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12mmクラシックアイピース対決2022 [天文>機材>アイピース]

今回ランキングの評価ポイントは、

1、中心像で惑星(特に木星)の表面模様が良く見えるかどうか
2、周辺像の悪化具合
3、覗き易さ、迷光処理、見掛け視界
4、製造品質

と言った4つの項目を7:1:1:1位の割合で評価しています。前回までは1の中心像の見え味のみで評価していましたが、2、3、4の性能が悪い場合見え味にも影響する事があり、中心像はとても良く見えるけれども他の要因が悪さをして評価の邪魔をする、と言う部分も総合評価に加味する事にしました。

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このランキングを公表する前に強調しておきたい事はランキング的に下の方に位置したアイピースでも問題なく良く見える、決して性能が低い訳ではない、と言う事です。アイピースの見比べ、ランク付けは本人にとっては本当に楽しい作業でこうして結果を公表したくはなりますが、そのせいで特定のアイピースにネガティブな印象を与えてしまったり、評価が一人歩きしてしまうのは望むところではなく、あくまで主観的なランク付けである事は強調しておきたいところです。

また今回のランクの違いを言葉で表現するなら、

・SSランク:極めて良く見える
・Sランク:非常に良く見える
・A+ランク:すごく良く見える
・Aランク:とても良く見える
・A-ランク:かなり良く見える
・B+ランク:普通に良く見える
・Bランク:まずまず良く見える

と言った具合でかなり曖昧、抽象的なものとなり、実際の見え味の違いもこの様な微妙な差でしかありませんが、「良く見える」事が共通している点も強調したいところです。

《SSランク》
TMB SuperMono12mmモノセントリック1群3枚30°31.7mm 
CZJ PK20x(10)アクロマートハイゲンス3群4枚?46°東独 30.0mm
《Sランク》
Brandon 12mmプローセル2群4枚45°米国31.7mm
CZJ 12,5-Oアッベオルソ2群4枚40°東独24.5mm
ZWG Kpl20x37°西独23.2mm
LOMO K20x41°23.2mm
・Leitz Periplan GF20xケルナー?3群5枚?53°?23.2mm
《A+ランク》
Nikon O-12.5プローセル2群4枚45°日本24.5mm
笠井 AP12.5mmアストロプラン3群5枚50°日本31.7mm
笠井 HC-Or12mmアッベオルソ2群4枚42°日本31.7mm
ユニトロン Konig12mmケーニヒ3群4枚40°日本31.7mm
Leica 20x/1255°独?30.0mm
自作 Hastings12.5mmモノセントリック1群3枚°日本31.7mm
《Aランク》
Pentax O-12アッベオルソ2群4枚42°日本24.5mm
Meade SP12.4mm(JP)プローセル2群4枚52°日本31.7mm
タカハシ LE12.5mmアストロプラン3群5枚52°日本31.7mm
国際光器 HD-OR12.5mmアッベオルソ2群4枚42°日本31.7mm
・五藤 MH-12.5mmミッテンゼーハイゲンス 2群2枚43°?日本24.5mm
Kenko 銀色PL12.5mmプローセル2群4枚50°中華31.7mm
自作 Kepler12mm ケプラー1群1枚10°中華31.7mm
《A-ランク》
・谷 Or12.5mmアッベオルソ2群4枚44°日本31.7mm
タカハシ MC Or12.5mmアッベオルソ2群4枚42°日本24.5mm
Celestron Omni PL12mmプローセル2群4枚52°中華31.7mm
Nikon UW20x69°日本30.0mm
・Olympus G20X56°日本30.0mm
自作 Dollond12mm(Ver.K) ドロンド1群2枚20°中華31.7mm
《B+ランク》
EO RKE12mmリバースドケルナー2群3枚45°米国31.7mm
・GSO PL-12mmプローセル2群4枚50°台湾31.7mm
LongPerng PL12.5mmプローセル2群4枚55°台湾31.7mm
・ビクセン Or12.5mmプローセル?2群2枚43°日本24.5mm
《Bランク》
・Meade MA12mmケルナー2群3枚40°日本?31.7mm

