調整範囲を超える)可能性もあります。またテレコンの焦点距離に個体差がある場合ピントが左右で僅かに違う場合がありますが、これは双眼鏡の視度調整の機能で合わせる事が可能です。

また今回のテレコンの後端レンズの径が双眼鏡の対物レンズよりも小さいので口径がケラれる懸念もありましたが、太陽光(並行光線)を接眼レンズから入射させて、テレコンのレンズ前に白いビニールを張って投影される光束の直径を測定したところ約40mmあり、これより元の36mmより若干口径が拡張されていると思われます。だとすれば当初倍率しか求めていなかった自分的には思わぬ副産物と言ったところです。

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倍率が上がった状態での防振の効き具合ですが、正直なところノーマル状態のボタンを押すとピタッと視野が止まる感覚は薄れ、低倍率の双眼鏡を手持ちした感覚に近い少量の小刻みな振動が残ります。特に地上風景より星見の方がより揺れにシビアでピタッとは止まらないので微光星が浮き上がる効果も薄くなりますが、この状態から防振を解除すると手振れでまともな観望が難しいレベルになりますので、それを手持ちの低倍率双眼鏡レベルまで揺れを抑え込むのですから相変わらず防振の効果は絶大と言えます。

そして倍率が上がる事によって対象の詳細が見えてくるようになり、特に月面観望では絶大な威力を発揮し、ノーマル状態(12x)では全景を眺めると言った趣から、テレコン装着では個々のクレーターの様子が観察出来るレベルになって飽きが来ません。メシエ天体などもノーマル倍率では存在確認レベルだったものが一気に見応えが出てきて言ってみれば双眼鏡から望遠鏡の見え味に近くなる印象です。星像もシャープなままでテレコンを付けた事で悪化する印象もありません。

またこの状態でより快適に星を見るテクニックとして車の屋根などに肘を付いて覗くと更にぐっと振動が減ってノーマル状態の微光星が浮かび上がる感覚がこの倍率でも現れてきます。肘を付いていても防振を切ってしまうと小刻みに揺れてやはりこうはならず、この状態であればじっくりとした天体観望も可能になり、双眼鏡の機動力、自由度の高さと望遠鏡の見え味を両立させた観望機材としての強みが一層増してくる印象です。

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但しこの状態での実視界は3.13度となり導入が難しくなる弱点が出てきますので万人向けとは言い難く、ノーマル状態の方が手持ちで視野が止まる感覚が失われない上限の倍率を設定していると思われる点でやはりバランス、完成度が上と感じますが、一部のマニアの需要に特化した性能を求めるならば今回の様な改造もまたメリットが大きいと考えられ、防振双眼鏡でなくても手持ちの双眼鏡の倍率をもう少し上げたいと思われる方にとっても有用な手段となりえるかも知れません。



MARUMI フィルターソフトケース(サイズM、シルバー) [天文>機材>アクセサリー]

Astronomikのネビュラフィルター等は一枚一枚きっちりとしたプラケースが付いているのでそのまま持ち運んでいたのですが、ケンコーのフィルターのケースは上下の蓋がバラバラになってしまう構造上そのまま持ち運ぶ事が出来ず、フィルターの枚数も増えた事もあって出し入れや持ち運びの容易なソフトケースを使う事にしました。

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今回購入したMARUMIのソフトケースですが、生地色はシルバーと黒の2種類から選択出来、今回はシルバーを購入しましたが実物は少し青みの掛かったジャーマングレーっぽい色合いです。サイズはMサイズを選び、62mm径までを収納可能となっていますので、天文用の2インチ(48mm径)フィルターは問題無く収納出来ます。但し折り畳む方向のフィルターのポケットの間隔がやや狭いので折り畳むのがきつく少しパンパンになる印象で、Amazonのレビューにあるようにこれより大きいフィルターではポケットには入っても折り畳んだ時に蓋が閉まらない、と言う苦情もさもありなんと言ったところです。

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フィルターの厚みを考慮してもう少しゆとりのある大きさにしても良かったのではと思わなくもありませんがその分コンパクトではあり、天文用途で2インチフィルターまでを使う分には特に問題を感じる事は無いだろうと思います。個人的にはAmazonで言えば★4.5位の満足度です。


ビクセン R200SS反射双眼望遠鏡 [天文>機材>望遠鏡]

25cmニュートン反射(VX250L)を以ってしてもDSO、特に銀河は存在が確認出来る程度の見え味で、それはそれで満足しているつもりだったのですが、観望会で35cmドブで見せてもらったNGC4565やソンブレロが写真を薄くしたように見えて、やはり銀河も口径があれば見た目も楽しめる対象になりえる事が分かってしまった為、更なる大口径への欲求が高まりました。

しかしながら大口径ドブは自宅の収納環境の問題や何より自身の体力的に扱うのは困難と思われたので、自分の手に負える範疇でDSOが一番見えそうな機材を模索する中で、自分的に双眼観望を前提とするなら中口径の反射望遠鏡で双眼望遠鏡を自作出来れば大口径に双眼装置を使うのに匹敵する見え味が得られるのでは?と思い至り、最終的に出来上がったのがこのビクセンのR200SS鏡筒を使用した反射双眼望遠鏡です(以後R200SS-BINOと呼称)。

tlscp-r200ssbn_1.jpg

以下、完成に至るまでの経緯を場所毎に記します。

《架台の選定》
AZ-3経緯台は2本の鏡筒の搭載と視軸調整が可能でしたのでこの架台を上手く使えないかと考えた結果、カウンターウェイトを搭載できるL字プレートを用意出来れば、架台上部に2つの鏡筒を並べる事が可能に思えたので、この方向で計画の詳細を練る事になりました。

《鏡筒の選定》
鏡筒の選定はAZ-3に2本の鏡筒を載せても無理の無い重量に留めなければならない制約から口径20cmが限界だろうと判断し、その中でも短焦点でより軽いと思われる20cmF4鏡筒に狙いを定めました。

20cmF4鏡筒で現在普通に入手可能なものは、ビクセンのR200SS、笠井のGINJI-200FN、スカイウォッチャーのBKP200/800の3種が挙げられ、それぞれ、

・価格:BKP>GINJI>R200SS
・バックフォーカス:GINJI>BKP>R200SS
・重量:R200SS>GINJI>BKP

と言った長所と短所があり、当初はバックフォーカスの長いGINJIを検討していましたがやはり重量的に厳しいと感じ、この点で価格が魅力だったBKPも見送り、R200SSはバックフォーカスが短いですがF4なのでバローで焦点を引き出す事を許容し、また中古が多く出回る鏡筒でもあったので価格も抑える事が出来そうな点も選定の後押しとなりました。

但しR200SSは非常にロングセラーの鏡筒ですのでその間に細かい仕様変更が繰り返され、なるべく製造時期の近い個体を並べたい事情から、販売時期が比較的短かったDG(ダークグリーン)鏡筒に目を付けました。尤もこの色が個人的に格好良くて好きだった理由が大きかったのですが。

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《接眼部》
接眼部は当初2インチ対応を考えていたのですが、重量的な問題、合焦機構の問題、最小目幅の問題など解決の難しい課題が多かったのでここも無理せずアメリカンサイズで妥協する事で一気に計画が現実味が帯びました。

使用するダイアゴナルは当初WOのヘリコイド付き正立プリズムを想定していましたが、この構想をTwitterで打ち明けたところフォロワーさんのシベットさんから反射双眼で正立プリズム使用では左右の像が一致しないだろうとの指摘を受けました。これは全く自分には考えが及ばなかった部分で、後日試しにこの正立プリズムで双眼視したところ指摘通り左右の像が90度回転しており双眼視が成り立たず、これを通常の天頂プリズムにすると像が一致します。この原理は今考えても分かりませんが、この事が指摘されなければここで混乱していた事が予想され、先人の方々の知見は本当に有難いと感じました。尚ダイアゴナルに普通の天頂プリズムを使用する事は像が裏像になると言う事ですが、世に出回っている反射双眼は特殊な例を除いてほぼ裏像との事でした(そうだったのか!)。

