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賞月観星 プリンスED6.5x32WP [天文>機材>双眼鏡]

個人的にはあまり耳慣れなかったこちらのメーカーですが、この双眼鏡のスペックを知ってえ?マジで??と久々に双眼鏡に食指が動きました。6.5倍の低倍率機でありながら見掛け視界が65度と広角で、実視界も10度と二桁台を実現、21mmのハイアイレリーフにツイストアップ見口を装備。自分的にこんなのが欲しかったと思わせるスペックで、発売日に注文して手に入れました。

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この双眼鏡が他の双眼鏡と大きく違うところは7倍以下の低倍率のポロ機でありながら広角を実現している点です。普通7倍以下のポロ機では見掛け視界は標準視界である事が多く、コーワやヒノデ、勝間と言った6x30の双眼鏡(ポロ機)を見ても見掛け視界は50度前後、実視界は8度強が普通です。ここで各双眼鏡のスペックを表にしてみます。

機種コーワ
YF30-6
ヒノデ
6x30B+
勝間
QF6x30
ニコン
8x30EII
賞月観星
プリンス6.5x32
倍率6倍6倍6倍8倍6.5倍
有効径30mm30mm30mm30mm32mm
ひとみ径5mm5mm5mm3.8mm4.9mm
実視界8度8.4度8.5度8.8度10度
見掛け視界48度50.4度51度70.4度65度
アイレリーフ20mm20mm15mm13.8mm21mm
重量470g482g770g575g730g

この中では勝間の6x30を以前所有していて、とても良く見える双眼鏡でしたがやはり視界が標準視界だった事が当時の自分の好みには合わず手放してしまいました。

低倍率双眼鏡とする為には比較的長焦点のアイピースを使う必要があり、その為見掛け視界も標準的となっているのが実情ではないかと推測するのですが、これを単に広角アイピースにしようとすれば恐らく短焦点化してしまうので、低倍率を維持するには対物レンズの焦点距離を短くする必要があり、短いF値の対物に広角アイピースの組み合わせとなると周辺像の崩れがかなり厳しくなる為、あまり採用されない設計なのではと思っています。

またアイピースを短焦化すれば一般に(スマイスレンズを入れてなければ)アイレリーフも短くなりますので、ハイアイを目指す場合も広角はネックになるポイントではないかと思われ、実際8x30EIIではこのクラス(ポロ30mm機)では比類ない広角を実現する為にアイレリーフを犠牲にしてる形です。ならば長焦点広角アイピースにすれば全て解決かと言えば望遠鏡用のアイピースが物語るようにサイズ、重量が肥大化し、価格も跳ね上がりますので、アイピースが二つ必要な双眼鏡では採用が難しくなるでしょう。

なので低倍率で広角、且つハイアイな機種に仕上げるのはかなり難度が高いのではと想像しますが、スペック上これを全て満たしているのが今回のプリンスEDでチャレンジングな製品と言えると思います。こうした双眼鏡は他には宮内のビノン5x32などがかつてありましたが現行機種では殆ど見る事ができません。

ここで上記の表のスペックに合致するように各双眼鏡の対物レンズとアイピースの焦点距離を割り出してみました。あくまで勝手な推測ですが、下記のスペック(各焦点距離)であれば上記のスペック(実視界、ひとみ径)が実現できます。

機種コーワ
YF30-6
ヒノデ
6x30B+
勝間
QF6x30
ニコン
8x30EII
賞月観星
プリンス6.5x32
倍率6倍6倍6倍8倍6.5倍
有効径30mm30mm30mm30mm32mm
対物レンズ焦点距離(予想)150mm150mm150mm160mm130mm
見掛け視界48度50.4度51度70.4度65度
接眼レンズ焦点距離(予想)25mm25mm25mm20mm20mm
対物レンズのF値F5F5F5F5.33F4.06

上記の推測が概ね当たっていると仮定すれば、コーワ、ヒノデ、勝間の3種はF5の対物でPL25mm相当のアイピースの組み合わせと考えると無理の無い、悪く言えば無難でありきたりな設計ですが、その分見掛け視界以外の光学性能は上げ易いスペックではないかと思います。

