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Carl Zeiss Jena 12,5-O [天文>機材>アイピース]

12,5は12.5の誤表記ではありません。ドイツ(EU?)圏では小数点はピリオドではなくカンマ表記なのでここでもその様に表記します。

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通称CZJ(オルソ)と略される元祖オルソスコピックなアイピースですが、このアイピースに関してはZeissに関してはニワカな自分が多くを語らない方が良いかも知れません。自分がこのアイピースを入手するに当たって参考とさせて頂いたのは恐らく多くの天文ファンにお馴染みの鈴木さんの『ツァイス望遠鏡の展示室』HPで、この中の「Zeissアイピースの変遷」と言うコーナーにZeissの望遠鏡用アイピースの変遷や特長など詳しく丁寧にまとめられています。

こちらの内容から判断するに、自分が手に入れた2本の12,5-Oは80年代前半のモデル(見口周辺がザラザラの仕上げで12,5-Oの印字が上面)と80年代後半のモデル(見口周辺がザラザラの仕上げで印字が本体側面)と言う事になりそうです。便宜上これらを前期モデル、後期モデルと呼称します。

両方のモデルを見比べると前期モデルがずっしり重く感じられ実測で91g、後期モデルは53gと真鍮素材とアルミ素材の使用の違いが表れています。アイレンズの位置は前期モデルが僅かに浅く、後期モデルは見口上面から深い位置に存在する為クリーニングが難しいです。またアイレンズの曲率にも違いが見受けられ、前期モデルの方が比較的平坦に見えます。コーティング色はどちらもブルーのシングルコートと思われます。

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自分も1年程海外の中古市場を彷徨っていた感想で言えば、CZJオルソ(O-8に関しては東西ドイツ統一後の製品の様ですのでCZ「J」では無いと思われますが)の入手難度は

O-8>>>12,5-O>>4-O、6-O>25-O>10-O、16-O

と言う印象で、12,5-Oの入手難度は非常に高いと感じました(O-8は見た事がありません)。また中古相場も高く、状態が良ければ海外市場でも500ユーロは下らないかも知れません。12mmクラシックアイピースの見比べを行うに当たって、どうしてもツァイスのアイピースを加えたかったと言う想いから入手検討を始めましたが、ZAOには12mmの焦点距離は存在しない為、CZJに目を付けるしかなかったのですが、この時ばかりは12mmに拘っていた自分を呪う事となりましたσ(^_^;)

その様な訳でこれを2本入手するのは骨が折れましたが、当初からいくらなんでも古すぎると言う先入観が拭えず、よって実は見え味にはそれ程期待しておらず、海外の評判は高かったですが、Zeissにはただならぬ想い入れを持ったエンスージアストの方も多いので、一般人から見るとバイアスが掛かった評価なのでは?とやや穿った目線で見ていました。

その一方で同じCZJの望遠鏡用対物レンズのC50/540を手に入れて、その上品な造りと優秀な見え味から古いものでもきちんと作られたものは全く現在でも通用する性能を持っている事も認識していたので、我が家の数多の12mmクラシックアイピースの中でどこまで健闘できるかは楽しみでもありました。正に見せてもらおうか、CZJのオルソスコピックの性能とやらを!と言ったところです。

見比べは主にFC-100DLTSA-120ブランカ150SEDと言った鏡筒で双眼装置バローを付けて行いましたが、他のアイピースからこのアイピースに交換した時にえっ!?と驚きました。それまでシーイングのせいと思っていたややぼんやりとしていた木星や火星の模様の詳細がぐっと浮かび上がってくる感じに見えるのです。やや像が暗く、色合いが黄色っぽい気もしましたが、中心解像度は間違い無くトップクラスで何でこんなに古いアイピースがこんなに良く見えるの?と不可解さを覚えるレベルでした。

他のアイピースより少し劣ると感じたのは迷光処理の部分で、火星や木星などの明るい天体を見ると丸い光芒(ゴースト?)が前面に出てくる感じでもしかすると表面模様のコントラストを下げているかも知れませんが、とにかくそんな事を忘れさせる程模様が良く見えるアイピースで、これであれば苦労して手に入れた甲斐があったと報われた気分でした。また室内環境で周辺像のチェックもした限りでは歪曲の少なさもトップクラスでツァイスのオルソの名は伊達ではないと感じました。

古いCZJでこの見え味であれば、マルチコートされたより設計の新しいZAOが惑星用アイピースとして最強と称されても頷ける気がします。しかしCZJでも十分良く見えますので、ZAO程は高騰しない、数も比較的出回っていて入手し易い10-Oや16-O辺りを狙うのも惑星観望派の方にはアリかも知れません。