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Fujinon HC8x42|HYPER-CLARITYシリーズ [天文>機材>双眼鏡]

WXのお陰で手持ちの双眼鏡の良さを再認識する事になり、星見ではWX一択ですが旅行などで地上風景を鑑賞するにはやはりWXでは重量や持ち運びの面で厳しいものがありますので、手軽に持ち運べるコンパクトで高品質なダハ双眼鏡が欲しくなり手に入れたのがこちらです。

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実は今回この双眼鏡を選んだ最大の理由はデザインでした。WXを手にして見え味だけでなくその機能性溢れる精巧なデザインもすっかり気に入ってしまい日本製の双眼鏡の良さをしみじみ感じていましたが、このHYPER-CLARITYシリーズもメタリックな質感やスタイリッシュなデザインがWXに通じるものを感じ、直線基調の独特且つ、日本製らしい派手さを抑えた上品なデザインに好感が持て、何より理屈抜きで自分にはカッコイイと感じるデザインだった事から今回は自分のこれは欲しいと思う直感に素直に従いました。

勿論デザイン倒れで光学性能が悪ければ本末転倒ですが、フジノンは高性能、高評価の天体用双眼鏡を作り続けている天文ファンには馴染みの深い、高い実績を持つメーカー、ブランドであり自分もFMTシリーズなどは実際何度もポチりそうになった事もあった事からフジノンの双眼鏡に一度は触れてみたいと言う想いがあり、このHYPER-CLARITYシリーズは現在フジノンのダハ最上位機種となっていますのでそこで躊躇する理由はありませんでした。

偏にデザイン重視と言っても欧州御三家の様なエルゴノミクスを追求した上での機能的なデザインと今回のHCの目指すデザインはベクトルが違うかも知れませんが、実物を触って動かしてみてこれは決して無意味なデザインではなく機能性の延長上にあるデザインだと感じられ、機能性を損なわないながらもそこから一歩踏み出した(双眼鏡の枠を破る、と言うメーカーの謳い文句通り)デザインで差別化を図り、付加価値を高め、デザインが双眼鏡の性能の一つとして認められる事を目指した制作者の意図が感じられる気がします。

またデザインは素晴らしくても造りが雑だったり質感が安っぽかったりなど品質が悪ければ台無しになりかねませんので実物を見るまでは気が抜けませんでしたがこれも全くの杞憂で、期待した通り素材にも拘った日本製の精緻な作り込みを感じさせる、持つ喜びを味わえるには十分な仕上がりとなっています。ファッションでも良いものを身に付ければ気分が良くなったり、より行動的になれたりする事は誰もが実感するところと思いますが、HCもその様な気持ちの良さを与えてくれる双眼鏡と言えるかも知れません。

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光学性能の面では手持ちのプリンスED6.5x32、WX10x50といずれも瞳径5mmの機種で見比べましたが、まずプリンスEDとHCで見比べるとHCが一目見て視野が明るく非常に透明感を感じる見え味で、白をより白く見せ、黒はより黒く見せるコントラストの高さも際立つ印象で、プリンスEDはHCに比べると視野が若干黄色く感じます。プリンスEDもかつてツァイスFLと見比べて見え味に遜色無いと判断して手元に残した機種ですので十分に優秀な双眼鏡と考えていますが、これであればHCも欧州機とも十分に渡り合える実力があるだろうと感じました。一方WXとの見比べでは差は小さいですが、明るさ、ヌケでWXが若干上回る印象でやっぱりやばいなこの双眼鏡と改めて思いました笑。視野の透明感をWXを100点とするならHCは97点、プリンスEDは93点位の印象でしょうか。

