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75mm口径拡張Hα太陽望遠鏡 [天文>機材>望遠鏡]

《CAUTION!!》
今回の試みは元々危険を伴う太陽観望を更に危険にするものであり、使用を誤れば人体(眼)に恒久的なダメージを与える可能性がありますので完全自己責任、非推奨の試みです。あくまで参考までにお読みください。


Xのフォロワーさんのgariさんがコロナドの60mmのSolarmaxエタロンを使用した口径150mmの太陽望遠鏡を構築されたチャレンジを知って、この手法を用いれば我が家の太陽望遠鏡の40mmのエタロンを使用してより大きな口径の太陽望遠鏡が作れるのでは?とこれまでHα太陽観望をしていてもう少し口径があればなあと常々感じながらも60mmのエタロンの値段を見てはため息をつく日々を送っていた自分にとってこれは正に福音、天啓とも呼べる出来事で、この試みを見た瞬間から居ても立ってもいられなくなり調査を開始、試行錯誤の末最終的に口径75mmに口径をアップした太陽望遠鏡を構築する事が出来ました。

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口径拡張の方法を紹介する前にまず市販の太陽望遠鏡の仕組みについて簡単に解説すると大きく二つに分かれ、一つはコロナドの太陽望遠鏡に多く採用される対物レンズ前にエタロンを置く構成、もう一つはラントの太陽望遠鏡に多く採用される対物レンズの後ろにエタロンを置く構成で、以下にそれぞれの方式の構成イメージと長所、短所を挙げてみました。

tlscp-slrexp75_1.jpg

《エタロン対物レンズ前設置式(Coronado Solarmax鏡筒など)》
◎長所
・エタロンの取り付け汎用性が高く、通常の望遠鏡を使用出来る。
・光学系がシンプルで、像の悪化を招き難い。
・広い良像範囲を原理的に得易い。
△短所
・エタロンの有効径で対物レンズ有効径(=解像度)が制限される。

《エタロン鏡筒内蔵式(LUNT鏡筒、Coronado PSTなど)》
◎長所
・エタロンより大きい対物レンズが使用出来る為解像度を上げ易い。
△短所
・内部構造が複雑でエタロンの流用は難しい。
・3群のレンズ構成となる為、光軸調整の難度が高い。
・良像範囲の点で原理的に不利?

前者の利点はエタロン取り付け汎用性の高さで、通常の望遠鏡に外付けする事で太陽望遠鏡として使う事が可能で(アダプター制作が必要になる場合がありますが)お好みの鏡筒一本で昼夜の使い分けが出来るので鏡筒を増やさずに済む、フィルターのみの保管が可能で収納面で融通が利くのが大きなメリットだと思います。後者の内蔵方式では複雑な光学系でエタロン単独を外したり他に流用する事は困難で、基本的にメーカー販売鏡筒を持つ事しか出来ません。

その一方後者の利点は何と言っても大口径を得易い事で、前者はエタロンの有効径で対物レンズ有効径が制限されますが後者は光路内にコリメーターレンズを用いた平行部を設ける事で内部にエタロンを設置する方式の為対物レンズ口径よりも小さなエタロンが使用が可能で、翻せば前者方式と同径のエタロンであればより大きな口径の対物レンズを使用する事が出来る=より高い解像度の太陽像を得る事が可能となります。ラントには口径15cmや23cm、30cmと言ったコロナドには無い超大口径太陽望遠鏡がラインナップされていますが、この方式ならではと言えるでしょう。

良像範囲についてはエタロンには極力平行な光線が入る事が目的の波長(Hα)を取り出すには望ましく、エタロン対物レンズ前設置式の場合は太陽光線は太陽の視直径0.5°の半分、±0.25°の(最小限の)角域でエタロンに入射しますがエタロン内蔵式の場合、発散系の(コリメーター)レンズがエタロン前に入る事でガリレオ式望遠鏡の様に機能して太陽像がエタロン入射前に拡大されてしまう為、光束の角域が広がる事でエタロンを通過した後のHα領域が狭くなる、つまり良像範囲が狭くなると言う事が原理的に言えます。(これはじろーさんとgariさんのアドバイスから自分なりに解釈した部分です。間違えていたらスミマセン)

ただ実際にはエタロンの径が大きくなればそれだけ全面で精度(平行度)を保つ難度も上がりますので良像範囲の点では不利な面とも言え、ラントの太陽望遠鏡がコロナドのそれより見えないと言う評判も特に聞きませんので、トータル(製品)としては両方式に大きな違いが無い(それ以外の要因にも大きく左右される)のが実情かも知れません。



これを踏まえた上で今回の試みを一言で表せば、

《本来対物レンズ前に設置するコロナドのエタロンをラントのように対物レンズ後ろに配置する事で対物を大口径化させる改造》

と言えるかと思います。

この改造で鍵となるのが内部にエタロンを配置する為の平行部をどうやって設けるか、コリメーター(凹)レンズ、リフォーカス(凸)レンズにはどのようなもの(レンズ構成、口径、焦点距離)を用いれば良いかの知識が必要となってきます。ここは自分には当初全くちんぷんかんぷんで見当も付かないところでしたが、この部分をgariさんに道筋を付けて頂けた事で一気に計画が具体的となり設計制作に取り掛かる事が出来ました。

知識の中途半端な自分が考えたところとしては、結局対物レンズで集光した光を平行に戻すのが目的ですので、対物レンズのF値とコリメーターレンズのF値を一致させるのが基本の設計と考えて(ここは多くの議論を呼ぶところでそこまで単純ではなさそうなのですが)これを念頭に対物レンズとコリメーター、リフォーカスレンズの選定を始めました。

まず対物レンズの口径と焦点距離ですが、BF5を流用したい考えから焦点距離は500mm前後と決めて、口径は8cmから10cm程度あれば望ましいと考えましたがエタロン有効径が40mmである事とF値をあまり小さくすると像が悪化しそうな直感が働いて無理はしない方が良いと判断、この条件に合いそうな市販の対物レンズを探した結果スコープタウンの口径80mm、焦点距離560mm(F7)のアクロマート対物レンズに白羽の矢を立てました。この製品は金属セル付きで日本製レンズ(久保田or大一光学?)使用ですので性能、品質面でも間違いがありません。

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またコリメーターレンズ、リフォーカスレンズに使用する平凹、平凸レンズですが、エタロンの有効径40mmよりレンズ径の大きいものでF7程度のものがないか探したところ(これがあまり無いのです)モノタロウでアズワンと言う会社で取り扱われている口径50mm、焦点距離が±300mmの平凹凸レンズを見つけ、これらを使用した場合エタロンの有効径で絞られて実質300÷40=F7.5となる事から、対物レンズの方も口径を80mmから75mmに絞る事で560÷75≒F7.47とほぼ一致する設計としました。

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尚コリメーターレンズの配置は口径75mmF7.5の対物レンズから入射した光束がΦ40mmとなる位置で対物レンズとの間隔は260mmとなっています。これらを踏まえた今回太陽望遠鏡の設計イメージが以下となります。

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また今回改造で太陽がよく見えるかどうか以上に最も気を使うべき安全対策についてですが、対物レンズ前にUV/IRカットフィルター(KANI 82mm径)を配置、またコリメーターレンズ前にR2フィルター(Marumi MC-R2 48mm径)を配置する設計としました。本当はバーダーのD-ERFなどのエネルギー遮断フィルターを用いるべきかと思いますが非常に高価で、これが必要なほど今回の拡張口径は大きくは無いのでは?と自己判断、ダブルスタックのエタロンを通すのでこれでひとまず様子を見ようと言う魂胆です。上記2つのフィルターを重ねるとD-ERFに近い透過領域にはなりますが、コーティングやフィルター厚に少なからず違いがあるようにも見えますのでこれは本当に自己責任です。



設計とレンズの調達が出来たところで次は鏡筒制作ですが、長さ40cmのプレート(青アリガタ)を2本使い、アリミゾ(赤)を介する事で伸縮式となるフレームを構築、これをベースに各レンズ、接眼部を搭載する作りとしています。伸縮式にしたのは収納面でのメリットもありますが、対物レンズとコリメーターレンズの間隔を微調整出来るようにしたい思惑があり、この構造もgariさんの方式を真似させて頂きました。

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対物レンズは光軸調整(センタリング+スケアリング)が可能となるようにガイドスコープ用の支持リングで対物セルを支持する造りとしました。またこの対物セルの前方からAmazonで見つけた86mm径レンズフード(八仙堂)の内側に植毛紙を貼り付けて逆向きにはめ込み、82mm→86mmステップアップリング、82mmメスメスの継手リングを介して82mm径のUV/IRカットフィルターが取り付けられるようにしています。

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コリメーターレンズは家に余っていたパーツを駆使して外径60mmの円筒形パーツに内蔵させて、このパーツの対物側にMC-R2フィルターを装着しています。尚今回望遠鏡にはファインダーは設けておらず、太陽の導入はこの部分の光の当たり具合を見て行っています。

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以前の太陽望遠鏡ではエタロンの鏡筒への取り付けはミニボーグ50の対物フード先端に直接ねじこむ方法が安全且つ扱い易かったので今回もその方式を踏襲、リフォーカスレンズはエタロンになるべく近づけるのが望ましいと思われたので、この対物フード(BORG【60207】)内に家に余っていた色々なリングを詰め込んで極力前方に内蔵させました。

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コリメーターレンズにリフォーカスレンズを内蔵した接眼部の外径をΦ60mmで統一し、MoreBlueのΦ60mm鏡筒バンドで後方フレーム上に取り付ける事でこれらの間で光軸がずれ難い構成としました。またこのままでは対物レンズとコリメーターレンズの間ががらんとしていて後ろから覗き込むと対物レンズからの入射光が直接目に入る危険性がある為、遮光の為のフードを設けています。ついでなのでこの部分にキャリーハンドルも付けました。

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リフォーカスレンズ以降のパーツ構成は、

・BORG ミニボーグ50用フード(BK)【60207】←この内部にリフォーカスレンズ
・BORG M57/60延長筒S【7602】
・BORG M57/60延長筒L【7604】
・BORG MMF-1【9857】

としていますが、これは観望はNikon双眼装置の使用を前提として、基本となるアイピースをTV PL32mmと決めた上で、拡大率2.4倍相当のバローレンズ(笠井BS2xエクステンダー)を使用して丁度良い倍率(42倍、射出瞳径1.8mm)とバックフォーカスが得られるように延長筒の長さを調節した結果となっています。



一通り構築は完了したものの実際に覗くまではこれでちゃんと見えるのか半信半疑でしたが覗いてみて驚愕、細いダークフィラメントが多数走っている様子、プラージュの入り組んだ構造、立体感を感じる太いダークフィラメントが毛羽立つ様子、プロミネンスのディテールに加え、太陽光球面外に千切れ飛んでいる様子など4cmでは到底見る事が叶わなかった詳細な太陽の表情を観望する事が出来て、これには感激しました。

この改造で良像範囲は4cmの時より狭くなっている可能性はありますが体感ではそれ程では無く(元々良像範囲は光球面の6~7割程度でそれ程広くはありません)何より見える模様の解像度、詳細の見え方が格段に違うので以前の構成に戻せるようにも当初は考えていましたが、今ではとても以前の太陽像を見る気にはなれません。

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大口径太陽望遠鏡の価格を鑑みれば、自分的には比較的少ない投資でこれだけの見え味向上が得られた今回改造は本当に画期的、革命的だと感じますが、知識が乏しいまま突っ走ってしまったので安全面を考えると手放しで喜んで良いものなのか、ブログで紹介して良いものなのか悩んだ部分もあり、自分の場合太陽望遠鏡で一度に長時間は観望する事は無く(一回でせいぜい20分程度で片付けます)観望中でも覗いていない時は鏡筒をさっと横に向けるように気を配っていて(このお陰か8年前に購入したBFにも殆ど劣化は見られません)仮に長時間太陽を導入、観望し続けた場合の人体、機材に及ぼす影響などは分かっていませんので、この様な改造を他人に積極的にお勧めする趣旨ではない事は改めてご承知おきください。

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ACクローズアップレンズNo.5-BINO [天文>機材>望遠鏡]

ACクローズアップレンズアイピースミニボーグ55FL-BINOなどの退役によって余っていたパーツを再活用して構築してみたBINOがこちらです(以下CUpレンズNo5-BINOと呼称)。

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構成は対物側から、

・MARUMI 58mm-48mmステップダウンリング
・Kenko ACクローズアップレンズNo.5 58mm・・・余り物
・42mm-58mmステップアップリング
・中華M42ヘリコイド(25-55)・・・余り物
・48mm-42mmステップダウンリング
・SC2インチ90°正立プリズム(目幅短縮加工)・・・余り物
/100mmファインダーアリガタ
/MoreBlue目幅調節装置・・・余り物
/45度三角アリガタ

となっています。

今回BINOの構造的な特徴は2インチ正立プリズムの底面にファインダーアリガタを直接取り付け(M2.3x12mmのネジを使用)、これをMoreBlueの目幅調節装置に装着する事で鏡筒(鏡胴)部分を持たないBINOとなっており、これにより対物レンズとして焦点距離200mmのACクローズアップレンズNo.5(今回は58mm径)を使用してもピントを出す事が可能となり、イーソス17mmの使用で見掛け視界100度で実視界8.5度(倍率11.8倍、射出瞳径3.3mm)とWXにかなり肉薄するスペックを実現する事が出来ました。と言っても今回は周辺像の崩れを抑える目的とMasuyama32mmの使用を考慮して口径を39mm(F5.1)に絞っており、最小目幅もワンオフ加工したこの正立プリズムを以てしても63mm止まりとなっていますのでやはり実視界9度、口径50mm、最小目幅58mmを実現するWXの凄さをここでも再認識した次第です。

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それでもイーソスを使用した時の見え味はクローズアップレンズ使用であっても像が甘い印象は特になく、良像範囲は8割程度でWXには敵いませんが見掛け視界がWXの90度とイーソスの100度とでは視野の広さの印象の違いは結構あり、没入感ではこのBINOが上回っているかも知れません。またMasuyama32mmを使用した時の良像範囲も7割程度と意外に広く、正立プリズムの開口径の関係で視野が若干ケラれますがそれでも実視界13度近く(倍率6.3倍、射出瞳径6.2mm)を出せており、こちらも普通の双眼鏡では中々見られない景色を味わう事が出来ます。

WXとの最大の違いはこちらは90度対空(正立)となっていますので架台に載せての天頂付近の観望が容易となっており、今回のBINOの重量は約1930gとアイピース込みで考えるとWXより重いですが手持ちも何とか可能で、また机や台に載せれば三角アリガタ部分を支点にする事により架台を使わずに手振れを抑えた、腕が疲れない卓上BINOとして使える点も今回BINOのユニークな部分かも知れません。

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低倍率広視界のコンセプトで観望対象が若干WXと被るとは言え、ほぼ余り物のパーツで組み上げた割には存外しっかりとした見え味に機能も備わっており、正立プリズムとアリガタを固定するかなり細いネジに負荷が掛かっているのは不安材料ではありますが、スペック面でも(WXが無ければ)ユニークで実用的な機材が出来上がり、気軽に星空散歩する機材として有効活用していければと思っています。

ミニボーグ71FL-BINO [天文>機材>望遠鏡]

以前小口径広視界型のBINOとしてミニボーグ45ED-BINO60ED-BINOを切り替えて使用していましたが、45ED-BINOはその後ミニボーグ50-BINO55FL-BINOとそのコンセプトが継承されていった一方で60ED-BINOの口径、視野の広さのバランスの良さも捨て難く、このBINOは対物レンズ外径による68mmと言う最小目幅がネックとなって対物口径が制限されていましたがこの状況を打破する為に意を決してビノテクノのEZMを導入、更に対物レンズをミニボーグ71FLに口径アップする事で中型のBINOへと進化させたのがこちらです。

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鏡筒部の構成は、

・BORG ミニボーグ71FL対物レンズ(WH)【2571】
・BORG M57/60延長筒SS【7601】
・Pixco BORG互換M57延長筒28mm
・BORG M57ヘリコイドDXII【7761】
・BORG M57/60延長筒M【7603】/K-ASTEC TB-60AS鏡筒バンド
・BORG 2インチホルダーSII【7504】
・ビノテクノ EZM(左右ペア/誘電体コート)

と60ED-BINOからの派生とは言っても全くの別物となっています。前作から継承されているのは台座のHowie Glatter製PST BinoPlatform位でしょうか。

