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Clave 12mm [天文>機材>アイピース]

12mmクラシックアイピースを集めていた中でその存在は知りつつも長年中古市場で見掛ける事が殆ど無かった為入手する事は無理と考えていたこのアイピースを遂に今回手に入れる事が出来ました。

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これまで自分はクラベに関してフランス製の高性能プローセル、と言う以外の事は殆ど知りませんでしたので今回入手をきっかけにどの様なアイピースなのか調べてみました。CNのフォーラムやその他ネットに上がっていた資料から読み取った情報を自分なりに整理、要約すると、まずこのクラベの名前はメーカーを立ち上げたセルジュ・ルネ・クラーベ(Serge-René Clavé)氏の名前から来ており、氏の施設は1937年4月20日に設立、クラベ氏が1988年1月に死去するまで事業が続けられ、1989年にキノプティック(Kinoptik)社に買収されました。その後更に別の会社に事業が受け継がれて2010年過ぎ頃消滅したとの情報がありましたが、クラベのアイピースの変遷を語る場合、キノプティック買収以前(Pre-Kino)か以後かで大別されるようです。

クラベのアイピース設計はプローセルであり、世界で最初に市販されたプローセルらしいです。昨今の安価なプローセルは製造コストを抑える為に前群と後群に同じダブレットを採用した、いわゆる対称型のプローセルと呼ばれるものでこれに対し、クラベは前後非対称のプローセル設計となっておりこれは1953年にフランスの光学エンジニアのジャン・テクスロー(Jean Texereaux)氏によって設計され、彼がフランスのピック・デュ・ミディ天文台の所長であった時にこの天文台用の接眼レンズを製造する業者として選ばれたのがクラベで生産は1954年末に開始されました。

クラベの焦点距離ラインナップは、27mm/31.7mm径は、

3mm/4mm/5mm/6mm/8mm/10mm/12mm/16mm/20mm/25mm/30mm/35mm

50mm径は、

30mm/35mm/40mm/45mm/55mm/65mm/75mm

が存在し、特に50mm径の接眼レンズはピック・デュ・ミディ天文台で惑星観測用に使用されていた事からこの名(Pic du Midi)でも呼ばれているようです。ある意味プロ用の接眼レンズと言えるかも知れません。

クラベは多くのマイナーチェンジが繰り返され、第一世代(50年代?)、第二世代(60年代?)、第三世代(70~80年代?)、Kinoptik以降(80~2000年代)と分かれるのがマニアの認識の様ですが、クラベは外観から製造時期を突き止めるのは中々難しいらしく、判別ポイントとしては第一世代は(テカテカ光る)クローム製のバレルが特徴的で、バレル内がグレーのパウダーコート(反射防止コーティング)されたモデルはクラベ氏が亡くなる以前のものでこれが第二、第三世代、バレル内がラッカー塗装やフィルターネジが付いているものはKinoptikに買収された以降のものと認知されているようです。

これらを踏まえると自分が手に入れたのは第二か第三世代のクラベと推測していますが、持っている2本を見比べてみるとコーティングの色がそれぞれ異なっていたり、内部の細かい違いは自分の想像以上に多いような気もします。

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私見ですが今でこそ安価なイメージの定着したプローセルですが、自分の記憶ではツァイスサイズのアイピースが販売の主体だった頃はH(ハイゲンス)、K(ケルナー)、Or(オルソ)が殆どで、プローセル(PL)の名を前面に押し出したアイピースが販売され始めたのは割と新しい印象で高級接眼レンズと位置付けられているものもありましたが、プローセルが当初この高性能、高級設計のイメージが付与されていたのはクラベやブランドンの存在が大きかったのではないかと推測しています。

造りの特徴的な面としてアイレンズから距離のあるアイガードが備わっており、適切なアイポイントからの観望をサポートすると共にアイレンズを汚れる事を防ぎ、迷光をブロックする役目も果たします。アイレンズの表面はフラットで、視野レンズ側もフラットに見えますが、クラベの非対称プローセルはZeissのA.ケーニヒが設計した視野レンズ側が凸面の非対称プローセルが原型との噂もあり、自分の考えではクラベの視野レンズも凸面になっているのではと予想していましたのでこれは意外でした。もしかすると目に見えないレベルの曲率を持っている可能性も否定できませんが。

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バレル側から覗くと先述したパウダーコーティングが丁寧に施され、各パーツの削り出しも丁寧でトータルの製造品質はかなり良い印象です。また見掛け視界は31.7mm径のクラベのカタログのスペックの一覧を見ると、焦点距離12mmの場合視野環径が10.7mmとなっているので10.7/12×180/π≒51°と計算上なります。

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見え味に関してはやはり手持ちの12mmクラシックアイピースの中でもトップクラスで、解像度、コントラスト、迷光処理何れも高いレベルでバランスの良さを感じさせる、例の12mmランキングでは普通にSランクに入る性能と感じますが、このアイピースの入手と近い時期に発売されたタカハシの高性能プローセル、TPL-12.5mmと見比べると総合性能では僅差でTPLが上回るようにも感じられました。

個人的にはTPLが発売された今、このクラベを(性能面に期待して)追い求める意義は若干薄れてしまったようにも感じますが、間違いなく現在でも第一線級の性能を有しており、この歴史あるアイピースを車で言えばクラシックカーをドライブするような気持ちで観望するのも趣味の楽しみ方として格別なものがあるかも知れません。