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ビクセン SSW14mm [天文>機材>アイピース]

31.7mm径の接眼部を持つ対空双眼鏡/BINO用のアイピースとして、これまで主戦力として使っていたXW20XWA9mmの2本により低倍率のRKE28mmが加わった事からXW20とXWA9mmの間のアイピースが欲しくなり、焦点距離は14mmが丁度良く感じて当初XW14を候補としていましたが、出来れば見掛け視界も70度と100度の中間の80度クラスが望ましいと考えて正にこの要求にズバリ適合するこのアイピースの存在を思い出し、既にディスコンに向けて処分価格となっていたのをこれ幸いと手に入れたのでした。

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事前にネットの評判を見ると目位置にシビアでインゲン豆現象が出易いとの評判が目に付きましたが、確かに目が近過ぎるとブラックアウトが生じ、離れ過ぎると全視野が見渡せない若干の気難しさも感じましたが、アイカップの出来が非常に良いのでピタリと来る位置に調整すれば覗き難さは特に感じなくなりました。

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個人的に気になっていたのは周辺像の崩れ具合でしたがAPM10cm対空双眼鏡で見る限りは視野周辺まで点像でとても収差補正は良好に感じます。何より気に入ったのが素直な像質で、とても透明感のあるヌケの良い像を提供してくれます。

これまで周辺像の収差補正と視野の平坦さ、像質の良さのバランスで、ストレスの少ない見え味と言う部分でXW20が個人的に絶対的な信頼感がありましたが、このSSW14mmも83度のより広い見掛け視界でありながらバランスの良さで負けていません。日本製と言う事もあってビルド品質の面でも非常に優れており、ネットのカタログ写真から受ける印象よりも高級感が感じられ、トータル性能でとても完成度の高いアイピースだと感じました。

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最近コンセプトや製品の長所、ウリが分かり難いとも噂されるビクセン製品ですが、個人的にAPのユニットにしてもA62SSにしてもこのSSWにしても実物を見ると良い物を作っていると強く感じるのですが、発売時の価格設定がどうにも高く見えて敬遠されてしまい製品寿命の終わり際に処分価格となったものが再評価されるパターンが多い気がするのがちょっと可哀想な気がします。折角良い製品を生み出す力は持っているメーカーと思いますので良いループに転換できる事を祈ります。


ミニボーグ50-BINO [天文>機材>望遠鏡]

ACクローズアップレンズBINOを構築した事でミニボーグ45ED-BINOと口径がほぼ同じBINOが2つになってしまった事からミニボーグ45ED-BINOの対物を60ED固定とする事で差別化を測っていましたが、ミニボーグ60ED-BINOとして運用すると最小目幅が68mmとなってしまい、他の人に覗いてもらうのが難しい点が不満に感じ、遂にここに来てEMS/EZMの導入を考え始め、EMSを導入するなら対物の口径もより大きく出来る事から更なる大口径のBINOの構築を検討する事になりました。

そこでEMSを導入するとこれまで使用していた2インチ正立プリズムが不要となり、これも最小目幅を縮める為に加工をお願いしたワンオフものとなっていた事からこれを使わなくなるのも勿体無く感じ、有効活用しようとACクローズアップレンズBINOを2インチ化する事を検討し始めました。

しかし試行錯誤した結果この組み合わせではバックフォーカスを出すのが難しい事が分かり、ここは思い切ってACクローズアップレンズBINOとは全く別にに2インチ対応の小口径BINOを作る方向に舵を切り、ボーグパーツにはやはりボーグの対物レンズが相性が良い事から、ディスコンが決まり在庫限りとなっていたミニボーグ50の対物レンズを急遽手に入れて、ミニボーグ45ED対物レンズよりも焦点距離が短い事からより広い視界が稼げるBINOとして出来上がったのがこちらです。

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片側の鏡筒部の構成は、

・ノーブランド 52mm→48mmステップダウンリング
・BORG ミニボーグ50対物レンズ【2050】
・Pixco マクロエクステンションチューブ(ボーグ互換延長筒)14mm
・BORG M57ヘリコイドS【7757】
・BORG M57/60延長筒S【7602】
・BORG DZ-2【7517】
・BORG 2インチホルダーSSII【7501】
・スタークラウド SC2インチ90°正立プリズム(目幅短縮仕様)

となりました。対物レンズフードの先端には2インチフィルターを装着出来るようにステップダウンリングを取り付けています。またミニボーグ50の対物レンズの色が黒に仕様変更されていた事からBINO全体の色が黒一色となり何となく味気が無かった事からボーグ互換延長筒部分と正立プリズムの加工部分に紫色のテープを貼り付けてアクセントを出してみました。