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EZMを採用するのであればより大口径も狙えたのですが、このBINOはアンドロメダの全景をなるべく大きな口径で眺めたいと言う目的があり、構造面でも台座パーツやヘリコイドの耐荷重の問題もあり、片手で持ち運べる手軽の範疇の機材に収めたい狙いからも71FLのスペックが最適と判断しました。

今回のBINOの製作で一番苦労したのが台座パーツと鏡筒を繋ぐプレートの特注でした。製作はユーハン工業にお願いし、設計する際の寸法の計測が目見当に頼らざるを得ない部分があり、現物合わせでの修正が必要になるなど一筋縄ではいきませんでしたが無事に出来上がりました。重量は約4.1kgとなっています。

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使用アイピースはほぼイーソス17mm固定となっており、倍率23.5倍、実視界4.25度での100度双眼視の世界はやはり他の機材では味わえない、新たな眼視体験を提供してくれます。このBINOを作る目的ともなったアンドロメダを見るとM100、M32も含めた全景がバランス良く視野に収まり、これまでの45EDや60ED-BINOで物足りなかった部分がかなり解消され、実視界の広さでは敵いませんが没入感や視野の透明感と言った部分ではWXにも引けをとっておらず、この見え味であれば作る価値があったと満足出来ました。

他にも網状星雲も東側(NGC6992-5)と西側(NGC6960)の両方を一望可能でUHCやOIIIを使用した見え味は写真の様で、北アメリカ星雲もフィルター使用で淡いですが全景が収まり、すばるや二重星団などの散開星団も繊細な描写でありながら迫力があり、小口径ではありますがその分視野が広くイーソス双眼の威力も相俟って、APM12cm双眼などより大口径の双眼機材と比べても見た目のインパクトで遜色の無い天体像を描写してくれます。

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ケースはAmazonで非常にピッタリなサイズのアルミケースを見つける事が出来ました。

ここで我が家の双眼機材の特徴を以下に示します。

 接眼部向き 接眼部径 適正倍率
 R200SS-BINO逆向き31.7mm 裏像低~中倍率 
 APM12cm対空90°対空31.7mm正立像 低~中倍率
 FL90S-BINO90°対空2インチ裏像低~高倍率
 APM20x80MS直視交換不可正立像低倍率
 ミニボーグ71FL-BINO 90°対空2インチ正立像低~高倍率
 CUSTOM60L-BINO90°対空31.7mm倒立像中~高倍率
 ミニボーグ55FL-BINO90°対空2インチ正立像低~中倍率
 WX10x50直視交換不可正立像低倍率
 CUpレンズNo5-BINO90°対空2インチ正立像低倍率

どの機材も一長一短がありますが、個人的に天体用機材で望ましいと考える条件(上の表の赤字部分)、90°対空で正立像、2インチアイピースが使用可能で、低倍率から高倍率まで観望可能と言った条件を全て満たすのは今回のBINOだけとなっています。

きちんとしたBINO用台座(PST BinoPlatform)のお陰で自作では難度の高い精度のある目幅調整、視軸調整機構が備わっており、EZMの使用で正立での高倍率観望においても像の劣化を感じる事は無く、最小目幅や使用アイピースの制限も無いと言った点で自分の手持ちのBINOの中でも恐らく最も完成度が高く、とにかく運用面でも見え味の面でもバランスの良さが光る機材となったと満足しています。

ビクセン カスタム60Lオフセット双眼望遠鏡 [天文>機材>望遠鏡]

オフセット双眼望遠鏡構築における特有の課題の一つとして下側鏡筒のバックフォーカスを如何に引き出すかが挙げられ、バックフォーカスが足りない場合は鏡筒切断などによる短縮改造が必要になる事もありますが、今回はバローレンズで焦点を引き出す事により、鏡筒改造無しのオフセット双眼望遠鏡の構築に挑んでみました。

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この場合バローを常用する事により低倍率は出し難いBINOとなりますが、今回は惑星観望用の高倍率専用機として割り切る事でデメリットを感じさせないBINOに仕上げました。鏡筒の選定は当初高倍率適性の高い小口径アポ屈折も検討していましたが、かねてより長焦点アクロの高倍率性能も確認してみたかった事もあり、ベランダで運用が可能な長さとしてスペックは6cmF15程度、また余りに古い鏡筒は避けたかった事と比較的程度の良い中古が安価に出回っていた点も勘案して(個人的には見た目もカッコイイと思える)ビクセンCUSTOM-60L(口径60mm、焦点距離910mm)に今回白羽の矢を立てました。

バックフォーカス引き出しに使用したバローレンズは笠井のBS双眼装置用の1.6xエクステンダーでこれをダイアゴナル先端(+延長筒)に装着、M42の延長筒を間に入れる事により拡大率を約2.2倍、12mmアイピースを使用した時に有効最高倍率付近(約167倍)となるように調整しています。

また今回のBINOのもう一つの構築目的は裏像ではない惑星観望を可能とする事で、高倍率に耐える裏像にならないダイアゴナルとして笠井の31.7mmDXペンタプリズムを採用し、これまで自分の惑星観望では定番のアポ屈折単筒に天頂ミラー+双眼装置と言った組み合わせでは裏像を許容するしかありませんでしたが、このBINOの構築で我が家の惑星観望用機材としては唯一裏像とはならない(倒立像)双眼観望を可能とさせました。

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今回BINOの特徴としては下段鏡筒からファインダー支持リングを介して上段鏡筒を支持する事で、ファインダー調整と同じ要領で視軸調整を可能としている点で、これはかつて自作したGuideFinder50-BINOで用いた手法ですが、高倍率での視軸調整は少し慣れは必要ですが微動雲台などを使用する方法に比べて調整機構が極めて簡素で軽量に仕上がる部分が大きなメリットと考えています。目幅調整はFL90S-BINOと同様に下側ダイアゴナルの傾斜で対応していますがやはり個人的に問題は感じません。これらの簡素な機構の積極的な採用によって重量は約3.5kgと10cmアポ単筒(102EDPの場合約4.7kg)よりも軽量に仕上がっています。

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見え味は月を見ても色収差を殆ど感じず、木星や土星も非常にシャープ(参考までのデジタルスケッチはこちら)でアポと遜色が無い印象、長焦点アクロの高倍率性能の高さを味わうには十分な見え味で、初心者向けの望遠鏡としてこれだけの性能が出ていれば十分良心的な鏡筒と感じました。また裏像ではない事で月面観望においてガイドブックに掲載されている地形との照合が容易(と言うか裏像では困難)な部分はやはり大きなメリットと感じます。

とは言え口径6cmの鏡筒なので出せる倍率は木星で180倍位までと言う印象で、FL-90Sでは最高250倍程度まで使える事を考えると見え味を点数化するならFL-90Sを61点、BLANCA-70EDTを54点とするなら53~55点位かなと感じました。また小口径BINOの利点として冬季の温度順応が早い事が挙げられ、9cm単筒と6cm双眼で比較しても双眼の方が別々に冷えていくので温度順応が早く、素早く観測体制に入れるのもこのBINOならではのメリットとなっています。

昔の自分は高倍率の惑星観望用途としてアクロ鏡筒の使用は正直アウトオブ眼中なところがありましたがCZJのC50/540を覗いた時から認識が変わり、これだけの長焦点鏡筒を用いれば十分高倍率での惑星観望にも耐えるだろう事は予想は付きましたがやはり期待通りの見え味でコストパフォーマンスはとても高いと感じられ、入門機として今も昔も長焦点アクロが定番なのは極めて合理的であると再認識した次第です。

我が家の自作BINOの特徴、及び使用アイピースの考察 [天文>機材>望遠鏡]

日頃我が家の自作BINOに組み合わせるアイピースの選定に頭を悩ませる事が多く、運用シミュレータを毎回叩くのも手間なので、ある程度考えが固まったものを自分用のメモとして表にまとめてみました。

 使用アイピース 倍率 見掛け視界 実視界 射出瞳径

 VX10LMk-V
等倍延長レンズ使用)
UW6mm
UW9mm
SSW14mm
XW20
267倍 
178倍
114倍
80倍
68度
68度
83度
70度
0.26度
0.38度
0.73度
0.88度 
0.9mm
1.4mm
2.2mm
3.1mm 

 R200SS-BINO
(1.8xバロー内蔵)
・SSW14mm
・XW20
SWA32mm
103倍 
72倍
45倍
83度
70度
70度
0.81度
0.97度
1.56度 
1.9mm
2.8mm
4.4mm 

 APM12cm双眼・UW6mm
XWA9mm
・SSW14mm
ES24mm
110倍
73倍
47倍
28倍
68度
100度
83度
68度
0.62度
1.36度
1.76度
2.47度
1.1mm
1.6mm
2.5mm
4.4mm

 FL90S-BINO12mm3.6xバロー
EWV16mm+3.6xバロー 
WS20mm+3.6xバロー
・XWA9mm
Ethos17mm
Masuyama32mm
246倍
184倍
145倍
90倍
48倍
25倍
50度
85度
84度
100度
100度
85度
0.2度
0.46度
0.58度
1.11度
2.1度
3.36度
0.4mm
0.5mm
0.6mm
1mm
1.9mm
3.6mm

 ミニボーグ71FL-BINO ・12mm+3.6xバロー
・EWV16mm+3.6xバロー
・WS20mm+3.6xバロー
・XWA9mm
・Ethos17mm
・Masuyama32mm
121倍
91倍
71倍
44倍
24倍
13倍
50度
85度
84度
100度
100度
85度
0.43度
0.94度
1.18度
2.25度
4.25度
6.8度
0.6mm
0.8mm
1mm
1.6mm
3mm
5.7mm

 CUSTOM60L-BINO
(2.2xバロー内蔵)
・12mm
・EWV16mm
・WS20mm
167倍
125倍
100倍
50度
85度
84度
0.3度
0.68度
0.84度
0.4mm
0.5mm
0.6mm

 CUpレンズNo5-BINO・XWA9mm
・Ethos17mm
・Masuyama32mm
22倍
12倍
6.3倍
100度
100度
75度
4.5度
8.5度
12度
1.8mm
3.3mm
6.2mm

自分的にBINO用のアイピースの決め方としてはまず最大実視界が得られる低倍率側のアイピースと、その機材で実用範囲の最高倍率を出せるアイピースを決めた上で、その間を2、3のアイピースで埋める、と言う傾向が多いように思えます。

また自作BINOが増えてきて、その特徴、使用目的、コンセプトを明確にしておかないと機材作りが迷走して際限無く増殖してしまう懸念がある事から(やや手遅れ)、各BINOの長所、短所についても以下にまとめてみました。

《R200SS-BINO》
tlscp-bnftr_r200ss_2.jpg
【長所】
・集光力が高く、銀河、球状星団が良く見える。
【短所】
・視軸の微調整が困難な構造の為高倍率が不適。
・裏像。
・コントラストが低いのか淡い散光星雲が思ったより見えない。
《APM12cm双眼》
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【長所】
・大口径屈折の利点を活かしたコントラストの高さで散光星雲に強い。
 → ナローバンドフィルターを使えば色収差、像の甘さはキャンセル出来る。
・正立像。
・視軸調整が不要。
・一体型構造の為口径の割に運用が楽。
【短所】
・構造上高倍率は不適。
・星像が甘く、散開星団の見え味は今一つ。
《FL90S-BINO》
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【長所】
・星像が非常に鋭く、散開星団に強い。
・コントラストが高く、散光星雲も口径なりに強い。
・ダイアゴナルが一回反射の為光量損失が最小限。
・2インチアイピース使用可能。
【短所】
・視軸が非常にずれ易い。
 → 調整機構の操作性は良いのでかろうじて高倍率観望が可能。
・裏像。
・構成パーツが多く、口径の割に手軽では無い。
《ミニボーグ71FL-BINO》
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【長所】
・小口径だがそれを感じさせないオールラウンダー。
・正立像。
・2インチアイピース使用可能。
・目幅調整、視軸調整機構の精度が高い。
【短所】
・高倍率適性は高いが短焦点の為高倍率が出し難い。
《CUSTOM60L-BINO》
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【長所】
・裏像ではない高倍率双眼観望が可能。
・L字プレートなどが不要で架台に直接取り付けられる構成の為設置撤収が早い。
・小口径の為温度順応が早く、冬場でも短時間で惑星観望が可能。
【短所】
・視軸調整が癖があり慣れないと難しい。

自分が最初の自作BINO、ミニボーグ45ED-BINOを作ったきっかけはイーソス17mmを使用した100度双眼の世界をどうしても味わってみたいと言う理由が第一でしたが、もう一つ、雑誌やネットで望遠鏡・双眼鏡サミットや双望会と言ったスターパーティで紹介されるオリジナリティー溢れる自作機材を拝見して、自分も小口径でも良いのでオリジナルの機材を所有する事に憧れた事も大きな原動力となりました。

実際作ってみると期待以上の見え味に自作の手応えを感じ、市販の機材に比べると自由度や万能性、機動性などは低いかも知れませんがその分一点突破の尖ったスペックで至上の見え味を味わえるメリットに加え、アイデアを思い付いて工夫、改善を積み重ねた機材が狙い通り、もしくはそれ以上の機能、性能を実現出来た時のカタルシス、大きな達成感が得られるところが自作の醍醐味と言えるのかも知れません。

自分にとって達成感とはある目標を決めてそれを達成する事で自己成長が実感出来、それが自分の自信に繋がり、人生を前向きに生きる原動力、生きる力にも繋がるものと考えていますので、それ故に最近は自作する過程が楽しく、ややもすると「手段の為には目的を選ばない」状況に陥り兼ねませんが笑、投じれる資金や保管スペースには限りがありますのでその機材が本当に必要かどうかもよく吟味した上で今後も自作を楽しんでいければと思うところです。

ミニボーグ50-Hα太陽望遠鏡 [天文>機材>望遠鏡]

ミニボーグ45EDIIを使用したHα太陽望遠鏡で双眼装置を使用して観望する場合、バローを挟む都合で倍率が高くなり40mmのアイピース使用でももう少し低い倍率で観たいと感じる時が少なくなかった事から、対物レンズをより短焦点のミニボーグ50に換装しました。

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また従来の構成ではピント合わせにM57ヘリコイドLIIIを使用していましたが、これを対物側に置いてもエタロンが重く、接眼側に置いても双眼装置が重く動きが渋いのがストレスでしたので、今回フォーカサーもMMF-1に換装させたところ圧倒的に動きがスムーズで余裕があり、ストレスの無いピント合わせが可能になりました。今回の構成は以下の様になっています。

・Coronado SolarMaxII-40mmダブルスタック用フィルター
・Coronado SolarMaxII-40mmメインフィルター
・BORG ミニボーグ50対物レンズ【2050】
・BORG DZ-2【7517】+Vプレート80S【3165】+笠井DXファインダー台座
・BORG MMF-1【9857】
・Coronado BF5ブロッキングフィルター

鏡筒部分のボーグパーツは3つのみとほぼ最小(最短)構成となり、全長が以前より短くなった事で対物の先にあるエタロンのチューニングダイアルへのアクセスが容易になり、双眼装置も従来のMk-VからNikon顕微鏡用に交代して重量が軽くなった事で使い勝手も大幅に向上しました。

この構成にNikon双眼装置との組み合わせで最も倍率が低くなるバローを手持ちのものから調べたところMeadeの2xバローが最適で、これで拡大率が約3.8倍、AH40mmとの組み合わせで約24倍まで倍率を引き下げる事が出来ました。

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この組み合わせで期待通りに太陽像は大幅に小さくなり、双眼装置を使用しても十分な明るさで観望出来るようになりました。逆に今度は40mmアイピースでは若干小さく感じる様になり、TV PL32mmがより具合が良く、もうちょっと倍率を上げても良い感じですがとにかく見易くなり、PSTやソーラーマックス40鏡筒の焦点距離が400mmなのに比べてミニボーグ50の焦点距離は250mmですので、口径40mmのダブルスタックHα太陽望遠鏡で双眼装置を使用した太陽像としては他では出ない俯瞰した低倍率が出せているかも知れません。

ブランカ150SEDロンキーテスト [天文>機材>望遠鏡]

ブランカ150SEDのロンキー像を撮ってみました。ロンキーアイピースでスマホ(ASUS Zenfone3)コリメートでベガを撮影、シーイングは3-4/10位の条件です。一枚だけの画像では傾向が読み取り難く感じたので、内像と外像を各4枚ずつチョイスして並べました。オートコリメーターの様なきちんとした設備で撮ったものではありませんのであくまでご参考までです。

