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Bosma 12x56ED(賞月観星APO+12x56同等品?) [天文>機材>双眼鏡]

NLは個人的に星見でも最高の手持ち双眼鏡なのですが、WXやNLを持ち込むにはちょっと気が引ける場所に持ち込めるラフに扱える天体用双眼鏡があってもいいかな考えた結果手に入れたのがこちらです(もう何も言うまい…汗;)Desert Fox IIと言う商品名が付いていましたので以下DF2と呼称します。

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この双眼鏡は賞月観星のAPO+12x56IFと同等品と推測していますが(スペックはほぼ同じ)自分はこれを個人輸入で手に入れましたが賞月観星より特に安かった訳ではなく、何故敢えてリスクを冒してこちらの方を選んだのかと言えばこのデザートイエローの本体色に惹かれたからでした(^^;

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手元に届いて一目覗いておおこれは!と思わず目を見張りました。見掛け視界は広々としておりNL10x32(公称69度)と見比べても僅かに広く公称通り72度あると思われます。昼の景色を見る限り良像範囲も広く(体感9割)NLと見比べると流石にヌケの良さでは及びませんが大型プリズム採用とEDレンズ採用の謳い文句に違わず視野は明るく中心像は色収差を感じない、この口径を考えれば十分クリアな見え味で、軽く触って一発で気に入ってしまいました。

改めて外観を眺めるとNLの様な高級感は感じませんがラバーの貼り付け具合や各構成パーツの削り出し、塗装状態などを観察すると造りに丁寧さが感じられとても真面目に作られている印象です。対物レンズ、接眼レンズのコーティングを見てもとにかく反射光が暗く、良質なコーティングが施されているように感じられ、接眼部の合焦ヘリコイドの固さも丁度良くスムーズで、アイレリーフは19mmとなっていて目位置にも寛容で覗き易く視野環は明瞭で、1500gの重量ですが想像以上に持ち易く、総じて扱い易く出来ている双眼鏡と感じます。

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この双眼鏡の本領発揮となる星空の見え味ですがこちらも期待通り良像範囲が広く、賞月観星の商品説明では65%と書かれていましたがこれはかなり厳しめの評価かと感じられ、自分のいつもの感覚ではこの双眼鏡の良像範囲は8割強の印象です。9割超えてから崩れが少し大きくなりますがそれでも破綻はしておらず、良像範囲の狭い双眼鏡で星を見ると崩れた周辺像による圧迫感で観望の集中力を低下させ、没入感を著しく阻害しますが、この双眼鏡は普通に見れば全面フラットに近い印象で周辺減光も感じないのでストレスなく視野を見渡せて、WXの視野を切り取ったような見え味、と言うのは言い過ぎでしょうか。

NL10x32と比較するとバックグランドの暗さ、星像の鋭さは流石にNLは素晴らしいですが、DF2の方は微光星の量が格段に多く星の輝きが強く、瞳径4.7mmと程良いので像も十分鋭く、見掛け視界は同等、良像範囲も広いので没入感では負けていません、と言うより流石に口径が大きく違いますので星を見る目的であればはっきりこちらが向いていると言っていいでしょう。これであればNL42mm機でもある程度対抗出来るかもと思わせる程で星見での性能は素晴らしいと感じます。勿論こちらは重量が格段に重いですが。

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BOSMAと言うメーカーは中華の望遠鏡ブランドとして天文マニアの方であれば耳にした事もある方も少なくないのではないかと思いますが、個人的には割と良質な製品を販売しているメーカーのイメージもあって今回購入も不安視はそれ程していませんでしたが、この双眼鏡が入っていた段ボール箱にはセレストロン(星特朗)の名前が記されており、APMにも同じと思われる双眼鏡が販売されており、賞月観星も含めてどこかでOEM生産された双眼鏡と予想しますが、これだけ良く出来た双眼鏡であれば品質面を重視する各メーカーが自信を持って世に送り出しているのも頷けると思いました。

賞月観星の商品説明を見ると「世の中の現役の12x56双眼鏡たちをすべて超越」と書かれていて、購入者レビューを見ても「星空観察の決定版」「この双眼鏡が一番星が美しく」と言った最大級の賛辞を送る方も見受けられましたが自分もこれは決して誇大ではない、この双眼鏡の倍率や重量をデメリットと感じない人であれば逆に12x56と言うスペックは絶妙とも言え、万人受けはしないかも知れませんがこのレビューの様に感じる方がいても全く不思議ではないと感じました。

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天体観望の暗闇の中で双眼鏡を使っているとどうしてもぶつけたり転がしたりと言った思わぬトラブルに見舞われ易いですのでNLはその意味でも星見で使うのは少し抵抗がありましたが、今回の双眼鏡はショック耐性、防水性能も高い設計となっており気軽に扱える天体用双眼鏡として、当初の目的から言えば文句なく合格と言える双眼鏡です。

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ビクセン meglass H6x16 [天文>機材>双眼鏡]

スワロNLはそれはもう手持ち双眼鏡として至高なのですが、散歩のお供とするにはやや本格的過ぎるので手で持ちながら歩けるような、コンパクトさに特化したポケットサイズの双眼鏡が欲しいと感じて(つくづく度し難い…)今回選んだのがこちら(日本語では「メグラス」と呼称)です。

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軽量コンパクトな双眼鏡と言えば手持ちのヒノデ6x21-N1は今でも気に入っていますが、これより重いものの2軸ダハであるコーワSV25-8の折り畳んだ形状が個人的に持ち運び易いと感じる事も少なくなかった事から、2軸ダハの条件でよりコンパクトで高性能な双眼鏡はどんなものがあるだろうと物色を開始しました。

当初はスワロ、ライカ、ニコン、コーワと言った2軸ダハの最上位クラスの機種に食指が動きましたが(筆頭はライカUltravid8x20シルバー)その価格を見てふと我に返り、散歩のお供ならそこまで高性能で無くてもいいのでは?と考え直して他メーカーの製品を眺めていて目に飛び込んできたのがこのビクセンの双眼鏡でした。シルバーアルマイト仕上げの筐体にブルーの牛本革をあしらった上品なデザインが自分の琴線に直撃し、口径は16mmとやや小さいですがその分コンパクトで重量は140gと圧倒的に軽く何より日本製との事で、正に今回求めている条件に合致すると感じてNLが最後の双眼鏡!の願いも虚しく再びダイブしてしまったのでした。