個人的にHCで一つ気になったとすれば視野周辺の色収差で、中心像は色収差は皆無でシャープネス、コントラスト共に非の打ち所がない見え味と感じますが、マンションの壁や電柱が画面の中心から外れた時のその縁に現れる倍率色収差?の出方はプリンスEDよりやや大きい様に感じられました。ただ何度か公園などで使用していて木々の間の鳥の様子を観察するなど見たいものを中心に持ってくる覗き方ではこれが気になる事は殆ど無く、他の同クラスの双眼鏡とも見比べていないのでもしかするとこれで普通なのかも知れません。因みにWXはプリンスEDやHCよりも圧倒的な視界の広さでありながら周辺の色収差もこれらより目立たずやっぱりどうなってんのこの双眼鏡と言う印象です笑。

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良像範囲は個人的にかなり気になるポイントでしたが星が点で見える範囲と言う点で評価すればプリンスEDが70~75%程度とすればHCは80~85%程度とかなりフラットで(WXは95%~)、視野の最周辺にやや周辺減光を感じますがやはり透明感があり星像も綺麗です。WXを見てしまうとどうしてもどちらも(かなり)物足りなさを感じるのが正直なところですが、HCも実視界8度、見掛け視界64度と通常の双眼鏡を基準とすれば十分に広角ですのでお気軽観望用としては十分にその威力を発揮してくれそうです。

各部の特徴を見ていくとターンスライド式の2段階のアイカップは切削アルミで、目に接触する面のみにゴムが貼られている凝った造りで、目に対するフィット感は非常に良く星を見ても横からの光が効率よく遮断されます。綾目ローレット加工が施されたピントノブは回転が固いとの評判も目にしていましたが、手触りも良く自分には丁度良い固さで全く気になりませんでした。「SUPER EBC FUJINON」と銘打たれた青緑色のマルチコーティングが施された対物レンズも見るからに透明感があり、WXやツァイスFLにも通じる上品な深みのある反射光が印象的です。

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個人的にはこの双眼鏡には対物先端にフィルターネジ(M46P0.75)が切られている点も大きな購入動機となっていて、対物レンズが外に近いのでキャップの着脱でレンズに触ってしまいそうな懸念がありましたが、このフィルターネジのお陰でWXと同様にレンズフードをスマートに取り付ける事が出来ました。更にこのケンコーのレンズフードの先端はφ49mm径となっていましたので、これをφ48mm径に落とすステップダウンリングも装着する事で、UHCやOIIIなどの2インチフィルターを装着可能としています。

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純正ケースもオシャレなのですが大きさが小さめでアイカップを伸ばした状態では蓋が閉まらない程度の大きさしか無く、フードを付けてしまうとこれは完全に入りませんのでこのケースの使用は諦めて、汎用のケンコーの双眼鏡ポーチを見つけて(これもやや小さめですがフードが無ければぴったりです)収納しています。ストラップもデザイン重視でエツミの汎用品を見つけましたが、ポーチと合わせて期せずしてデニム素材で統一されており、双眼鏡のオシャレ感がなるべく損なわれない様な選択となったかも知れません。

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いざ双眼鏡選びとなれば光学性能が良いものを探す事がまず第一条件となると思いますが、各社の製造技術が高まった今となってはアッパーミドルクラスの双眼鏡ともなれば自分の様な一般眼力の人間が見比べてももはや違いが分からないレベルに達していますので、この様な水準の双眼鏡の中から自分に合う双眼鏡を選ぼうとする場合、使う喜びが感じられる道具として、デザインに価値を見出して双眼鏡を選ぶ事もまた重視されて然るべきかも知れないと今回感じた次第です。

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ミニボーグ55FL対空正立ファインダー [天文>機材>ファインダー]

WXの入手に伴い退役させたミニボーグ55FL-BINOでしたが、見え味では及ばなかったにしても実視界の広さと特に良像範囲の広さはかなりWXに迫っていた部分もあり、折角探し当てたこの対物とアイピース(UF30mm)の出色の組み合わせを解消させるのが惜しかったので片側鏡筒をファインダーとして引き続き活かす事にしました。