BINOのベースとなる台座パーツはACクローズアップレンズBINOに導入したMoreBlueの目幅調節装置の鏡筒の着脱方法がアリガタアリミゾだったので、今回のBINOの鏡筒にもファインダーアリミゾを取り付け、用途によって鏡筒を差し替える形で台座は兼用としています。

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このBINOでの使用アイピースは、

UF30mm(倍率8.3倍、見掛け視界72度、実視界8.64度)
イーソス17mm(倍率14.7倍、見掛け視界100度、実視界6.8度)
XWA9mm(倍率27.8倍、見掛け視界100度、実視界3.6度)

辺りを想定しています。今回は合焦機構がM57ヘリコイドSのみとなった事でピントの移動範囲が10mmしかありませんので、どんなアイピースでもピントが出る造りでは無くなってしまった事からイーソス17mmを使って無限遠でヘリコイドの中央でピントが出るように光路長を調整しています。

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見え味に関してはF5対物との事で広角アイピースでは周辺像が辛くなるところですが、UF30mmはこの部分の性能に特化した設計なだけあり良像範囲は9割程度あり、イーソス17mmの方も元々短焦点に強くこちらも9割程度の良像範囲がありますので覗いていて周辺像の崩れが特に気になる事はありません。

これらのアイピースの組み合わせの場合実視界が6度~8度超を実現出来ますので、視直径が5度以上あるような天体、例えばヒアデスやMel20と言った大きい散開星団の全体を俯瞰して見る事が可能で、ぎょしゃ座のM36、M37、M38をまとめて同一視界で眺めたり出来るなどこのBINOでなければ味わえない世界を体験できます。

このクラスの実視界は手持ちの双眼鏡であれば割と一般的なスペックですが、50mmの口径で超広角の見掛け視界と広い良像範囲を両立しているものは殆ど見当たらず、対空双眼鏡として架台に取り付けて楽な姿勢で天体を眺められる利点も併せると使用感は手持ちの双眼鏡とは全く別物で、倍率こそ近いですがやはり望遠鏡の範疇に入る機材だと思います。

総重量はL字プレート込みで約2780gでAPポルタとの組み合わせで準備も撤収も楽なお手軽双眼観望機材として今後活躍してくれそうです。

Leica 20x/12 10446356(顕微鏡用接眼レンズ、12.5mm相当) [天文>機材>アイピース]

天文ファンでもライカと言えばカメラや双眼鏡、フィールドスコープのメーカーとして多くの方に知られた存在ですが、顕微鏡の大手メーカーとしても名が知られており、自分的に顕微鏡用接眼レンズの天文用への流用を考える上でも外せない存在でした。

しかしやはり20倍の接眼レンズとなるとライカと言えども選択肢が少なく、例によってクラシックアイピースに類すると思われるものを物色して今回見つけたのがこの接眼レンズでした。

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この接眼レンズが開発された経緯やどの様な設計であるかなどはやはり調べても自分には分かりませんでしたが、30.0mm径の接眼レンズである事から比較的新しい製品と考えられ、外観を見るとやはりスマイスレンズの類は入っておらず、現代風の設計では無さそうなところを見ると、ニコンのE20xやUW20xと同年代(90年代頃)の製品かも知れません。スペックは20x/12と明記されていますので、望遠鏡換算で焦点距離が12.5mm、見掛け視界55度と導き出せます。

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外観を見て目を引かれるのはアイレンズの大きさで、望遠鏡用の12mmクラスのクラシックアイピースと並べてみても一際大きいです。またコーティング色も黄色系でギラギラと輝いているような、これも望遠鏡用ではちょっとありえない特徴ある外観を誇っています。筐体も金属は一切使われておらず、樹脂製の材質と思われますが、貧弱さや安っぽさは一切感じられず、またこのお陰で非常に軽い(約48g)仕上がりとなっています。

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見え味は例によってアポ屈折にバローを付けた双眼装置で惑星を高倍率で見た印象ですが、一目見てこれは良く見える接眼レンズだと感じました。ヌケとコントラストが良く上質な天文用アイピースと比べても互角以上の見え味に感じます。おまけに見掛け視界も良像範囲も広いですので見え味に妥協せずに経緯台でじっくり眺めたい時には自分の中では最適解に近い接眼レンズとなっています。

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ライカは何故か望遠鏡業界には参入をしていませんので、ライカの光学製品を天文用に流用するにはこうした手段を用いる以外にありませんが、ライカの歴史を紐解くと特に顕微鏡事業(ライカマイクロシステムズ)に関してはこれまで様々な企業(ワイルドやボシュロムなど)と合併して現在のライカグループを構成している様ですので、エルンスト・ライツ直系の開発製品であるかどうかは見抜くのは難しく、ライカの名を冠していても設計思想の異なる製品が存在する可能性がありますが、それらも受け入れる寛容さが必要となるかも知れません。