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これを眺めると全体的に負修正傾向で、輪帯的な縞の歪みも見受けられる気がしますが、ロンキーアイピースの記事にリンクしているジズコHPの縞の見方にも書かれている様に、ロンキー像は望遠鏡の性能を測る「判断材料の一つ」であり、実際に星を見て良く見えるかどうかを判断する方が重要です。自分的にはこの鏡筒で何度も素晴らしい惑星像を観望していますので、多少縞が曲がっているように見えようがこの鏡筒への信頼が揺らぐ事はありません。

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ミニボーグ55FL-BINO [天文>機材>望遠鏡]

以前相性の良いアイピースが見つからず頓挫した55FL-BINOの構築計画でしたがフラット性能が非常に高いUF30mmとこの対物を組み合わせたところ非常に相性が良い事が分かり、ミニボーグ50-BINOの構成をベースにより進化させたBINOとして復活を果たしました。

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構成は前回の試作時と殆ど同じで、

・ミニボーグ55FL対物レンズ【2555】
・M57ヘリコイドS【7757】
・2インチホルダーSS【7506】
・DZ-2【7517】
・2インチホルダーSSII【7501】
・スタークラウド SC2インチ90°正立プリズム(目幅短縮仕様)

となっています。前回この構成ではイーソス17mmではピントが出ないのでDZ-2の短縮改造なども試しましたが、UF30mmはイーソス17mmと比べて焦点位置が大きく対物寄りで改造無しでも合焦する事から、今回のBINOではイーソス17mmを使用しない前提でシンプルなこの構成をそのまま採用出来ました。

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当初XW20SSW14mmXWA9mmと言った31.7mm径の我が家の定番双眼用広角アイピースもピントが出ず、このBINOの使用アイピースはUF30mmで固定となりそうでしたが、ふとEZMに付属の超ロープロファイルの2インチ→31.7mmアダプターが余っている事を思い出しこれを使用したところこれらのアイピース全てでピントが出るようになり、倍率可変のスタイルを幸い維持出来る事になりました。

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見え味に関しては最初に書いた通り、UF30mmとの相性が抜群で良像範囲はほぼ100%あり、口径55mmで倍率8.3倍、実視界が8.64度(見掛け視界約72度)の視野をフル点像で描写されるこの光景は他の機材では中々味わえない、複数のメシエ天体を俯瞰して一望するような独特の世界観を与えてくれる点で小口径ながらインパクトのあるBINOに仕上がったように思うところです。

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総重量は2750gでミニボーグ50-BINOの時とほぼ変わらずに集光力は約1.21倍上がり、ミニボーグ45ED-BINOから始まった低倍率広視界と良像範囲の広さの両立を目指した小口径BINOの自作もこれでようやく決定版と言える出来になったのではないかと自己満足しています。

FL-90Sオフセット双眼望遠鏡 [天文>機材>望遠鏡]

自分的に惑星観望用の機材はアポ屈折+双眼装置の組み合わせが鉄板でしたが、観望仲間の方のアポ屈折による双眼望遠鏡の惑星像がとても印象深かったので、自分の機材でもアポ双眼での惑星も見てみたい欲求に駆られた結果、自分が学生時代から使っている望遠鏡、ビクセンFL-90Sを双眼望遠鏡としてみたのが今回のBINOです(以降FL90S-BINOと呼称)。

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この形式はオフセット双眼望遠鏡と呼ばれるタイプで、2つの鏡筒を上下にオフセット(段差をつける)する事で鏡筒の左右間隔を狭める事が出来、松本式正立ミラー等を使わずに通常のダイアゴナル使用で双眼視を可能とするものです。Twitterのフォロワーのminoruさんがその名付け親で、自分も天文ガイドかネットかは失念しましたが、minoruさんのBINOでその存在を知りました。

オフセット双眼望遠鏡の長所と短所は以下の様なところです。

《長所》
・ごく普通の天頂ミラーを使用できるので安価に構築出来る。
・反射が一回で済むので像の劣化が最小限に抑えられる。
・目幅調整をダイアゴナルの傾斜で対応すれば構造が簡略化できる。

《弱点》
・天頂ミラー使用の場合裏像になる。
・10cm以上の中口径鏡筒では構築が難しい。
・下段鏡筒のバックフォーカスを大きく引き出す必要があり、場合によっては鏡筒切断などの改造が必要。

このFL-90SのBINO化は当初EMSを使う方法を検討していましたが、元々所有していた側の鏡筒は接眼部を2インチ化する為に鏡筒切断し、それも判断ミスで短縮し過ぎた(10cm強)のが仇となり、双眼用にもう一本鏡筒を入手しても長さの違う鏡筒を並べてBINO化するのは色々と問題が多かったのに対して、オフセット双眼であればこのアンバランスな状態を逆に活かしたBINOに出来る事に気が付いて、渡りに船のこの方式に助けられる事となりました。

今回のBINO構築で悩んた部分、工夫した部分を挙げてみます。

《目幅調整》
EMS使用の双眼望遠鏡では目幅を調整する方法として片方鏡筒をスライドさせるか目幅調整ヘリコイド付きのEMSを使用する方法が一般的と思いますが、今回のオフセット双眼では下側鏡筒のダイアゴナルを傾斜させる事によって目幅を変更する方法を採用しています。勿論片側のダイアゴナルのみを傾斜させれば左右の像で回転方向のズレが生じますが、オフセット双眼では下側鏡筒の回転軸からアイポイントまでの距離が大きく離れる事から、目幅調整程度のアイポイントの横シフト(±5mm)程度では左右の像の一致が妨げられる程の視野回転が生じない事を利用した手段です。この方法は他の方法に比べても格段に機構が簡略で安価に済み、この方法が採用できるのもオフセット双眼の大きなメリットと個人的には考えています。

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目幅最大時
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目幅最小時

例えば鏡筒間隔を65mm、目幅変更によるアイポイントの横シフト量を±5mmとする事で、目幅調整範囲を60~70mmと想定すれば、下側ダイアゴナルの回転軸からアイポイントまでの距離は例としてXW20を使用した場合実測約260mmとなる事から、横シフト量を最大の5mmとした場合の傾斜角θは、

・tanθ=5/260

から

・θ≒1.1°

となり、より全長の長いアイピースではこれより角度が小さくなり、この程度の像の回転では双眼視には全く影響しない印象です。

《L字プレート》
毎度お馴染みの強度には信頼の置ける中華L字プレートをベースに、アリガタの短さを補う為に2段重ねとし、また上鏡筒を取り付ける為のアリミゾを低重心の微動雲台を介して装着し、ここで視軸を調整します。

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また二つの鏡筒の内側にデッドスペースが存在し、このBINO全体を動かすハンドルも欲しかった事からこの部分にMoreBlueのプレート(AU016)を縦に装着、この空間から導入対象を狙えるようにファインダーアリミゾ、更に自作の覗き穴ファインダーも装着させました。

プレート部の全重量は約2750gと上鏡筒(約3.2kg)と下鏡筒(約3.8kg)を合わせると総重量は約10kgとなりますが、Tマウント経緯台で無理なく運用出来ます。

《接眼部》
上側鏡筒用としてノーマルのFL-90Sを手に入れたのですが、接眼部を笠井の蔵出しでたまに販売されるφ90mm径ネジに取り付け可能なクレイフォード接眼部に無加工で換装しています。これで両鏡筒共に2インチ対応に出来ました。

《ダイアゴナル》
上側鏡筒のダイアゴナルにはBBHSミラーを使用し、下側鏡筒のダイアゴナルは光路消費の関係からバーダーのT2プリズム(#01C)を使用、M42→M48延長筒を介して光路を上に伸ばしてダイアゴナルとアイピースとの間隔を十分に開ける事で、2インチアイピース使用でもケラレが生じない設計としています。因みにスムーズな目幅調整を実現する為にT2プリズムと2インチバレルの間にはM42の回転装置を挟んでいます。

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火星を高倍率で見た印象では見え味でブランカ150SED+双眼装置にはやはり及ばず、重量は同程度で扱い易さは150SEDの方が上ですので一見こちらのBINOの存在意義が危ぶまれそうですがそんな事は無く、150SEDやTSA等の単鏡筒での双眼観望は高倍率に限定されるのに対して、今回のBINOは高倍率から中低倍率まで幅広い領域をシームレスに双眼観望出来る部分が最大の強みと言えます。

これまでこの鏡筒の強みは高倍率性能と思っていましたが、高性能アポ双眼による低倍率観望はオフセット双眼による一回反射の強みも相俟って、星雲などは非常に解像度やコントラストが高く、何より星像が針で突いた様に鋭い事から特に散開星団が美しく見えます。接眼部を2インチ対応とした事でイーソス17mmの双眼が使える事も大きく、これで見るM42、二重星団、アンドロメダ、そして月なども見蕩れる程の見え味です。

自分的にはこれまで低倍率での天体観望ではアポクロマートまでは必要無いと考えていて、これまでアクロマート対物のBINOを使用しても特に不満を感じる事はありませんでしたが、今回のBINOのヌケの良さ、星像の美しさを見てしまうとアポクロマートの収差補正は低倍率域、DSO観望においても見え味の向上に少なからず寄与しているのではと思うようにもなりました。

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アイピースは低倍率用がイーソス17mm(倍率47.6倍、実視界2.1度)以外でもSWA32mm(25.3倍、2.77度)、そしてこれまで中々活躍する舞台が見出せなかった自作ACクローズアップレンズアイピース(焦点距離48mm、見掛け視界56度、倍率16.9倍、実視界3.32度)もこの長焦点BINOでは活かす事が出来るようになりました。

中~高倍率はXWA9mm(90倍、1.11度)、自作可変バローレンズEWV-16mmを使用して5mm相当(162倍、0.52度)、もしくは12mmクラシックアイピースを組み合わせて3.8~3.2mm相当(倍率は216倍~253倍)で使用する事で惑星や重星観望にも対応しています。アイピースの見比べにおいても従来は単鏡筒+双眼装置にとっかえひっかえで行っていたのに対し、このBINOではサイドバイサイドで見え味の比較が可能な部分も我が家の他の機材では出来ない強みとなっています。

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予め片方鏡筒が大きく切断されていた事情から選択せざるを得ない方式ではありましたが、実際に構築してみてオフセットビノの合理的な設計思想に感心させられる事が多く、自分もすっかりその魅力の虜となってしまい、双眼望遠鏡をより身近にする手段の一つとしてもっと広まっても良い方法だと感じました。何より愛着のあるFL-90Sをこれ以上無く性能を高める道が見付かって、今後も末永く(生涯)愛用していければと思うところです。

ビクセン R200SS反射双眼望遠鏡 [天文>機材>望遠鏡]

25cmニュートン反射(VX250L)を以ってしてもDSO、特に銀河は存在が確認出来る程度の見え味で、それはそれで満足しているつもりだったのですが、観望会で35cmドブで見せてもらったNGC4565やソンブレロが写真を薄くしたように見えて、やはり銀河も口径があれば見た目も楽しめる対象になりえる事が分かってしまった為、更なる大口径への欲求が高まりました。

しかしながら大口径ドブは自宅の収納環境の問題や何より自身の体力的に扱うのは困難と思われたので、自分の手に負える範疇でDSOが一番見えそうな機材を模索する中で、自分的に双眼観望を前提とするなら中口径の反射望遠鏡で双眼望遠鏡を自作出来れば大口径に双眼装置を使うのに匹敵する見え味が得られるのでは?と思い至り、最終的に出来上がったのがこのビクセンのR200SS鏡筒を使用した反射双眼望遠鏡です(以後R200SS-BINOと呼称)。

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以下、完成に至るまでの経緯を場所毎に記します。

《架台の選定》
AZ-3経緯台は2本の鏡筒の搭載と視軸調整が可能でしたのでこの架台を上手く使えないかと考えた結果、カウンターウェイトを搭載できるL字プレートを用意出来れば、架台上部に2つの鏡筒を並べる事が可能に思えたので、この方向で計画の詳細を練る事になりました。

《鏡筒の選定》
鏡筒の選定はAZ-3に2本の鏡筒を載せても無理の無い重量に留めなければならない制約から口径20cmが限界だろうと判断し、その中でも短焦点でより軽いと思われる20cmF4鏡筒に狙いを定めました。

20cmF4鏡筒で現在普通に入手可能なものは、ビクセンのR200SS、笠井のGINJI-200FN、スカイウォッチャーのBKP200/800の3種が挙げられ、それぞれ、

・価格:BKP>GINJI>R200SS
・バックフォーカス:GINJI>BKP>R200SS
・重量:R200SS>GINJI>BKP

と言った長所と短所があり、当初はバックフォーカスの長いGINJIを検討していましたがやはり重量的に厳しいと感じ、この点で価格が魅力だったBKPも見送り、R200SSはバックフォーカスが短いですがF4なのでバローで焦点を引き出す事を許容し、また中古が多く出回る鏡筒でもあったので価格も抑える事が出来そうな点も選定の後押しとなりました。

但しR200SSは非常にロングセラーの鏡筒ですのでその間に細かい仕様変更が繰り返され、なるべく製造時期の近い個体を並べたい事情から、販売時期が比較的短かったDG(ダークグリーン)鏡筒に目を付けました。尤もこの色が個人的に格好良くて好きだった理由が大きかったのですが。

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《接眼部》
接眼部は当初2インチ対応を考えていたのですが、重量的な問題、合焦機構の問題、最小目幅の問題など解決の難しい課題が多かったのでここも無理せずアメリカンサイズで妥協する事で一気に計画が現実味が帯びました。

使用するダイアゴナルは当初WOのヘリコイド付き正立プリズムを想定していましたが、この構想をTwitterで打ち明けたところフォロワーさんのシベットさんから反射双眼で正立プリズム使用では左右の像が一致しないだろうとの指摘を受けました。これは全く自分には考えが及ばなかった部分で、後日試しにこの正立プリズムで双眼視したところ指摘通り左右の像が90度回転しており双眼視が成り立たず、これを通常の天頂プリズムにすると像が一致します。この原理は今考えても分かりませんが、この事が指摘されなければここで混乱していた事が予想され、先人の方々の知見は本当に有難いと感じました。尚ダイアゴナルに普通の天頂プリズムを使用する事は像が裏像になると言う事ですが、世に出回っている反射双眼は特殊な例を除いてほぼ裏像との事でした(そうだったのか!)。

その様な理由から普通のダイアゴナルを改めて選定する事になりましたが、光路長が短い点と接眼側にヘリコイドを搭載出来る見通しが立った笠井のMC天頂プリズムを採用し、ダイアゴナルのバレル端に笠井のBS双眼装置用の1.6xエクステンダー(+延長筒)を装着する事でバックフォーカスの少ないR200SSでも十分な引き出し量を確保する事が出来ました。

このバローを入れた事でドロチューブの伸縮量に対するピント(ヘリコイド)の移動量は一対一ではなくなり、少しの幅の眼幅調整でも多く量のヘリコイドの伸縮が求められる事からストローク量90mmのM42中華ヘリコイドを見つけ出す事によってアイピースの変更に伴うピントの違いも合わせて吸収出来る合焦機構が構築出来ました。恐らく像回転の問題が無くてもWOの正立プリズムではヘリコイドのストローク(15mm)が全然足りなかったと思われます。但しこの構成で光路長が増した事でバローの拡大率は最終的に約1.8倍となっています。

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《プレート》
かなり頭を悩ませて試行錯誤したのがAZ-3の主鏡筒側に取り付けるプレートの構築でした。当初L字プレートに視軸調整用の微動雲台を搭載するアイデアで検討を進めましたが、試作の段階でテストすると仰角によってどうやっても左右の鏡筒でたわみの差が変動して視軸の維持が困難である事が分かり、視軸調整をAZ-3副鏡筒側の粗動で行うのはこれはこれで困難が予想されましたが、L字の構造を止めて微動雲台も排する事で鏡筒の間隔も狭まり、構造もシンプルとなり、たわみもほぼ発生しないI字プレートの構築が実現出来ました。これはプレートの側面のネジ穴の間隔とアリミゾの取り付けネジ穴の間隔が偶然一致していた事で成立しています。

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またカウンターウェイトを装着させる為にアリガタの先端にウェイトシャフトを取り付ける構造としました。ウェイトはこちら側にビクセンの2.8kgのウェイトを2個、副鏡筒側も1.9kgと3.7kgのウェイトを装着し、これでクランプ無しで手を離してもガクっとはならないバランスの良さも実現しています。

