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顕微鏡用ハイゲンス5x(焦点距離50mm相当) [天文>機材>アイピース]

我が家の太陽双眼観望用の最低倍率用として新たに手に入れた接眼レンズがこちらです。

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これまで最低倍率用としてはAH40mmが活躍していましたが次第に更に低い倍率で観たい欲求が高まり、望遠鏡用のアメリカンサイズ以下のアイピースでは焦点距離40mmより長いものは殆ど見当たらないものの顕微鏡用の接眼レンズに目を向けると5xであれば50mm相当、4xであれば62.5mm相当とより長焦点のものが存在するので狙い目でしたが、この長焦点で覗き易さを考えるとハイゲンス以外では厳しいだろうと思われた為、設計が製品名や外観からは判断し難い顕微鏡用接眼レンズからそれを引き当てるのは難しく積極的に探す事もしていませんでしたがそんな折、ツイッターでシベットさんが顕微鏡用の格安ハイゲンスセットを発掘されたツイートを見てその中に5xの倍率が存在し見え味も良好との事でこれは!と思わず自分も手を出したのでした。

顕微鏡用でバレル径は23mmですので例によってバレルに植毛紙を貼って24.5mm→31.7mmアダプターに差し込んで双眼装置で使えるようにしています。中を開けてレンズ構成を確認すると確かに2群2枚のハイゲンスで外装は金属製で格安接眼レンズの割には造りはしっかりしている印象ですが、中のレンズを支えるスペーサーがプラスチック製ですので長時間の太陽観望で使用する(観望会など)のは少し気を付けた方がいいかも知れないと思わなくもありません(ここまでそのような熱はこない?とも思うのですが)。

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見掛け視界は確かに狭いのですが、自分の環境では太陽フルディスクは問題無く観望出来る必要十分の広さで、期待通り長焦点に関わらず非常に覗き易く像も問題ありません。AH40mmより一段小さく引き締まった太陽像を眺める事が出来て、一時は自作も考えましたがお安く目的を果たせて助かりました。

Hα太陽デジタルスケッチ2023/06/01 [天文>デジタルスケッチ]

兼々挑んでみたいと思っていた太陽望遠鏡でのHα太陽像を初めてスケッチしてみました。

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太陽像は惑星に比べると描画面積が広く、もし太陽活動が低迷している時期であればのっぺらとした赤い球の絵にしかならないところですがここ最近の活発な太陽活動とダブルスタックのお陰もあって、黒点、ダークフィラメント、プラージュ、プロミネンスに着目して模様を抽出、描き出す事で多少はHα太陽像の眼視イメージに近づけたかも知れません。

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但し太陽望遠鏡は視野内の模様の見え方が均一ではないので、太陽を視野の中で動かしながら一番模様が見えるポイントで上のスケッチのメモを取っていましたので細かい取りこぼしがあるかも知れませんが、これは太陽望遠鏡の特性上致し方ないところです。その点で最近低倍率を出せるアイピースが揃ってきた事でより俯瞰した観察が出来るようになった気がします。

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太陽望遠鏡は光学パーツが経年劣化する事が少なくないので長年に渡っては使えないかも知れず、素人には調整やメンテナンスが難しく超高精度の機材なので扱いにとても気を遣いますし、個体差が大きい故に見えは常に疑心暗鬼が付き纏い、観望中は苦行のように超暑く、何と言っても超絶高いなどつくづく罪深き沼機材だと思うところですが、熱心な愛好家の方の日々のご活動によりプロミネンスへの誘惑に狂わされた方々が後を絶たない様子を見て密かに喜んでいます笑

ユニトロン Konig12mm [天文>機材>アイピース]

このアイピースは海外ではその特徴的な縞々のリングが装着されている事から「ゼブラ(Zebra)」ケーニヒとも呼ばれているシリーズです。個人的には惑星観望用途としてレンズ枚数が少ない2群3枚のケーニヒに兼ねてから興味があり、Konigの名を冠したこのアイピースがユニトロンから販売されていた事を知って気長に2本手に入れたのでした。

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このアイピースの販売時期を手持ちの古い天文ガイドを漁って調べてみたところ、1986年5月号のユニトロンの広告に「NEW」の文字と共に掲載されていましたがアイピース径は24.5mm/36.4mmとなっており、この時点ではアメリカンサイズのものはまだ発売されていなかったようです。

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その後86年10月号にはアメリカンサイズの広告が写真付きで出ていますので今回のアイピースの販売時期はこの頃ではないかと予想されます。

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偏にケーニヒと言ってもその設計は多種多様で普通ケーニヒと言えばアッベの簡略設計とも思える2群3枚、2-1のデザインが一番有名ではないかと思いますが(RKEもこれに近い設計です)吉田先生の望遠鏡光学屈折編にはいくつもの紹介があり、2群4枚のプローセルの改良型などレンズを4枚以上使用した設計も多くあったようです。

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今回手に入れたケーニヒも2-1設計である事を期待していたのですが、CNでこのアイピースが分解された写真を発見し、それによると1-2-1の3群4枚のレンズ設計の様でそこは個人的に少し残念に感じました(^^;この構成のケーニヒは上の吉田先生の書籍によれば広角用の設計と紹介されていて、上記天ガの広告でも見掛け視界60度となっていますが今回手に入れた2本は見掛け視界は実測約40度となっていて、広角モデルは周辺像が余り良くないとの評判も目にしたのでその後敢えて絞ったのかも知れません。

