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復活のFL-90S [天文>機材>望遠鏡]

我が家で最も古い天文機材、高校時代から使っているFL-90Sですが、FC-100DLを手に入れて以降出番がめっきり減ってしまい、同じF9の2枚玉フローライトと言う点でキャラクターが被っており、より口径の小さいFLを手放す事を何度も考えたのですが想い入れの深い鏡筒なのでどうしてもそれが出来ず、一方最近TSA-120APZポルタで使うようになって格段に使用機会が増え、逆にFCの稼働率が下がっていった事から、ここは思い切ってFCを手放して、更にブランカ70EDTも手放す事で、小口径アポはFLで一本化しようかなと考え始めました。

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とは言えFCもブランカも性能に信頼の置けるお気に入りの鏡筒ですので、FLが優秀な鏡筒である事は分かってはいましたが、これらを手放しても後悔しない惑星観望性能を有しているかを改めて確認する事としました。

しかしFLを使わなくなってしまったのは別の問題もあって、このFLは純正接眼部を社外2インチ接眼部に換装させる際に加減が分からず鏡筒を切断し過ぎてしまい(約10cm)、これを補う為に8cmの延長筒を付けると言う本末転倒な運用を余儀なくされていましたが、Mk-V双眼装置4.2xバローを付けて観望しようとするとこれでも長さが足りず、惑星観望に十分な高倍率が出せなかった事から積極的に使う事が無くなっていったのでした。

そこで今回ボーグパーツを使って長さを可変できる延長筒を作る事を思い立ち、折角なので2インチ固定部分もバーダーの2インチクリックロックを採用する事で程よい長さでアクセサリーの着脱も格段にスムーズになり、更にフォーカサーは奮発してフェザータッチフォーカサーを奢っていた事からピント合わせの感触も抜群で、接眼部の使い勝手に関してはFCよりも上回る仕上がりとなったのでした。

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FCと同等の倍率が出せるようになって惑星の見え味を公平に見比べる事が出来るようになりましたが、やはり口径1cmの差がありますのである意味当然ですが絶対的な見え味ではFCが上です。ただFLも12mmアイピースに4.2xバロー使用で280倍超と口径の3倍以上の倍率を掛けても像は破綻せず、火星の割と細かい模様も識別できるレベルで、ビクセンの誇る名機と呼ばれるFLの光学性能の高さも改めて感じる事になりました。

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何れにしてもFLは個人的に絶対に手放せない鏡筒の位置づけですので、FCに勝とうが負けようが機材整理の方針には変わりが無いのですが、この結果を受けて踏ん切りがつきました。30年前の鏡筒が最新アポと渡り合える実力を持っている事は驚くべき事で、8cmクラスのサイズ感と10cmクラスの見え味を両立させた鏡筒と考えると個人的な想い入れを抜きにしても高い実用性を持つ鏡筒と言えると思います。

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その様な訳で幾度もの売却の危機を乗り越えてメイン機材として返り咲いたFLでしたが、天文機材、特にレンズ回りに関しては良い物を選べば古い製品でも時代遅れにならない、価値が失われない点も天文趣味の奥の深いところで、高性能を謳った新製品に目を光らす一方で、古くても真に価値のある製品を見抜く目も養っていければこの趣味の楽しみの幅もより広がるのではと感じる次第です。

2020年12月13日 月-金星接近 [天文>日記]

12月13日の明け方月齢28の細い月と金星がかなり接近しました。

太陽を覗くと明るさトップ2の天体のランデブーでしたのでスマホコリメートで撮影してみました。以下は時刻5:30頃、鏡筒はFL-90SACクローズアップレンズアイピースを使用。

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地球照もよく見えていました。

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普段は天体写真を撮ろうとは思わない自分ですが、天体イベントに関してはこうして記録に残せるのは嬉しいですね。

Meade SP12.4mm(日本製) [天文>機材>アイピース]

