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自作可変バローレンズ Ver2.0 [天文>機材>バローレンズ]

以前自作した可変バローレンズですが中々按配が良く、より使い易くする為に筒の伸縮をヘリコイドで行うように改良してみました。但し構築した後(ブログを書く段階)で気づいた事ですが、この自作バローは焦点位置が大きく後退し、FL90S-BINOでは問題無く合焦しますが、バックフォーカスに余裕がない他のBINOでは使用出来ない事が分かりましたので汎用性は高くないかも知れません。

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今回使用したヘリコイドはR200SS-BINOの接眼部に使用しているものと同じ物で全長は36mm~90mmまで可変、ストローク量は54mmとこれまでの拡大撮影アダプターを使用したものよりも伸縮量が多く、最小短縮時は前回よりも短く、最大伸長時は前回より長くなるように全長をM42の延長筒で調整しました。構成は対物側から、

・SVBONY2倍バローレンズ(先端部)
・31.7mm→M42アダプター
・M42延長筒(30mm)
・M42中華ヘリコイド
・M42延長筒(5mm)
・M42→31.7mmアダプター

となっており、直径もφ60mmと双眼での使用も問題ありません(目幅60mm以下の方スミマセン)。ここで例によって室内環境で拡大率を測定してみました。

《バロー無し(等倍)》
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視野円の直径は約86.4mm

《ヘリコイド最小短縮時》
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視野円の直系は約29.2mm、
よって拡大率は、86.4/29.2mm=約2.96倍

《ヘリコイド20mm伸長時》
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視野円の直系は約26.0mm、
よって拡大率は、86.4/26.0mm=約3.32倍

《ヘリコイド40mm伸長時》
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視野円の直系は約24.2mm、
よって拡大率は、86.4/24.2mm=約3.57倍

《ヘリコイド最大伸長時》
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視野円の直系は約23.0mm、
よって拡大率は、86.4/23.0mm=約3.76倍

12mmアイピース使用時はこのバローレンズを使用で3.19mm~4.05mm相当で使用する事が出来ます。

因みに我が家でこれより焦点距離の長いBINO用のアイピースはXWA9mmSSW14mmXW20が定番なのですが、XWAと12mm+バローの間の5mmクラスのアイピースが欲しいと感じる時があり購入を検討していましたが、ふと手持ちのアイピースで出番の少なかった笠井EWV-16mmをこのバローに組み合わせると凡そ5mm相当(4.26mm~5.41mm)のアイピースとして使える事に気づき、見掛け視界も85度と文句無く、スマイスレンズは入っていないのでバローとの相性も良好と、元々この自作可変バローは12mmアイピースを惑星観望用の短焦点にするのが目的でしたが、EWV-16mmとの組み合わせも超広角のナグラーズームの様に使えるのが想像以上に便利で、DSOの観望用途でも今後活躍してくれそうな気配です。

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メシエ天体クイズ Ver1.1 [天文>Webツール]



<<メシエ天体クイズ>>
メシエ天体に関する問題を出題します。
正しいと思う回答を選択肢から選んでください。

◆設問内容
カタログ番号 
星座
明るさ
大きさ
距離
名称
種類

◆出題数


◆選択肢数
 
開始するには下のSTARTボタンを押下して下さい。





《制作の経緯と出典》

自分的に天体の情報を知識として持っておく事は、天体観望をより楽しめる事に繋がると考えているにも関わらず、せめてメシエ天体だけでもと思っても中々覚える事が出来なかったので、書籍やネット(もしくは実観望)などでインプットした知識が記憶に定着しているかをテストする環境が欲しいと思い、作ってみたのがこのツールです。

但しこのクイズの設問となっている天体の明るさ、大きさ、距離に関してはデータの出典元、測定基準によってまちまちであり(大きくは違わないと思いますが)厳密な答えではありませんので、凡その天体間の相対的な違いの目安とお考え下さい。これらの3つの設問に対する軽微な回答ミスは余り気にする必要は無いと思います。

今回データの出典は自分で購入したアストロアーツのステラナビゲータ10からとなっています。これは事前にアストロアーツさまに相談させて頂き、何処で何をしたいかをお伝えして、非営利での使用と言う事でデータ使用の許可を頂く事ができました。これは内容によっては許可されない場合もあり、今回用いたデータも二次使用は禁じられていますのでご承知おきください。この他にもステラナビゲータには個々の天体の文章解説など盛り沢山の内容ですので詳しくは是非買って確認しましょう(ダイマ)。