その様な理由から普通のダイアゴナルを改めて選定する事になりましたが、光路長が短い点と接眼側にヘリコイドを搭載出来る見通しが立った笠井のMC天頂プリズムを採用し、ダイアゴナルのバレル端に笠井のBS双眼装置用の1.6xエクステンダー(+延長筒)を装着する事でバックフォーカスの少ないR200SSでも十分な引き出し量を確保する事が出来ました。

このバローを入れた事でドロチューブの伸縮量に対するピント(ヘリコイド)の移動量は一対一ではなくなり、少しの幅の眼幅調整でも多く量のヘリコイドの伸縮が求められる事からストローク量90mmのM42中華ヘリコイドを見つけ出す事によってアイピースの変更に伴うピントの違いも合わせて吸収出来る合焦機構が構築出来ました。恐らく像回転の問題が無くてもWOの正立プリズムではヘリコイドのストローク(15mm)が全然足りなかったと思われます。但しこの構成で光路長が増した事でバローの拡大率は最終的に約1.8倍となっています。

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《プレート》
かなり頭を悩ませて試行錯誤したのがAZ-3の主鏡筒側に取り付けるプレートの構築でした。当初L字プレートに視軸調整用の微動雲台を搭載するアイデアで検討を進めましたが、試作の段階でテストすると仰角によってどうやっても左右の鏡筒でたわみの差が変動して視軸の維持が困難である事が分かり、視軸調整をAZ-3副鏡筒側の粗動で行うのはこれはこれで困難が予想されましたが、L字の構造を止めて微動雲台も排する事で鏡筒の間隔も狭まり、構造もシンプルとなり、たわみもほぼ発生しないI字プレートの構築が実現出来ました。これはプレートの側面のネジ穴の間隔とアリミゾの取り付けネジ穴の間隔が偶然一致していた事で成立しています。

tlscp-r200ssbn_9.jpg

またカウンターウェイトを装着させる為にアリガタの先端にウェイトシャフトを取り付ける構造としました。ウェイトはこちら側にビクセンの2.8kgのウェイトを2個、副鏡筒側も1.9kgと3.7kgのウェイトを装着し、これでクランプ無しで手を離してもガクっとはならないバランスの良さも実現しています。

結果としてこのプレートの構成パーツは、

ビクセン規格ダブルブロック締付式アリミゾ
・BORG Vプレート125【3125】
AstroStreet L型マルチプレート(アリガタは撤去、コーナー金具は流用)
・MoreBlue AU003 ビクセン規格260mm自在アリガタ(タカハシM8長穴仕様)
・スカイメモS用ビクセン互換ウェイトシャフト(ヤフオク)

となりました。

また副鏡筒側のプレート(MoreBlue ビクセン規格280mm自在アリガタ)は鏡筒重量を極力抑えたかった事情からファインダーを架台の下側に取り付ける目的で、AZ-3の副鏡筒側の端面にネジ穴が設けられているのを発見してここに小型のアリミゾを装着する事でプレートを介して3cm対空正立ファインダーWideFinder28の二つを搭載しています。またこのBINOは姿勢変更の際に特に副鏡筒側に触れてしまうと視軸がいとも簡単にずれてしまうので、鏡筒に触れずに姿勢を変更する為のガイディングハンドルとしての機能もこのプレートに持たせています。

tlscp-r200ssbn_4.jpg

《視軸調整》
視軸調整は結局AZ-3に元々備わっている調整機構に頼る事になりましたが、クランプを締める際に視野がずれてしまう点が問題ではあるものの、そのズレの量を予め把握する事でクランプを締めて像が一致する様に視軸を合わせる方法も慣れれば会得する事が出来ました。ただやはりこの機構では微調整が困難な為、惑星を見るような高倍率での運用は捨てています。

《使用アイピース》
高倍率は捨てていますがむしろ低倍率広視野が欲しい局面も多いですので、SWA32mm(45倍、1.56度)をこのダイアゴナルで使えるように改造を施したのはケラレも無く大正解でした。XW20(72倍、0.97度)やSSW14mm(103倍、0.81度)もバランスが良い見え味で、銀河は100倍程度の高倍率を掛けた方がコントラストが上がって見易くなる気がします。

《見え味》
NGC4565やソンブレロの暗黒帯が見える事を期待していたのですがそこまでは確認が難しく、M51やM33等のフェイスオン銀河もうっすら腕が分かる程度で、オリオン座の燃える木も観望会で覗かせてもらったBlanca-102SEDビノよりも薄い様に感じられ、全体として見える事は見えるがコントラストが淡い印象です。ただM82は淡いながらも内部構造が視認出来、かみのけ座を流し見するといくつも銀河が飛び込んできて形状もエッジオンかそうでないかなどはすぐに判別できる見え味で、35cmドブにはやはり及びませんが、25cmの存在確認のレベルからは一歩上の観望が出来るようになりました。

集光力は主鏡の面積に比例しますので、双眼望遠鏡はどの程度上の口径の通常の望遠鏡の集光力と同じかと言えば、双眼望遠鏡の口径の半径をr、通常の望遠鏡の口径の半径をxとすれば、

・πr2×2=πx2

より、

・x=r×√2

となりますので、双眼望遠鏡の√2倍の口径の通常の望遠鏡と集光力はイコールとなり、20cmの双眼望遠鏡であれば約28cmの望遠鏡の集光力と同じ事になり、自分が観望会で見た35cmドブの単眼での見え味には及ばないのはある意味当然と言えます(28cmと35cmでは集光力は1.6倍差があります)。

但し通常の大口径ドブで双眼視するには双眼装置が必要で、更に低倍率を出す為にはリレーレンズが必要になったり、リレーレンズを使わないでバックフォーカスを大きく引き出すとなると斜鏡の大型化が必要になったりしますので、双眼望遠鏡に比べると光量をロスする要素が増える点を加味すれば20cmの双眼望遠鏡は30cm程度のドブに双眼装置を使った場合の見え味と同等になっている可能性もありそうです。また大口径シュミカセに双眼装置の組み合わせは一見お手軽に等倍観望が出来るように思われますが、口径を求める程焦点距離が長くなる為、反射双眼の様な低倍率広視野を得るのは難しく、この部分が反射双眼の大きなアドバンテージと言えるでしょう。

また反射双眼の最大の弱点(?)でもある裏像である点は、DSO観望に於いてはフェイスオン銀河や形状が特徴的な星雲など写真で見慣れた天体は少し違和感を感じる事もありますが、個人的にはアポ屈折に天頂ミラー、双眼装置を使う惑星観望などは裏像である事は全く気にしていませんので、こちらもそこは割り切って使っています。

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今回初めて反射双眼を自作して痛感した事は双眼望遠鏡は小口径でも大口径でも左右の像を一致させる際に求められる視軸の精度(許容されるズレの小ささ)は変わらない点で、よく考えれば当たり前ではあるのですが、口径が大きくなれば指数関数的に鏡筒が重くなるので姿勢変更によるたわみの差によって生じる視軸のズレ(量としてはコンマ数ミリ?)を抑える事は相当困難となり、そうはさせないノウハウは色々あるのだろうとは思いますが、大口径で反射双眼を成立されている方々は正直常軌を逸している(褒め言葉)とすら感じます笑

自分もこのBINOの構築途中でこれは完成しないのでは?と頭を抱える曲面に何度も遭遇し、双眼望遠鏡構築の難しさはパーツをあらかた集め切って最終形態に近いレベルに仕上げないと双眼望遠鏡として機能するのか(視軸が実用レベルで維持できるのか)最終的に判断できない点で、ここが無理となればそれまで集めたパーツが全て無駄になる恐れもあり、戦々恐々としながら最終的には完成に持って行けてホッとした、安堵したと言うのが正直な思いです。