手持ちの多種多様な12mmのクラシックアイピースを見返した時に、プローセル系に限定すると、独自の改良設計で高性能を目指したBrandonニコンO、そして低廉なセレストロンやGSOなどの中華プローセルに対して、日本製の真面目に作られた、言わばリファレンスと呼べるようなプローセルが無い事に気付き、自分の中でこれに該当するのがテレビューのプローセルでしたが12mmはラインナップされていない為、代替と言う訳ではありませんが、既に20mm40mmを使ってきてその基本性能の高さは自分の中では折り紙付きの、この日本製のMeade4000シリーズ、スーパープルーセル(SP)の12.4mmを加える事となりました。

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他のプローセルと比べるとアイレンズ、恐らく視野レンズも凹面となっているのが特徴で、もしかするとテレビューのプローセルを真似た設計なのかも知れません。現にこの当時はテレビューのナグラー(見掛け視界82度)、パンオプティック(68度)、プローセル(50度)のラインナップに対してMeade 4000シリーズはウルトラワイド(84度)、スーパーワイド(67度)、スーパープルーセル(52度)のラインナップで真っ向勝負を仕掛けていた時期でしたので、設計もテレビューを真似ていたとしても不思議ではありません。

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因みに以前の投稿で触れたようにMeade4000シリーズのスーパープルーセルは発売当初は3群5枚の恐らくアストロプラン設計で、ゴム見口の無いこのタイプは海外ではSmooth Sideと呼ばれています。その後標準的な2群4枚構成となり、ゴム見口が装備された今回手に入れたタイプ(画像では見口を外しています)に変更され、更にその後生産国が日本から中国へと変わっていく事になります。日本製か中国製かの区別は鏡胴かバレルに刻まれたJapanかChinaの刻印の違い以外の外観は同一の為、中古で手に入れる際は気を付ける必要があります。現行品は印字が白となりましたので区別が付き易くなりました。

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性能面で日本製と中国製で差があるかどうかは正直分かりません。製造品質は明らかに日本製が上ですが(中華製SPは一見同じ外見に関わらずかなり安っぽく感じます)、手持ちの他社低廉中華プローセルの侮れない光学性能を見る限り、それ程見え味が変わらない可能性は十分にあると思います。それでも造りの丁寧さでは日本製が圧倒的に上ですので、迷光処理など光学性能以外の部分で優位な部分があるかも知れませんので、ここは日本製に拘りたいと思います。

実際の見え味は惑星を見る限りでは当然と言うかとても良く見えます。ただ自分的にはこのアイピースには多大な期待を寄せていたので、自分のランキングで言うところのA+ランク(ペンタO、ニコンOレベル)に入るレベルではと予想していましたが、何度か見比べてそこまでではなさそうな印象で現時点ではAランクとしました。ただ日本製の良質なプローセルが欲しいと言う自分の要求には十分に適う、当初の目的通りリファレンスとしての役割を果たしてくれているアイピースです。

火星デジタルスケッチ2020 [天文>デジタルスケッチ]

今年は火星観望をかなり楽しませてもらっています。火星の場合は木星や土星と違い、固定した地形が存在、視認できる事から模様を適当に描く事ができず、当初スケッチを取る事は考えていなかったのですが、今年の火星はベランダからも手軽に観望できる点でも滅多に無い好条件でしたので、このチャンスを逃すと暫くはスケッチを取れる様な機会は訪れないと思われた為、意を決して一旦紙にラフスケッチを取ってからPCで描く2段戦法を取る事で火星のデジタルスケッチに挑んでみました。

以下がブランカ150SEDで見た火星、

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流石は15cmアポと言った見え味で、10月6日の最接近を過ぎたばかりだった事もあり(視直径22.4秒)、オーロラ湾から延びるマリネリス渓谷が判別できるなど結構細かい模様まで見えていました。笠井のHPに書かれている「400倍を超える過剰倍率でも、余裕でシャープネスを保つハイレベルな結像性を示します」と言う150SEDの宣伝文句も誇大では無いと思いました。

以下は最近久々に引っ張り出したビクセンFL-90Sで見た火星、

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ブランカ150SEDには及びませんが、9cmでも思いの外良く見えました。ステラナビゲーターなどで火星の地形図を確認するとシレーンの海とキンメリア人の海の間は黒い模様が切れている表示になっているのですが、今シーズンの火星を見る限りはこの間は黒く繋がっていて横に長い模様を形成していました。