《成績を上げる為に》

全てを一度に覚えるのは大変ですので、覚え易いところから手を付けていくといいでしょう。まずは天体の「種類」を覚えるのが良いと思います。どの様な種類が存在するかはアストロアーツのHP内の『メシエ天体の種類と特徴』がとても参考になります。ここで散光星雲/惑星状星雲/銀河/散開星団/球状星団/超新星残骸と言った天体の種類について覚えましょう。

次にどのメシエ天体がどの種類の天体に当てはまるのかは同じくアストロアーツのHP内の『メシエ天体の分類』ページに分かり易くまとめられています。ここで種類が分かってくると距離、大きさ、等級の大体の目安が見えてきます。

「距離」に関しては近い順に、

・散開星団:数百~数千光年(3~4桁光年)のオーダー
・散光星雲:数千光年(4桁光年)のオーダー
・球状星団:数万光年(5桁光年)のオーダー
・銀河:数百万~数千万光年(7~8桁光年)のオーダー

となっています。散開星団は星団を構成する個々の星々が見える位ですから距離は近く、散光星雲のようなガスが直接見える事も比較的近い(数百~数千光年)事を示しています。一方球状星団は個々の星を判別する事はより難しくなり星の集団でありながら星雲状にも見える事からこれらよりはずっと遠く、銀河系の周辺に分布している天体と考えれば数万光年と言うスケール感がイメージ出来るかも知れません。銀河はもう我が銀河系の外の存在ですので桁違いに遠くなり数千万光年のオーダーとなる事もイメージし易いかと思います。

「明るさ」に関しては、

・散開星団:3~7等
・球状星団:6~9等
・散光星雲:6~9等
・銀河:8~10等

オリオン大星雲(M42)やアンドロメダ銀河(M31)の様な例外もありますが、概ねこの様な範囲だと思います。光害地でも比較的見えるのは散開星団、もしくは球状星団で散光星雲は厳しく、銀河はまず見えないと言った経験則から考えればこの順番も覚え易いかと思います。

「大きさ」に関しては、

・散開星団>散光星雲>銀河>=球状星団

と言ったところでしょうか。散開星団は近いのでやはり他の天体より大きい一方、散光星雲や銀河も暗い割には面積体で大きいものも少なくありません。球状星団は最大でもここでは17分(M22)で概ね10分以下と考えれば絞り込みし易いかも知れません。

種類の次に覚えるべきは「所属星座」かと思います。これはアストロアーツのHP内の『メシエ天体の所属星座別の分類』ページに分かり易くまとめられています。個人的にはMナンバーと星座(種類も)の関連を覚えるには実際にフィールドで導入、観望するのが一番だと思いますが、これらを覚えれば、カタログ番号(NGCナンバーなど)も類推し易くなり、例えばおとめ、かみのけ座の銀河であればNGC4000番台が多く、しし座は3000番台、いて、さそり座の天体は6000番台と言った具合に大まかな関連付けも出来るようになってきます。

個々のメシエ天体のより詳しい情報を参照するにはアストロアーツのHP内の『メシエ天体インデックス』が役立ちます。このページには各メシエ天体の星図や写真も掲載されていますので、位置や形状のイメージを頭に入れるのも有効かと思います。もしこのクイズをする時は同時にこのページを開いておいて答え合わせしていくのも良いかも知れません。

この様に書いている本人ですらまだまだ覚え切れていませんが、検定などにも役立つ部分もあるかも知れませんので、お役立ていただければ幸いです。

※注意事項
PCでの使用を前提としています。モバイル環境では上手く動作しない可能性があります。
・ソースコードの二次使用はご遠慮ください。

※変更履歴
Ver1.1:正答率(%)の表示を追加
Ver1.0:公開


APM 120mmSA対空双眼鏡 [天文>機材>双眼鏡]

FL90S-BINOの構築に伴い口径が近いので手放したAPM10cmセミアポ対空双眼鏡でしたが、こうなるとR200SS-BINOを含めた上位口径のBINOが裏像双眼のみとなってしまった事で、この間の口径で正立双眼が出来る機材が欲しくなり、結果としてAPMの対空双眼鏡が口径アップして戻ってくる事となりました。

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実はSE120双眼やC6双眼の自作などもかなり検討していましたが、自作BINOは運用面で制約や面倒が生じる事も多く、対空双眼鏡の扱い易さは10cmで身に染みて感じていた事もあり、今回は自作は避けて完成品のお世話になる事にしました。