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今回の構成は対物側から、

・BORG ミニボーグ55FL対物レンズ【2555】
・Pixco BORG互換延長筒28mm
・BORG M57/60延長筒L【7604】
・57-55mmステップダウンリング
・55-42mmステップダウンリング
・M42回転装置
・Baader T-2/90°アミチ天頂プリズム(#02)
・SCTオス-M42オスAD
・笠井 SCT/2インチスリーブ変換アダプター
・APM UF30mm

となっており、今回は合焦機構を省き、アイピースの抜き差しでピントを合わせる運用となっています。また今回大きく構成変更した部分はダイアゴナルで、以前の2インチ正立プリズムはファインダーに使用するには大きく重過ぎると感じたので、これより一回り小さい正立プリズムとしてバーダーのT2アミチ天頂プリズムを入手して換装しました。UF30mmの視野環径38mmに対してこのプリズムの開口径が31mmとやや狭いですが間隔を適度に開ける事でケラレを回避しています。

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口径55mm、倍率8.3倍、実視界8.64度、見掛け視界72度、良像範囲ほぼ100%とスターホッピング用の対空広角正立ファインダーとしてはこれまで自作した中では格段に高性能で導入が楽になり(特にスターホッピングでは視野の周辺まで使うのでそこに崩れが無いのはストレスを感じずに導入に集中出来る)、5cmクラスの対空正立ファインダーでこれ以上の性能は(十字線が無い点を除けば)望めないだろうと感じる程理想的な物が出来上がったと自己満足しています。重量も約1520gとこの性能を考えればまずまずかと思います。

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APM 20x80MS その2(フィルター装着編) [天文>機材>双眼鏡]

APM20x80双眼鏡は口径、倍率、視野の広さのバランスがとても良く、お手軽にメシエ天体を眺めるにはとても適した機材だと感じて気に入っていましたが、この度フィルターの装着が可能になりました。

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中口径双眼鏡にフィルターを取り付ける例としてはフジノンのFMTシリーズなどはオプションで接眼レンズに取り付けるネビュラフィルターが販売されていましたがこれを参考に、接眼レンズ手前にフィルターを装着する方法は無いものかと思案していましたが、この双眼鏡の接眼レンズの周囲のラバー部分の外径が50~51mm程度とほぼ2インチサイズであった事から2インチスリーブアダプターを差し込んで対物側ネジにフィルターを取り付けるアイデアを思い付き、上手く適合するアダプターは無いものかと物色して見つけたのがこのTSM48-2インチスリーブアダプター(国内では星見屋さんで取り扱い)でした。

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このアダプターは全長が17.8mmと短いので双眼鏡の接眼部に差し込んでも本体に突き当たる事が無く、対物側がM48メスネジですので2インチフィルターをそのまま取り付けられる絶妙な設計でしたが、今回はM48を31.7mmフィルター径に変換するアダプターを装着して31.7mm径のフィルターを装着する運用としています。

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アダプター装着により接眼レンズ部外径が大きくなったので(φ60mm)鼻がアダプターに当たる事もありますが、自分的には許容範囲内で思った程覗き易さは悪化してはいない印象です。ただフィルターと目がかなり近づくので曇り易く、アイレリーフ的にも眼鏡使用では全視野は見通せない裸眼専用機材となってしまうかも知れません(2インチフィルターで運用する形態にすれば多少改善しそうです)。

それでも可逆的な改造でフィルターが使用できるようになり、今後運用の幅も広がりそうです。また今回の手段は恐らくこの双眼鏡とほぼ同じ筐体設計と思われる賞月観星のED KING80mmシリーズや接眼部が同様と思われるAPMの10cmや11cmのMSタイプの直視双眼鏡にも適用出来るのではないかと思われますのでご参考になれば幸いです。

ビクセン カスタム60Lオフセット双眼望遠鏡 [天文>機材>望遠鏡]

オフセット双眼望遠鏡構築における特有の課題の一つとして下側鏡筒のバックフォーカスを如何に引き出すかが挙げられ、バックフォーカスが足りない場合は鏡筒切断などによる短縮改造が必要になる事もありますが、今回はバローレンズで焦点を引き出す事により、鏡筒改造無しのオフセット双眼望遠鏡の構築に挑んでみました。