※注1)CZJはCarl Zeiss Jenaの略称です。
※注2)ZWGはZeiss West Germanyの略称です。(勝手に付けました)
※注3)EOはEdmund Opticsの略称です。

《Sランク寸評》
アッベでもないZeissの顕微鏡用接眼レンズのPK20xをランキングトップとする事は当初は躊躇するものがありましたが、最近アイピース好事家の間で長焦点ハイゲンス+バローの高倍率性能が見直される向きもあって、スマイス入りのアクロマートハイゲンスとも言えるこの接眼レンズを自分の眼を信じてトップに据えたのは間違いではなかったかもと安心しているところです。木星の模様に関しては何度見ても他より良く見えると感じる自分にとってはお宝接眼レンズです。とは言え元は顕微鏡用ですので望遠鏡用として使用すると周辺像が悪化するなど完璧なアイピースとは言えず、その点ではTMBやBrandonは天体用アイピースの完成度として上回っていると感じます。

今回Sランクに入ってきたLeitzのPeriplanは少し気難しいアイピースで望遠鏡との相性が余り良くないのか中心を外れると色が出易いのですが、フローティングエフェクト感のある独特の見え味で中心像は抜群に良く、キャラクターとしてはPK20xに近い印象です。一方LOMOはZeissの描写に近い印象で中心像は一歩及ばないかも知れませんが周辺像が良好で癖が無く使い易い接眼レンズです。

西独ZeissのKplも疑いなく良く見える接眼レンズで中心像はCZJ 12,5-Oに比肩し、トータルバランスでBrandonとLOMOの中間のような完成度の高さがあります。12,5-Oは着色、明るさ、迷光処理の点で多少の減点要素がありますが模様を細かく見せる性能だけはとにかく高く、中心像だけでなく周辺像もほぼ完璧な点が顕微鏡用とは一線を画すところで、経緯台での観望やスケッチで威力を発揮するアイピースです。

《A+ランク寸評》
自作Hastingsは少し手前味噌な評価な気もしますが、レンズそのものは国産のトリプレットで非常に優秀な見え味でこの位置は妥当と判断しています。笠井の2本は12mmアイピースを蒐集し始めた初期から所有しているアイピースですが、本数が増えてもその地位が揺らぐ事が無く、未だに国産トップクラスの見え味の印象です。ニコンOも極めて優秀で、ニコンバイアスが効いているとも言えなくもないですが、とにかくバックグラウンドが暗い、透明感のある見え味は特筆するものがあります。Leicaの20x/12は55度の準広角クラスの接眼レンズの中では一番見えるように感じ、見え味だけでなくアイレンズが大きく目位置にも寛容で覗き易い点も加点要素としました。最近加わったユニトロンのKonigですが予想以上の見え味、特に像のキレが印象的で国産アイピーストップクラスの評価としました。

《Aランク寸評》
ペンタOは国内外問わず非常に評価の高いアイピースでこのポジションにランク付けするのはかなり悩ましいものがありましたが、自分的には木星の模様を見ていてすごく見えると感じますが、ものすごく、までは感じる事が少ない印象でこの位置に落ち着きました。但しこれぞオルソと太鼓判を押せる均一な視野、覗いていてストレスを感じない癖の無い見易さでは傑出しており、PENTAXらしいバランスの良さが天体用アイピースのお手本とも呼べる、今回挙げたアイピースの中で評価基準となる一本を選べと言われたらこのアイピースを挙げるかと思います。

HD-ORは中身は同一かと予想したHC-Orと比べると僅かに差があるように感じましたが、それでも予想通りの高水準な見え味で、現行品で手に入る国産アッベオルソとして誰にでもお勧めできる良質なアイピースと思います。Meade SPとタカハシLEは相変わらずリファレンス的なポジションのアイピースでバランスが良く、覗いていて安心感を感じます。五藤MHはやはりハイゲンス独特のアイレンズの小ささ、アイレリーフの短さが若干足を引っ張っており、あまりレンズに目を近づけたくない自分的には見ていてややストレスを感じるところもありますが、見え味に関しては文句を付けるところはありません。