見え味に関してはもう少し銀河(特に暗黒帯)が見えたら嬉しかった思いはありますが、自分の体力で無理なく運用できる重量、所有する小型自動車で無理なく運搬出来、室内保管時に邪魔にならない体積、手動微動が可能と言った点でこれ以上の口径の双眼望遠鏡の自作、運用は自分には無理と思えますのである意味自らの限界に挑んだBINOと言え、それでもストレスを感じずに使える完成度に仕上げられた点はとても満足しています。またトータルで切断や接着等の一切の加工無しに完成出来た点も可逆的な改造を好む自分的には満足度を押し上げているポイントとなっています。

制作期間が構想から2年程掛かっただけに想い入れの深い機材となりそうで、今後の我が家のDSO観望の切り札としての活躍を期待しています。

AstroStreet SWA32mm [天文>機材>アイピース]

焦点距離32mm、見掛け視界70度の2インチ広角アイピースで恐らく笠井のSWA32mmと同じ製品かと思われます。賞月観星のSWA原点シリーズも中身は同じではないかと予想するのですがこちらはツイストアップ見口が装備され個人的には単なるゴム見口より好みなのですが重量と鏡胴径が若干嵩む模様で、今回は双眼での使用が前提で少しでも軽いものが欲しかった事情から最安値だった事もありAstroStreet扱いのものを選びました。

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何故似たようなスペックのUF30mmを持っているのにこのアイピースが必要になったかと言えば、双眼望遠鏡用で使用している笠井の31.7mm径MC天頂プリズム(改)でより低倍率広視界を得る為に、2インチアイピースのバレルを細工する事で直結出来ないかと考えたのがきっかけで、バレル先端までレンズが詰まっているUF30mmには一切改造が施せないのでこの部分がスカスカと思われたこのアイピースに白羽の矢が立ちました。

天頂プリズム側はアイピースホルダーを外すとM42のオスネジが出てくるように作りましたので、かつて36.4mmのねじ込み式のアイピースがありましたが同様にこれをM42ねじ込み式に改造する事でアメリカンサイズの限界を超える視野の広さを目指し、このアイピースのバレルを外すとM48のオスネジになっていた事から、そこに42mm→48mmステップアップリング、M42メスの継手リングを取り付ける事で形にする事が出来ました。

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このアイピースは2インチで可能な最大視野を確保するスペック「ではない」事が逆に奏功し、M42のリングの内径とこのアイピースの絞り環径がほぼ同じでケラレが発生しない、M42のねじ込み式としては最大の実視界を確保出来るアイピースとなっています。但しこの方法ではダイアゴナル側の射出口径不足によるケラレが発生する可能性がある為、ダイアゴナルとアイピースの距離を極力(30mm程度)開ける事でこれを回避しています。

尚この状態から更にM42オス-36.4mmオスの変換アダプターを接続すれば36.4mmのねじ込み式アイピースとして使う事も恐らく可能です。上の写真の状態で340gとXW20より軽い位ですので、36.4mmねじ込み式に対応したダイアゴナルをお持ちの方には使えるアイピースの一つの選択肢として有用かも知れません。

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UF30mmと比較するとミニボーグ50-BINOでは良像範囲がUFが9割に対してSWAは7割程度と差がありますが、これがF5.6のミニボーグ71FL-BINOでは最周辺までほぼ点像、当然よりFの長い他の双眼望遠鏡でもほぼ100%の良像範囲で正直周辺像は余り良くなさそうな印象を持っていたのでこの結果は意外でした。SWAはレンズ枚数が少ない事もあってヌケが良い様に感じられ、癖の無い気持ちの良い見え味で安価な中華広角アイピースに抱いていたイメージを払拭する程の良質な見え味にショップの「自信を持ってお勧めする」との宣伝文句にも思わず納得です。

国際光器 Fujiyama HD-OR12.5mm その2(見え味編) [天文>機材>アイピース]

このアイピースと笠井のHC-Orは設計は同一かも知れないと前回推察しましたが、HC-Orと比べてピント(絞り環)位置が対物寄りでピントが出し易い事、また脱落防止溝が無い点が個人的に使い勝手がとても良いのでその後2本目を購入しました。

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双眼での木星の模様の見え味に関してはHC-Orと谷オルソの中間位かな?と言う印象ですが、ただ正直あっても「かも知れない」程度の差で、既にディスコンのHC-Orへの思い入れ補正が掛かっている疑いも否定できず、正直まともにとても良く見えるアイピースで文句を付けるような要素はありません。

手持ちの12mmクラシックアイピースの中ではリファレンス的な堅実アイピースと言ったところで、プローセルならMeade SP、アストロプランならタカハシLE、これらに並ぶアイピースとしてアッベならHD-ORと安心感、信頼感を持って使える位置付けの純国産アイピースとなっています。

中華製のプローセルも正直良く見えるのですが、製造品質面でやはり国産アイピースは及ばない印象で、最近の中華アイピースも雑さはかなり無くなってきましたが、それでもこのアイピースの様な上品さを感じる事は個人的にありません。古き佳き国産クラシックアイピースの造りの真面目さが残っている現行品では希少なアイピースだと思います。

ところで先日同じく希少な国産クラシックアイピースとして現存していたタカハシのAbbe、LEシリーズがディスコンのニュースが突如流れました。両者ともとても評判の良いアイピースなだけにとても驚きましたが、自分的にはこのニュースを見てかつて笠井のHC-Orがディスコンになった時の状況を思い出しました。これは販売者側の判断ではなくOEM元の都合が原因ではないかと考え、当時HC-Orと並んで手に入り易い国産アッべとして認知されていた谷オルソにも影響があるのでは?と感じ谷オルソを何本か急遽購入しましたがやはりその後まもなくディスコンとなってしまったのです。

タカハシAbbeとHD-ORではスペック面で必ずしも同一ではありませんが、同時期に販売開始された(BORGやサイトロンと共に)事からOEM元は同じメーカー(大井光機)ではないかと個人的に推測しているのですが、それであれば次はHD-ORが危ないのではと思わなくもありません。谷オルソは現行品だった頃は非常に地味な存在で、現代風のアイピースが市場を席巻し始めた当時では見向きもされない部分すらありましたが、ディスコンになった後によくある事ですが国産アッべの良さが再評価され、中古相場が急騰しプレミアが付く程になった経緯を見ていますので、正直谷オルソよりHD-ORの方が国産アッべとしての完成度は高いと感じていますので、ディスコンともなれば同じように再評価される可能性は十分にあり、買い煽りではありませんが、現行品で手に入る内に興味のある方は早めに確保した方が良いのかも知れません。

タカハシのニュースを見ると後継製品を鋭意開発中、ともなっていますので国産アッべの灯が消えない事を祈ります。

自作 口径3cm実視界10.5度対空正立ファインダー [天文>機材>ファインダー]

以前自作した口径3cmの広角対空ファインダーは重宝していたものの、自作方法が切断、接着と言った不可逆な強行手段を用いた事に微妙に不満を抱いており、全面的に作り直してみたのがこちらです。

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今回はパーツは全てネジによる接続で、加工の類は一切行っていません。構成は以下の様になっています。

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《フード部》
・M42-M37ステップダウンリング
・M42延長筒15mm
・M42延長筒30mm

この一見対物レンズに見える部分は全てフードです。ファインダーは自分にとっては天体導入の要であり、この対物レンズが曇ると導入不能となってしまうので曇り防止の為M42の延長筒で長めのフードを構築しました。

《対物レンズ部》
・M37-M42ステップアップリング
・M32-M37ステップアップリング
・MoreBlue FG004-ガイドスコープ(対物レンズ部分)
・M30-M42ステップアップリング

MoreBlueで取り扱いされている口径30mm、焦点距離130mmのガイドファインダーの対物レンズ部分を使用しています。接眼側はM30、対物側はM32のメスネジが切られており、それぞれステップアップリングでM42に変換しています。

《合焦機構》
・M42延長筒10mm
・M42全ネジアダプター10mm
・MoreBlue TP552-M42止めリング

このファインダーのピントはこの部分のM42の延長筒のメスネジとM42オスの全ネジアダプターとのねじ込みによる伸縮で調整しています。ピントが決まったら止めリングでピント位置を固定します。