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この場合バローを常用する事により低倍率は出し難いBINOとなりますが、今回は惑星観望用の高倍率専用機として割り切る事でデメリットを感じさせないBINOに仕上げました。鏡筒の選定は当初高倍率適性の高い小口径アポ屈折も検討していましたが、かねてより長焦点アクロの高倍率性能も確認してみたかった事もあり、ベランダで運用が可能な長さとしてスペックは6cmF15程度、また余りに古い鏡筒は避けたかった事と比較的程度の良い中古が安価に出回っていた点も勘案して(個人的には見た目もカッコイイと思える)ビクセンCUSTOM-60L(口径60mm、焦点距離910mm)に今回白羽の矢を立てました。

バックフォーカス引き出しに使用したバローレンズは笠井のBS双眼装置用の1.6xエクステンダーでこれをダイアゴナル先端(+延長筒)に装着、M42の延長筒を間に入れる事により拡大率を約2.2倍、12mmアイピースを使用した時に有効最高倍率付近(約167倍)となるように調整しています。

また今回のBINOのもう一つの構築目的は裏像ではない惑星観望を可能とする事で、高倍率に耐える裏像にならないダイアゴナルとして笠井の31.7mmDXペンタプリズムを採用し、これまで自分の惑星観望では定番のアポ屈折単筒に天頂ミラー+双眼装置と言った組み合わせでは裏像を許容するしかありませんでしたが、このBINOの構築で我が家の惑星観望用機材としては唯一裏像とはならない(倒立像)双眼観望を可能とさせました。

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今回BINOの特徴としては下段鏡筒からファインダー支持リングを介して上段鏡筒を支持する事で、ファインダー調整と同じ要領で視軸調整を可能としている点で、これはかつて自作したGuideFinder50-BINOで用いた手法ですが、高倍率での視軸調整は少し慣れは必要ですが微動雲台などを使用する方法に比べて調整機構が極めて簡素で軽量に仕上がる部分が大きなメリットと考えています。目幅調整はFL90S-BINOと同様に下側ダイアゴナルの傾斜で対応していますがやはり個人的に問題は感じません。これらの簡素な機構の積極的な採用によって重量は約3.5kgと10cmアポ単筒(102EDPの場合約4.7kg)よりも軽量に仕上がっています。

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見え味は月を見ても色収差を殆ど感じず、木星や土星も非常にシャープ(参考までのデジタルスケッチはこちら)でアポと遜色が無い印象、長焦点アクロの高倍率性能の高さを味わうには十分な見え味で、初心者向けの望遠鏡としてこれだけの性能が出ていれば十分良心的な鏡筒と感じました。また裏像ではない事で月面観望においてガイドブックに掲載されている地形との照合が容易(と言うか裏像では困難)な部分はやはり大きなメリットと感じます。

とは言え口径6cmの鏡筒なので出せる倍率は木星で180倍位までと言う印象で、FL-90Sでは最高250倍程度まで使える事を考えると見え味を点数化するならFL-90Sを61点、BLANCA-70EDTを54点とするなら53~55点位かなと感じました。また小口径BINOの利点として冬季の温度順応が早い事が挙げられ、9cm単筒と6cm双眼で比較しても双眼の方が別々に冷えていくので温度順応が早く、素早く観測体制に入れるのもこのBINOならではのメリットとなっています。

昔の自分は高倍率の惑星観望用途としてアクロ鏡筒の使用は正直アウトオブ眼中なところがありましたがCZJのC50/540を覗いた時から認識が変わり、これだけの長焦点鏡筒を用いれば十分高倍率での惑星観望にも耐えるだろう事は予想は付きましたがやはり期待通りの見え味でコストパフォーマンスはとても高いと感じられ、入門機として今も昔も長焦点アクロが定番なのは極めて合理的であると再認識した次第です。