ケンコー銀色PLもバランスの良い見え味で製造品質も悪くなく、性能が十分ながら中華製で多少雑に扱っても良い観望会向けのアイピースとしてこれまでOmniPLを主に使用していましたがその地位はこちらに移りつつあります。自作ケプラーは中心像だけはこのランクより一段上かも知れませんが性能を引き出す条件が他のアイピースより厳しい点、そして余りにも狭い見掛け視界も覗く意欲を失わせるところで減点しています。

《A-ランク寸評》
谷オルソとタカハシMC OrはAランクと比べると描写が若干大人しい(強いて言えば立体感の乏しい)印象でこの位置としました解像度の高い高性能アイピースである事に疑いの余地はありません。ニコンUWはこの視野の広さと見え味の良さをバランスさせている点に改めて凄いと感じさせる接眼レンズで顕微鏡用に手を出して一番の当たりだったと思う程気に入っています。天体用アイピースでこの接眼レンズの真似が出来る製品が見当たらず、ニコンの顕微鏡用接眼レンズ開発に懸ける本気度が伝わってくるようです。オリンパスG20Xも海外の準広角顕微鏡用接眼レンズと比べると周辺像の崩れは少なく中心像も良好で、バランスの良い使い勝手の良さが好印象です。自作ドロンドは3種類程自作しましたが、このケンコーの銀色PL6.3mmを使ったこのVer.Kが一番良く見えると感じ、このポジションとしましたが、やはり見掛け視界の狭さが足を引っ張っています。

《Bランク寸評》
RKEは歪曲が顕著で、視野周辺で木星が楕円に大きく歪むのが見る度に気になるのでこの位置としましたが、それでも中心像は問題無く良く見え、ユニークな設計も魅力的な個人的にお気に入りのアイピースです。LongPerngプローセルも惑星の観望においては周辺の歪曲が少し気になる印象ですが中心像は良好で、特筆すべきは広角プローセルながら周辺の星を点に見せる性能が高い点で、ここは同じ準広角でも歪曲の補正に重点を置いた顕微鏡用とは設計思想の違いを感じさせる部分で、惑星は元よりDSO向きの準広角クラシックアイピースとして活躍する場面も少なくありません。

GSOやビクセンOrも問題なく見えますが、悪く言えば平凡な描写で個性に乏しく、自分の中では積極的に使う理由が余り見当たらない点でこのポジションとしましたが、普通に良く見える真面目に作られた良質なアイピースですので手元に残っており今回のランキングに入れています。MA12mmは個体差が大きく感じられ軸が中心に出ておらず双眼では調整しないと見え難い点、ゴーストが目立つ点など完成度が今一つと感じますが中心像そのものは問題は無く、真面目にケルナーの改良を試みた意欲的な設計でたまに覗いてみようかと思わせるこちらも不思議な魅力あるアイピースです。

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最近の天文twitter眼視勢の動向としては宝石鑑定用などのルーペのアイピースへの流用が静かなブームとなっている模様です。自分も食指が動いたのですが顕微鏡用接眼レンズの20倍は焦点距離12.5mm相当ですが、ルーペの焦点距離は「250mm÷(倍率-1)」ですので20倍のルーペの焦点距離は約13.2mmとなってしまう為手が出せず仕舞いでしたが、こうした他の分野の拡大レンズを天文用に流用する事で思わぬ発見をする事があり、アイピースの可能性を広げる試みとも言えますので自分も固定観念に囚われず、こうした貪欲な姿勢を見習いたいと思うところです。

火星デジタルスケッチ2022/12/02+片持ちフォークSP赤道儀のプチ改良 [天文>デジタルスケッチ]

今回の火星接近は前回よりも仰角が上がり、自宅2階ベランダからでは屋根の上に位置してしまい満足に観望出来る機会が中々訪れない日々が続いていましたが、そうこうしている内に最接近(12月1日)を過ぎてしまい、これはもううかうかしていられないとこの日外に望遠鏡を出したところまずまずのシーイングでかろうじてスケッチを取る事が出来ました。