《台座兼回転装置》
・BORG M42回転台座【4520】

以前はしゅう動による鏡筒回転でスムーズさに欠けるところもありましたが、今回はきちんとした回転機構が設けられており、鏡筒全体のスムーズ且つ正確な回転が可能となりました。この回転装置の前後のM42ネジのピッチはP1とその前後のパーツのピッチ(M42P0.75)とは異なるのですが気にせず接続しています。

《ダイアゴナル部》
・M28-M42ステップアップリング
・WO 31.7mmNew90°正立プリズム(本体部分のみ)
・M28-M42ステップアップリング

WOのヘリコイド付き正立プリズムのヘリコイドとバレルを外すと共にM28のメスネジが切ってあるので、そこにM42に変換するステップアップリングを装着しています。ここも恐らくピッチが異なりますが、ステップアップリングは根元までぴったり接続出来ています。

《アイピース部》
・M42-M39全ネジアダプター
・M42延長筒10mm
・M37-M42ステップアップリング
・SWA-27mm(笠井EF-27mm相当)

アイピースのバレルを外すとM37のメスネジが切ってあり、ここに変換リングを介する事でダイアゴナルと直付けしています。ここでアイピースのケラレを抑える為に可能な限りダイアゴナルとの間にM42の延長筒を挟む事で、以前のファインダーと同じ対物レンズ、ダイアゴナルを使用しながら約10.5度のより広い実視界を確保する事が出来ました。

このアイピースは恐らく笠井EF-27mm相当品と予想され、この状態で見掛け視界は約50度、8割以上の良像範囲を確保でき、プローセルの様な像の硬さが無く、目位置にも寛容で覗き易く仕上がっています。倍率は約4.8倍となっています。

《ファインダー脚部》
・MoreBlue FG310-ビクセン規格80mmファインダーアリガタ
・ビクセン 微動雲台
・MoreBlue FG310-ビクセン規格80mmファインダーアリガタ

鏡筒と微動雲台の間にはMoreBlueのファインダーアリガタを介して後方にオフセットさせる事で、全体をコンパクトに折りたためるようにしています。微動雲台によるファインダー調整は一般のファインダーのネジ3点による調整と比べると操作が直感的で圧倒的に合わせ易いと感じます。

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重量は890gと5cmファインダー(830g)より重くなってしまいましたが、あらゆる操作性がこちらが上回っており、何より実視界の広さを優先させたファインダーでしたので本末転倒と言う訳ではありません。

小口径ファインダーは見える星が暗くなっても、その分視野が広ければ明るい星が視界に入り易くなるのでスターホッピングによる星の辿り易さと言う点では5cmファインダーと変わらないと個人的には感じ、むしろ一回の移動(ホップの)量を大きく取る事が出来る事による導入速度の向上のメリットが大きく最近は5cmファインダーは殆ど使わなくなりました。

勿論3cmでは導入対象そのものが視認し辛い、もしくは見えない弱点がありますが、星図にSkySafariを使うようになってからはある程度対象に近づけば望遠鏡側の視界で詰めの導入が継続出来る様になった事でその弱点を補えています。

防寒対策 その2 [天文>機材>その他]

以前の防寒対策で、上半身は超極暖ヒートテック→ウラモコトレーナー→ウルトラライトダウンベスト→ダウンジャケットの重ね着でかなり耐寒出来るようにはなったのですが、それでもマイナス5℃を下回る気温下では長時間の観望は辛く感じて更に一歩防寒対策を推し進める事になりました。

《ユニクロ ウルトラライトダウン コンパクトジャケット》
ユニクロのウルトラライトダウンベストが軽くて暖かく非常に気に入っていましたが袖が無いので腕が寒くなり、袖のある服を重ね着しようかと考えた挙句、そうだ長袖のウルトラライトダウンを重ね着すればダウン3枚重ねで最強じゃないか!と思い至り買い増ししたのがこちらです。

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ウルトラライトダウンベストのサイズがXL、アウターのダウンジャケットが3Lだったので、その間に着るこのダウンはXXLとしましたが(身長180cm、体重78kg)この選択が見事にハマり、格段に暖かく過ごす事が出来るようになりました。これでも-10℃を切ると長時間は辛くなってきますが、ベランダなどでの短時間の観望ではウルトラライトダウン2枚重ねの上に普通の冬ジャンパーを羽織ればこの寒さでも十分耐えられるレベルになりました。

《Smartwool マウンテニアリング》
靴下は適当な毛糸の靴下を履いて、足元カイロも入れていましたが、やはりこれも不十分に感じ、本格的な登山用の靴下を物色して選んだのがこちらです。

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メリノウールの靴下を履くのは初めてでしたが、非常に柔らかい感触でクッション性があり、とても履き心地が良いものです。保温性も高く感じ、登山用グッズに関しては全くの素人なので極力スタンダードな定番商品を選んだつもりですが文句の付けようはありません。普段履いている靴は27cmなのでこの靴下のサイズはLを選びましたが丁度良く、この靴下を履く時は冬靴は28cmのものを履いています。


笠井 31.7mmMC天頂プリズム [天文>機材>ダイアゴナル]

双眼望遠鏡用のダイアゴナルとしてWOのヘリコイド付き正立プリズムを重宝していましたが、より広い開口径、より長いストロークのヘリコイドが欲しいとあれこれ欲求が高まった結果ダイアゴナルの自作に思い至り、そのベースとなる素材として選んだのが今回の天頂プリズムです。

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この天頂プリズムを選んだ理由としてまず公称63mmの短い光路長、マルチコートされたプリズムで光学性能にも拘っていると思われた点、そして何よりスリーブとバレル部分を取り外してステップアップリングを取り付ける事で機能拡張(自己責任)が可能な部分でした。

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接眼側(上画像左側)のスリーブを取り外すとM34のメスネジとなっており、対物側(上画像右側)のバレルを取り外すとM30のメスネジとなっています。

実はこの天頂プリズムに行き着くまで二つ程違うダイアゴナルを試したのですが、外したネジ径に適合するステップアップリングを見つけられなかった事で採用には至らなかった経緯があります。

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ネジピッチは恐らくP1と思われますが、P0.75のステップアップリングが問題無く取り付け可能で、それぞれM42にステップアップする事で数多のM42パーツが自由に取り付け可能になりました。ハウジングは樹脂製ですが硬質で強度的にも問題は感じません。

・使用例1
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接眼側にM42のヘリコイドを取り付けたケースです。対物側はこの場合はバレルを外さずフィルターネジに双眼装置用のバロー(+バレル延長筒)を取り付けた状態です。

・使用例2
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このケースは2インチ接眼部に取り付けられるように対物側に2インチ-M42アダプターを装着、更にM42の回転装置を取り付けてダイアゴナルのスムーズな回転を実現しています。接眼側はケラれないぎりぎりの長さのM42延長筒を取り付けています。

購入状態のこの製品の評価としてはごく普通の天頂プリズムと言ったところですが、性能に不満が出るところも無く、コストパフォーマンスは高い良質な製品と感じました。


ビクセン 2倍バローレンズ31.7DX(Mk-V双眼装置用バローに転用編) [天文>機材>バローレンズ]

ブランカ102EDPMk-V双眼装置+12mmアイピースで観望する場合、双眼装置に組み合わせるバローの選択をMeade2xバローにした場合拡大率が約3.3倍で倍率が約309倍となりやや高過ぎで、これより一段拡大率を下げるとなると笠井のBS双眼装置用2xバロー使用で拡大率約2.2倍から倍率が約206倍とこれではやや下がり過ぎで、この間の倍率が欲しいと更なるバローを探し求めて見つけたのが今回のバローです。

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但しこれまでMk-V双眼装置に取り付けるバローは31.7mm径、もしくは2インチのフィルターネジにねじ込めるものしか使えず、今回のバローのレンズ(バレル)部分のネジはフィルターネジでは無かった事からどう取り付けるかを思案した結果、M42のアイピースアダプターにこのバレル部分を取り付け、変換アダプターを介して双眼装置側の2インチフィルターネジに取り付ける方法を思い付きました。