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個人的には12mmアイピースは惑星観望用途なので見掛け視界が狭くても支障はありませんが、もし広角設計のアイピースをわざわざ絞ったのならば中心像はそれ程でも無いのかも知れないと大きな期待をしていなかったのですが実際に木星を見てびっくり、抜群に良く見えます。例のランキングで言えばぱっと見これはSランクの見え味では?と感じましたがその後の見比べで自分的にHC-OrニコンOと同等のA+クラスと判断しました。レンズ枚数が4枚、期待より一枚多かったと言ってもアッベやプローセルと同じ枚数と考えれば大きな問題とはならないのかも知れません。

SkyRover 2x54星座ビノ [天文>機材>双眼鏡]

自分が以前所有していた笠井ワイドビノ28自作TC-E2ビノは優秀な星座ビノとして重宝していましたが細かい不満点もあり、その点今回のビノ(SR2x54ビノと呼称)は従来製品の全てを過去にする(は言い過ぎかもですが(^^;)、星座ビノの決定版とも言える出来に仕上がっていると思います。尚今回自分のビノはメーカー直輸入しましたが、笠井扱いのスーパーワイドビノ36と恐らく同じものと思われます。

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今回のビノの大きな特徴としては54mmの大口径の対物レンズを採用している点で、通常の望遠鏡であれば2倍と言う倍率から考えれば口径がケラレて無駄に大きいと意味の無いものに捉えられるところですが、多くの星座ビノに採用されるガリレオ式双眼鏡では話が変わってきます。吉田正太郎先生の「屈折望遠鏡光学入門」によればガリレオ式望遠鏡の視野の広さは、実視界の角半径をωとすると、

tanω=d/2m(a・m+i)…①

で与えられ、①式の各変数は、

・d:対物レンズ口径
・m:倍率
・a:接眼レンズから眼球中心までの距離
・i:対物レンズと接眼レンズの間隔

となっており、①式より実視界を広くするには、

1、対物レンズの口径dを大きくする。
2、倍率mを低くする。
3,目をなるべく接眼レンズに近づける(aを小さくする)。
4、焦点距離の短い対物レンズを使用する(iを小さくする)。

と言った条件が導かれます。つまり倍率が変わらなくても対物レンズを大きくすれば視野が広く取れる(=見掛け視界が広がる)のがガリレオ式の大きな特徴と言えます。

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その一方でではガリレオ式の実質の口径、集光力は?と考えた場合、まず射出瞳径は対物レンズ口径を倍率で割ったものですので、2x54ともなれば射出瞳径が54÷2=27mmとなり、最大瞳孔径を7mmとすれば遥かに大きいので盛大にケラレます。つまり実質の口径は、

【射出瞳径】=【対物レンズ口径】/【倍率】…②

【実質口径】=【対物レンズ口径】×(【7mm(最大瞳孔径)】/【射出瞳径】)…③

より、

【実質口径】=7mm×【倍率】…④

となります。つまり2倍の双眼鏡であれば実質口径は14mm、3倍の双眼鏡であれば実質口径21mmとなります。これにより集光力は、

【集光力】=(【実質口径】/7mm)2…⑤

からこれに④式を代入すれば、

【集光力】=【倍率】2…⑥

となり、倍率が2倍であれば集光力は4倍、3倍であれば9倍となります。
また極限等級は、

【極限等級】=6+5log(【実質口径】/7)…⑦

からこれに④式を代入すれば、

【極限等級】=6+5log【倍率】…⑧

となり、倍率が2倍の時は7.5等、3倍なら8.4等となります。

つまり射出瞳径が7mmを大きく超えるガリレオ式の場合は⑥、⑧式より集光力や極限等級は倍率のみに依存しますので対物レンズを大きくしても集光力や極限等級は上がらないけれども、①式より視野は広くする事が出来る点で大きな対物レンズは無意味ではない、と言う事が言えます。



これを踏まえてこのビノの54mmの対物口径は恐らく最小目幅(=鏡筒外径)を双眼望遠鏡などでは通例となっている58mmと初めに設定した上で、鏡筒(対物セル)と対物レンズ抑えを合わせた肉厚を2mmと限界まで薄くする事で実現した最大口径(54mm=58mm-2mm×2)ではないかと思われ、市販の星座ビノとして限界の広視界を目指した設計と考えればやはりある意味究極の星座ビノと呼んでも差し支えない観望機材の様に思えます。

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視界の広さだけで言えば自作のVCL-1452ビノは実視界60度程度あり圧倒的な広さがありますが、倍率が1.4倍と低いので暗い星が見え難く、光害の強い夜空では効果が薄いと感じる事もありますが、これに比べるとSR2x54ビノは倍率(集光力)と視界の広さのバランスが取れていて、光害地で星座を確認する用途ではこちらが格段に向いていると感じます。

見え味に関しても視野の透明感に関してはテレコンビノ最優の呼び声高いTC-E2ビノが若干上回る印象ですが、テレコンビノには難しいピント調整、目幅調整が可能な点、アイレンズが大きく旧ワイドビノより格段に覗き易い点や、シャープな像質で周辺像の崩れも殆ど感じられない点など、使い勝手も含めたトータルの星座ビノとしての完成度は今回のビノが上回ると個人的に感じます。

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このビノは光害地での星座確認用途以外でもSQM21を超える環境でこのビノで星空を眺めると正に星の海と言った趣で、超低倍率広視界の他では味わえない景色を楽しめる機材としても手放す事の出来ない存在となっています。

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