結果としてこのプレートの構成パーツは、

ビクセン規格ダブルブロック締付式アリミゾ
・BORG Vプレート125【3125】
AstroStreet L型マルチプレート(アリガタは撤去、コーナー金具は流用)
・MoreBlue AU003 ビクセン規格260mm自在アリガタ(タカハシM8長穴仕様)
・スカイメモS用ビクセン互換ウェイトシャフト(ヤフオク)

となりました。

また副鏡筒側のプレート(MoreBlue ビクセン規格280mm自在アリガタ)は鏡筒重量を極力抑えたかった事情からファインダーを架台の下側に取り付ける目的で、AZ-3の副鏡筒側の端面にネジ穴が設けられているのを発見してここに小型のアリミゾを装着する事でプレートを介して3cm対空正立ファインダーWideFinder28の二つを搭載しています。またこのBINOは姿勢変更の際に特に副鏡筒側に触れてしまうと視軸がいとも簡単にずれてしまうので、鏡筒に触れずに姿勢を変更する為のガイディングハンドルとしての機能もこのプレートに持たせています。

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《視軸調整》
視軸調整は結局AZ-3に元々備わっている調整機構に頼る事になりましたが、クランプを締める際に視野がずれてしまう点が問題ではあるものの、そのズレの量を予め把握する事でクランプを締めて像が一致する様に視軸を合わせる方法も慣れれば会得する事が出来ました。ただやはりこの機構では微調整が困難な為、惑星を見るような高倍率での運用は捨てています。

《使用アイピース》
高倍率は捨てていますがむしろ低倍率広視野が欲しい局面も多いですので、SWA32mm(45倍、1.56度)をこのダイアゴナルで使えるように改造を施したのはケラレも無く大正解でした。XW20(72倍、0.97度)やSSW14mm(103倍、0.81度)もバランスが良い見え味で、銀河は100倍程度の高倍率を掛けた方がコントラストが上がって見易くなる気がします。

《見え味》
NGC4565やソンブレロの暗黒帯が見える事を期待していたのですがそこまでは確認が難しく、M51やM33等のフェイスオン銀河もうっすら腕が分かる程度で、オリオン座の燃える木も観望会で覗かせてもらったBlanca-102SEDビノよりも薄い様に感じられ、全体として見える事は見えるがコントラストが淡い印象です。ただM82は淡いながらも内部構造が視認出来、かみのけ座を流し見するといくつも銀河が飛び込んできて形状もエッジオンかそうでないかなどはすぐに判別できる見え味で、35cmドブにはやはり及びませんが、25cmの存在確認のレベルからは一歩上の観望が出来るようになりました。

集光力は主鏡の面積に比例しますので、双眼望遠鏡はどの程度上の口径の通常の望遠鏡の集光力と同じかと言えば、双眼望遠鏡の口径の半径をr、通常の望遠鏡の口径の半径をxとすれば、

・πr2×2=πx2

より、

・x=r×√2

となりますので、双眼望遠鏡の√2倍の口径の通常の望遠鏡と集光力はイコールとなり、20cmの双眼望遠鏡であれば約28cmの望遠鏡の集光力と同じ事になり、自分が観望会で見た35cmドブの単眼での見え味には及ばないのはある意味当然と言えます(28cmと35cmでは集光力は1.6倍差があります)。

但し通常の大口径ドブで双眼視するには双眼装置が必要で、更に低倍率を出す為にはリレーレンズが必要になったり、リレーレンズを使わないでバックフォーカスを大きく引き出すとなると斜鏡の大型化が必要になったりしますので、双眼望遠鏡に比べると光量をロスする要素が増える点を加味すれば20cmの双眼望遠鏡は30cm程度のドブに双眼装置を使った場合の見え味と同等になっている可能性もありそうです。また大口径シュミカセに双眼装置の組み合わせは一見お手軽に等倍観望が出来るように思われますが、口径を求める程焦点距離が長くなる為、反射双眼の様な低倍率広視野を得るのは難しく、この部分が反射双眼の大きなアドバンテージと言えるでしょう。

また反射双眼の最大の弱点(?)でもある裏像である点は、DSO観望に於いてはフェイスオン銀河や形状が特徴的な星雲など写真で見慣れた天体は少し違和感を感じる事もありますが、個人的にはアポ屈折に天頂ミラー、双眼装置を使う惑星観望などは裏像である事は全く気にしていませんので、こちらもそこは割り切って使っています。

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今回初めて反射双眼を自作して痛感した事は双眼望遠鏡は小口径でも大口径でも左右の像を一致させる際に求められる視軸の精度(許容されるズレの小ささ)は変わらない点で、よく考えれば当たり前ではあるのですが、口径が大きくなれば指数関数的に鏡筒が重くなるので姿勢変更によるたわみの差によって生じる視軸のズレ(量としてはコンマ数ミリ?)を抑える事は相当困難となり、そうはさせないノウハウは色々あるのだろうとは思いますが、大口径で反射双眼を成立されている方々は正直常軌を逸している(褒め言葉)とすら感じます笑

自分もこのBINOの構築途中でこれは完成しないのでは?と頭を抱える曲面に何度も遭遇し、双眼望遠鏡構築の難しさはパーツをあらかた集め切って最終形態に近いレベルに仕上げないと双眼望遠鏡として機能するのか(視軸が実用レベルで維持できるのか)最終的に判断できない点で、ここが無理となればそれまで集めたパーツが全て無駄になる恐れもあり、戦々恐々としながら最終的には完成に持って行けてホッとした、安堵したと言うのが正直な思いです。

見え味に関してはもう少し銀河(特に暗黒帯)が見えたら嬉しかった思いはありますが、自分の体力で無理なく運用できる重量、所有する小型自動車で無理なく運搬出来、室内保管時に邪魔にならない体積、手動微動が可能と言った点でこれ以上の口径の双眼望遠鏡の自作、運用は自分には無理と思えますのである意味自らの限界に挑んだBINOと言え、それでもストレスを感じずに使える完成度に仕上げられた点はとても満足しています。またトータルで切断や接着等の一切の加工無しに完成出来た点も可逆的な改造を好む自分的には満足度を押し上げているポイントとなっています。

制作期間が構想から2年程掛かっただけに想い入れの深い機材となりそうで、今後の我が家のDSO観望の切り札としての活躍を期待しています。

ミニボーグ50-BINO その2(45度対空化編) [天文>機材>望遠鏡]

我が家のベランダの幅では椅子を置くスペースが無いので人工芝が張られた床に直に座って望遠鏡を覗く都合上、対空双眼鏡や双眼望遠鏡を覗く場合は45度対空が望ましく、90度対空BINOを椅子無しで無理に覗くと腰を痛めてしまう事情から、ベランダでの稼働率を上げる為まずはミニボーグ50-BINOのダイアゴナルを従来のSC2インチ90°正立プリズムからSVBONYの31.7mm45°正立プリズムに換装する事で45度対空化してみました。

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45度対空モードでは2インチアイピースは使えなくなりますが、BINO用の31.7mm径アイピースも最近充実してきたので(XWA9mmSSW14mmXW20RKE28mm)特に不便になる事はありません。

この45°正立プリズムの光路長が2インチ90°正立プリズムとそれ程変わらない事から最低限のパーツの着脱でピントがそのまま出るので2インチ90度対空モードとの切り替えがスムーズに出来る部分が嬉しい誤算で、45度対空モードでは当初の想定通りベランダでの運用も格段に楽になり、今後稼働率も上がりそうです。

笠井 BLANCA-102EDP [天文>機材>望遠鏡]

小口径アポをFL-90Sに一本化する目的であれ程お気に入りだったFC-100DLを手放したにも関わらず、またしても違う10cmアポを手に入れる事に関しては相当な葛藤がありました。それでも購入に踏み切った動機はこの鏡筒(以下102EDPと呼称)のF11のアポ屈折と言う新製品としては近年稀に見るスペックにありました。

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FC-100DLを手放した大きな理由の一つはF9のフローライトアポと言うスペックがFL-90Sと全く同じであった事からキャラクター(?)が被ってしまい、両方の鏡筒を使い分ける楽しみに自分的に乏しい事がありましたが、102EDPのFPL-51相当と噂されるEDレンズ採用にF11の長焦点の組み合わせであればFL-90Sと住み分けが出来て楽しめそうに感じ、また今の短焦点の写真向け鏡筒が全盛のご時勢にこの様な眼視に特化した長焦点鏡筒をリリースしたメーカーの心意気に応えたい気持ちが購入の後押しとなりました。

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しかし今のご時勢長焦点鏡筒にどれだけメリットが存在するのか、ただ長焦点鏡筒に対する憧れのみで手を出すのも悩ましいものがありましたので、改めて長焦点鏡筒のメリットを考えてみました。

《対物レンズの曲率》
長焦点鏡筒は対物レンズのRを浅く(曲面を緩やかに)出来る、つまり研磨量が少なく済む為エラーを起こし難く、設計通りの性能の出し易さと言う点で有利で、望遠鏡が工業製品である事を考えれば決して無視できない要素と思います。高品質なレンズが製造し易い事で、コストパフォーマンスの高い鏡筒を安定供給できるメリットは大きいと考えられます。

《高倍率適性》
個人的な運用で言えば惑星観望時のアイピースは焦点距離が12mmのものしか使いませんので、鏡筒によって異なる適性倍率はバローで調整して出す事になりますが、長焦点鏡筒であればバローの拡大率を下げる事が出来るので、入射側も射出側も光線の角度が浅く光学系の負担を減らす事が出来、より対物の性能が引き出せて見え味にも反映されると考えられます。

《コントラストの向上》
鏡筒が物理的に長いので迷光を減らし、バックグラウンドを暗くする、対象のコントラストを上げる効果が見込めます。

《ピント深度の深さ》
長焦点鏡筒は焦点深度が深くなり、ピントの合う範囲が広いので、ピント位置が鋭くシビアな短焦点鏡筒と比べると高倍率でのピント合わせが容易になります。

《光軸修正》
長焦点になると光軸がシビアではなくなり、調整難度が低下しますので余り光軸に神経質にならなくても十分な性能が発揮出来るのは光軸を気にし易い人にとっては安心できるポイントです。

《収差補正》
長焦点鏡筒が色収差の面において格段に有利な事は言わずと知られた事ですが、対物レンズのRが浅ければ当然球面収差も少なくなり、短焦点鏡筒では制御の難しい周辺像の収差も大きく軽減出来、Fの長さは七難隠すの格言の通りその他収差補正の面でもあらゆる点で原理的に有利となります。



かつて市場に出回った長焦点屈折の大半がアクロマート屈折である事を考えると、102EDPはFPL-51相当ながらもアポ屈折でありながらこれらの恩恵を享受出来るのが最大の魅力と言っても良く、現在の短焦点アポも非常に優秀ですが、硝材の差をどの程度ひっくり返せるのかがこの鏡筒の見所と言えるかも知れません。

まずは実物を手に入れて外観の印象ですが、鏡筒が長い事は長いのですが商品画像でみるほど長くは感じない、扱い易い範囲で留まっています。それでもFC-100DLに比べると二回り程大きく感じられ、TSAにも近いボリューム感がありますが重量は見た目よりも軽く感じられ、APポルタに載せても無理無く扱える範疇で10cmアポの軽快さは失ってはおらずこの点は少し安心しました。

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純正ポルタではFC-100DLでも厳しかったですのでこの鏡筒を載せるのは正直厳しいと推測しますが、スコープテックのZERO経緯台ならある程度大丈夫では無いかと思います。ただ鏡筒が長いですのでAPポルタで使用してもピント合わせ時の振動はそこそこ出ます。

接眼部は2.5インチのラックアンドピニオンなのですが、正直見た目ほど上質な印象は受けませんでした。ピント合わせでゴリッっと変な感触が伝わる時があり、この接眼部も御多分に洩れず重量アクセサリー搭載時には微動が若干空回りする事もあったりと少し造りに雑さを感じますが、致命的に困る程でもなく何とか及第点の造りと言ったところです。

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実際の見え味について、地上風景では電柱や電線の淵と言った色収差を感じ易い部分でも全く感じる事はありません。星を見ると極めてシャープなエアリーディスクが印象的で、木星の表面模様などはサイドバイサイドで見比べなければTSAとそれ程見え味は変わらないんじゃないかと思わせる点でFC-100DLと比べても遜色無い、10cmアポとしてまず文句の出ない見え味を発揮していると感じます。勿論同等の見え味であればより軽くコンパクトなFCの方が優秀な鏡筒と言えなくもないですが、その一方で価格差は2.5倍ありますので、コストパフォーマンスの点では102EDPに大きく軍配が上がり、長焦点のメリットを遺憾無く発揮している鏡筒と言えると思います。

この様なある種郷愁を誘う長い鏡筒に好感が持てる方には見た目だけでなく性能も備わっており、最高クラスの10cmアポの見え味を出来るだけ安い価格で手に入れたいと考える方にも文句無くお勧めできる鏡筒です。

ミニボーグ50-BINO [天文>機材>望遠鏡]

ACクローズアップレンズBINOを構築した事でミニボーグ45ED-BINOと口径がほぼ同じBINOが2つになってしまった事からミニボーグ45ED-BINOの対物を60ED固定とする事で差別化を測っていましたが、ミニボーグ60ED-BINOとして運用すると最小目幅が68mmとなってしまい、他の人に覗いてもらうのが難しい点が不満に感じ、遂にここに来てEMS/EZMの導入を考え始め、EMSを導入するなら対物の口径もより大きく出来る事から更なる大口径のBINOの構築を検討する事になりました。

そこでEMSを導入するとこれまで使用していた2インチ正立プリズムが不要となり、これも最小目幅を縮める為に加工をお願いしたワンオフものとなっていた事からこれを使わなくなるのも勿体無く感じ、有効活用しようとACクローズアップレンズBINOを2インチ化する事を検討し始めました。

しかし試行錯誤した結果この組み合わせではバックフォーカスを出すのが難しい事が分かり、ここは思い切ってACクローズアップレンズBINOとは全く別にに2インチ対応の小口径BINOを作る方向に舵を切り、ボーグパーツにはやはりボーグの対物レンズが相性が良い事から、ディスコンが決まり在庫限りとなっていたミニボーグ50の対物レンズを急遽手に入れて、ミニボーグ45ED対物レンズよりも焦点距離が短い事からより広い視界が稼げるBINOとして出来上がったのがこちらです。

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片側の鏡筒部の構成は、

・ノーブランド 52mm→48mmステップダウンリング
・BORG ミニボーグ50対物レンズ【2050】
・Pixco マクロエクステンションチューブ(ボーグ互換延長筒)14mm
・BORG M57ヘリコイドS【7757】
・BORG M57/60延長筒S【7602】
・BORG DZ-2【7517】
・BORG 2インチホルダーSSII【7501】
・スタークラウド SC2インチ90°正立プリズム(目幅短縮仕様)

となりました。対物レンズフードの先端には2インチフィルターを装着出来るようにステップダウンリングを取り付けています。またミニボーグ50の対物レンズの色が黒に仕様変更されていた事からBINO全体の色が黒一色となり何となく味気が無かった事からボーグ互換延長筒部分と正立プリズムの加工部分に紫色のテープを貼り付けてアクセントを出してみました。

BINOのベースとなる台座パーツはACクローズアップレンズBINOに導入したMoreBlueの目幅調節装置の鏡筒の着脱方法がアリガタアリミゾだったので、今回のBINOの鏡筒にもファインダーアリミゾを取り付け、用途によって鏡筒を差し替える形で台座は兼用としています。

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このBINOでの使用アイピースは、

UF30mm(倍率8.3倍、見掛け視界72度、実視界8.64度)
イーソス17mm(倍率14.7倍、見掛け視界100度、実視界6.8度)
XWA9mm(倍率27.8倍、見掛け視界100度、実視界3.6度)

辺りを想定しています。今回は合焦機構がM57ヘリコイドSのみとなった事でピントの移動範囲が10mmしかありませんので、どんなアイピースでもピントが出る造りでは無くなってしまった事からイーソス17mmを使って無限遠でヘリコイドの中央でピントが出るように光路長を調整しています。

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見え味に関してはF5対物との事で広角アイピースでは周辺像が辛くなるところですが、UF30mmはこの部分の性能に特化した設計なだけあり良像範囲は9割程度あり、イーソス17mmの方も元々短焦点に強くこちらも9割程度の良像範囲がありますので覗いていて周辺像の崩れが特に気になる事はありません。

