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タカハシ TPL-12.5mm [天文>機材>アイピース]

タカハシのAbbeシリーズがディスコンになった時(2022年2月)、タカハシHPに「後継製品を鋭意開発中」と書かれていましたがそれから約1年半後、待望の新型アイピースとしてこのTPLシリーズが発表されました。かつてのOrやAbbeはアッベ、LEはアストロプラン設計に対して今回はタカハシ初?のプローセルタイプとの事で今のご時世に新たにクラシックアイピースを開発してくれたタカハシの心意気に応える為にもこれに手を出さない訳にはいきませんでした。

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TPLの製品HP(第一陣HP第二陣HP)を見るとまず、「標準型アイピースの決定版」と銘打たれていて、更にその商品説明には「市場にはプローセルと冠したアイピースが多く出回っていますが玉石混淆なので、実際に覗いてみないとプローセルというくくりではひとえに判断できません」との一文が記されており、この言葉の裏を返せばTPLは「玉」である、と宣言しているに等しく、高屈折低分散のEDレンズを使用した色収差の低減が謳われていて、前シリーズのLEやAbbeとのスポットダイアグラムの比較まで公開されているところを見るとやはりタカハシのこのアイピースに対する並々ならぬ自信が窺えます。

TPLシリーズの当初(2023年7月)のラインナップは12.5mm、18mm、25mmの3種となっており、その後(2023年10月)に6mmと9mmが追加され、TOEシリーズを併せると短焦点から長焦点まで隙間の無い焦点距離ラインナップとなりました。かつてのOrシリーズにはHi-Or、LEにはHi-LEと言った超短焦点側に冠(恐らくは設計も)の異なるラインナップが用意されていましたが、今回成立したTOE-TPLのラインもこれまでのタカハシの販売手法を踏襲した、ある意味タカハシの標準視界アイピースの集大成とも言えるラインナップの様にも思えます(後でHi-TPLが出たらスミマセン)。

販売価格は税抜き価格19000~22000円となっており、今のご時世プローセルをこのお値段では普通には売れないのではと思いますので、タカハシのブランド力が無くては出せなかった、ある意味タカハシだからこそ本気で開発に取り組めたプローセルと言えるかも知れません。

ただ自分が大量の12mmクラシックアイピースを見比べて感じた事は日本製と欧米の有名メーカーのアイピースでは「欧米の壁」とも呼ぶべき見え味の差を感じ、例えばZeissのアイピースであれば設計のよく分からない顕微鏡用であっても総じて良く見える事から、この違いは設計よりも硝材の質や研磨の質への拘りに寄るところが大きいのでは?と感じたので、その部分で大きな差が感じられない国産アイピースが仮に革新的な設計を生み出したとしても果たしてそれだけで勝てるのだろうかと言う思いがあり、これは完全に自分の憶測による主観でしかありませんが、ZeissやTMB、Brandonなどの高性能アイピースにどこまで迫れるのかタカハシのお手並み拝見と言ったところです。

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実物をチェックすると外観はごく普通の国産アイピースと言う第一印象で特別高品質、高級感を感じるデザイン、質感では無いように感じましたが、この造りの真面目さ、丁寧さが感じられる普通さが逆にタカハシらしくもあり、国産アイピースの良さであるとも思います。レンズを観察するとアイレンズや視野レンズに曲率は感じられず、コーティングも普通に見えて外観からは特別な設計、製造精度なのかどうかは推し量る事は出来ませんが、バレル側から覗くととてもすっきりした凸凹の無い内部構造で、多くのクラシックアイピースに見られるレンズ押さえのネジ構造が存在せず、絞り環の内部に複数の遮光環らしきものも見受けられ、艶消し塗装も良質でここは造りに拘りが感じられました。バレルに脱落防止溝が無いのもGOODです。

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4、5回割と良好なシーイング下で月木星土星を他のアイピースと見比べた印象ですが、まず感じたのがピント合わせ時にピントがカチっと合う感触(ピントの山)が他のアイピースより鋭く感じ、木星の縞模様などは安定してシャープネスが高く、この感触、切れ味はTMBモノセンに近い印象です。次に感じたのはバックグラウンドの暗さ、ゴーストの無さで手持ちアイピースの中では特に迷光の少ない部類(ニコンOBrandonと同等以上)と感じられ、模様の詳細が浮き出て見える感覚もCZJ12,5-Oにも引けを取らない印象で、普通っぽい外見とは裏腹に総合性能が非常に高いアイピースに感じられ、今後も見比べの回数を増やしたいところですが現時点では例の自分の12mmランキングではBrandonと同等レベル、国産では初のSランクに文句無しで入れていいと感じました。

正直当初は上述の欧米の壁を超える事は無いだろうと過大な期待をしていなかっただけにある意味今回の結果は(国産でもやればできたんだと言う)驚きで、ここに来てここまでのアイピースを出してきたタカハシの底力には敬服せざるを得ず、長いクラシックアイピースの歴史に新たな傑作アイピースとしてその名を刻むであろう事を予見させます。