同じくFL-90Sによる火星、

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この時はこの数日前にマリネリス渓谷周辺から発生したダストストームが周囲に広がり始めたところで、ペルシャの海の上空付近に黄雲が漂っている様子を捉える事ができました。尚スケッチ画像に世界時(UT)と日本標準時(JST)の2つを記述している理由は、自分が火星の地形を確認する際に用いているステラナビゲータとWinJUPOSと言う2つのソフトの時間入力がそれぞれ日本標準時と世界時となっており、時差を暗算するのが面倒なので併記している次第です。

更にFL-90Sによる火星、

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これまで適当に望遠鏡を出していたのでかの有名な大シルチスを拝む機会が中々無かった事から、今回は時間を調べて観望に挑んで正面に捉える事ができました。この時はF9の屈折には明らかに過剰倍率となる6xバローを試しに付けて観望していましたが破綻はしておらず、単位面積当たりの光量が多い火星は倍率を掛け易いとは言え、口径の4倍を耐えるならやはりかなりビクセンFLも優秀な光学系ではないかと思いました。ただこれはアイピースのお陰もあり、国産アイピースよりもZeissのアイピースがやはり一段模様が細かく見えるので、今年の火星のスケッチは最終的にはこのアイピースに頼る事が多かったです。

今回の火星のスケッチでは一旦紙にラフをメモ書きしてからPCで描く方法がまずまず上手く行った気がしましたので、今後は木星や土星のスケッチにも応用していければと思っています。

天体デジタルスケッチのススメ [天文>デジタルスケッチ]

最近萌え絵や夕焼け絵を描く要領で手描きで惑星を見たイメージを再現する事を試みています。但し自分の場合スケッチとは言っても模様を正確に写し取る事はあまり考えておらず、この鏡筒でこの条件では眼視ではこの位見えると言った望遠鏡の性能を知る参考になる事を目的としたスケッチの為、詳細は雰囲気で仕上げています。ソフトはSAIとPhotshop Elements11を行ったり来たりして描いています。

以下は2019年にFC-100DLで見た土星のベストイメージを描いたものです。

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以下は小口径に過剰倍率を掛けたイメージを表現しようと思い、Zeissの5cmアクロ(C50/540)にバロー連結で300倍以上の倍率を掛けたものですが、対物レンズの性能が想像以上に優秀で口径の6倍以上の倍率にも関わらず思った程破綻しませんでした。

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この様なデジタルスケッチを描くきっかけとなったのはシーイングが劣悪の条件で惑星観望をしていた時期に、Twitterでフォロワーさんがアップされた惑星画像にシーイングが悪くてダメダメとコメントされていてもしっかり模様が写っており、自分が悪いシーイングで見る惑星のイメージとはかけ離れていた為、こっちの地域とフォロワーさんの地域では同じ「シーイングの悪い」でも相当な違いがあるのでは?こっちのシーイングの酷さを知って欲しいと考え、伝える方法としてこれを手描きする事を思い付き、出来たのがこちらです。

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もっと酷かった様にも思えますが(下手すると環が判別できない時もあった気がします)これで多少は気が晴れた一方、惑星の見え味を手描きで表現するのは面白いと感じ、風景絵を描くのに比べれば描画する領域が圧倒的に小さいので早い時間で書き上げる事が出来、最近ネットで見掛けるアマチュア天文家の方の惑星写真のレベルが非常に高いが故に、どう見ても眼視ではそこまでは見えないだろうと感じるものも多かった事から、眼視のイメージの忠実再現を目指したデジタルスケッチに挑んでみようと思い立った次第です。

以下、FC-100DLで見た木星、

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以下、ブランカ70EDTで見た木星、

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以下、ブランカ150SEDで見た天王星です。

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何れも「Mirror Image Sketch」となっているのは天頂ミラーを使っているので裏像で見ていますので、左右反転して正像とする事も簡単なのですが、眼視では天頂ミラーを使ってみる事が一般的ではないかと思いますので、自分が見たままのイメージを残そうと思いこの様になっています。

自分は写真が撮れないので観望の成果としてアピールするものがこれまでありませんでしたので、ようやくお絵描き趣味を真っ当に天文趣味に活用できて、またもし当該望遠鏡を覗いて惑星がどの様に見えるのか少しでも参考になれば嬉しい限りです。