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実物を手にすると期待通りの質感の良さで、ボディの金属加工の精度が非常に高く感じられ、可動部分の動きも精密感があり、折り畳んだ時のピタッと全体が一体となるこの公差の少ない感覚は流石日本製と思わせる心地良さを味わわせてくれます。ビクセンは今でも良い製品を生み出す力は十分あるメーカー、と言う事はこのブログでも度々書いてきましたが、この双眼鏡もビクセンの中でもクオリティ重視の、メーカーの良心が感じられる製品と言えるかも知れません。

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見え味に関しては普通に見えればOKと考えていましたが実際に覗いてみてびっくり、ヒノデN1やコーワSVと比べると視野の透明感で一目瞭然で差があり、これに比べるとこの2機種はガラス越しに見たような像の眠さを感じます。この2機種もこれまで特に性能が悪いと感じた事が無かったので口径差をものともしない期待を大きく超える見え味にひょっとしてこれは大当たりなのでは?とこれだけ良質な双眼鏡の評判を何故今まで全く耳にした事が無かったのだろうかと少し不思議な気分にもなりました。

また今回はコンパクト最優先ですので見掛け視界の狭さは気にしないつもりで選びましたが、N1やSVと比べると一回り視野が広くクリアな視界も相俟って開放感も段違いで、普通視野を広くするには接眼レンズ、プリズムの大型化が必要となるはずですので、この小ささでこの視界の広さ(実視界8.3度)を実現している点も驚きでした。またこの双眼鏡で星を見る事は考えていませんでしたが一応確認したところ良像範囲は8割位はありそうで普通に使えなくもありません。

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一方でこの双眼鏡はこの大きさの割に十分なアイレリーフを持っているだけに、見口を繰り出す機構が備わっていない点は個人的に少々残念に感じましたが、改めて他社製の200gを切る超軽量クラスの双眼鏡を見ると見口繰り出しが無いのは普通の事で、この双眼鏡のゴム見口は眼鏡使用時にレンズが傷つく事を防ぐ事が主目的のようにも感じられ裸眼では見口から少し浮かして見るような使い方になりそうですが、この双眼鏡に関しては6倍と低倍率な事もあり手ブレが少なく目位置にも寛容でとても覗き易いと感じるのでそれで特に不都合を感じる事はありません。

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この双眼鏡の付属品として本体と同じ素材の革ケースが付属しますが、当初出し入れがそれ程スムーズにいかないので汎用の布製ポーチでも別に用意しようかとも考えましたが、この純正ケースの特筆すべき点は本体を収納しても全体サイズが殆ど変わらない点で、バッグやポケットなどに入れて持ち運ぶなど極力嵩張らない事が望ましいと考えられる使用条件を想定すればこのケースは本体のコンパクトさを損なわない点でとても良く考えられていると感じられました。勿論仕舞う時には毎回双眼鏡を折り畳む必要があるのは少々手間ですがこの双眼鏡には前後キャップがありませんので、この革ケースのピッタリさはレンズキャップも兼ねていると考えればやはり良く出来ていると感じられましたので結局このケースを普段使いしています。

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尚この双眼鏡はピント移動で天板の全長が変動しますので、近距離にピントを合わせた状態だと全長が伸びてケースに入り難くなります(自分も当初苦戦しました)のでケースに入れるのがきつい、と感じた場合はピントを無限遠に合わせる(天板の長さを縮める)と入り易くなると思います。

また改めてこの双眼鏡の大きさについてですが本当に小さいです。下の比較写真の通り軽量コンパクトの目的で購入したヒノデN1と比べても更に一回りコンパクトである事が分かります。

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高級路線の2軸ダハ双眼鏡で現行品でこれより小さいものがあるのかどうか、自分には見つけられませんでしたが自分にとっては今回の目的でこれ以上の双眼鏡は無いのでは?と掘り出し物を見つけたような得した気分になれてとても満足しています。

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UW6mm 68° [天文>機材>アイピース]

APM12cm対空双眼鏡の視軸状態は期待以上に良好で倍率をもっと上げても大丈夫そうと感じ、5mm程度の焦点距離でそこそこ広角で、アイピースケースの収納の関係で細いアイピースが欲しいと考えた結果、手持ちのUW9mmの品質、見え味に満足していた事から同シリーズの最短焦点距離であるこのアイピースを手に入れました。

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スマイスレンズ入り短焦点アイピースなので恐らく大丈夫だろうと予想していた通りAPM12cm対空で使う限り周辺像の崩れも見受けられず、ややフローティングエフェクトを感じる見え味で星像も問題ありません。レンズ構成も3群5枚とハイアイ広角アイピースとしては少なめでVX10L等倍レンズを使用時の高倍率、惑星双眼観望用としてもとても相性が良く重宝しています。

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Swarovski NL Pure 10x32(Burnt Orange) [天文>機材>双眼鏡]

WXを覗いて以降、見掛け視界が65度程度の双眼鏡では狭く感じてストレスを感じるようになってしまった為、より広角で手軽に使える周辺まで良像の双眼鏡は無いものかと探し求めて行き着いたのが結局こちらになりました。

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今回はNLの10x42と10x32のどちらにするかでめちゃめちゃ悩みました(見掛け視界は倍率×実視界=75度以上が欲しいと考えた結果8倍機は候補から外れました)。手軽さと言う観点では32mm機が一見有利に思えますがNL42mm機は手で持った時のフィット感、重量バランスの良さ、ホールド性の高さが絶賛されており、これに比べると32mm機はそこまでの声はなくスペック程軽く感じないとの話も見受けられ、天文屋の自分としては星見にも使える事に越した事はありませんのでより口径の大きい10x42は倍率とのバランスも良さそうで非常に魅力的でした。