これらのアイピースの組み合わせの場合実視界が6度~8度超を実現出来ますので、視直径が5度以上あるような天体、例えばヒアデスやMel20と言った大きい散開星団の全体を俯瞰して見る事が可能で、ぎょしゃ座のM36、M37、M38をまとめて同一視界で眺めたり出来るなどこのBINOでなければ味わえない世界を体験できます。

このクラスの実視界は手持ちの双眼鏡であれば割と一般的なスペックですが、50mmの口径で超広角の見掛け視界と広い良像範囲を両立しているものは殆ど見当たらず、対空双眼鏡として架台に取り付けて楽な姿勢で天体を眺められる利点も併せると使用感は手持ちの双眼鏡とは全く別物で、倍率こそ近いですがやはり望遠鏡の範疇に入る機材だと思います。

総重量はL字プレート込みで約2780gでAPポルタとの組み合わせで準備も撤収も楽なお手軽双眼観望機材として今後活躍してくれそうです。

復活のFL-90S [天文>機材>望遠鏡]

我が家で最も古い天文機材、高校時代から使っているFL-90Sですが、FC-100DLを手に入れて以降出番がめっきり減ってしまい、同じF9の2枚玉フローライトと言う点でキャラクターが被っており、より口径の小さいFLを手放す事を何度も考えたのですが想い入れの深い鏡筒なのでどうしてもそれが出来ず、一方最近TSA-120APZポルタで使うようになって格段に使用機会が増え、逆にFCの稼働率が下がっていった事から、ここは思い切ってFCを手放して、更にブランカ70EDTも手放す事で、小口径アポはFLで一本化しようかなと考え始めました。

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とは言えFCもブランカも性能に信頼の置けるお気に入りの鏡筒ですので、FLが優秀な鏡筒である事は分かってはいましたが、これらを手放しても後悔しない惑星観望性能を有しているかを改めて確認する事としました。

しかしFLを使わなくなってしまったのは別の問題もあって、このFLは純正接眼部を社外2インチ接眼部に換装させる際に加減が分からず鏡筒を切断し過ぎてしまい(約10cm)、これを補う為に8cmの延長筒を付けると言う本末転倒な運用を余儀なくされていましたが、Mk-V双眼装置4.2xバローを付けて観望しようとするとこれでも長さが足りず、惑星観望に十分な高倍率が出せなかった事から積極的に使う事が無くなっていったのでした。

そこで今回ボーグパーツを使って長さを可変できる延長筒を作る事を思い立ち、折角なので2インチ固定部分もバーダーの2インチクリックロックを採用する事で程よい長さでアクセサリーの着脱も格段にスムーズになり、更にフォーカサーは奮発してフェザータッチフォーカサーを奢っていた事からピント合わせの感触も抜群で、接眼部の使い勝手に関してはFCよりも上回る仕上がりとなったのでした。

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FCと同等の倍率が出せるようになって惑星の見え味を公平に見比べる事が出来るようになりましたが、やはり口径1cmの差がありますのである意味当然ですが絶対的な見え味ではFCが上です。ただFLも12mmアイピースに4.2xバロー使用で280倍超と口径の3倍以上の倍率を掛けても像は破綻せず、火星の割と細かい模様も識別できるレベルで、ビクセンの誇る名機と呼ばれるFLの光学性能の高さも改めて感じる事になりました。

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何れにしてもFLは個人的に絶対に手放せない鏡筒の位置づけですので、FCに勝とうが負けようが機材整理の方針には変わりが無いのですが、この結果を受けて踏ん切りがつきました。30年前の鏡筒が最新アポと渡り合える実力を持っている事は驚くべき事で、8cmクラスのサイズ感と10cmクラスの見え味を両立させた鏡筒と考えると個人的な想い入れを抜きにしても高い実用性を持つ鏡筒と言えると思います。

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その様な訳で幾度もの売却の危機を乗り越えてメイン機材として返り咲いたFLでしたが、天文機材、特にレンズ回りに関しては良い物を選べば古い製品でも時代遅れにならない、価値が失われない点も天文趣味の奥の深いところで、高性能を謳った新製品に目を光らす一方で、古くても真に価値のある製品を見抜く目も養っていければこの趣味の楽しみの幅もより広がるのではと感じる次第です。

タカハシ TSA-120 その2(2代目導入編) [天文>機材>望遠鏡]

ブランカ150SED購入資金として旅立って行ったTSA-120でしたが、自分は大抵機材を手放しても後でそれで困ったと感じる事は余り無いのですが、あの見え味、扱い易さを両立させたあの鏡筒に関しては手放すべきでは無かったとの想いが日に日に募っていった結果、ライトブルー鏡筒と言う比較的新しい固体で状態が良さそうながら中古で比較的安価で出されているこの鏡筒を見つけてしまい、耐え切れずに手に入れてしまったのでした。

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TSAの再入手を考えた時に、より安価に同等の見え味が得られそうな鏡筒として、笠井ブランカ125SED、タカハシμ180C、スカイウォッチャーBKMAK180などが有力候補に挙がっていましたが、TSAに比肩する見え味との噂もある125SEDに関しては鏡筒のサイズがTSAより若干大きいのが気になった事、18cmカセグレンに関しては性能の出し易さに関して少し気難しいところがあるかも知れない懸念から、何と言っても以前所有していてその実力が十分に分かっている手堅さを優先させました。

手持ち鏡筒の大きさを比較比較するとFCとTSAと150SEDで鏡筒径が95mm→125mm→156mm、重量では約4kg→約7kg→約11kgとFCと150SEDの中間を埋めるにはこれ以上無い鏡筒と言えるかも知れません。以下の写真は上からBLANCA-150SED→TSA-120→FC-100DLBLANCA-70EDTとなってます。

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鏡筒バンドは今回はMoreBlueのものにしてみましたがとても良い感じです。丁度良いバンド幅、軽さ、デザイン性など洗練されたものを感じます。キャリーハンドルの選定も悩みましたが、この鏡筒の重心が前側の鏡筒バンド付近に来る為、この上に手の引っ掛かりがあれば持ち手として十分機能する判断からビクセンのキャリーハンドルに回帰、但しネジ一点止めのハンドルだと回転してしまうのでそれを防ぐ為にハンドルとバンドの間にミスミで注文した金属製のプレートを挟み込む事で対策しています。

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久々に見る惑星の見え味は本当に流石ですが、やはり扱い易さとのバランスの良さが最高です(個人的に)。高倍率の惑星の見え味に点数を付けるなら、FCと150SEDの中間より150SED寄りになると思います。再入手して良く出来た10cmアポの見え味を安定的に上回ると言う事実が如何に凄いかを再認識した次第で、今回は中古購入でしたが見え味は先代と微塵も変わっておらず、ここまでの見え味の性能を安定供給できるタカハシの生産体制も流石だと改めて感じざるを得ませんでした。

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架台に関しては以前は最低でもGP2以上は無いときついと思い込み、APZポルタに載せようと考えた事が無かったのですが、今回試しに載せてみたところびっくり、思ったより普通に使える事が分かり、この架台で使えるとなると格段に機動性が上がりますので、今後は前回以上に活躍させてあげようと思いを新たにした次第です。

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ACクローズアップレンズBINO その2 [天文>機材>望遠鏡]

先日MoreBlueの目幅調節装置を導入し、ACクローズアップレンズBINOの台座をこれに換装させる事で、目幅調整に視軸調整が格段にやり易くなりましたが、この目幅調節装置の左右の台座の最小間隔は60mmとなっており、以前のBINOの最小目幅(57mm)を出せなくなった事が少々不満だったので改善策を考える事になりました。

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この目幅調節装置は鏡筒をファインダーアリガタを介して左右の台座のアリミゾに取り付ける構造となっていましたので、ファインダーアリガタを2段重ねにした上で上段のアリガタを内側にそれぞれオフセットさせる事により、以前の最小目幅を出せるようになりました。

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この2種類のアリガタは共にMoreBlue製で型番はFG304(上段側:40mm長)、FG310(下段側:80mm長)となっています。

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このBINOは接眼部を31.7mm径に妥協する代わりにXWA9mmを利用した100度双眼視が目幅の小さい方でも体験可能な部分が利点でしたので、この長所を引き継ぐ事ができて安心しました。

笠井 BLANCA-150SED その2(落下防止対策編) [天文>機材>望遠鏡]

鏡筒を架台に載せる際にアリミゾにアリガタ底面がちゃんと接しておらず、僅かに斜めになって浮いている事に気付かす固定ネジをしっかりと締めつけたつもりが、その後グラつきを確認してちゃんと固定されていなかった事に気付いたヒヤリハットが何度かあり、もしこの状態で鏡筒を振り回せばストーンと落下する事態は間逃れませんので、特にブランカ150SEDの様な重くて割と高く持ち上げる必要がある鏡筒に関してはその様なヒューマンエラーが起こり易いと感じたので万一の為の落下防止策を講じる事にしました。

アリミゾから滑り落ちるのを防止する事態を防ぐ一般的な方法はアリガタの端に突起を付ける方法ですが、この鏡筒のアリガタにそれができるのか、加工や買い替えが必要になるかどうかチェックしたところ、アリガタを固定する前方のネジ穴が長穴になっている事に気付き、ここにストッパーネジを取り付けられないかを試してみる事にしました。

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このアリガタの上面はRが付いており、中央が凹んだ形になっていた事からナットを一個入れるぎりぎりの隙間があった事が幸いし、適当なネジを立てる事ができました。ちょっとネジが長すぎる気がしましたが、丁度良い長さのものが手持ちの中では見当たらず、この場合長は短を兼ねると考えてこのままで。

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150SEDの鏡筒バンドは上に取っ手が付いている関係上バンド幅を動かす事ができなかったので、ストッパーネジを追加した状態でアリガタの固定ネジが入るのか微妙でしたが、ぎりぎり固定する事ができました。よってストッパーネジをこれ以上太くする余裕はありません。

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結果として無加工でストッパーネジを立てる事ができましたが、このネジを追加してももし滑り落ちて架台にこのネジが引っ掛かった場合に、反動で三脚架台ごとひっくり返る危険性もあって完全に安心はできないのですが、ダブルブロック締め付け式のアリミゾとの組み合わせでフェイルセーフ的な機構になった事である程度は安心して使えそうです。

笠井 BLANCA-150SED [天文>機材>望遠鏡]

TSA-120は見え味と使い勝手のバランスが傑出していて非の打ち所の無い鏡筒と言う自分の中での評価に変わりはありませんが、FC-100DLとの2cmの口径差が徐々に微妙に感じ始め、FCもとても良く見える鏡筒だった事からより見え味の差が大きい、より大口径のアポへステップアップしたい気持ちが強くなっていきました。

しかし国産、欧米製の大口径アポは価格的に自分には非現実的でしたので、ここ最近大口径の選択肢も増えてきた中華アポに狙いを定め、当初候補としたのはAPMのZTA140 SDアポでした。対物レンズの硝材が最近評判のFPL-53とランタン素材の組み合わせで、中華アポはとにかく製造品質が心配でしたが、TMB時代からアポ製造の高い実績を持つAPMの製品であれば品質管理面で比較的安心できそうと考え、ほぼこの鏡筒への乗り換えを決め掛けていました。

そんな折、ZTA140と同じFPL-53(+ランタン素材)を採用しつつ15cmF8のスペックを引っ下げて突如笠井から発売されたのがこのBLANCA-150SEDでした。大口径アポ導入に当たり、高倍率性能、惑星の見え味を最重要視する自分にとってはZTA140はF7とやや短焦点である事が唯一気になる点でしたが、よりFも長く、かねてより15cmアポへの憧れも持っていた自分にとっては150SEDのスペックは正に理想的で、それでいて価格も同じ(その後、ZTA140の価格は若干下がった模様です)と言う事で、これはもう買うしかないでしょ!と急遽方針転換したのでした。

しかし考える事は皆同じなのか、150SEDの初回ロットは何と発売後数日で『瞬殺』完売してしまい、このスペック、価格の鏡筒が待ち望まれていた事が窺えます。自分も本来ネットで評判を見聞きするまではいきなり新製品に手を出す事はしないのですが、笠井のBLANCAシリーズに関しては既に所有している70EDTがとても良く見える事、観望仲間の方が所有するビノテクノ102SED-BINOも高倍率性能が高く、125SEDもTSA-120とも遜色無い見え味とのもっぱらの評判でしたので、笠井がこの基準で販売する製品を選定しているのであれば150SEDにも期待できると判断し、通算n回目の清水ダイブを決行したのでした。

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次ロット納期は3ヵ月後の9月予定との事でしたが、実際に届いたのは更に3ヵ月後の12月に入ってからでした。サイズ200オーバーの巨大な箱が玄関に届いた時は眩暈がしましたが、それでもこの鏡筒にはアルミケースが付属していない事が逆に自分にとっては幸いでした。保管や運搬には適当なソフトケースを見繕うつもりでいましたので、巨大で重いアルミケースが付属していても持て余す事が目に見えていたからで、この部分もこの鏡筒の購入を後押しした小さくない理由でした。

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本体もやはり重く大きく、TSAの手軽さは失われた感はありましたが、GPX赤道儀に載せると無理なく運用できそうな感触で、2枚玉なので極端にトップヘビーではなく、15cmアポとしては扱い易い部類なのではないかと思います。重量を測るとバンドアリガタ込みで11kgを切っており(+キャリーハンドルで約11.3kg)、FPL-53を使用した15cmアポとしては最軽量の部類と思われ、アリガタもビクセン規格のものが装着されていましたので、ビクセン規格のアリミゾの架台しか持っていない自分的には面倒が無くて助かりました。

以下の写真は150SED、FC-100DL、BLANCA-70EDTを並べたところです(でかい!)。

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鏡筒表面の処理は70EDTと同様の少しザラザラな仕上げ(サテンホワイトフィニッシュ)で質感は可もなく不可もなくと言ったところで、特に高級感がある訳でもありませんが安っぽくも無く、中華鏡筒でありながら造りに雑に感じるところが特に見受けられないのは大いに評価できるポイントだと思います。ストロークが大きめの伸縮式フードの移動も滑らかで縮めると思いの外コンパクトになり、ソフトケースに入れて自分のコンパクトカーの後部座席に横にして置く事も可能で、これにより運搬の労力が格段に軽減されるので遠征用の機材としても活躍してくれそうです。

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接眼部は2.5インチのラックアンドピニオンですが、今まで笠井鏡筒の接眼部にはあまり良い印象が無く、具体的には重量アクセサリーを取り付けた場合にドロチューブのテンションを締め付けるとデュアルスピードフォーカサーの微動が空回りする現象がとても使い難いと感じていましたが、150SEDの接眼部では双眼装置を含めた重量アクセサリーをフルで取り付けても微動が問題なく使用でき、不満を感じずに使える中華接眼部に初めて出会えた気がします。最近は大口径アポには3インチや4インチと言った太い接眼部の採用も多く見受けられますが、眼視オンリーの自分的にはこの控え目な2.5インチ接眼部が鏡筒重量の軽量化にも寄与していると考えれば丁度良い大きさに思えました。

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見え味に関しては惑星シーズンが終わってしまったので、今年の惑星シーズン到来までどうこうは言えませんが、光軸に関してはしっかり調整されており、300倍超でリゲルやシリウスを見ても焦点内外像から中心に像が収束していく様子は見ていて気持ちが良く、焦点像も十分シャープに感じられ、これであれば惑星もかなり見えそうな手応えが感じられます。

後日の観望会にこの鏡筒を持ち出して半月の欠け際を350~400倍で観察しましたが、これまで見た事が無いようなクレーターの詳細が見え(月は個人的にあまり見ていない事もありますが)、解像度にはまだ余裕が感じられ、15cmアポの実力が垣間見えました。過剰倍率での像のシャープさ、ヌケやキレに関してはTSAには及ばない気がしますし、色も僅かにあったかも知れませんが、そこに完璧を求めるとなるとやはりTOA-150の様なハイエンドアポが必要になると思いますし、この鏡筒が15cmの2枚玉である事を考えると十分良好な収差補正がなされている様に感じました。

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ただ現時点では見え味云々よりも心配していた調整面に問題を感じなかったので気持ち良く使える点を評価したいところです。外観や可動部分を含めた全体を通して不満に感じる部分が(現時点では)特に無いと言う点も、大口径の中華アポと言うリスクが高そうな鏡筒である事を考えれば実はすごい事かも知れません。光学系にも期待できそうですので今年の火星木星土星が揃い踏みの惑星シーズンが今から楽しみです。