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下段のパーツは左から、M48オス-M42メス変換アダプター、M42オス-M42オスアダプター、そしてM42メス-31.7アダプターとなっています。バローの取り付けはイモネジを使用します。

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これがパーツを組み合わせた状態、

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これが双眼装置に取り付けた状態、

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倍率を稼ぐ為、ダイアゴナルのミラーに接触するかなりぎりぎりまでバローの先端を伸ばしています。

拡大率を例によって方眼紙で実測してみます。念の為以前測定したバローも測定し直してみました。

<<バロー無し(等倍)>>

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視野の直径は約51.4mm。

《笠井BS双眼装置用2xバロー》

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直径は約22.3mm。よって拡大率は51.4/22.3=約2.30倍

102EDP+12mmアイピースでは倍率約215倍。実はこのバローのみでは102EDPではぎりぎりピントが出ない為、短い延長筒を間に挟んだ関係で前回より少し倍率が上がっています。

《ビクセンDX2倍バロー》

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直径は約20.5mm。よって拡大率は51.4/20.5=約2.51倍

102EDP+12mmアイピースでは倍率約235倍

《Meade2xバロー(日本製)》

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直径は約15.4mm。よって拡大率は51.4/15.4=約3.34倍

102EDP+12mmアイピースでは倍率約312倍

となりました。自分の主観では102EDPの木星模様を見る時の適性最高倍率(見易さを損なわない範疇で出せる最高倍率)は240倍程度と考えていたので、今回のバローはかなり良いところの倍率を出せるようになり、今後この鏡筒での常用バローと恐らくなると思います。それでもMeade2xバローとの拡大率の差はまだ大きいと感じるので、この間を出せるバローの更なる探索はまだ続きそうです。

Series 500 Plossl 12.5mm [天文>機材>アイピース]

典型的な格安中華アイピースと言った趣のこのプローセルですが、twitterのフォロワーさんのシベットさんのブログLambdaさんのブログで好評価されていて関心が湧き、例によって12.5mmがラインナップに存在した事から取り寄せてみました。Amazonで「Plossl 12.5mm」で検索するとこのアイピースが出てきます。

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本体の造りはセレストロンのOmniプローセルやGSOプローセルに比べると若干雑ですが、レンズにキズやゴミの混入などは見受けられず、製造品質としてはまずまず及第点と言えるレベルです。

このアイピースの海外での評判はそれ程多くはありませんでしたが、印象に残ったのは見掛け視界が狭いと言う話で、惑星用として使う分にはそこは気にはならないポイントで、むしろ見掛け視界が狭いアイピースは周辺まで良像で中心像も優れているものも少なくない経験から、逆に期待するところもありました。

しかし届いた12.5mmを覗いてみてびっくり、想像より、と言うより一般的なクラシックアイピースより広い見掛け視界を持っており、見比べるとSterlingPL(55度)と同等の広さがありました。この後同じSeries500のPL30mmを手にする機会がありましたが、こちらは事前の評判通り一般的なPL30mmよりは大分狭い見掛け視界で、焦点距離によって見掛け視界が大きく異なるある意味中華製らしい統一性の無さが感じられました。これだとシリーズ一律の評価はもしかすると難しいかも知れません。

12.5mmに関して惑星観望に使用した第一印象は評判通り、自分が予想したより良く見えると感じました。中華アイピースにありがちな迷光がそれ程目に付かず、バックグラウンドが暗く保たれており、中心像のシャープネスもOmniプローセルやGSOプローセル、ややもすると国産アイピースにも引けを取りません。

周辺像に関してはSterlingPLと崩れ方の性格が違うと感じたので、ミニボーグ45EDII(F=7.22)を使い、室内環境で崩れ方を比べた結果が以下です。また見掛け視界55度クラスの準広角クラシックアイピースと言う部分で共通するニコンの顕微鏡接眼レンズのE20xも比較対象に加えてみました。

 Series 500 PL12.5mm Sterling PL12.5mm     E20x    
 歪曲収差 
 非点収差 
 良像範囲 80%95%75%
 周辺減光 


歪曲収差に関しては顕微鏡接眼レンズのE20xが圧勝で手持ちの全12mmアイピースの中でもトップクラスの収差の少なさでこれに比べると劣るもののSeries500はこの見掛け視界の天体用アイピースとしては歪曲は少ない部類のように感じます。SterlingPLは比較的収差が大きく、木星などが視野周辺に位置すると楕円に歪みます。

その一方で非点収差、ここでは視野周辺まで点像を維持出来るかの性能を示しますが、この性能ではSterlingPLが視野最周辺までほぼ点像で他を圧倒しています。Series500とE20xはどっこいどっこいで視野周辺では点像にはなりません。良像範囲もSterlingPLが広く、また周辺減光に関してはSeries500は視野環がややはっきりしない見え味と感じました。

総評としては周辺像に強いのはSterlingPLで歪曲を多少犠牲にしても星像を崩さない点で準広角の天体用アイピースとしてかなり優秀で、流石に中華アイピースの中でも気合を入れて作られているだけの事はあると感じました。E20xは歪曲だけ突出して優れているのはやはり顕微鏡用の性格かも知れませんが、天体用でもこれを活かした使い道を見つけられれば輝ける接眼レンズと思います。Series500はこれらに比べると標準的な準広角アイピース(12.5mmに関しては)と言った趣ですが性能面は概ね良質と言え、何より圧倒的にリーズナブルな価格を考えれば買っても損をしないアイピースと言えると思います。

惑星デジタルスケッチ 2021/12/09 [天文>デジタルスケッチ]

自分の惑星観望は木星土星火星がメインで、金星については夏場はベランダから見える位置に来ない点、冬場は見えても低空でシーイングの悪い時が多いのでこれまで積極的に狙う気分になれなかったのですが、日没直後であれば高度もまずまずで金星は明るさがあるので観望に耐えるだろうと久々に望遠鏡で狙ったところ予想以上に大きく見応えがあり、内惑星ならではの満ち欠けする様子を観察するのも存外面白いと感じ、タイミングがあれば狙う事も最近多くなってきました。

それでもやはり壊滅シーイングの場合が圧倒的に多く、中々美しい姿と言うのは拝めなかったのですがこの日は相当にシーイングが良く、ここまで立派な金星の姿を拝めたのは恐らく初めてで、これは記録に留めたいと急遽デジタルスケッチしてみたのがこちらです。

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実際はもっと大気の揺らぎが見えていましたが、それを脳内でキャンセルしたようなスケッチとなっています。

次に木星を狙ってみましたが高度が高く更に良好なシーイングでこちらもスケッチを敢行しました。

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視直径は大分小さくなってきたように感じましたが、それでも口径9cmながら見えている模様はTSAとそれ程差は無いのでは?と思わせる詳細を見る事が出来ました。

今回使用したアイピースはLOMOのФото K20xと言うアイピースで、ФотоはPhotoのロシア語である事から撮影用の顕微鏡用接眼レンズかと予想しています。

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しかし眼視で使ってみても全く普通に使え、と言うより無印のK20xと見え味に差異を感じず、即ち非常に惑星も良く見える接眼レンズです。外から眺める限りでは光学系は全く同一に見えない事も無く、これに関しては2種類持っていても仕方無いかなと思う程で、どちらかは手放す事になるかも知れません。

Tマウント経緯台 その2(プチ改良編) [天文>機材>架台]

ユーハン Tマウント経緯台の使い勝手を幾つか良くしてみました。

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《軸径6mmフレキシブルハンドル取り付け改良》
ブランカ150SEDをこの架台で使用している時純正の微動ハンドルの長さが短く運用に支障を来たしていた事からより長いハンドルを取り付けられないか検討しましたが、この経緯台の微動ハンドル軸径はφ10mmで多く市販されているφ6mm径に適合する微動ハンドルを使う事が出来ず、軸径を変換するアダプターがどこかに無いものかと探してヤフオクで見つけたのがこちらの商品でした。