また形状的な美しさ、スタイルがNL32mm機より42mm機の方が上回ると個人的に感じられ、NLは広角でフラットな視野を実現しているとなれば普通の双眼鏡より大型の接眼レンズが採用されていると予想されますので、この部分が基本的に変わらずに対物レンズのみ小さく設計された(ように見える)NL32mm機はやや頭でっかちにも見受けられ、42mm機よりもエルゴノミクスの観点からもやや完成度、バランスを落としているように感じられなくもありません。

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それでも結果的に32mm機を選んだ理由としては、勿論価格的な理由も大きかったのですが、今回の双眼鏡に何を求めているかと考えれば見掛け視界の広さ、良像範囲の広さの次に来るのは旅先や公園などで歩きながら使う時の手軽さ、携行性の高さで、双眼鏡を覗いている時の重量感にNL42mm機と32mm機で大きな差が無かったとしても覗いて「いない」時の重量感、首からぶら下げて持ち運んでいる時に感じる負担感は純粋にこの200gの重量差(約24%軽い)が利いてくるのではと考え、また重さ以上になるべく嵩張らない双眼鏡が望ましかったので、NL42mm機と32mm機を並べた写真をネットで見る限り全体のサイズ感の差は自分的には小さくないように感じ、そこを重視した今回の選択となりました。

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そして10x32を選んだ決定打となったのが本体色にオレンジ色を選べる点でこれが32mm機を選んだ理由の半分位を占めるかも知れません笑 バードウォッチング目的の場合はこの色は敬遠されるかも知れませんが、風景観望が主目的の自分には恐らく支障は無く、極めて個人的な感覚ですが、オレンジ色のNL32mm機のオシャレな風貌は装身具として身に着けたくなるような魅力を放っており、機能美の面では42mm機に及ばなかったとしてもその弱点を補うのに十分なメリットと個人的に感じられ、NL32mmユーザーに与えられた特権とも考えれば持つ喜びを更に引き上げる要素と言えるかも知れません。

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実物を手にした印象は期待した通りやはり形状がスリムで負担を感じさせない軽さで、それでいて十分な存在感を放ち、身に着けて歩くには絶妙なサイズ感で、これを見て自分的には32mm機を選んでやはり正解だったかなと感じました。次に感じたのはとにかく質感が良い点で本体ラバーの手触りも去る事ながらフォーカスノブの感触、動作は勿論、前後キャップのフィット感、着脱の際本体と擦れる感触に至るまで心地良い気がします。ストラップを取り付ける部品なども小さな細かい工夫が施されていたり、本当に部品一つ一つをこだわり抜いて作られた感じが伝わってきます。

次は購入以前から気になっていたホールド感ですが、先入観もあってやはりフォーカスノブがやや中心寄りかな?と最初感じましたが、慣れてくると特に持ち難いとは感じない、片方鏡筒の対物レンズ前の部分を中指薬指小指で掴み、フォーカスノブに人差し指を乗せて親指の付け根で中央のくびれ部分を深めに握るように持つとかなりのフィット感で、軽い事もあって片手持ちでも十分に扱えると感じ、これはかなり持ち易いのでは?と印象が変わってきました。NL42mm機と比べると物足りなく感じるところもあるかも知れませんが、いきなりこの機種を手にした自分的には32mm機もこれはこれで十分考え抜かれた形状と思えました。

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見え味に関してはまず視野の広さ、手持ちのHC8x42と見比べてもやはり格段に広く、フラットさに関しても最周辺近くでも像が崩れる印象は殆ど無く、それ故に地上風景で視野を振ると視野の中央部分が凸面に歪む感じは若干ありますが(望遠鏡用アイピースで言えばナグラーの歪曲を軽くしたような印象)視野を止めている限りはフルフラットと呼んで差し支えない素晴らしい見え味だと感じます。ツイストアップ見口は6段階で自分が裸眼で覗く限りでは見口を一番引き出したところでビーンズエフェクトの生じない気持ちの良い視野を味わえ、アイレリーフは18mmと十分にあるので眼鏡使用でもこの広い視野を問題無く一望可能で、かつて所有していた名機ニコン8x30EIIが見掛け視界と引き換えにアイレリーフを犠牲にしていた設計であった事を考えると、NLは同等の視野の広さを持ちながら周辺像もほぼ完璧である事も考えれば、よくこんな性能を両立させた双眼鏡が作れたものだと驚かずにはいられません。

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星を見ての印象はこちらも素晴らしく、個人的には昼間の景色よりもおおっ!と思わせる見え味かも知れません。視野のフラットさ、透明感でWXに遜色が無く、口径の割に高倍率な事が逆に幸いしてか星像の鋭さは上回るようにも感じられ、WXを覗くと普通の双眼鏡で星を見る気にはならなくなりますがNLは覗いている時の気持ちの良さで勝負出来ています。勿論見掛け視界の広さと良像範囲の広さはWXは更に上回りますが(星での良像範囲はNLが90%~、WXは95%~の印象)それは重量を度外視して得られた性能であり、NLの場合重量を無視する訳にはいかない制約の中でここまでの性能を実現するにはWXの様に従来の双眼鏡の枠を打ち破る必要はあっただろうと推測します。

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見え味の描写の部分に関してはこれは正直に言えば自分の経験、眼力では掛け値なし、素晴らしく良く見える!以上の事が語れないのですが、HC8x42と比べてこちらが口径が小さく倍率が高いのにかかわらず明るく見えるのには驚きました。ただHCの名誉の為に書かせてもらえればこちらも十分に見える双眼鏡だと改めて感じるところですが、自分はツァイスFLとプリンスEDとの違いも余り感じられなかった眼力ですので詳細な描写の良し悪しについてのレビューはより造詣の深い方にお任せしたいところですσ(^_^;)

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それでも個人的には価格からすれば当たり前かも知れませんがとにかく総じて満足度の高い、完成度の高い双眼鏡と感じ不満に感じるところがありません。使えば使う程、これはいいな、本当にいい、素晴らしい、と思わず独り言が出てうんうんと頷いてしまうレベルで、パフォーマンスと重量の比率で考えれば世界最高と言って差し支えない双眼鏡の様に思え、自分にとってこれが双眼鏡病に終止符を打つ、最後の双眼鏡となるであろう事に疑いの余地はありません(えっ!?)