その後アリガタに落下防止対策を施しました。

その後ようやく好シーイングに恵まれて見え味を評価する事が出来ました。

その後ロンキー像を撮りました。

ビクセン A62SS(見え味編) [天文>機材>望遠鏡]

前回の外観編に続き、今回はA62SSの見え味についてのインプレですが、自分はアクロ鏡筒を見慣れてない事もあり、A62SS単体で観望しても良し悪しが判断できないだろうと思われたので、手持ちの鏡筒の中で焦点距離が近いアクロと言う事でZeiss C50/540とサイドバイサイドで見比べる事にしました。

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まずは地上風景を見比べてみましたが、全体的な印象としてA62SSの方が色収差が多く、C50/540の方が明るくシャープで良く見えました。折角なのでスマホ手持ちコリメートで写真を撮ってみました。アイピースはMeade SP20mmで26倍前後です。

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こちら↑がA62SS

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こちら↑がC50/540

更に笠井の5倍バローを入れてみました(130倍前後)。

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こちら↑がA62SS

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こちら↑がC50/540

写真下手くそマンなので申し訳ありませんが、何か感じ取って頂ければ幸いです。この時点では、あーやっぱり口径が大きくてもツァイスには敵わないかーと思いましたが、日が沈んで本命の木星が見えてきたのですぐさまそちらに向けてみました。

シーイングはまずまず(3~4/10)で木星の模様を観察しましたが、こちらでは評価が逆転、割とはっきりとA62SSの方が良く見えます。眼視のイメージをお絵描きソフトで手描きしてみました。

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こちら↑がA62SS

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こちら↑がC50/540

感じた事をまとめると、

・A62SSの方がNEBの輪郭が明瞭、全体的に模様がシャープ
・A62SSではNTBの白い帯も見え、C50/540ではこれが不明瞭
・C50/540の木星像は若干暗く、全体的に解像度が低い
・C50/540の木星は上下に何故か色が付く(赤と青)
・但しA62SSはハロが目立ち、模様のコントラストを下げている感じ

やはり口径の差なのか、A62SSはC50/540と比べて明るさと解像度に結構な差があるように感じました。このクラスで1cmの口径差は思った以上に大きいのかも知れません。A62SSではC50/540に比べてハロが結構目に付きますが、明るさのより暗い土星ではこれも目立たなくなり、C50/540との見え味の差は更に広がる感じです。逆に月だと昼の景色のようにC50/540の方が良く見える可能性はあります。

またサイドバイサイドで見比べるのにほぼ同倍率を掛けていましたが、A62SSは口径の約3倍の倍率に対して、C50/540は約4倍の倍率となっていて、流石にC50/540の方は過剰倍率が過ぎるのでは?と思わなくもありませんので、これを以ってA62SSの方が優秀な光学系と結論付けるのは早計に思えます。

C50/540も最初VMC110Lと見比べてアクロってこんなに見えるのかと驚いた程でしたので、良く見えるアクロなのではと思うのですが、それを概ね(木星土星を見る限りは)上回る見え味のA62SSも悪くない光学系の様に思えます。

本体の上質な造りと現在の投売り状況を考えれば、お手軽観望用として持っていても損はしない鏡筒かも知れません。鏡筒単体も安くなっていますが、モバイルポルタ経緯台とのセットも3万強と相当安い気がします。以前ミニポルタを使用していましたが、この鏡筒とモバイルポルタであれば恐らく無理の無い組み合わせと思われ、個人的に最初の望遠鏡セットとしても薦められると感じました。


ビクセン A62SS(外観編) [天文>機材>望遠鏡]

この製品、6cmのアクロマートにしては当初かなりのお値段で販売されていて、それ故あまり売れ行きが芳しくなかったのかは定かではありませんが、最近実売価格が1/3以下に下がり、これはフェラーリの再来か!?(←?)と脊髄反射でまた生やしてしまったのでした汗;

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スペックは口径62mm、焦点距離520mm、F8.4の何と4枚玉のアクロマートです。その実力は如何に?の前に、取り急ぎ外観のみのご紹介です。

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表面処理がめっちゃ上質です。

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ビクセン規格のこんなファインダーアリミゾ見た事無いのですが、かっちょいいですね。

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ドロチューブを目一杯引き出したところです。どうも2インチアクセサリーは付かなそうでそこが個人的には残念。

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「4 elements」「High-resolution」の対物セルの印字がテンションを高めてくれますw

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台座は当然ビクセン規格のアリガタで、底面には1/4インチカメラネジ穴が2箇所、3/8インチカメラネジ穴が1箇所開いています。

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接眼部は回転可能です。

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重量はこんな感じです。

外観の印象はとにかく造りが良い、と言う点で、WOの製品を彷彿とさせます。雑な感じが全く無く、持つ喜びを感じさせるレベル?かも知れません。この望遠鏡のスペックは入門機のそれと思いますが、それ故入門用としては過剰品質では?と思わなくもありません。上品に、オシャレに天体観望を楽しみたい方には合っていると思います。最近のビクセンは宙ジュエリーなども扱ってますし、ひょっとしてこの望遠鏡はそう言う方向性(富裕層向け?)で作られたのかなあ・・・。

取り急ぎ外観のみのレビューでした。

見え味編に続きます。

ACクローズアップレンズNo.4-BINO [天文>機材>望遠鏡]

ミニボーグ45ED-BINOの最小目幅を63.5mmと狭く出来た事で観望会で他の参加者の方に覗いてもらう事ができ、イーソス17mmでの100度双眼視がとても好評だったのですが、女性子供の方からこのBINOに興味を持たれても目幅の関係でお断りせざるを得なかったのが残念だったので、もっと狭い目幅でも100度双眼視が可能なBINOを新たに作ってみました。

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対物レンズはケンコーACクローズアップレンズNo.4を使用、アイピースはXWA9mmを使用する事で最小目幅は58mm、倍率27.8倍、実視界3.6度の100度双眼視が可能となりました。鏡筒部分の構成は、

・Kenko LMH52-55 BK(レンズメタルフード、最大外径57mm)
・ノーブランド 55mm→52mmステップダウンリング
・Kenko LMH52-55 BK(レンズメタルフード、最大外径57mm)
・Kenko ACクローズアップレンズNo.4(52mm径)
・ノーブランド 48mm→52mmステップアップリング
・笠井 2インチバレル延長筒WF(M48延長筒として使用)
・笠井 M48/T2アダプター(M48→M42P0.75変換)
・BORG M42P0.75→M42P1ADII【4542】
・BORG M42ドロチューブ(WH)【4565】
・BORG M42回転台座【4520】
・BORG M42P1→M36.4/M42P1AD【7525】
・BORG 31.7ミリアイピースホルダーSS【7314】
・WO 31.7mm New90°正立プリズム

となっています。

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ミニボーグBINOはM57のシステムで構築しましたが、今回は2インチアイピースは使用しない前提でM42のシステムを軸にシステムを考案、対物レンズのフィルター径が52mmでしたのでステップアップリングで一気に42mmに径を下げてしてしまうと口径が蹴られるので間に笠井の2インチバレル延長筒を介在させる事を思い付き、52mm→48mm→42mmと接続径を段階的に下げる事で口径食を回避しています。

合焦機構は当初BORGの31.7mm径ヘリコイドを使おうと考えていましたが光路長と内径の関係で採用が難しく、ヘリコイド機能付きのWOの正立プリズムが最近発売されたのに目を付け、これとドロチューブ【4565】との組み合わせでピントの粗動と微動を両立したシステムが出来上がりました。

またこの鏡筒をBINOにする為の土台はスライド台座2個付きのビクセン規格多目的アリガタレールを使用し、これに側面にネジ穴加工を施したアリガタレールを接続、L字プレート化する事で直接架台に取り付ける事が可能となり、BINOをマルチプレートを使って取り付ける場合に比べて大幅な軽量化を実現できました。今回のBINOの加工箇所はここのみで例によって遊馬製作所にお願いしました。

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土台レール上のスライド台座と鏡筒との接続は、BINOの視軸調整が出来るように片方はSLIKの微動雲台SMH-250を用い、もう片方はM48ネジ延長リング、フィルター径変換アダプター、ワッシャー等を使用して微動雲台との高さを合わせています。

ケースは例によってアイリスオーヤマの今回はAM-37Tがまずまず丁度良いサイズでした。

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見え味に関してはミニボーグBINOでの100度双眼視と比べても遜色無く、対物レンズのF値がF5程度とミニボーグBINOに比べて小さいので周辺像の崩れを心配しましたが、そこが気になる事も殆どありません。ACクローズアップレンズの望遠鏡用の対物レンズとしての流用は以前No.3を試した時に星が点に収束せず実用にならなかったのですが、その後の調べでNo.3のみ像が悪く、それ以外は問題なさそうとの有志の方の検証により、焦点距離の関係もあり今回はNo.4を採用しましたが、確かにこちらは全く問題がありませんでした。

口径に関してもミニボーグBINO(45ED)と殆ど変わりがありませんので、逆にミニボーグBINOの存在意義が問われる結果となり、今後はミニボーグBINOは60EDを使用した自分専用機としての利用がメインとなると思われます。

但しこのBINOの唯一の難点は目幅調整の際のスライド台座の移動が渋く、スムーズな目幅調整とはいかない点で、この点においてはしっかりした目幅調整機構が備わったミニボーグBINOには及びませんので、観望会などで多くの一般の方に見せたい場合にはミニボーグBINOの土台とこのBINOの鏡筒を組み合わせる、と言った運用もアリかも知れません。

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今回BINOは最小目幅短縮もそうですが、重量をTG-S経緯台で運用できる範囲に軽くする事が大きな目的でしたので、総重量約3kg(アイピース込み)とこれが実現できた事で遠征時のサブ機としていつでも100度双眼視が楽しめるようになったのが一番のメリットで、強力なお手軽機材が増えて満足しています。

その後目幅調整、視軸調整機構をMoreBlueの調節装置に換装しました。


Zeiss C50/540対物レンズ内蔵ミニボーグ鏡筒 [天文>機材>望遠鏡]

この対物レンズは笠井の蔵出しで偶然に見つけて、これまで古い望遠鏡(所謂古スコ)には関心が無かったのですが、このレンズは何と新品との事で、新品のツァイス望遠鏡を手に入れる数少ないチャンスと思い衝動買いしました。スペックは製品名の通り、口径50mm、焦点距離540mmとなっています。

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尚裏には『DDR』の印字がされていて、これはカールツァイス・イエナ(東ドイツ)で作られた製品を指すとの事です。実物を触れてみた印象としてはとても『上品』と言う言葉がしっくりきます。実用性を重視する自分的にはこのように感じる事は珍しいのですが、丁寧な造りも去ることながらレンズの反射光などが何故か美しく感じられ、これもツァイスの魅力の一つなのかなと思いました。

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このレンズに対する知識は全く無かったのですが、多分対物レンズのセルの内側にネジが切ってあって、アダプターリングでも特注すればミニボーグ鏡筒に取り付けできるだろうと高を括っていましたが、いざ現物を確認してみてもその様なメスネジは設けられておりません。これはどうしたものかとセル内側にネジを切ってもらう事も考えましたが折角のツァイスの新品の対物レンズにいきなり加工を施すのも抵抗があり、かと言って他に方法も思い付かずしばらくお蔵入りとなったのでした。

その後ネットでこのレンズの情報を収集していて、ボーグパーツの2インチホルダーL【7509】の内側を切削加工し、そこにこのレンズセルを収める方法が紹介されていて、他の方の作例を見てもやはり何らかの金属筒の中にこのセルを収める方法が主流でセルそのものには手を加えないのが流儀のように感じました。

自分も先人に習い【7509】を加工してボーグパーツにしようかと考えていましたが、ふとこの対物セルと目の前の多数のボーグパーツを眺めていて、M57延長筒の中にこのセルがぎりぎり入る事を発見し、延長筒の端のオスネジのある部分は内径が狭くなっていてセルを差し込めばそこで突き当たって止まる構造になっていたので、これはM57延長筒2つのメス側を向かい合わせて両者をM60→M60AD【7460】で連結させた中にセルを収める事が出来るのでは?と思い付き、試してみたところM57延長筒L【7604】とSS【7601】の組み合わせで良い感じにセルを収める事ができました。

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M57延長筒の内側と対物セルの外側との隙間はコピー用紙一枚分程度しかなく、これを2枚重ねにすると既にセルは入っていきません。M57延長筒の内径はひょっとしてこのセルを入れる事を想定していたのでは?と勘違いする程にはぴったりのサイズです。

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コピー用紙一枚間に挟む事でセルにキズが付く事を防ぐ事ができますので一石二鳥となり、これで中でセルが動く事も無さそうで光軸にも影響しないと思われます。結果として無加工無改造でこの対物をボーグパーツ化できましたので、この対物を鏡筒化する上でかなり難易度の低い方法が確立できたのではないかと思っています。

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対物レンズ部分がボーグパーツに出来れば後はどうにでもなりますが、個人的には鏡筒のベースとなる部分はHα太陽望遠鏡で使っていた構成を使い回す事にしました。対物フードは使いどころが見つからなかったミニボーグ用フードが余っていて、正にこの将来を見越して手放さなかったのではないかと思うほどでしたが、まあボーグパーツあるあるですね。最終的に構成は以下の様になりました。

・BORG ミニボーグ50用フード(BK)【60207】
----<C50/540対物レンズ収納部分>
・BORG M57/60延長筒L【7604】
・BORG M60→M60AD【7460】
・BORG M57/60延長筒SS【7601】
----
・BORG M57→M57ADⅢ【7459】
・BORG M57/60延長筒L【7604】
・BORG M57/60延長筒L【7604】
・BORG M57ヘリコイドLIII【7861】
・BORG M57/60延長筒L【7604】
・BORG DZ-2【7517】+Vプレート80S【3165】+笠井DXファインダー台座
・BORG M57/60延長筒S【7602】
・BORG 2インチホルダーSII【7504】

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この構成は、2インチ天頂ミラー双眼装置4xバローを付けた構成でピントが出るように長さを調整しています。

対物の性能に関してはいくらZeissと言っても所詮は5cmのアクロだしなあと、さほど見え味に期待していなかったのですが、その直前に木星を見ていたVMC110Lからこの鏡筒に交代させてびっくり、シャープで解像度も高くこちらの方が格段に良く見えて、色もさほど感じずアクロってこんなに見えるの?とびっくりしました。

VMC110Lで木星土星などを見ると、140倍位が使える目一杯かなあと感じるのですが、この鏡筒だと150倍でもまだ余裕があり、FPL53を使った3枚玉アポのブランカ70EDTには流石に及びませんが、個人的には口径(mm)の3倍の倍率で像が破綻していなければ超優秀な望遠鏡と思っているので、その点では十分に合格点を上げられるレンズ性能と言えます。

ただ自分はこれまで(高倍率での観望用としては)アクロを毛嫌いしていて長い事覗いていなかったので、Zeissだからここまで見えるのか、それともちゃんと作られたアクロであればこの位見えるのが普通なのか判断ができませんので、機会があれば別のアクロ鏡筒と見比べたいと考えています。

これによって今までアクロには全く食指が動かなかったのですが、往年の長焦点アクロが良く見える、現行アポにも負けてないものもある、と言う話も信じられる気になってきました。ニコンや五藤の8cmF15アクロが今でも高値取引されているのもある意味納得です。

自分のtwitterのフォロワーさんでもこのレンズをお持ちの方が何人もいらっしゃって、皆さん思い思いのアイデアでこのレンズを鏡筒化されているのを知り、皆さんの鏡筒を持ち寄って並べてどのような工夫をされたのか語り合うだけでも楽しそうで、Zeissがこの対物レンズを自作キット化したのはそうした楽しみ方を提供する狙いもあったのかな、などと思ったりした次第です。

ACクローズアップレンズNo.9+ELS双眼装置でWX超え計画 [天文>機材>望遠鏡]

ケンコーACクローズアップレンズの望遠鏡用対物レンズとしての可能性について(マニアの一部で)注目が集まる昨今ですが、個人的に眼視用の対物としてどう使うかを模索する中で、ふとネットでACクローズアップレンズ『No.9』の文字が目に入り、「9・・・だと??それもACで!?」と何ぞそれと思い調べるとどうも実在するレンズの模様。現行のケンコーACクローズアップレンズのラインナップは、

