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PENTAX O-12 [天文>機材>アイピース]

このSMC PENTAXオルソ(以下ペンタオルソ、もしくはペンタOと呼称)は1980~90年代に製造されていたアイピースで国内は元より海外での評判も未だに高く、最も優れた惑星用アイピースを議論する際に引き合いに出される機会も多い、日本が生んだクラシックアイピースの傑作の一つと言えるかも知れません。

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焦点距離ラインナップは5mm/6mm/7mm/9mm/12mm/18mmで見掛け視界は42度、バレルサイズはツァイスサイズ(24.5mm)となっています。

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設計はtwitterのフォロワーさんのこもロハスさんに見せて頂いた資料(地人書館『天体望遠鏡のすべて'87年版』→その後自分でも手に入れました)にレンズ構成図が掲載されていますが、アッベを発展させたペンタ独自設計で、トリプレットの前群レンズの各曲面も異なるように見受けられ工夫が感じられます。

これ以降のペンタのアイピースはXP、XL、XO、XWと言った撮影用、又は広角やロングアイレリーフのレンズ枚数を増やした現代風高性能アイピースへの開発へとシフトしましたので、このペンタオルソはペンタが本気で作った最後のクラシックアイピースと考えるとマニア心が擽られます。

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またペンタの光学製品には御馴染みのスーパーマルチコーティングが空気に接する全面に施され、アイレンズからは黄緑色の深みのあるコーティング色が見て取れます。

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このアイピースとの出会いはヌプカの観望会でペンタ150EDで見た天王星がこれまで見た事のない凄い見え味で、もう少しシーイングが良ければ天王星の衛星を見る事も可能に思える程で、優秀な15cmアポだとここまで見えるんだと感銘を受け、ブランカ150SEDを購入するきっかけにもなったのですが、この時使われていたアイピースがペンタO-6でこの凄い見え味は鏡筒の性能も去る事ながらアイピースの性能のお陰もあるのでは?と感じたのが、このシリーズに関心を持ったきっかけでした。

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ただO-12を手に入れて我が家の数多の12mmアイピースと見比べた正直な感想を言えばやはりとても良く見えますが、惑星を見た時の中心像の見え味に関してはツァイスやTMBにはちょっと及ばないかな?と言う印象で、やはりツァイスであれば国産オルソと比べて一段木星の模様の詳細が見えてくる感じ、TMBの様な一見して明るく見えると言った際立つ特徴は個人的にはそこまで感じませんでした。優秀で真面目な国産オルソらしい透明感のある見え味、バランスの良さはある意味際立っていますが、そこから一歩突き抜けた個性の様なものが今一つ感じられず、自分の12mmアイピースランキングではA+ランク止まりとなっています。

但しこれは最上級クラスのアイピースと比べての印象であって国産アイピースの中で比べれば普通にトップクラスの見え味で、望遠鏡の性能を引き出すには十分に優秀なアイピースである事には違いありません。海外での評価は自分が思う以上に高く、ヤフオクなどで状態の良い個体が出品されると高確率で海外の業者が入札してきます。そのせいもあって中古相場は完全にプレミアが付いている状態です。

他に気付いたところとしては室内環境で周辺像の崩れ具合をチェックした際に、歪曲収差の無さでは顕微鏡用接眼レンズやCZJ 12,5-Oが最優秀と感じましたが、最周辺まで星を点像に結ぶ性能(非点収差や像面湾曲の無さ)に関してはこのペンタOが更に上回り、オルソスコピックの名に恥じない見え味で、PENTAXの技術の高さ、妥協を許さない姿勢が随所に感じられるアイピースと思いました。

ハイゲンスからの単レンズアイピース自作における焦点距離の選定 [天文>機材>アイピース]

究極にシンプルなアイピースと言えばレンズを1枚しか使わない単レンズのアイピースですが、個人的にはボールレンズに魅せられた一方でやはり元祖と言えばケプラー式望遠鏡であれば両凸レンズになるのかと思います。

ケプラー接眼レンズについての自作、考察についてはtwitterのフォロワーさんのLambdaさんがブログで書かれていますが、ケプラーの単レンズは両凸では無く平凸レンズを使用するアイデアもあったそうで、Lambdaさんはこちらを採用されていますが、ブログにも書かれている様に中心像は侮れない、むしろ独特の素晴らしい見え味との事で、自分も雑に自作した水晶玉アイピースを覗いた印象からしても良く見えるであろう事は想像に難くありません。

その様な訳で自分もケプラーの自作に興味が湧きましたが、ドロンドの場合はプローセルを単に半分にすれば良いと言う自作のし易さがありましたが、ケプラーにはこのアイデアは通用しません。アイピースを自作する時はレンズの調達よりもむしろ筐体、鏡胴の調達に頭を悩ませる事が自分的には多いですが、単レンズを上手く収める筐体の調達に難を感じて結局自作には至りませんでした。