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75mm口径拡張Hα太陽望遠鏡 [天文>機材>望遠鏡]

《CAUTION!!》
今回の試みは元々危険を伴う太陽観望を更に危険にするものであり、使用を誤れば人体(眼)に恒久的なダメージを与える可能性がありますので完全自己責任、非推奨の試みです。あくまで参考までにお読みください。


Xのフォロワーさんのgariさんがコロナドの60mmのSolarmaxエタロンを使用した口径150mmの太陽望遠鏡を構築されたチャレンジを知って、この手法を用いれば我が家の太陽望遠鏡の40mmのエタロンを使用してより大きな口径の太陽望遠鏡が作れるのでは?とこれまでHα太陽観望をしていてもう少し口径があればなあと常々感じながらも60mmのエタロンの値段を見てはため息をつく日々を送っていた自分にとってこれは正に福音、天啓とも呼べる出来事で、この試みを見た瞬間から居ても立ってもいられなくなり調査を開始、試行錯誤の末最終的に口径75mmに口径をアップした太陽望遠鏡を構築する事が出来ました。

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口径拡張の方法を紹介する前にまず市販の太陽望遠鏡の仕組みについて簡単に解説すると大きく二つに分かれ、一つはコロナドの太陽望遠鏡に多く採用される対物レンズ前にエタロンを置く構成、もう一つはラントの太陽望遠鏡に多く採用される対物レンズの後ろにエタロンを置く構成で、以下にそれぞれの方式の構成イメージと長所、短所を挙げてみました。

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《エタロン対物レンズ前設置式(Coronado Solarmax鏡筒など)》
◎長所
・エタロンの取り付け汎用性が高く、通常の望遠鏡を使用出来る。
・光学系がシンプルで、像の悪化を招き難い。
・広い良像範囲を原理的に得易い。
△短所
・エタロンの有効径で対物レンズ有効径(=解像度)が制限される。

《エタロン鏡筒内蔵式(LUNT鏡筒、Coronado PSTなど)》
◎長所
・エタロンより大きい対物レンズが使用出来る為解像度を上げ易い。
△短所
・内部構造が複雑でエタロンの流用は難しい。
・3群のレンズ構成となる為、光軸調整の難度が高い。
・良像範囲の点で原理的に不利?

前者の利点はエタロン取り付け汎用性の高さで、通常の望遠鏡に外付けする事で太陽望遠鏡として使う事が可能で(アダプター制作が必要になる場合がありますが)お好みの鏡筒一本で昼夜の使い分けが出来るので鏡筒を増やさずに済む、フィルターのみの保管が可能で収納面で融通が利くのが大きなメリットだと思います。後者の内蔵方式では複雑な光学系でエタロン単独を外したり他に流用する事は困難で、基本的にメーカー販売鏡筒を持つ事しか出来ません。

その一方後者の利点は何と言っても大口径を得易い事で、前者はエタロンの有効径で対物レンズ有効径が制限されますが後者は光路内にコリメーターレンズを用いた平行部を設ける事で内部にエタロンを設置する方式の為対物レンズ口径よりも小さなエタロンが使用が可能で、翻せば前者方式と同径のエタロンであればより大きな口径の対物レンズを使用する事が出来る=より高い解像度の太陽像を得る事が可能となります。ラントには口径15cmや23cm、30cmと言ったコロナドには無い超大口径太陽望遠鏡がラインナップされていますが、この方式ならではと言えるでしょう。

良像範囲についてはエタロンには極力平行な光線が入る事が目的の波長(Hα)を取り出すには望ましく、エタロン対物レンズ前設置式の場合は太陽光線は太陽の視直径0.5°の半分、±0.25°の(最小限の)角域でエタロンに入射しますがエタロン内蔵式の場合、発散系の(コリメーター)レンズがエタロン前に入る事でガリレオ式望遠鏡の様に機能して太陽像がエタロン入射前に拡大されてしまう為、光束の角域が広がる事でエタロンを通過した後のHα領域が狭くなる、つまり良像範囲が狭くなると言う事が原理的に言えます。(これはじろーさんとgariさんのアドバイスから自分なりに解釈した部分です。間違えていたらスミマセン)

ただ実際にはエタロンの径が大きくなればそれだけ全面で精度(平行度)を保つ難度も上がりますので良像範囲の点では不利な面とも言え、ラントの太陽望遠鏡がコロナドのそれより見えないと言う評判も特に聞きませんので、トータル(製品)としては両方式に大きな違いが無い(それ以外の要因にも大きく左右される)のが実情かも知れません。



これを踏まえた上で今回の試みを一言で表せば、

《本来対物レンズ前に設置するコロナドのエタロンをラントのように対物レンズ後ろに配置する事で対物を大口径化させる改造》

と言えるかと思います。

この改造で鍵となるのが内部にエタロンを配置する為の平行部をどうやって設けるか、コリメーター(凹)レンズ、リフォーカス(凸)レンズにはどのようなもの(レンズ構成、口径、焦点距離)を用いれば良いかの知識が必要となってきます。ここは自分には当初全くちんぷんかんぷんで見当も付かないところでしたが、この部分をgariさんに道筋を付けて頂けた事で一気に計画が具体的となり設計制作に取り掛かる事が出来ました。

知識の中途半端な自分が考えたところとしては、結局対物レンズで集光した光を平行に戻すのが目的ですので、対物レンズのF値とコリメーターレンズのF値を一致させるのが基本の設計と考えて(ここは多くの議論を呼ぶところでそこまで単純ではなさそうなのですが)これを念頭に対物レンズとコリメーター、リフォーカスレンズの選定を始めました。