種類焦点距離レンズ構成
AC No.2500mm1群2枚
AC No.3330mm1群2枚
AC No.4250mm1群2枚
AC No.5200mm1群2枚

と4種類ありますが、これに加えてかつては、

種類焦点距離レンズ構成
AC No.9115mm2群3枚
AC No.1760mm4群4枚

の2種類が存在していたようです。

へーそんな製品もあったんだと納得したところで、以前『MC』クローズアップレンズNo.10とELS双眼装置を組み合わせたお遊び双眼鏡を作ってみて完全にネタにしかならなかったのですが、このNo.9は2群3枚のアクロマートだし焦点距離も若干長いのでそれなりに像が改善するのでは?と興味が湧き、また前回の実験ではアイピースはナグラー9mmでしたが、今はELS双眼装置で最大視野が得られる100度アイピースのXWA9mmが手元にあり、周辺像の改善効果が噂されるELS双眼装置用の0.66xレデューサーもあるので、これらを組み合わせるとスペック的には、倍率8.4倍、実視界11.86度、瞳径5.9mm、見掛け視界100度と(口径は50mmと仮定)、かのお化け双眼鏡ニコンWX10x50を凌駕するスペックとなり、面白そう・・・やってみよう!と期待に胸を膨らませて動き出したのでした。

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中古で何とかレンズを入手し、フィルター径58mmに対して有口径を定規で測るとやはり50mm程度で、家の中のあっちこっちのBORGパーツその他をかき集めてピントが出るように試行錯誤した結果、以下の構成になりました。

・Kenko ACクローズアップレンズNo.9(フィルター径58mm)
・継手リングφ58mm径 (メスーメス)→ノーブランド、以前ヤフオクで購入
・BORG M57→M58AD【7407】
・BORG M57→M57ADIII【7459】
・BORG M57ヘリコイドS【7757】
・BORG 2インチホルダーSII【7504】
・Baader 2インチ→31.7mmアダプター
・笠井 ELS双眼装置(0.66xレデューサー装着)
・賞月観星 XWA9mm×2本

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で、覗いてみたところ・・・これはすごい!マジかよ!?と唸るレベルで、ACと付いただけでMCのNo.10とここまで見え味が違うとは全くの想定外で、色収差もあまり感じず、像もシャープで良像範囲も8割位ありそうで、これであれば像質は十分実用レベルと感じました。双眼装置を使っているので像は暗いですが、プリンス6.5x32と見比べると、見掛け視界が圧倒的に広いのに実視界も上回っており、スペック倒れのネタ双眼鏡の範疇を完全に超えている印象です。重量は上記構成で約1950gとちょっと重いですが。

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しかし他の双眼鏡と見比べてみて、双眼装置を使っているにしてもあまりに暗くない?と疑問に感じ、もしかして口径ケラレてるのでは?と双眼装置のレデューサーを外してみたところ、倍率は上がったにも関わらず像はむしろ明るくなったように感じ、これはいよいよ怪しいと対物レンズ前に半紙を張ってアイピースから電灯の光を入射して、半紙に投影される光の円の直径を見たところ大体2cm強(レデューサー有りだと1.5cm程度)の大きさしかありませんw

あちゃーこんなにケラレてるの!!?とこれでは周辺像が良かったのもある意味当然かも知れません。ELS双眼装置の第一焦点は双眼装置のバレルの中にあるらしいので、そこまで光路がケラレずに光が到達すればそこからはリレーレンズで焦点が延長されるので問題無いかと勝手に思っていたのですが、ケラレに関しては別問題なのか色々と考え方が間違っていたのかも知れません;

恐らくは盛大にケラレているので暗くて解像度も落ちるのですが、明るい場所であれば他の双眼鏡では味わえない世界が体験できるのは間違いなく、この超視界と見え味(周辺像)を得る為には口径の犠牲も無意味では無かったと考えれば半分成功、と言える結果かも知れません。

ニコンWXを凌駕するスペックとはなりませんでしたが、WXの世界を垣間見れた(こんな感じに見えるんだろうな、と言う想像は付く)点ではやってみて良かったと思えた今回実験でした(^-^ゞそれにしても生半可な機材ではスペックすら再現できないWXはやはり凄い双眼鏡なんだなあと再認識した次第です。

尚、一瞬この計画が大勝利を収めたと喜び勇んで勢いだけで調達したのがこちら。

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どーすんねんこれ・・・笑;

その後No.17の転職先が見つかりました。

オライオンUK VX250-L その2(C11と比較編) [天文>機材>望遠鏡]

ここ数年引っ張り出すのが小口径が多く、英オライオン25cmF6.3ニュートン(以下VX250L)の出番が少ないです。一番のネックはやはり大きさで、持ち運びを考えるだけで気が重くなります。そこで最近気になるのがセレストロンのC11、定期的に欲しくなり、ポチってしまいそうになったのも一度や二度ではありません。そこで例によって再びVX250Lの良い部分を見直してみる事にしました。

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まずC11の長所ですが、やはりシュミカセならではのコンパクトさ、機動性の高さで、VX250Lの長大さでは自分の小さい車では助手席倒して載せる必要がありますが、鏡筒長の長くないC11であれば後部座席に載せる事も可能で積み下ろしもかなり楽になる事が期待できます。

次にバックフォーカスの長さ。ニュートン反射で双眼装置を使うには一般的にバックフォーカスが足りないので、低倍率で観望したい場合はELS双眼装置の様な特殊な双眼装置を使う必要がありますが、C11であればMarkV双眼装置を等倍で使えるので、双眼装置を二つ持つ必要が無くなります(ELS双眼装置は現状VX250L専用となっています)。その分アイピースも減らせてお金にできるので一石二鳥です笑

そして改めて口径が3cm大きい点。VX250Lでも銀河などの見え味に関しては物足りないと感じる事も多く、少しでも口径を稼ぎたい想いも強いので、その点だけでも価値があります。

一方VX250Lの長所ですが、まずC11と比較して補正板が無いので温度順応が早く結露し難い(斜鏡は注意)部分は運用面での大きなメリットと言えるでしょう。

また以前はC11と比べて双眼装置で等倍観望が出来ない(双眼派にとっては)大きな弱点がありましたが、これはELS双眼装置のお陰である程度解消されています。ELS双眼装置は開口径の都合で余り実視界は稼げませんが、C11は焦点距離が相当長いですので、これにMarkV双眼装置を使っても得られる最大視野は両者似たようなものです。例としてC11でMarkV双眼装置にSP40mmの組み合わせで得られる倍率は70倍、実視界は0.63度、瞳径は4mm、一方VX250LでELS双眼装置にKe25mmの組み合わせでは倍率は64倍、実視界は0.7度、瞳径は3.9mmとなります。ほぼ一緒ですね。

また双眼装置を使わない場合、単眼で観望する条件であれば、2インチ広角アイピースを使えば焦点距離の短いVX250LはC11より格段に広い視界が得られるのは最大の光学的アドバンテージかも知れません。

一方高倍率性能に関しては、両者の光学系を比較して補正板、主鏡、副鏡と3つの光学エレメントの組み合わせで像を作るシュミカセに対して、パラボラ一枚の精度のみで像が決まるニュートンは軸上無収差で特に惑星観望においては強みを発揮し易く、このVX250LはF6.3と口径の割に長焦点で中央遮蔽率も20%とかなり小さく(C11は34%)、高精度ミラーを採用している点も加味すると惑星の見え味に関してはC11との3cmの口径差を跳ね返せるポテンシャルはあるのではと個人的に思うのですが、C11の惑星像も評判良いですのでどちらが見え味が上なのか正直判断が付きません。

個人的にはあらゆる天体の中で惑星を見るのが一番好きなので、惑星観望性能でVX250LがC11を上回れるならそれだけでも今後も使い続ける十分な理由となるのですが。これこそ比較してみたいですね。

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また集光力ではVX250Lが1275.5倍に対してC11は1600倍と約1.25倍上回りますが、先述したようにシュミカセは3つの光学エレメントで成り立っており、主副鏡の反射率だけで見てもスターブライトXLTミラー(最大反射率95%)よりも英オラニュートンのHilux増反射コート(最大反射率97%)の方が上回る上に、C11は補正板による光量損失(平均透過率83.5%)も加わりますのでトータルでの像の明るさ、淡い天体の検出能力においてもそれ程差が出ない可能性もあります。

こう書いてみるとVX250Lも悪くない気がしてきましたが、口径が3cm大きい、双眼装置を一本化可能、コンパクトで機動性が高い、これらの点でC11は非常に魅力的な鏡筒で、VX250Lも愛着ある鏡筒ですので、それぞれの長所短所をよく見極めた上で更なる検討を進めたいところです。

ELS双眼装置を使ったお遊び双眼鏡 [天文>機材>望遠鏡]

ELS双眼装置はこれ単体で正立像が得られる双眼装置ですのでこれに対物レンズを直結すればそのまま双眼鏡になるのでは?と思いつき、折角望遠鏡用のアイピースや対物レンズを使うなら尖ったスペックが欲しいととりあえずアイピースは手持ちのナグラー9mmをチョイス、対物レンズはかなり短焦点でなくては低倍率が得られず、手持ちでの観望が厳しくなるので画質度外視で何とケンコークローズアップレンズNo.10(焦点距離100mm)を使ってみる事にしました。対物レンズ以外は手持ちのパーツを寄せ集め、構成は、

・Kenko MCクローズアップレンズNo.10(フィルター径52mm)
・BORG ミニボーグ用フード(BK)【60207】
・BORG M57ヘリコイドS【7757】
・BORG 2インチホルダーSII【7504】
・2インチ→31.7mmアダプター
・ELS双眼装置

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これで合焦が得られ、確かに普通の双眼鏡のように扱えますが、画質が・・・すさまじく悪い!wいや予想したよりはまともに見える気もしますし、スペック的には見掛け視界82度、倍率11.1倍、実視界7.38度と中々尖ったスペックで、外観も中々カッコイイ気がします笑

この画質の悪さは対物レンズが完全に用途外と言う事もありますが、双眼装置で明るさが半分になっている部分が大きな要因(暗い)の気がします。究極のスペックを追い求めればアイピースをイーソス10mmにすれば見掛け視界100度、倍率10倍、実視界10度とかのニコンWX10x50を上回るスペック番長な双眼鏡が出来上がりますが、見え味から言えば凄まじく割に合わないでしょう笑

もう少し現実的な見え味が得られる組み合わせを模索すると、直視双眼鏡として手持ちを想定すると低倍率が欲しいのでやはり対物の焦点距離は出来るだけ短い方が良く、かつボーグパーツに接続できるとなるとやはりケンコーのクローズアップレンズ、その中で焦点距離200mmのACのNo.5辺りが画質が期待できるぎりぎりのラインでしょうか。

アイピースは折角望遠鏡用のアイピースが使えるなら普通の双眼鏡ではまず実現できない見掛け視界100度アイピースを是非とも使ってみたいところです。とは言えイーソス2本は価格的に非現実的ですので、ここは庶民の味方、最近流行のXWAアイピースが性能価格的に妥当なチョイスでしょうか。尚、焦点距離はELS双眼装置の開口径の制限があるので9mmが限界と思われます(13mmだと恐らくケラれる)。

これにELS双眼装置用の0.66倍レデューサーを組み合わせれば、倍率14.7倍、実視界6.82度、見掛け視界100度の手持ち双眼観望が実現できます。倍率がやや高めですが得られる見掛け視界と実視界を鑑みればぎりぎり実用範囲内、かも知れません。

とは言えやはり双眼装置で光量が半分に落ちるので画質的に見合うものが得られるのか不透明ですので、この為だけにパーツを買い揃えるのはリスクがありますが、ELS双眼装置と対物レンズ直結で手持ち双眼鏡に、と言う発想は活かせる事が分かりましたので、たまたまパーツがある程度揃っている方には色々試してみるのも面白いかも知れませんね。

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ALTER-7 その2(C8と比較編) [天文>機材>望遠鏡]

最近お金を工面する為ALTER-7を売って、C8に買い替える案を検討していましたが、数日悶々と悩んだ末一旦思い止まりました。

C6を持っているのでALTERとは口径差が3cmしかなく、口径アップも図りたい意図がありましたが、ALTERは笠井での取り扱いが終了(INTES-MICROが廃業)してしまい、手放せば再び手に入る見込みが薄い為、手放して後悔しないかどうか、ALTERの良い面を見直してみる事にしました。

《光学系》
マクカセはメニスカス補正板、主鏡副鏡含め全面球面で構成され精度が出し易い設計で、その優秀さは中華マクカセ(グレゴリー式)の評価に表れていると思います。更に独立した副鏡を持つルマック式マクカセのALTERはより短焦点且つ、色収差やアス、像面湾曲やコマ収差などの諸収差が笠井曰く『全て綺麗に』補正されており、低倍率から高倍率まで、眼視から写真までオールラウンドに使える万能性が大きな魅力だと思います。

一方シュミカセも主鏡、副鏡が球面ですが、シュミット補正板が複雑な形状なので精度を出すのは本来難しい設計かと思うのですがそこは天下のセレストロン、現在のシュミカセの評判を見る限り高い性能で安定供給されているものと思われます。但しC8等はコマ収差や像面湾曲が残ると言われており、フラットナーが組み込まれたEdgeシリーズが別にラインナップされている事を考えると、ノーマルC8との比較では周辺像の収差補正に関してはALTERに分があるように思えますが、直接比較してみないと何とも言えない所です。

《光量損失》
マクストフはメニスカス補正板が分厚い分、光量損失はシュミカセより大きい可能性があります。ALTERの補正板の素材はBK7相当で両面4層マルチコート、主鏡副鏡は反射率96%の増反射コートが施されており光量損失は抑えられているものの、C6の補正板を見るとALTERより透明感があり、Water White Glassと呼ばれる高透過ガラスを使った補正板にスターブライトXLTコーティングの組み合わせは相当優秀なのではと思わされます。これで更に口径が大きいC8相手では明るさでALTERでは敵わない気がしますが、ALTERは有効径より1割程大きい主鏡を採用しているとの事で、周辺光量に余裕のある設計となっているのはC8より有利な点かも知れません。

《迷光処理》
平面に近い補正板を持つシュミカセの場合、主鏡に反射された光が補正板の裏面に再反射し、これが迷光として主光束に混入し、コントラストを低下させる要因となりますが、マクストフはメニスカス補正板が深い曲率を持っているので、補正板の裏(凸面)に再反射した光は周囲に拡散するので迷光が主光束に入り込まず、コントラストを低下させない点で原理的にシュミカセより優れています。その上ALTERは鏡筒内に遮光環を幾重にも配置されており、また鏡筒径も主鏡径に対してC8に比べれば若干太く(ALTERは口径18cmに対して鏡筒径220mm、C8は20cmに対して230mm)、コントラストの面ではALTERが有利ではないかと思います。

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《重量、大きさ》
全長はC8が430mmに対し、ALTERは500mmと長いので、もし主鏡のF値がALTERの方が大きければC8より精度が出し易い設計かと思われますが、中央遮蔽径はALTERとC8でほぼ同じ値(副鏡直径遮蔽率31%)となっており、中央遮蔽による像への影響は似たようなものかも知れません。重量に関しては口径が大きいにも関わらずC8が軽く(ALTER-7:6.5kg、C8:5.6kg)、機材の軽さを重視する自分的にはC8の軽さは非常に魅力的です。

《合焦機構》
ALTER、C8共に主鏡移動式ですが、ALTERの主鏡移動はヘリコイドを使っている為、ミラーシフトが殆ど無いのは有利な点と思いますが、C6を使ってみても個人的にミラーシフトは全く感じないのでC8もALTERと比べても気になるほど生じないのかも知れません。

《フード》
C8を買うならやはりフードは必須になると思うのですが、以前C6用に巻き付け式の純正フード(C8も兼用)を買ったのですが余りの使い勝手の悪さに閉口し即売ってしまいました。折り畳みが出来なくていいのでALTERの様に金属製で形状が固定のフードは無いものかとネットを探して無い事も無かったのですが海外製で意外に値段が高く(日本で買えば2万円位?)、買い替えてお金を作りたいと言う動機からするとこのC8用のフードを別途購入する気にはなれませんでした。

そう考えるとALTERのフードはこれ以上無く良くできていて、フィッティングは当然文句無しで着脱方式もスムーズ、フード内にも幾重ものバッフルもあり、これだけで数万してもおかしくない出来だと思います。本体の性能とは直接関係の無い部分ですがこのフードの有無はC8との大きな差と言えるでしょう。