そんな折同じくtwitterのフォロワーさんのnagano kinyaさんがハイゲンスの視野レンズを取り払う方法で単レンズアイピースを自作されて楽しまれている事を知り、確かにハイゲンスであれば視野レンズとアイレンズの保持が別々であり(自分の知る限り)、視野レンズだけを外してもアイレンズも一緒にポロっと落ちる様な事はありませんのでこれは単レンズアイピースを自作する手法としてはとてもシンプル且つ合理的ではないかと思いました。

問題は焦点距離を何ミリのハイゲンスを調達すれば、目的の焦点距離の単レンズアイピースが出来上がるのか、と言う点です。この場合目的の焦点距離は勿論12mmです笑。これを求めてみようと考察したのが今回の本題になります。

まず一つのレンズの焦点距離は誰でもイメージが湧くと思いますが、複数のレンズを使った場合のトータルの焦点距離はどうやって求まるのか、と言う部分が疑問で調べた結果、吉田正太郎先生の書籍(望遠鏡光学・屈折編)にヒントが載っていました。二つの光学系(二系)が光軸上に並んでいる時、前群レンズの焦点距離をf1、後群レンズの焦点距離をf2、前群と後群の間の距離をdとすると、二系の合成焦点距離fは、

f=f1xf2/(f1+f2ーd) ・・・①

となるそうです。今回の場合ハイゲンスですので、f1が視野レンズの焦点距離、f2がアイレンズの焦点距離、dがレンズ間隔として合成焦点距離を求める事が出来ます。

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ここでハイゲンスは倍率の色消しが成立する光学系の為、

d=(f1+f2)/2 ・・・②

の関係が成り立ちます。実際にはハイゲンスのf1:d:f2の比率は4:3:2、もしくは3:2:1との事で、ここから、

f1=2xf2 ・・・③ (視野レンズ焦点距離がアイレンズ焦点距離の2倍)

もしくは

f1=3xf2 ・・・④ (視野レンズ焦点距離がアイレンズ焦点距離の3倍)

と導けます。目的の『視野レンズを外して、アイレンズのみにした時に焦点距離が12mmとなる』、つまりf2=12を代入して求まる合成焦点距離のハイゲンスを調達すれば良い事になります。これらの式から最終的には、

③式が成り立つハイゲンスの場合 → f=4/3xf2

④式が成り立つハイゲンスの場合 → f=3/2xf2

となり、アイレンズのみの12mmの単レンズアイピースとするには、前者の場合16mm、後者の場合は18mmのハイゲンスを調達すれば良い事が解りました。

しかしここで調達に動き出したところで更なる問題が・・・と言うのはハイゲンス(ミッテンゼーハイゲンスでも可)で16mmや18mmのアイピースは中古市場でも余り見掛けないのです。16mmは殆ど見つからず、18mmはたまに見掛けますが、もし買ってみても視野レンズとアイレンズの焦点距離の比が2:1の設計なのか、3:1の設計なのかまでは窺い知る事は出来ません。

一か八かで買ってみて実測してみればどちらの設計かは分かるかも知れませんが、そこまでやるのもなあ・・・と言ったところで二の足を踏んでいるのが今の現状です(^^;

ただお手軽に単レンズアイピースを自作する方法としては可逆的な改造で新たな部品の調達も必要無く、細かい焦点距離に拘らなければ単レンズアイピースの見え味を楽しむ方法としては有用ではないかと思います。

星ナビさんで当ブログが紹介されました [天文>日記]

星ナビ2021年9月号の「ネットよ今夜もありがとう」コーナーにて当ブログを紹介して頂きました。

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「もっと宇宙の話をしよう!」のTaizoさんよりバトンを受け継いで(その節は大変お世話になりました<(__)>)星ナビ編集部さんより250文字程度の紹介文の作成を依頼されましたが、ウケ狙いは止めて極力無難な紹介とさせて頂いたつもりです笑。

このブログを始めたのが2015年の7月ですのでもう6年も経つんですね。機材ネタメインの内容ですので、機材欲が無くなればネタ切れとなる排水の陣でブログを続けてきましたが、ここを見て下さる皆さんのお陰で未だモチベは継続しています。いつも本当にありがとうございます。

これを機に更なる内容の充実を・・・と言いたいところですが、あまり背伸びはせずに身の丈に合った、それでも訪れて下さる人にとって少しでも新たな発見が見つかる様な内容を目指しつつ、何より自分自身が楽しんで書けるブログを今後も目指したい所存です。