まず対物レンズの口径と焦点距離ですが、BF5を流用したい考えから焦点距離は500mm前後と決めて、口径は8cmから10cm程度あれば望ましいと考えましたがエタロン有効径が40mmである事とF値をあまり小さくすると像が悪化しそうな直感が働いて無理はしない方が良いと判断、この条件に合いそうな市販の対物レンズを探した結果スコープタウンの口径80mm、焦点距離560mm(F7)のアクロマート対物レンズに白羽の矢を立てました。この製品は金属セル付きで日本製レンズ(久保田or大一光学?)使用ですので性能、品質面でも間違いがありません。

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またコリメーターレンズ、リフォーカスレンズに使用する平凹、平凸レンズですが、エタロンの有効径40mmよりレンズ径の大きいものでF7程度のものがないか探したところ(これがあまり無いのです)モノタロウでアズワンと言う会社で取り扱われている口径50mm、焦点距離が±300mmの平凹凸レンズを見つけ、これらを使用した場合エタロンの有効径で絞られて実質300÷40=F7.5となる事から、対物レンズの方も口径を80mmから75mmに絞る事で560÷75≒F7.47とほぼ一致する設計としました。

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尚コリメーターレンズの配置は口径75mmF7.5の対物レンズから入射した光束がΦ40mmとなる位置で対物レンズとの間隔は260mmとなっています。これらを踏まえた今回太陽望遠鏡の設計イメージが以下となります。

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また今回改造で太陽がよく見えるかどうか以上に最も気を使うべき安全対策についてですが、対物レンズ前にUV/IRカットフィルター(KANI 82mm径)を配置、またコリメーターレンズ前にR2フィルター(Marumi MC-R2 48mm径)を配置する設計としました。本当はバーダーのD-ERFなどのエネルギー遮断フィルターを用いるべきかと思いますが非常に高価で、これが必要なほど今回の拡張口径は大きくは無いのでは?と自己判断、ダブルスタックのエタロンを通すのでこれでひとまず様子を見ようと言う魂胆です。上記2つのフィルターを重ねるとD-ERFに近い透過領域にはなりますが、コーティングやフィルター厚に少なからず違いがあるようにも見えますのでこれは本当に自己責任です。



設計とレンズの調達が出来たところで次は鏡筒制作ですが、長さ40cmのプレート(青アリガタ)を2本使い、アリミゾ(赤)を介する事で伸縮式となるフレームを構築、これをベースに各レンズ、接眼部を搭載する作りとしています。伸縮式にしたのは収納面でのメリットもありますが、対物レンズとコリメーターレンズの間隔を微調整出来るようにしたい思惑があり、この構造もgariさんの方式を真似させて頂きました。

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対物レンズは光軸調整(センタリング+スケアリング)が可能となるようにガイドスコープ用の支持リングで対物セルを支持する造りとしました。またこの対物セルの前方からAmazonで見つけた86mm径レンズフード(八仙堂)の内側に植毛紙を貼り付けて逆向きにはめ込み、82mm→86mmステップアップリング、82mmメスメスの継手リングを介して82mm径のUV/IRカットフィルターが取り付けられるようにしています。

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コリメーターレンズは家に余っていたパーツを駆使して外径60mmの円筒形パーツに内蔵させて、このパーツの対物側にMC-R2フィルターを装着しています。尚今回望遠鏡にはファインダーは設けておらず、太陽の導入はこの部分の光の当たり具合を見て行っています。

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以前の太陽望遠鏡ではエタロンの鏡筒への取り付けはミニボーグ50の対物フード先端に直接ねじこむ方法が安全且つ扱い易かったので今回もその方式を踏襲、リフォーカスレンズはエタロンになるべく近づけるのが望ましいと思われたので、この対物フード(BORG【60207】)内に家に余っていた色々なリングを詰め込んで極力前方に内蔵させました。

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コリメーターレンズにリフォーカスレンズを内蔵した接眼部の外径をΦ60mmで統一し、MoreBlueのΦ60mm鏡筒バンドで後方フレーム上に取り付ける事でこれらの間で光軸がずれ難い構成としました。またこのままでは対物レンズとコリメーターレンズの間ががらんとしていて後ろから覗き込むと対物レンズからの入射光が直接目に入る危険性がある為、遮光の為のフードを設けています。ついでなのでこの部分にキャリーハンドルも付けました。

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リフォーカスレンズ以降のパーツ構成は、

・BORG ミニボーグ50用フード(BK)【60207】←この内部にリフォーカスレンズ
・BORG M57/60延長筒S【7602】
・BORG M57/60延長筒L【7604】
・BORG MMF-1【9857】

としていますが、これは観望はNikon双眼装置の使用を前提として、基本となるアイピースをTV PL32mmと決めた上で、拡大率2.4倍相当のバローレンズ(笠井BS2xエクステンダー)を使用して丁度良い倍率(42倍、射出瞳径1.8mm)とバックフォーカスが得られるように延長筒の長さを調節した結果となっています。



一通り構築は完了したものの実際に覗くまではこれでちゃんと見えるのか半信半疑でしたが覗いてみて驚愕、細いダークフィラメントが多数走っている様子、プラージュの入り組んだ構造、立体感を感じる太いダークフィラメントが毛羽立つ様子、プロミネンスのディテールに加え、太陽光球面外に千切れ飛んでいる様子など4cmでは到底見る事が叶わなかった詳細な太陽の表情を観望する事が出来て、これには感激しました。

この改造で良像範囲は4cmの時より狭くなっている可能性はありますが体感ではそれ程では無く(元々良像範囲は光球面の6~7割程度でそれ程広くはありません)何より見える模様の解像度、詳細の見え方が格段に違うので以前の構成に戻せるようにも当初は考えていましたが、今ではとても以前の太陽像を見る気にはなれません。

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大口径太陽望遠鏡の価格を鑑みれば、自分的には比較的少ない投資でこれだけの見え味向上が得られた今回改造は本当に画期的、革命的だと感じますが、知識が乏しいまま突っ走ってしまったので安全面を考えると手放しで喜んで良いものなのか、ブログで紹介して良いものなのか悩んだ部分もあり、自分の場合太陽望遠鏡で一度に長時間は観望する事は無く(一回でせいぜい20分程度で片付けます)観望中でも覗いていない時は鏡筒をさっと横に向けるように気を配っていて(このお陰か8年前に購入したBFにも殆ど劣化は見られません)仮に長時間太陽を導入、観望し続けた場合の人体、機材に及ぼす影響などは分かっていませんので、この様な改造を他人に積極的にお勧めする趣旨ではない事は改めてご承知おきください。