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bach_iijimaさんが出品されている「フレキシブルハンドル用アダプター」と言う商品で、このアダプターは本来8mm径を6mm径に変換するアダプターなのですが質問欄からこれを10mmから6mmに変換出来るように改造出来ないかと藁にもすがる思いで伺ったところ快諾して頂き、このお陰でビクセンの30cmのフレキシブルハンドルを取り付けられ、長い鏡筒でも快適に運用出来るようになりました。

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《カウンターウェイト搭載改良》
この経緯台は片持ちフォーク式でウェイトレスでもかなりの重さの鏡筒を運用出来るものの、鏡筒の形状によっては振り回すとバランスが不安定になる事もあり、観望会などで使用した時の万一の事故を防ぐ為、カウンターウェイトを付けられるように改良を施すことにしました。

何処にウェイトシャフトを取り付けるかを検討した結果、この経緯台にはアクセサリー取り付け用のネジ穴がフォークアーム部分に設けられており、これを利用してウェイトシャフトを取り付ける事でウェイト搭載を可能としました。位置的にも理想的です。

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このウェイトシャフトも別の方がヤフオクで出品されていた「スカイメモS用ビクセン互換ウェイトシャフト」と言う商品でシャフトの両端にM8のメスネジが開いているのが特徴で、シャフト径はφ20mm(長さ20cm)でビクセンのバランスウェイトが装着出来ますが、現在は出品されていない模様です。

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《水平動クランプレバー干渉対策》
この経緯台に取り付ける機材によっては水平動のクランプレバーが機材を干渉するケースがしばしば生じた事から、クランプをM8の蝶ネジに交換する事で回避する事が出来ました。

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Kenko ASTRO LPRフィルター Type1 [天文>機材>フィルター]

twitterのフォロワーさんのあぷらなーとさんが世に広めたアクロマート鏡筒にデュアルナローバンド系のフィルターを組み合わせるとアポ並みにシャープな像が得られる撮影技法(参考記事はこちらこちら)を眼視にも適用出来ないかと以前観望仲間の方が所有されていたSE120にQBPフィルター(+バリアブルポラライジングフィルター)の組み合わせで月を見たところノーフィルターに比べて格段にシャープな像が得られる事が確認出来て、この場合色合いが大きく変わりますがその点に眼を瞑れば木星の表面模様などをよりシャープに観望する手法としては有用では無いかと考え、QBPを一種のプラネタリーフィルターとして使えるのではないかと興味を持っていました。

その後サイトロンから彗星向けと謳われたComet BP(CBP)フィルターが発売され、こちらはQBPの2つの帯域に比べより短い波長を通す3つ目の帯域を持っており、QBPより色表現はより自然に近いとの事から眼視にはこちらが向いているかも知れないとこちらも興味を持っていました。

その後新たな惑星観望用の鏡筒としてブランカ102EDPを入手しましたが、この時あぷらなーとさんからこの鏡筒がC線とF線が色消しとなっている古典的アクロマートに似通った設計となっており、デュアルナローバンド系フィルターとの相性が良さそうとの指摘を受けました。これは自分には全く思い付かなかったアイデアでしたがこれによりQBPやCBPの導入をより本気で考えるようになりました。

そんな折ツイッターを眺めているとシュミットさんからケンコーのこのフィルターが9割引近い価格でセールされているとの情報が入ってきて何気に特性を見ると何と一見CBPに似通った特性に見えて、これを102EDPと相性の良いプラネタリーフィルターとして使えないだろうかと急遽検討する事になりました。

そこでQBP、CBP、ASTRO LPR Type1(以下LPR T1と呼称)の透過特性グラフの横軸、波長(nm)のスケールを合わせてみました。

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LPR T1のグラフには代表的なスペクトル線の波長に相当する縦線を入れてみました。主なスペクトル線の波長は以下の通りです(HOYAのHPより抜粋)。

 波長(nm)スペクトル線光源 
 706.519 r線(赤色ヘリウム)He
 656.273 C線(赤色水素H
 589.294 D線(黄色ナトリウム)Na
 587.562 d線(黄色ヘリウム)He
 546.074 e線(緑色水銀)Hg
 486.133 F線(青色水素H
 435.834 g線(青色水銀)Hg
 404.656 h線(紫色水銀)Hg

この表を見ると古典的アクロマートが水素由来のC線とF線で色消しとなるように設計されていた理由が分かる気がします。QBPやCBP、LPR T1も光害の元になる水銀、ナトリウム由来の光源を概ね通さない特性になっている事から光害カットフィルターとしても機能する事が分かります。

3つのフィルターの特性の違いを見るとQBPはバンドパスの帯域が他の2つより狭く、より星雲の光に特化した設計で、CBPはプラス彗星の輝線(CN, C2, C3)を通す設計となっています。これに対しLPR T1は概ねCBPとバンドパス領域が近いですが、短波長側のバンドパスはやや長波長寄りでバンドパス幅も透過率も幾分低い設計となっています。これはQBPやCBPが基本撮影向けの設計なのに対し、LPR T1はより眼視用に振った特性と言えるかも知れません。

LPR T1はQBPやCBPに比べると最大透過率が若干低いですが、フィルターの特性としては近い効果が得られる事が期待出来、何と言っても価格が爆安であった事から衝動買いしてしまったのでした。

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入手後早速ブランカ102EDPにこのフィルターを付けて木星を見たところ全体の色調は先述のSE120+QBPで見た時とほぼ同じ(青緑色)で、3つ目のバンドパス領域が増える事による色調の変化は殆ど感じられませんでした。表面模様の見え具合に関してはNEBやSEBなどの模様のコントラストが明らかに向上しており、これはこのフィルターの黄色(d線)を通さず赤色(C線)を通す特性によるものと推測され、もし大赤斑が出ていればこれを見易くする効果も期待できます。

次に半月に向けてみたところフィルターを付けた状態では月のクレーターのエッジや高低差が低い部分の細やかな凹凸がよりはっきり見える気がします。ノーフィルターに比べて見えないものが見えてくる感じでもありませんが微細な構造が一見見易く感じ、これはシャープネスが向上していると言っても差し支え無いのではと言う印象で、これはこの鏡筒の球面収差図から読み取れる、C線とF線が色消しになっている反面d線がやや離れている特性とこのフィルターの相性の良さが出ている様にも思えます。尚このフィルターはg線を幾分通す設計ですが、眼視においては良くも悪くも見え味に影響していない様に感じました。

またこのフィルターの特性であれば月惑星だけではなくDSO観望におけるネビュラーフィルターとしても機能するのではないかと予測しましたが、光害地(SQM値18.7位)の空でM42を眺めてみたところノーフィルターより明らかに星雲の広がりが視認し易く、比較用によりバンドパスの狭いAstronomikのUHCとも見比べたところこちらはより星雲がもわっと広がって見えてやはりこれはこれで効果が高いと思いましたが恒星が暗くなるのに比べるとLPR T1はノーフィルターとUHCの中間的な描写で恒星の明るさと星雲の明るさのバランスが良く、ネビュラーフィルターとしての効果も十分に感じられました。

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古典的アクロマートがC線とF線の色消しを狙った設計が多いと言われるのはC線とF線に星由来の光を多く含むからと仮定して、この2線以外をカットするデュアルバンドフィルターとの組み合わせるこのアイデアは効率的に星の光を抜き出し、そしてそれらを合成してもピントがズレていないと言う効果が相俟って、アクロマート(もしくは同様の設計の廉価なアポクロマート)屈折からシャープな星像を最大限に引き出すテクニックとして、撮影は元より眼視においても有用な使用方法と言えるかも知れません。

この様な効果を狙ってデュアルバンドフィルターを選ぶ時、中でもバンドパス幅の狭いIDASのNB1、これよりはやや広いQBPも効果が高いと思われますが、眼視においてはOIIIよりUHCが見え味のバランスの良さで好まれるシーンもある様に、よりバンドパス幅の広いCBPや今回のフィルターも決して悪くは無い選択だと思います。重ねて注意点として眼視では色調が大きくシフトしますが(月も木星も青緑色になります)条件がハマれば高い効果が見込めるフィルターだと思います。因みに日本製です。