実物をチェックした感想は、まずアイピース交換式の初期の90度対空双眼鏡は口径がケラれているとの評判を聞いた事があり、今の製品ではそんな事は無いだろうと思いつつも気になるポイントでしたがルーペで射出瞳径を測定したところ計算通りで全くの杞憂でした。

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次に接眼部ですが前の10cmでは接眼側の開口径が幾分絞られており、長焦点広角のアイピースではケラれる心配ありましたが、今回はアメリカンサイズ目一杯の開口径があり、自由にアイピースの選択が出来るようになりました。

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今回はアイピース固定の締め付けリングの上端がアイピース当たり面まで来ている事でリングがアイピースの脱落防止溝に入らない設計となっており、10cmの時はリングが溝に入らない様に一工夫する必要もありましたが、今回はその心配も不要となりました。

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一般的にアイピース交換式の対空双眼鏡はバックフォーカスが短く、10cmの頃はピントが出ないアイピースも結構ありましたが、この点に於いても今回の双眼鏡は10cmでは結構ぎりぎりだったXW20SSW14mmなども余裕を持って合焦し、ピントに余裕がある設計に改善されていると感じました。

三脚台座には2箇所の1/4インチカメラネジ間に3/8インチネジが切られており(合計3箇所)、ここには予めアダプターが仕込まれていて1/4インチネジとしても使用可能になっています。ここにアリガタとしてBORGのVプレート125【3125】を取り付けています。

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架台はTマウント経緯台いつものL字プレートを装着しアリガタアリミゾで双眼鏡を着脱するシステムとしましたが強度的な問題はありません。ただ写真では使用していませんが実際の観望では転倒防止の為にカウンターウエイトを装着した方が安心出来るでしょう。また取っ手の部分には付属スポットファインダー取り付け用のネジ穴が2箇所設けられていましたのでここに汎用のファインダーアリミゾをやや強引ですが装着しています。

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視軸に関しては同梱されていた品質保証書?に何mmのアイピースを使って何倍までOKだったかのテスト結果が記載がされており(具体的な数値は伏せます)、自分がこの双眼鏡で使用を想定していた最高倍率(XWA9mm使用で73倍)は余裕を持ってクリアされており、実視でも全く問題はありませんでした。

見え味に関してはまず地上風景を見ると色収差が割と盛大に出ていて、セミアポを称するこの双眼鏡ですが正直何処にアポの要素があるのか分からない印象ですが、像自体はシャープに結像しており球面収差は悪くなさそうな印象です。下の写真はHD-OR12.5mm使用(52.8倍)でスマホでコリメート撮影したものです。

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色収差に関してもこの程度でしたら大口径短焦点アクロマートと考えれば普通ですし、APMの対空双眼鏡にはSDレンズを使用したモデルも販売されていますが、自分的には対空双眼鏡は構造上高倍率は向かない機材の認識でしたので、中低倍率での天体観望が前提であればセミアポ仕様が価格と性能のバランスが取れている様にも感じるところです。

天体の見え味に関してはSQM値21程度の空でM51、M81、M82、M87、マルカリアンチェーン、M22、M28辺りを見た印象では銀河や球状星団は光量のあるR200SS-BINOの方がやはり良く見えますが、網状星雲、M17、M16、M8、M20、M27、らせん状辺りをOIIIやUHCを付けて見ると写真の(を薄くした)様にも見え、Hβを使えばカリフォルニア星雲も視認できる程で、R200SS-BINOが銀河に特化したギャラクシービノとするならば、こちらは屈折のコントラストの高さを活かした散光星雲、惑星状星雲に滅法強いネビュラービノと言った趣かも知れません。

またR200SS-BINOやFL90S-BINOは裏像での観望となるのに対してこの対空双眼鏡では正立像で観望出来る点も大きく期待していた部分でしたが、天体導入においてはファインダーもメイン鏡筒も正立である事で星図との見比べによる視野内の天体の同定が格段に楽で、特徴的で豊かな形状の多い散光星雲は写真で形状が予め脳内にインプットされているものも少なくない事から、実物を見た時の違和感を感じない点もやはり大きなメリットと感じます。

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使用アイピースはXWA9mm(倍率73.3倍、実視界1.36度)、SSW14mm(47.1倍、1.76度)、XW20(33倍、2.12度)辺りがメインで、以前45度の対空双眼鏡では仰角を上げた状態でのアイピースの交換は下に落ちてくるアイピースを押さえつけながら固定する必要があり若干ストレスでしたが、今回90度対空では落下の心配は無く、やはり地上風景を少しでも見るのであれば45度対空(+EDレンズ)の意義がありますが、天体観望専用であれば90度対空が選択として妥当と感じました。