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APM MS25x100ED+双眼鏡並列同架用L字プレート構築 [天文>機材>双眼鏡]

APM20x80MSWXと同架しての観望は当初の想像以上に楽しめた事と架台の耐荷重にまだ余裕があると感じた事で一段口径をアップさせました。

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25x100双眼鏡であれば他に安価な製品も多く見受けられましたが20x80MSの性能、品質にはとても満足していたのでやはり同じAPM製品に狙いを定め、また直視双眼鏡は本来地上風景を見るのに適している事もあり、今回はフンパツしてEDモデルをチョイスしました。硝材はFK61とメーカーHPに書かれており、オハラS-FPL51相当品の様です。

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実物を触れてみて最初に感じたのは20x80(公称2500g)に比べるとかなり大きく重くなった部分で公称4080gとなっていますが、三脚アダプター装着状態では実測4.6kg程度ありました。重心もかなり対物側に寄っているので20x80は手持ち出来そうな手軽さがありましたがこちらは流石に三脚でなければ運用は難しいと感じます。一方製造品質面では20x80と変わりは無く、普通に満足できるものです。

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対物レンズの焦点距離は372mmと公称されており、F3.72の短焦点対物ですが、接眼レンズはCNで断面図が紹介されていて、これを見ると4群6枚(恐らく20x80も同じ)となっており、20x80も良像範囲が広いので予想はしていましたが、直視双眼鏡の接眼レンズとしてはかなり贅沢な設計がされていると感じます。

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また今回も接眼部には20x80と同様にフィルターワークが可能になるようにTS製M48メス-2インチスリーブアダプターを装着(流用)しています。但し前回の様にアダプターをそのまま接眼部に差し込もうとすると異常にきつく危険と判断、今回は接眼部周囲のグリップラバーは外してアダプターを装着(イモネジ3点で固定)させました。

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最初に覗いた時の第一印象は目位置にかなりシビアなのかすっきりと見えない、アイポイントからずれると像が悪化し易いと感じましたが、覗き慣れれば徐々に普通に見えるようになりました。見掛け視界は67.5度と広い一方で当初全視野が見渡し難いとも少し感じましたが、接眼レンズのゴム見口を上記アダプターに換装して、2インチのムーン&スカイグローフィルターを装着した状態では見え味に透明感が増して周辺も見渡し易くなった気がします。周辺像は20x80同様良好で良像範囲は9割程度あるのではと感じます。光軸は全く問題ありません。

この双眼鏡のスペック、口径100mmで25倍の倍率、実視界2.7度の視野はメシエ天体、特に散開星団観望にとても適していて、視直径1°程度の散開星団ととても相性が良く(散光星雲も良く見えますが)APM12cm対空では散開星団はやや星像が甘い印象に比べるとこちらは比較的シャープで、一方星像には文句の付けようが無いFL90S-BINOも裏像と言う弱点があり、またこの2つは大きさ的にベランダでは使用できない機材である事を考えると今回の25x100は我が家のベランダで観望可能な最大口径の双眼機材と言う点でも価値ある存在となっています。

この双眼鏡の弱点と言う点ではやはり直視双眼鏡での天体観望は首が痛くなる、姿勢が辛い、目位置を適切なアイポイントに持っていくのが難しいと言った点、また高度の高い天体の観望は難しく観望範囲が限定される点はデメリットかも知れませんが、アイピースの着脱が不要なこうした直視双眼鏡は架台を設置して本体を載せれば即観望可能となりますので、機材の設置撤収が格段に速い点は対空機材に勝ります。

また今回の双眼鏡の導入に伴い、これまで2台の双眼鏡を同架するL字プレートの縦のアリガタの上端面にアリミゾを設けて(特注加工)片方の双眼鏡を搭載する事で架台への負担を減らす工夫をしていましたが、この場合2台の接眼部で高さの差が生じる事で覗き比べる度に三脚のエレベーターの昇降が必要な部分が大きなストレスだったので、今回架台への負担を顧みず、2台の双眼鏡を横並びに搭載出来るようにプレートを新たに構築しました。この試みは大正解でWXとの見比べが格段にスムーズになり、導入時以外はエレベーターの操作が必要なくなったので劇的に観望が楽になって星見が本当に楽しい機材に生まれ変わった気がします。

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最初の見え味の印象はそれなりでしたが使い慣れていく内にどんどんお気に入り度が増して、以前のWXと20x80との組み合わせでは昨年ZTF彗星(C/2022 E3)をWXで導入、20x80で拡大像を観察すると言った楽しみ方が至福でしたので、今年期待(してはいけない?)の紫金山-アトラス彗星(C/2023 A3)をこの新しい組み合わせで眺めるのを楽しみにしています。

SVBONY SV208 直視8x50正立ファインダー [天文>機材>ファインダー]

WXの相方として手に入れたAPMの25x100双眼鏡でしたが、当然ですが単体で使用しても利用価値が高く、こちらの双眼鏡をメインに(手軽に)使いたい場合に直視で正立のファインダーと組み合わせられれば大きく使い勝手が上がると考えて手に入れたのがこのファインダーです。

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直視且つ正立のファインダーと言えば国際光器扱いのEF-508ファインダーが天文ファンの間では知られた存在と思いますが現時点(2023年12月時点)では販売停止中となっており、これ以外で探そうと調べたところSVBONYのこの製品位しか見当たらずほぼ選択の余地はありませんでした。

実物を手にしたところ各部の造りが良く安っぽさが無くしっかりしており光学系も綺麗で製造品質は高いと感じ、今回自分ははSVBONYの直販サイト(svbony.jp)から購入したので(支払いはPaypalを使用)中国からの発送で時間は掛かりますが、途中トラブルも無く結果からすればとても良い買い物が出来たと感じます。