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《換気ファン》
温度順応に関しては補正板が分厚いALTERがC8より不利かと思いますが、もしC8でスコープクーラー等を使う場合、観望しながらの換気ができませんが、ALTERは換気ファンが内蔵されているので観望しながら換気できるのは大きなアドバンテージかと思います。またALTERには補正板の周囲に空気取り入れ口が設けられており、前方から空気を取り入れ、後方のファンで排気する効率の良い換気が可能です。

《キャリングハンドル》
ALTERはキャリングハンドルが扱い易い位置に付いていて運搬がとても楽です。C8も最近のものは下部に取っ手が付いているようですのでその点では互角でしょうか。

《ソフトケース》
ALTERはソフトケースが標準装備なのも非常にありがたいです。C8もそれ程高くない楽器用のケースが丁度良く使えるらしいですので、こちらも特に困らないかも知れませんが。

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《造り、質感》
これはもうALTERの圧勝でしょう。C6を持っているのでC8の質感も大体想像できますが、ALTERは造りが雑な部分もありますが精巧に出来ており、材質が殆ど金属で出来ていてプラスチック部品などは殆ど見当たらないのが大きな特徴で、接眼部のキャップですらアルミ削り出しで作られておりここまでやるかと言う印象です。この金属加工に徹底的に拘った全体の仕上がりは職人気質が感じられる独特の質感を放っていて、それ程高級感がある訳ではありませんが持つ喜びを感じられる程です。一方シュミカセはC6を見る限りはまあ大量生産品かなと言う印象です。道具として使う分には何ら問題ありませんが。

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《価格》
ここまでALTERの良さを書き連ねても、C8の値段を見ると全てが霞んでしまいます(ALTER-7の最終販売価格は51万3千円;)。ALTERにC8より優れた部分が幾らかあるとしても、この価格差ではALTERを選ぶ理由には正直なり得ないと思います。

実際の見え味においてもC6を使っていてシュミカセの性能は非常に良いと感じていますので、ALTERの方が設計上有利な部分があっても、C8はやはり口径が大きいですのでトータルな見え味でそれ程大きな差は無いのではと予想しています。直接対決してみたいですね。



こうしてみると価格以外の面でC8と比べてALTERが不満に感じる部分は殆ど口径のみなのですが、2cm口径が小さい事は不利な事ばかりではなく、F値が同じですのでその分焦点距離が短く、より低倍率が出し易いのでその分広い視界が確保できる事を考えると大きなデメリットでも無いように思えます。

そう考えると色々とよく出来ているALTERを手放すのもやはり勿体無い気がしてきましたので、買い替え計画は一度棚上げし、もう暫くはALTERを使い続けようと思い直した次第です。

※その様な訳で以上はALTER売却を思い止まる為にALTERの良さを思いつく限り書き連ねた内容ですので、買い替え対象となったC8を貶める意図はありません(むしろ非常に魅力的な鏡筒です)。もしC8使いの方がご気分害されたら申し訳ございませんm(__)m

FC-100DL/ブランカ70EDT ロンキーテスト [天文>機材>望遠鏡]

ロンキーアイピースを手に入れたのでFC-100DLブランカ70EDTのロンキーテストを行いました。光源はアークトゥルス、撮影はスマホ(Asus Zenfone3)による手持ちコリメートです。

焦点位置よりドロチューブを縮めた側の像が内像、伸ばした側の像が外像、と言う認識なので、これが正しければ(これを明確に定義した記述がネットで見当たりません;)焦点像付近でFC、ブランカ共に内像は樽型、外像は糸巻き型の曲がりが視認でき、僅かに過修正気味と言えると思います。

・FC-100DLのロンキー像
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焦点内像
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焦点外像

・ブランカ70EDTのロンキー像
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焦点内像
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焦点外像

ロンキー像を見る時に一つ気をつけるべき事はFが長い程、縞の曲がりに対しての許容範囲が大きくなり(大きく曲がっていても性能に影響しない)、Fが短ければそれだけ曲がりに対してシビアになる(性能に影響し易い)と言う事で、ロンキー像の縞の曲がりの量だけ見るのではなく、F値も考慮した上で性能を判断しなければならない、と言う事です。この事は自分も今回初めて知りました。

インチ当たり250本のロンキーアイピースで、縞4本程度(縞の本数が少ない程焦点位置に近くなり、精度の高いテストとなります)のロンキー像でこれだけ真っ直ぐなら、特にFCの方は長焦点である事も考慮すれば球面収差補正は相当優秀なのでは?と思うのですが、個人的にロンキー像を余り見慣れていないので、見る方の判断に委ねたいと思います。

※撮影はスマホ手持ちですので縞の傾きの違いについては参考にされないでください。

ビクセン VMC110L [天文>機材>望遠鏡]

お手軽観望用のTG-S経緯台の出動回数が増えるにつれて、月惑星観望はブランカ70EDTで満足できる見え味が得られていましたが星雲星団にはやはり力不足なのでこの架台に載る口径の大きな鏡筒が次第に欲しくなっていきました。

ブランカに2インチ天頂ミラー、双眼装置を付けるとTG-Sの積載重量的にいっぱいいっぱいな感じがありましたので、同程度の重量で口径を求めるとなるとやはりカセグレン鏡筒しか選択の余地がありません。そこで口径8cm~12.7cm程度のカセグレン鏡筒をピックアップし比較検討しましたが、このクラスになると2インチ接眼部を持たない機種が多く、MarkV双眼装置での観望を想定していた為、この重量を支えきれないと思われるこれらの鏡筒は選択肢から外れていきました。

そこで更に物色している内に見つけたのがこのVMC110L、着目すべきはその接眼部で、直視側と直角視側の2つの接眼部が備わっており、内蔵のフリップミラーで光路を切り替える構造の為、外付けのダイアゴナルを必要としません。これによりアイピース挿し込み部分も本体に直付けされており、MarkVの重量でも関係無く使える事が選定の決め手となりました。

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本体を見るとアリガタプレートを取り付ける場所が2箇所設けられており、個人的にどちらの位置でも使うケースが考えられたので純正のアリガタプレートは外し、BORGのVプレート60S【3164】を2箇所に取り付けました。これにより使わない方のアリガタが持ち手になって持ち運びにも便利です。

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手にしてみるとこの11cmと言う口径はTG-Sには実にマッチしますし、重量もVMCの重量は公称2.1kgとなっていましたが実測は1.9kg弱と軽く、ブランカの様に2インチ天頂ミラーや2インチ→31.7mmADを使わなくて済む分、総重量ではVMCの方がかなり軽くなります。

使用感はやはり天頂ミラーを取り付ける手間が無いのはセッティングに掛かる時間が全然違い、本体を設置して双眼装置を挿すだけなので非常に楽です。また架台に載せると接眼部がアリガタの対面に位置するので、鏡筒の向きを変えても接眼部の高さが変わらないナスミス焦点の様な使い方も可能です。

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見え味は木星を見たところブランカより模様のコントラストが低く、シャープネス、解像度も劣ります。光量はある一方倍率を上げても解像度が付いてこない感じですが、はっきりとでは無いですが大赤斑も確認できますし、土星もカッシーニが見えるかどうかと言った具合で、月などは大変立派に見えます。最高倍率は140倍位までが適性でしょうか。

一方星雲星団は口径なりに見え、小さくは無い中央遮蔽に太めの湾曲型スパイダーの採用など購入前にこの鏡筒の余り良くない評判も目にしていたのですが、ブランカなど優秀な鏡筒と比べなければ普通に見える、と言うのが正直な感想で、実売価格を考えればコストパフォーマンスは高いと思わせる見え味です。

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また光軸は直視側ではほぼ合っていますが、直角視側では少し光軸がずれていました。となるとフリップミラーの角度調整が上手く行っていないのかも知れませんがそれ程大きなズレでもなく、これを直すとなるとかなり細かい角度調整が必要となりそうで、これだけバタバタと大きく稼動する部品にそこまでの精度の動きを要求するのも価格帯を考えると酷な気がします。

またこの鏡筒でミラーシフトを初めて体験しました。ピントを行き来する時に位置がカクっと動くのですが移動量は土星の視直径程度で、通常使用ではそれ程気になりませんでした。

ケースは例によってアイリスオーヤマのAM-45Tを使い、側面と底面にクッションを入れています。口径が小さいのにC6と同じケースとなったのが釈然としませんが、入れてみると意外に余裕は無く、丁度良い大きさです。(C6の方がギリギリすぎるだけかもですが)

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TG-Sでの高倍率観望はブランカで満足しているので、VMCには口径を活かした中倍率観望で使えれば良いと考えていましたが、VMCは双眼装置がバロー無しで合焦する事が分かり、4xバロー併用が必須となるブランカより低い倍率で双眼観望出来る事で、当初思い描いていた使い分けが出来るようになりました。何より軽くてセッティングが楽なのでブランカよりお手軽な鏡筒として対象を選ばず活躍してくれる事でしょう。


FC-100DL vs ALTER-7 [天文>機材>望遠鏡]

寒さがようやく和らぎ、この地域では比較的シーイングが良く、木星が観望好機の今の時期は望遠鏡の高倍率性能を確かめるには絶好の機会です。と言う訳で今回はFC-100DLALTER-7を引っ張り出して見え味を比較してみました。

先日これをやろうとまずALTERを引っ張り出したところ壊滅的なシーイングで即撤収させた経験から、今回はまずブランカ70EDTでシーイングをチェック、まずまずな事を確認して本番に移行しました。多少面倒でもこのやり方が良いかもですね。その点ではブランカの様な高性能な軽量機材は有用です。

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今回もまず出したのはALTER。いつものように双眼装置で200倍超えで見ましたが今一つ木星像が眠い・・・切れ味が余り良くなくピントがスパッとは決まらない、縞模様は2、3本見えるものの詳細が中々見えてこない、温度順応が足りない?思ったよりシーイングが悪いのかな?ともう少し温度順応させる為FCに交代。

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FCに交代したら切れ味が全然違います。縞模様の輪郭がシャープに見え、ALTERより見える模様が多く、FCに代えてALTERでは気づかなかった大赤斑が見えている事に気づきました。この時の大赤斑は今までFCで見た中で一番と思える程はっきり視認できました。TSAでもこんなに見えた事あったかな?と錯覚するほどで、木星の模様の見方を脳が学習したのか、天頂ミラーを銀ミラーのBBHSにした効果もあったのかも知れません。

その後何度か2台を載せ代えて見比べしてましたが、この日はどうやってもALTERがFCに勝てるシーンはありませんでした。確かにシーイングが大きく揺らいでいてあまり良くなかったかも知れませんが、シーイングが収まる一瞬良く見えた時のイメージで比べてもFCには及びませんでした。

これはシーイングの影響の受け易さがそこまで違うのか、昔はALTERももっと見えていた気もしますし何とも釈然としません。ただピントの山の緩さはALTERは以前からこんな感じでFCに比べればスパッと決まる感じではありません。この日の比較だけで優劣を決定付ける訳にはいきませんが、条件によってはALTERでもFCに全然敵わないと言う今日の結果に高倍率観望に用いる望遠鏡の選定の奥深さを再認識した次第です。

その様な訳で前回の見比べではC6を見直しましたが、今回はFCの良さを再認識した感じです。10cmアポのカテゴリーで見え味だけで比べればTSA-102やFL-102Sの方が上かも知れませんが、これらは重さ的にポルタでは運用が難しいと思いますので、ポルタで使える条件ではやはりFC-100DLが一番惑星が良く見える鏡筒なのではと、パワーウェイトレシオ的な観点で見ればやはり相当に優秀な筒ではないかと思いました。

一方18cmカセグレンではμ180やBKMAK180の方がALTERより惑星は見えるかも知れませんが、ミューロンはF12、BKMAKはF15とFが長いのである意味有利なのは当然で、低倍率を出す事に掛けてはALTERが長けてますので、高倍率性能で及ばなくてもどちらかと言えば星雲星団観望用途でこちらを使う事を考えると像の平坦さにおいてはルマック式マクカセのALTERの方がアドバンテージがあり、見る対象を選ばないオールラウンダーとしての適性はALTERが上ではないかと考えています。以前も書きましたが見え味以外の部分でも本当に扱い易い鏡筒でバランスの取れた、遠征して軽く観望するのに取り合えず一本だけ持っていくと考えた場合にはよく働いてくれる鏡筒です。

2本の見比べが終わった後、土星と火星が出てきてFCで火星を初観望しました。高度が低かったので大気の影響でぐにゃぐにゃでまともに見えませんでしたが予想していたより視直径が大きく、シーイングが良ければこの大きさでも表面模様が見えそうでしたので、大接近時にどんな姿を見せてくれるのか期待が高まりました。

GuideFinder50-BINO その2 [天文>機材>望遠鏡]

対空双眼鏡が手持ちで使えたら?と言う発想の元作ってみたGuideFinder50-BINOでしたが、TG-S経緯台を手に入れた事でミニボーグ60ED-BINOよりお手軽な対空双眼鏡として架台に載せて使いたい欲求が高まり、どうにかしてこのBINOにアリガタを付けられないだろうかと思案して、鏡筒を支持する3点のファインダー調整ネジの一つが真横から付いている事に着目、これをもっと長い普通のネジにしてリングとネジの間にアリガタを挟みこめないだろうかと考え、BORGのVプレート80【3165】と長さ30mmの先端ソフトチップ埋設キャップネジ(M5)をミスミで探して手に入れ、これで思ったよりあっさりと形になりました。

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この構造では右側の鏡筒の視軸調整が出来なくなるので、鏡筒がリングの内側に接する形で(目幅が最小となる様に)固定させ、目幅調整、視軸調整は左側鏡筒のみで行うようにしました。

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アリガタの固定には前後からナットとワッシャーを挟み、リングのネジが通る部分も内側からナットとワッシャーで締め付ける事(下の写真参照)で鏡筒の重みでこの部分から全体が撓んでしまう事を防いでいます。

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架台に取り付けての使用感ですが、TG-Sとの組み合わせは非常に軽快で、ミニボーグBINOはイーソス17mmによる見掛け視界100度の超広角低倍率双眼視が出来るのが圧倒的強みですが、逆にそこに拘らなければ口径が1cmしか違わず、こちらはかなりの短焦点なのでミニボーグBINOにXL40を付けた時の実視界(8.8倍、7.43度)とこちらにXW20を付けた時の実視界(10倍、7度)はそれ程変わらないので、XW20の見え味が優秀な事もあり、出番はこちらのBINOが圧倒的に多くなりました。

こちらのBINOはアイピース無しで1250g、一方ミニボーグ60ED-BINOは3300gと2.5倍以上の重量差があるので、架台もこちらはTG-Sを使える事を考えると機動性は比較になりません。それでいて構造は簡素ながら目幅調整、視軸調整、任意のアイピースの交換が可能、直進ヘリコイドによる合焦機構が備わり、アミチプリズムによる正立90度対空を実現と対空双眼鏡として一通りの機能は備わっていて、行き当たりばったりで作った割には良い機材が出来たと思っています。

但し一点(結構大きな)問題があります。それは左右の視軸のずれ易さです。架台に取り付けあちこち振り回す運用をするとしょっちゅうずれます。アイピース交換でもずれてる事がありますwずれる度に視軸調整が必要ですが、そこは元がファインダーな事もあり、ファインダー調整と同じ要領ですので即座に直せるのですが、覗いた時にまたずれたかーとなるのはそこそこストレスでもあります。何が原因でずれてるのかはっきりしないのですが見るからに弱そうな構造なのであちこち無理が掛かっているのかも知れません。実用に支障を来たすレベルでは無いのがまだ救いですが、XWより重いアイピースは使わない方が良さそうです。

また簡素な構造故に目幅調整などはかなり手間が掛かります。左右の鏡筒及び前後のリングの傾きや位置調整、位置が決まってからの左側鏡筒の3点調整ネジ×2での目幅と視軸の同時調整は結構大変です。これでも架台に固定出来るようになったので前よりは楽になりましたが、構造上覗く人しか調整できない都合上(目幅を変えると必ず視軸も調整しなければならないので)他の人に気軽に見てもらうと言う訳にも行かず、実質主に一人で使う機材となりそうです。とは言えミニボーグ60ED-BINOも目幅68mm以上の人限定と言う大概な仕様ですし、テレコンビノとか既に目幅70mm固定ですので、あまり他人に見せる事は想定していません。まあ一人でしか観望しないので何も問題は無いのですが(何て寂しいオチだ・・・(;∀;)
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