一方プリンスはF4対物に65度の広角アイピースの組み合わせ(予想)で、従来の双眼鏡より厳しいスペックを追い求めている部分は評価されますが懸念されるのはやはり周辺像の崩れで、これをどこまで抑えられているかがこの双眼鏡の評価を分けるポイントだと考えていました。勿論シャープネスやコントラスト、色収差補正と言った要素も重要ですが、その部分だけで判断すれば他にも優秀な双眼鏡は存在しますので。

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実際覗いてみて感じたのはまず像質の良さで、広角以外の見え味の部分で優秀な双眼鏡は他にもある、と書きましたがこの双眼鏡、その部分だけでも相当に優秀です。ツァイス7x42FL(以下FL)と昼間の風景を見比べましたが、中心像の解像度、階調表現、色収差の少なさなど見劣りしません。特にヌケの良さはFLに勝っているのでは?とすら感じます。

見掛け視界はFLの方が僅かに広く、倍率も僅かに高い事から実視界の広さも両者殆ど同じに感じます。スペックから言えばFLは見掛け視界60度相当ですので、プリンスよりは狭いと予想していたのですがこれは逆の結果となり、じゃあプリンスがひょっとしてカタログスペックより狭いのかと言えばそんな事は無く、XL40と見比べて同等の見掛け視界は確保されてますので、FLは今まで気づきませんでしたがカタログスペック以上の広さを持っていると言う事かも知れません。

その様な訳で、見掛け視界に実視界、倍率に像質を含めた全体的な見え味で両者拮抗しているので、同じ様な見え味の双眼鏡二つあっても運用に無駄が生じるのでこれはどっちか手放そうかな・・・と考える程にプリンスはFLに肉薄している印象です。ただ自分の眼力にはそれ程自信はないので、ある程度以上の画質になると「よく見える!」以外の感想が出てこないので、鋭眼のツァイスオーナーの人が見るともしかすると細かい違いが見えてくるのかも知れませんが、自分の目にはやはり大きな差は無いように感じます。

問題のプリンスの周辺像に関してですが、やはり周辺は崩れますが良像範囲は7割程度あり、この崩れ方もFLと似かよっていますが、良像範囲を超えた部分の崩れ方はプリンスの方が若干穏やかかも知れません。ただFLは元々中心像の鋭さに特化した双眼鏡で、周辺像の収差補正にはそれ程気を使っていないコンセプトですので、言わば弱点とも言えるFLの周辺像で見比べてプリンスが優位だとしても優秀とは言い切れないかも知れませんが、それでもこのクラスの広角双眼鏡としては十分合格点をあげられる見え味ではないかと思います。

見え味以外で気になった部分と言えばアイレンズがとても大きいので覗き易いのですが、視野が広いので周辺を見ようと眼を動かすとブラック(ホワイト?)アウトし易いかな?と最初思いましたが、3段階のクリックストップのあるツイストアップ見口が上手く機能している事もあって、慣れればFLと比べても普通だと感じました。他に難点があるとすれば意外に重たい事位でしょうか。

とにかくこの出来で18000円と言う価格は尋常でないコストパフォーマンスの高さではないかと思います。『コスパが良い』と表現すると『値段の割には』と言う意味合いにも聞こえてしまいますが、値段を意識しなくても絶対的な見え味の良さで高級機に劣らないポテンシャルを持っており、また低倍率広角と言った稀有なスペックも持ち合わせ、光学性能以外の部分も含めたトータルの完成度も非常に高い双眼鏡ですので初心者の方には勿論、マニアの方でも一度覗いてみて欲しいと感じる双眼鏡です。

その後、旅行にプリンスと7x42FLを持って行って比較観望してきました。星見での見え味も検証。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

賞月観星プリンスED6.5x32WP
価格:19800円(税込、送料別) (2020/10/23時点)