自作 Kepler 12mm(単レンズアイピース) [天文>機材>アイピース]

今回はセレストロンのSR4mmを流用したケプラー式のアイピースを自作してみました。

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ケプラー式とは言ってみれば凸単レンズでレンズ構成は1群1枚、これ以上簡略化のしようが無い究極シンプルなアイピースです。但し見掛け視界は10度程で、長いF(F30以上)の鏡筒で無ければ実力を発揮できない相当にピーキーな設計(?)ですが、個人的な運用では双眼装置にバローを併用するのでF値の問題はクリアー可能で、ごく狭い見掛け視界も惑星観望に限定すれば実用可能となり、この究極に少ないレンズ構成でどの様な惑星像を見せてくれるのか、期待と不安が入り混じりながら自作方法を模索していました。

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以前ボールレンズではなくケプラー式のアイピースの自作を考えた際、ドロンドをプローセルの半分を使って自作したように、単レンズならラムスデンの半分を使う事で自作できないかと検討したものの、二系(二群)からなる光学系の合成焦点距離をf、前群レンズの焦点距離をf1、後群レンズの焦点距離をf2、レンズ間隔をdとすると、

f=f1xf2/(f1+f2ーd) ・・・①

の式が成り立つ事は以前書きましたが、プローセルの様に前群と後群がほぼ接している場合はd=0と近似でき、更に前群と後群が同じシンメトリカルな設計であればf1=f2と出来る(前群と後群が同じ焦点距離)のでこれより、

f1=2xf ・・・②

が導かれ、つまり前群(もしくは後群)の焦点距離は合成焦点距離の2倍、例えば6mmのプローセルの半分を使えば12mmのドロンドが出来上がる公算になりますが、ラムスデンの場合通常は一定のレンズ間隔(d>0)が存在するのでラムスデンの半分を使えば倍の焦点距離のケプラーに、とは単純にならない事から狙いの焦点距離の単レンズを調達するならやはりEOから取り寄せた方が早く確実かなと考えていました。

そんな折twitterのフォロワーさんのLambdaさんのブログを眺めているとセレストロンSR4mmの分解記事が目に入り、ここでアイレンズと視野レンズの間に入ると思われるスペーサーの厚みが思いの外薄い(=レンズ間隔が狭い)事に気が付いて、またこのアイピースの実質的な焦点距離は6mmとの事でしたので、アイレンズと視野レンズの設計は違うとの事でしたが、むしろそれであればこのどちらかの焦点距離が12mmに近い可能性があるのではないかとの期待が生じて実際に見て確認したくなりました。

以前よりは若干値上がりした模様ですがそれでも一つ千円以内で入手出来、早速バラすと一見平凸レンズに見える視野レンズ、そして薄い両凸に見えるアイレンズが取り出せました。これらをそれぞれ倍率を確認したところ、視野レンズの方はやや倍率が高かったですが、アイレンズの方はほぼ12mmでビンゴとなり、更に幸運な事にレンズ径が6mmだった事から以前ドロンドを作った時に調達して余った6mm径のスペーサーがそのまま利用出来、視野レンズを外す代わりにこのスペーサー(つや消し塗装済)を入れる事でこの鏡胴をそのまま活用した、ケプラー12mmアイピース自作の見通しが立ったのでした。

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覗いた第一印象は予想はしていたものの見掛け視界の想像以上の狭さで、惑星観望限定としても実用の限界に近く、モータードライブによる自動追尾が必要なのは当然として、我が家のベランダ観望では極軸合わせは適当なのでこれでもじわじわ視野から外れて行きます。木星を300倍弱で見ると視野は木星の視直径の5倍位しかありませんが、良像範囲に関しては合成F30程度ある環境の為か割と視野周辺まで像の崩れは少ない様に感じられました。

肝心の中心像の見え味は全く普通に良く見え、木星を見ても国産アイピースの上位陣に比肩する素晴らしい像で意外過ぎて思わず笑いがこみ上げた程です。個人的にそもそもレンズ1枚で本当にアイピースとして機能するのか?と疑心暗鬼な部分が先入観としてありましたが、ここまで見えてしまうとこれまで多種多様な12mmアイピースを必死に蒐集してきたのは一体何の為だったんだろうと少しやるせない気持ちにさせられました(^^;

但し手持ちの12mmアイピースとの見比べではこのケプラーでもツァイスの接眼に勝てるか?と言えば微妙で木星の模様などはまだツァイスの方に軍配が上がる様に感じます。やはりレンズ一枚では収差補正もへったくれもありませんので複数のレンズを緻密な設計で組み合わせる事で単レンズを上回る、例えば多少明るさを落としてもコントラストを向上させる、もしくは結像性が上がり解像度も高まると言った効果を生み出している可能性もあり、そもそもレンズ(硝材)の種類、グレード、研磨精度などと言った品質面で見え味が大きく左右される事も大いに考えられます。

それでも条件さえ整えれば単レンズでも十分な見え味は提供可能であり、これであれば古の天文学者もそこそこまともな観測は出来ていたのではないかと、レンズの品質に問題が無ければこのアイピースの設計が足を引っ張る事はそれ程無かったのではないかと感じました。

そうとは言えやはりこの超絶狭い見掛け視界や使用条件は観望の妨げとなったであろう事も大いに予想され、このアイピースに慣れていたならハイゲンスなどは正に超広角アイピースと感じられたに違いなく、見え味も大きく変わらないのであればこうした設計、便利なアイピースに置き換わっていったであろう事は想像に難くありません。今回自作は実用性はさておき古典アイピースの発展の歴史に触れられた気がしたのが大きなメリットで、アイピースの奥深さを知る自身にとっての糧となったような気がしました。

SVBONY SV138 31.7mm45°正立プリズム [天文>機材>ダイアゴナル]

ミニボーグ50-BINOを45度対空化したい事情から45度正立プリズムの導入を検討し始め、調べると大きく分けてプリズムハウスが大きい製品と小さい製品の2種類がある事に気付き、プリズムが大きければ広角長焦点アイピースの使用でもケラレが小さいと思われた事からこの系統の製品を更に物色、値段と性能のバランスが良さそうなこのSVBONYの製品に辿り着きました。

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SVBONYは中国の会社ですが、国内で例えれば笠井トレーディングに近いメーカーと言うよりディーラーの雰囲気を纏った会社で、中国にはノーブランドの天文パーツを販売する数多のショップがあり(Amazonでもよく見掛けます)、当初SVBONYもその一つに過ぎなかった印象ですが、恐らく経営者の方が比較的日本の市場に明るく、また天文マニアの需要を分かっている人で、数多の中華OEM天文製品の中からより商品価値が高そうな製品を見つけ出し、仕様の細かいところを使い易いようにカスタマイズして自社ブランドとして販売する事で徐々に日本の天文ファンの間に支持が広がり、今では多くの天文マニアの方にも認知されたブランドではないかと思います。

個人的にはSVBONYは中華天文パーツの品質の向上にも貢献したブランドのように思え、例えばヘリコイドのフォーカサーを無名ショップから購入すると回転にどこかムラがあるのが普通なのに対してSVBONY製品はそうした不具合が殆ど無く、日本人の品質に対する拘りに応える製品を供給し続けた事が(品質向上に取り組んだ他のメーカーの努力もあったかと思いますが)今の地位を築いたように思えます。

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この正立プリズムに関しても総金属製で品質が良く、性能面ではアミチプリズム使用の2インチの90度正立プリズムと比べると高倍率では幾分見え味が落ちますが、個人的に想定していたBINOでの中低倍率用として使用する分には観望に支障が出る事は殆ど無いと思われます。

またプリズムが大きい事で開口径が広く27mm程度あり、TV PL32mm使用でもケラレを感じる事は無く、アイピースの固定方式も31.7mm径の45度正立プリズムでは珍しい真鍮リング締め付け式を採用している点もSVBONYらしい配慮と言えると思います(真鍮リング締め付け式そのものに対する是非はさておき)。