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最接近時の火星であれば輝度が高いですのでもう少し倍率を掛けられた気もしましたが、それでも北極冠(→すみません北極雲との事です)から垂れ下がるように見えるアキダリア平原、子午線湾、ペルシャの海、オーロラ湾と言ったこの辺りのメジャーな地形が確認出来ました。但し今回観望の前にステラナビゲーターで見える地形を事前に確認しており、これ無しでいきなり見ても地形の判別は難しかったかも知れません。逆に言えば予習をする事でそれ程大きいとは言えない今回の火星でも十分に見えを楽しむ事が出来、知識と経験でそれまで見えなかったものが見えてくる天体観望の醍醐味を味わえた気がします。

今回使用した機材の面では架台に片持ちフォークSP赤道儀を使用し、この架台は北側を見る事が出来ないベランダ限定の機材と考えて構築しましたが、黄道は南天を通っていますので惑星を自動追尾したい目的で使うのであればベランダに限らずに使用しても不都合は生じず、やはりバランスウェイトを使用せずに済むので総重量が軽く、それでいて赤道儀としての運用(自動追尾)が可能な部分が本当に便利で助かっています。

また今回プチ改良として片持ちフォークのオフセット量を(画像の青い)アリガタを挟む事で増やしてTSA-120使用時のバランスの崩れを低減させました。

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これまではTSA使用時は向きによってはバランスの崩れが大きく微動に負担が掛かっている感触がありましたが、今回改良で東から西までスムーズに動作するようになり、今後より気持ち良く使う事が出来そうです。

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自作 口径30mm実視界12度対空正立ファインダー [天文>機材>ファインダー]

笠井のガイドファインダーにUF24mmを組み合わせてもケラレ無い事が判明したので、これと恐らくプリズムは同じダイアゴナルを使用している自作3cmファインダーにUF24mmを組み合わせれば更なる視野の拡張、像質の向上が見込めるのでは?と思い再構築してみたのが今回のファインダーです。

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当初このアイピースの組み合わせでは光路長が厳しいと考えていましたが、これまで合焦機構にネジ回転式を採用していた拘りを捨てて、ピント合わせは31.7mmスリーブに対するアイピースの抜き差しで対応する事にしましたがアイピースの交換はしませんのでこれで何の支障も無く、合焦機構を省いた事でよりシンプルな構成とする事が出来ました。

今回のパーツ構成は、

《フード部》
・M42-M37ステップダウンリング
・M42延長筒30mm
・M42延長筒30mm
・M37-M42ステップアップリング

《対物レンズ部》
・M32-M37ステップアップリング
・MoreBlue FG004-ガイドスコープ(対物レンズ部分)
・M30-M42ステップアップリング

《台座兼回転装置部》
・M42-M39全ネジアダプター
・BORG M42回転台座【4520】

《ダイアゴナル部》
・M28-M42ステップアップリング
・WO 31.7mmNew90°正立プリズム(本体部分のみ)
・M28-M42ステップアップリング

《アイピース部》
・M42延長筒10mm
・M42全ネジアダプター10mm
・M42→31.7mmスリーブ変換AD
・UF24mm

となっています。

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この組み合わせで倍率5.4倍、そして実視界は12度まで拡張され、実視で確認してもオリオン座の下半分(三ツ星からリゲル、サイフまでの範囲)はすっぽり収まっていますので計算通りの視野が確保出来ています。期待通り焦点距離24mm見掛け視界65度のアイピースでもケラレは発生しておらず、良像範囲も8~9割となり、瞳径も下がった(5.5mm)事で更に覗き易く、前作よりかなりのパワーアップを遂げる事が出来ました。

重量は約1120gと3cmファインダーとしてはやや重くなりましたが、対空正立で12度の実視界となると小口径のデメリットはより感じる事は少なくなり、理想のファインダーにまた一歩近づいた気がします。