ThermoPro デジタル温湿度計 TP50 [天文>機材>その他]

観望時の温度湿度を知りたくなり、デジタル温湿度計を買ってみました。

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当初中華製の150円位の温湿度計で良いかと思いましたが、送料足すと3倍以上の値段になるので却下。amazonで送料無料となるもう少し高めの温湿度計を物色し、当初この温湿度計の上位モデル(TP55)がベストセラー商品になっていてそれにしようかと思ったのですが、こちらの方は違いとして、

・電池が単四一本で済む(TP55は2本)
・TP55のバックライト表示がいらない(星見ではバックライトの明るさが観望の邪魔になる可能性)
・TP55のタッチスクリーンの機能もいらない
・TP55より本体が一回り(二回り?)小さい

と言った理由でより安価ながら自分の用途的には無駄の無いこちらを選びました。温度の測定範囲も-50℃~70℃と実用上十分な範囲です。安価な温度計だと-20℃までしか測れないものもあり、北海道の冬では性能が足りません。

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実物は思ったより小さく手のひらサイズです。リセットボタンを押してからの温度や湿度の変動幅を見る事が出来る機能は当初不要と思っていましたが、あればこれはこれで便利です。

とても使い勝手が良く気に入っていますが唯一気になったところとしては防水ではないので、野外でどれだけちゃんと動くかはまだ未確認ですが、問題点があれば追記していきたいと思います。


Gerd Neumann ロンキーアイピース [天文>機材>アクセサリー]

1インチ当たり254本の高精細なロンキーアイピースです。FC-100DLの球面収差補正のレベルがどの程度かを知りたくなり、ついアイピースだけ入手してしまいました。FC-100DL、ブランカ70EDTのこのアイピースを使用したロンキーテストの様子はこちら

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まともな撮影機材も無く、平面鏡やビームスプリッターを用いたようなきちんとした測定環境は何もありませんでしたので、当初ロンキー像を写真に撮れるとは考えていなかったのですが、スマホをかざしてみたところ、スマホの画面に縞模様がチラっと見えて、あれ?これスマホでも撮れるかも?と試してみたら意外に写ってくれて、綺麗に像全体が写るように撮るのには苦労しましたが(一つの納得できるロンキー像が得られるまで数十枚は撮ってます)、ロンキー像を一応形として残せたのは嬉しい誤算でした。やはり眼視で確認するより後から写真を見た方が細かい状況を確認し易いように思います。

ロンキー像の見方はジズコの以下のページが参考になります。
http://www.zizco.jp/13shop_orion/optics/ronchi.html

この解説文を読むとロンキー像よりも星を見て性能を判断して欲しいと口酸っぱく言われている気がします。実際ロンキー像が曲がっていても良く見える望遠鏡もあり、その逆もあるようですので、ロンキー像のみで性能を判断するのは早計で、あくまで性能を確認する一つの手段として考えた方がいいでしょう。ロンキーテストにしろナイフエッジにしろ他人が行ったテスト結果を見て自分で見てもいない望遠鏡の評価を決め付けてしまう残念な方(自分含む)も少なくないようですので、メーカーとしてはユーザーにこの様な簡便な性能測定手段はもしかすると与えたくないのかも知れませんね。

そうは言ってもロンキー像の縞模様の形状はレンズ形状がもたらす物理現象の結果ですので、全く当てにならない事もありません。望遠鏡を所有していると思ったより良く見えない時に、どこか壊れているのでは?自分の個体はハズレなのでは?と考えるのは普通の事と思いますし、そうした場合に疑心暗鬼に囚われながら使い続けるよりも、こうしたツールで感覚的でなく論理的に客観的な光学系の性能のチェックが出来るのは一般の望遠鏡ユーザーにとってはとても有難い事だと思います。

個人的には実際に使ってみて気分がすっきりしましたし、一つ持っていても損はしないアイテムと思いますが、逆に持っている事で些細な縞の曲がりで思い悩んだり、ロンキー像だけで評価を決め付ける事の無いように気をつけたいところです。