使い勝手の面ではピント調整は対物レンズのネジの締め込み具合で調整しますが、ネジのピッチが細かく、どこでピントが合っているかの判断が少し難しいと感じましたが一度合わせれば頻繁に変えるものでもありませんので大きな問題ではありません。ただ近視側にピント調整の余裕が余りないように感じ強度の近視の方は合焦しないかも知れませんが、このファインダーの長所と感じたのはアイレリーフに余裕があり全視野が覗き易く眼鏡使用でも問題無く使えるだろうと思います。

またAmazonのこのファインダーの評判を見るとファインダー脚のアリガタが大きく、一部の(ビクセン純正など)ファインダーアリミゾに入らない、と言う苦情を目にしますが、これはこの製品に限らず中華製品にはよくある事で、アリガタアリミゾの寸法が厳密に規格として定められていない(多分)ので相性問題が生じるのは致し方ないところかと思います。

因みにその様なクレームを避ける為か中華製のファインダーアリミゾは幅に余裕のあるものが多く、自分も手持ちの中華ファインダーアリミゾにはこのファインダーは問題無く装着出来ました。また支持リングより下のファインダー脚の部分は取り外せますので、自分は重心を低くしたかった事もあり支持リングに直接汎用のファインダーアリガタを装着しています。

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性能面でこのファインダーを使ってみると視野が公称(実視界7.3°)より若干狭い?SkySafariと見比べた実測で7度弱程度と感じました。良像範囲は体感85%程度と予想以上に広く感じる一方正立プリズムを内蔵している関係か口径の割に微光星が暗く感じるような気もしましたがこれは自分的に性能を追求した55FLファインダーと見え味を比較しての印象で(55FLファインダー構築に費やした金額で今回のファインダーは10本以上余裕で買えます)市販のファインダーとしては十分及第点の性能と感じます。何より直視正立と言う条件では他に比較できるものがありませんので見え味だけで比較するのはナンセンスかも知れません。

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このファインダーには暗視野照明も付属しており電池(LR754)もちゃんと付属していました。レチクルパターンが十字スケールの中央が〇となっており星と重ならないのは個人的に好みです。当初の使用目的で普通に不満無く使える、良質なファインダーと感じました。

SVBONY SV208 8x50mm ファインダースコープ
Amazon

Clave 12mm [天文>機材>アイピース]

12mmクラシックアイピースを集めていた中でその存在は知りつつも長年中古市場で見掛ける事が殆ど無かった為入手する事は無理と考えていたこのアイピースを遂に今回手に入れる事が出来ました。

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これまで自分はクラベに関してフランス製の高性能プローセル、と言う以外の事は殆ど知りませんでしたので今回入手をきっかけにどの様なアイピースなのか調べてみました。CNのフォーラムやその他ネットに上がっていた資料から読み取った情報を自分なりに整理、要約すると、まずこのクラベの名前はメーカーを立ち上げたセルジュ・ルネ・クラーベ(Serge-René Clavé)氏の名前から来ており、氏の施設は1937年4月20日に設立、クラベ氏が1988年1月に死去するまで事業が続けられ、1989年にキノプティック(Kinoptik)社に買収されました。その後更に別の会社に事業が受け継がれて2010年過ぎ頃消滅したとの情報がありましたが、クラベのアイピースの変遷を語る場合、キノプティック買収以前(Pre-Kino)か以後かで大別されるようです。

クラベのアイピース設計はプローセルであり、世界で最初に市販されたプローセルらしいです。昨今の安価なプローセルは製造コストを抑える為に前群と後群に同じダブレットを採用した、いわゆる対称型のプローセルと呼ばれるものでこれに対し、クラベは前後非対称のプローセル設計となっておりこれは1953年にフランスの光学エンジニアのジャン・テクスロー(Jean Texereaux)氏によって設計され、彼がフランスのピック・デュ・ミディ天文台の所長であった時にこの天文台用の接眼レンズを製造する業者として選ばれたのがクラベで生産は1954年末に開始されました。

クラベの焦点距離ラインナップは、27mm/31.7mm径は、

3mm/4mm/5mm/6mm/8mm/10mm/12mm/16mm/20mm/25mm/30mm/35mm

50mm径は、

30mm/35mm/40mm/45mm/55mm/65mm/75mm

が存在し、特に50mm径の接眼レンズはピック・デュ・ミディ天文台で惑星観測用に使用されていた事からこの名(Pic du Midi)でも呼ばれているようです。ある意味プロ用の接眼レンズと言えるかも知れません。

クラベは多くのマイナーチェンジが繰り返され、第一世代(50年代?)、第二世代(60年代?)、第三世代(70~80年代?)、Kinoptik以降(80~2000年代)と分かれるのがマニアの認識の様ですが、クラベは外観から製造時期を突き止めるのは中々難しいらしく、判別ポイントとしては第一世代は(テカテカ光る)クローム製のバレルが特徴的で、バレル内がグレーのパウダーコート(反射防止コーティング)されたモデルはクラベ氏が亡くなる以前のものでこれが第二、第三世代、バレル内がラッカー塗装やフィルターネジが付いているものはKinoptikに買収された以降のものと認知されているようです。

これらを踏まえると自分が手に入れたのは第二か第三世代のクラベと推測していますが、持っている2本を見比べてみるとコーティングの色がそれぞれ異なっていたり、内部の細かい違いは自分の想像以上に多いような気もします。

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私見ですが今でこそ安価なイメージの定着したプローセルですが、自分の記憶ではツァイスサイズのアイピースが販売の主体だった頃はH(ハイゲンス)、K(ケルナー)、Or(オルソ)が殆どで、プローセル(PL)の名を前面に押し出したアイピースが販売され始めたのは割と新しい印象で高級接眼レンズと位置付けられているものもありましたが、プローセルが当初この高性能、高級設計のイメージが付与されていたのはクラベやブランドンの存在が大きかったのではないかと推測しています。