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SVBONY製品の特徴はコストパフォーマンスが高いに尽きると思いますが、逆に高すぎてこれでは同じ土俵で国内メーカーが戦うのは厳しいだろうと心配になるレベルで、HPの日本語が怪しかったり、商品説明に整合が取れてなかったり、アフターサービスの面でもまだ不安な部分が見受けられますが、その点がクリアされれば天文ファンにとっては欠く事の出来ない存在になる可能性も秘めているかも知れません。


ミニボーグ50-BINO その2(45度対空化編) [天文>機材>望遠鏡]

我が家のベランダの幅では椅子を置くスペースが無いので人工芝が張られた床に直に座って望遠鏡を覗く都合上、対空双眼鏡や双眼望遠鏡を覗く場合は45度対空が望ましく、90度対空BINOを椅子無しで無理に覗くと腰を痛めてしまう事情から、ベランダでの稼働率を上げる為まずはミニボーグ50-BINOのダイアゴナルを従来のSC2インチ90°正立プリズムからSVBONYの31.7mm45°正立プリズムに換装する事で45度対空化してみました。

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45度対空モードでは2インチアイピースは使えなくなりますが、BINO用の31.7mm径アイピースも最近充実してきたので(XWA9mmSSW14mmXW20RKE28mm)特に不便になる事はありません。

この45°正立プリズムの光路長が2インチ90°正立プリズムとそれ程変わらない事から最低限のパーツの着脱でピントがそのまま出るので2インチ90度対空モードとの切り替えがスムーズに出来る部分が嬉しい誤算で、45度対空モードでは当初の想定通りベランダでの運用も格段に楽になり、今後稼働率も上がりそうです。

笠井 BLANCA-102EDP [天文>機材>望遠鏡]

小口径アポをFL-90Sに一本化する目的であれ程お気に入りだったFC-100DLを手放したにも関わらず、またしても違う10cmアポを手に入れる事に関しては相当な葛藤がありました。それでも購入に踏み切った動機はこの鏡筒(以下102EDPと呼称)のF11のアポ屈折と言う新製品としては近年稀に見るスペックにありました。

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FC-100DLを手放した大きな理由の一つはF9のフローライトアポと言うスペックがFL-90Sと全く同じであった事からキャラクター(?)が被ってしまい、両方の鏡筒を使い分ける楽しみに自分的に乏しい事がありましたが、102EDPのFPL-51相当と噂されるEDレンズ採用にF11の長焦点の組み合わせであればFL-90Sと住み分けが出来て楽しめそうに感じ、また今の短焦点の写真向け鏡筒が全盛のご時勢にこの様な眼視に特化した長焦点鏡筒をリリースしたメーカーの心意気に応えたい気持ちが購入の後押しとなりました。

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しかし今のご時勢長焦点鏡筒にどれだけメリットが存在するのか、ただ長焦点鏡筒に対する憧れのみで手を出すのも悩ましいものがありましたので、改めて長焦点鏡筒のメリットを考えてみました。

《対物レンズの曲率》
長焦点鏡筒は対物レンズのRを浅く(曲面を緩やかに)出来る、つまり研磨量が少なく済む為エラーを起こし難く、設計通りの性能の出し易さと言う点で有利で、望遠鏡が工業製品である事を考えれば決して無視できない要素と思います。高品質なレンズが製造し易い事で、コストパフォーマンスの高い鏡筒を安定供給できるメリットは大きいと考えられます。

《高倍率適性》
個人的な運用で言えば惑星観望時のアイピースは焦点距離が12mmのものしか使いませんので、鏡筒によって異なる適性倍率はバローで調整して出す事になりますが、長焦点鏡筒であればバローの拡大率を下げる事が出来るので、入射側も射出側も光線の角度が浅く光学系の負担を減らす事が出来、より対物の性能が引き出せて見え味にも反映されると考えられます。

《コントラストの向上》
鏡筒が物理的に長いので迷光を減らし、バックグラウンドを暗くする、対象のコントラストを上げる効果が見込めます。

《ピント深度の深さ》
長焦点鏡筒は焦点深度が深くなり、ピントの合う範囲が広いので、ピント位置が鋭くシビアな短焦点鏡筒と比べると高倍率でのピント合わせが容易になります。

《光軸修正》
長焦点になると光軸がシビアではなくなり、調整難度が低下しますので余り光軸に神経質にならなくても十分な性能が発揮出来るのは光軸を気にし易い人にとっては安心できるポイントです。

《収差補正》
長焦点鏡筒が色収差の面において格段に有利な事は言わずと知られた事ですが、対物レンズのRが浅ければ当然球面収差も少なくなり、短焦点鏡筒では制御の難しい周辺像の収差も大きく軽減出来、Fの長さは七難隠すの格言の通りその他収差補正の面でもあらゆる点で原理的に有利となります。



かつて市場に出回った長焦点屈折の大半がアクロマート屈折である事を考えると、102EDPはFPL-51相当ながらもアポ屈折でありながらこれらの恩恵を享受出来るのが最大の魅力と言っても良く、現在の短焦点アポも非常に優秀ですが、硝材の差をどの程度ひっくり返せるのかがこの鏡筒の見所と言えるかも知れません。

まずは実物を手に入れて外観の印象ですが、鏡筒が長い事は長いのですが商品画像でみるほど長くは感じない、扱い易い範囲で留まっています。それでもFC-100DLに比べると二回り程大きく感じられ、TSAにも近いボリューム感がありますが重量は見た目よりも軽く感じられ、APポルタに載せても無理無く扱える範疇で10cmアポの軽快さは失ってはおらずこの点は少し安心しました。

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純正ポルタではFC-100DLでも厳しかったですのでこの鏡筒を載せるのは正直厳しいと推測しますが、スコープテックのZERO経緯台ならある程度大丈夫では無いかと思います。ただ鏡筒が長いですのでAPポルタで使用してもピント合わせ時の振動はそこそこ出ます。

接眼部は2.5インチのラックアンドピニオンなのですが、正直見た目ほど上質な印象は受けませんでした。ピント合わせでゴリッっと変な感触が伝わる時があり、この接眼部も御多分に洩れず重量アクセサリー搭載時には微動が若干空回りする事もあったりと少し造りに雑さを感じますが、致命的に困る程でもなく何とか及第点の造りと言ったところです。

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実際の見え味について、地上風景では電柱や電線の淵と言った色収差を感じ易い部分でも全く感じる事はありません。星を見ると極めてシャープなエアリーディスクが印象的で、木星の表面模様などはサイドバイサイドで見比べなければTSAとそれ程見え味は変わらないんじゃないかと思わせる点でFC-100DLと比べても遜色無い、10cmアポとしてまず文句の出ない見え味を発揮していると感じます。勿論同等の見え味であればより軽くコンパクトなFCの方が優秀な鏡筒と言えなくもないですが、その一方で価格差は2.5倍ありますので、コストパフォーマンスの点では102EDPに大きく軍配が上がり、長焦点のメリットを遺憾無く発揮している鏡筒と言えると思います。

この様なある種郷愁を誘う長い鏡筒に好感が持てる方には見た目だけでなく性能も備わっており、最高クラスの10cmアポの見え味を出来るだけ安い価格で手に入れたいと考える方にも文句無くお勧めできる鏡筒です。

木星デジタルスケッチ 2021/09/25 [天文>デジタルスケッチ]

この日のシーイングはかなり極上で、大赤斑が見えている木星をスケッチしてみたいと兼ねてから思っていた事から急遽支度をして描いてみました。

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この日はシーイングが止まった時の像は壁に張り付いた絵の様に見えて、大赤斑の中の濃淡やNEB北側のポツポツとした暗斑、大赤斑東側のSEBが二重線に見える様子、大赤斑戸SEBの隙間などかなりの詳細が見えていました。因みに使用アイピースの「OM」は"Own Made"の略で自作アイピースを意味する造語です。

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ここ最近アイピースの性能ばかり気にかけていますが鏡筒、TSA-120の実力の高さを改めて認識した次第で、ここまでの像を提供してくれるこの鏡筒を大事に使おうと改めて感じた次第です。