重量は公称9.6kgと10cm(6.4kg)から3kg重くなった程度ですが、持ち上げるのには両手が必要になったり体感では倍以上重くなった印象で、架台もAPポルタでは扱えない点など手軽な機材とは言えなくなったのが少し残念なところですが、12cm口径の屈折双眼と考えれば非常にコンパクトにまとまっていると感じられ、パーツの組み上げや調整が必要な自作のBINOと比べるとセッティングや撤収、運搬などの面で手間が掛からずとにかく扱いが楽と言うのが強く実感するところです。

収納に関しては以前R200SS用に購入したOptics Asiaの30インチケースがこの双眼鏡にもジャストサイズでした。このケースは中を縦に2列に仕切って望遠鏡や三脚を並べて収納する事が想定されており、それぞれの列の機材を固定するベルトが配置されているのですが、これがこの双眼鏡を収納する場合にも左右の鏡筒をそれぞれ固定してケースの中で動かないようにする役目を果たしています。

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全体として以前の10cmと比べるとあらゆる点で改良が施されており、非常に完成度が高い、洗練された機材に仕上がっていると感じました。双眼望遠鏡を自作するのも愛着が湧いて良いものですが、やはり完成品の対空双眼鏡は面倒が無く、双眼望遠鏡の自作は存外お金が掛かる事を考えると割安で手に入れる事が可能で、この様な製品が市販されている事はとてもユーザーにとって有難い事だと思います。

タカハシ MC Or12.5mm [天文>機材>アイピース]

古いツァイスサイズのアイピースでオルソの名を冠していても必ずしもアッベではなくプローセルやケルナーですらオルソとして販売されているものもあった様子で、手持ちの12mmクラシックアイピースで言えばペンタOは改良アッベですが、ニコンOは改良プローセル、ビクセンのOrもプローセルが多い(焦点距離によってはアッベもある様です)事からタカハシのOrはどっちなのだろうかと言う点は気になる部分でした。

アッベがプローセルより必ずしも高性能とは限らないかも知れませんが、やはりアイピース好きの自分としては現在ありふれたプローセルよりも製造難度や希少性も高いアッベに魅力を感じてしまうところがあり、タカハシのOrもアッベである事を期待して調べていたところ、このアイピースを分解している方のHPが見つかってそちらの写真を見るとアッベである事が分かり一安心(?)しました。

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タカハシのOrは、タカハシのメーカーHPによれば、1971年の4月に新型オルソシリーズとして5mm/7mm/12.5mm/25mm/40mmが発売され、その後1972年の6月に9mm/18mmが追加された模様です。更にその後1978年12月にマルチコーティング化されたとの事でこのタイミングで「MC」の名前を冠したのだろうと推察します(ゴム見口を採用したのもこのタイミングかも知れません)。更に1985年6月にはHi-Or2.8mm/Hi-Or4mmがラインナップに追加されたようです。その後新シリーズのLEアイピースが登場してもこのアイピースはしぶとく残り続け、2000年代初頭まで天文ガイドの広告に載っていました。LEも相当なロングセラーでしたがこちらも負けていなかったようです。

今回手に入れたのはマルチコートモデルの方で、「実用 天体望遠鏡ハンドブック(川村幹夫著)」によればMC Orはレンズ全面に6層のマルチコートが施され、ゴースト、フレアの減少、コントラストの向上、清澄な視野の実現と性能アップが図られているとの事で、アイレンズを見ると青緑色の深みのあるコーティングが印象的です。

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見掛け視界の公称値が調べても分からなかったのですが、絞り環径をノギスで測ると約9mmで例によってここから見掛け視界を算出すると約41.3度となり、他のアイピースと覗き比べるとZeiss 12,5-O(40度)より大きく、公称42度のペンタO-12や笠井HC-Or12mmとほぼ同じ見掛け視界ですので、これは42度と言っても差し支えないだろうと思います。

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惑星の見え味は全く自然で癖のない、良質な国産アッベの印象で文句の付けどころが無く、長期間に渡りタカハシ鏡筒の付属品として高性能を引き出す役割を担っていた訳ですから悪かろうはずがありません。ラインナップの内望遠鏡の付属品となっていたのは7mmと18mmが多かった様子で、中古が比較的安価で手に入り易いですので、良質なアッベオルソを手に入れたい方には狙い目かも知れません。