造りの特徴的な面としてアイレンズから距離のあるアイガードが備わっており、適切なアイポイントからの観望をサポートすると共にアイレンズを汚れる事を防ぎ、迷光をブロックする役目も果たします。アイレンズの表面はフラットで、視野レンズ側もフラットに見えますが、クラベの非対称プローセルはZeissのA.ケーニヒが設計した視野レンズ側が凸面の非対称プローセルが原型との噂もあり、自分の考えではクラベの視野レンズも凸面になっているのではと予想していましたのでこれは意外でした。もしかすると目に見えないレベルの曲率を持っている可能性も否定できませんが。

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バレル側から覗くと先述したパウダーコーティングが丁寧に施され、各パーツの削り出しも丁寧でトータルの製造品質はかなり良い印象です。また見掛け視界は31.7mm径のクラベのカタログのスペックの一覧を見ると、焦点距離12mmの場合視野環径が10.7mmとなっているので10.7/12×180/π≒51°と計算上なります。

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見え味に関してはやはり手持ちの12mmクラシックアイピースの中でもトップクラスで、解像度、コントラスト、迷光処理何れも高いレベルでバランスの良さを感じさせる、例の12mmランキングでは普通にSランクに入る性能と感じますが、このアイピースの入手と近い時期に発売されたタカハシの高性能プローセル、TPL-12.5mmと見比べると総合性能では僅差でTPLが上回るようにも感じられました。

個人的にはTPLが発売された今、このクラベを(性能面に期待して)追い求める意義は若干薄れてしまったようにも感じますが、間違いなく現在でも第一線級の性能を有しており、この歴史あるアイピースを車で言えばクラシックカーをドライブするような気持ちで観望するのも趣味の楽しみ方として格別なものがあるかも知れません。

ややセンシティブ系萌えイラストの引っ越し [お絵描き>萌え系]

最近センシティブな絵を描く欲求が高まり、このブログに上げ続けるのも悩ましいものがあった為、最近立ち上げた幣DTMブログにこちらの天文に関係の薄い萌え絵を大部分移動させました。

https://zakstation2plus.fc2.net/blog-category-2.html

もしご興味のある方がいらっしゃれば引き続きお付き合い頂ければ幸いです。

2023年12月01日北海道低緯度オーロラ観望 [天文>日記]

今年は猛烈な暑さでしたが11月を過ぎると急速に寒くなり、日本に四季なんてなかったんや!などと感じる今日この頃でしたが、この日も日が落ちると既に氷点下で部屋で暖房焚いてぬくぬくと過ごしていたところXで北海道でオーロラが出ているとの話題が上がっているのに気づき、えー今からかあ・・・もう見えないのでは?そもそも眼視では無理でしょ?などと思いつつ外はとても晴れていてこのまま寝てしまったら後悔するかもと感じ、ダメ元で双眼鏡のみ携えていつもの遠征場所に急遽出撃しました。

下調べゼロでしたので発生している場所がどの方向なのか全く見当が付きませんでしたが、まあオーロラなら北だろうと考えて肉眼と双眼鏡で眺めましたが判然とせず、これはやはり眼視では「見えなかった」の結論で帰宅しようかと考えたのですが、そうだスマホで試しに撮ってみようとシャッターを切ると何やら赤っぽい?ひょっとしてこれは?スマホで写るの??とテンションが一気に上がり、自称眼視派のプライドを捨てて笑バッテリーが切れるまで撮りまくりました。

その中で比較的綺麗に写っていると感じたのが下の写真です。

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・撮影日時:2023年12月1日22時31分
・カメラ:ASUS Zenfone3
・アプリ設定:ISO3200、露出5秒
・撮影場所:中札内村

この画角にステナビの星図を合わせてみたのが以下の画像です。

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ほぼ真北の方角ですが、この写真だと一見街灯りの様にも見えて、実際この方向の30km向こうには地方都市が存在しましたので自分も撮っている時はオーロラかどうか疑心暗鬼だったのですが、この写真より幾分早い時間に撮影した別ショットを処理したのが以下の写真です。

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・撮影日時:2023年12月1日22時17分

こちらは手振れが厳しいですがこの写真だとオーロラっぽい赤い縦方向の濃淡の構造がうっすらと確認できてこれは街灯りとは明らかに違うと感じられ、また帰宅後Xには道内各地で撮影されたオーロラ写真がいくつもアップされていてその写真に写っているオーロラの方角(背景の星の位置)を自分の写真と比較したところほぼ同じである事が確認出来て、これで自分が撮ったのもオーロラで間違いなかったと確信する事が出来ました。

眼視機材としてはWXSR2x54星座ビノのみを持っていきましたが、改めてオーロラ発生方向を見てもやはり判然とせず、南天と比較するとバックグラウンドに赤色成分が僅かに含まれているようにも思えなくもありませんでしたが低空の影響によるものかも知れず、見えたとは言い難い結果でしたがオーロラの光子は網膜にキャッチされていたはずですのでそれだけでも満足です。

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自分は子供の頃から皆既日食、南半球の星空、そしてオーロラの3つを見る事は長い間夢でしたが、大人になって慢性的な体調不良に見舞われて遠出が殆ど出来なくなってしまったので半ば諦めていましたが、ここにきてその夢の一つが地元で叶うとは思いもしておらず、人生生きていれば良い事もあるんだなあと今後生きていく励みにもなった今回の突発イベントでした。

自作2x54星座ファインダー [天文>機材>ファインダー]

以前光害地でのスターホッピングの起点となる星をファインダーに導入する為に使用していた(言わばファインダー用のファインダーとも言える)笠井のWideFinder28ですが、光学系の仕様により目を見口に密着させないと視野を見渡せない部分が不便に感じており、最近入手した笠井のSuperWideBino36の同等品と思われるSR2x54ビノの覗き易さと視野の広さは旧型ワイドビノのそれより格段に向上していると感じましたので、これを何とかファインダーとして活用できないかと考えて作ってみたのが今回のファインダーです。

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構成としては長さ210mmの(ファインダー)アリガタプレート上に等倍ファインダーと星座ビノを同架させ、等倍ファインダーの後ろから星座ビノで覗く形となっています。この様な等倍ファインダーの後ろからテレコンビノで覗いて導入のし易さを向上させるテクニックは以前からアマチュア天文家の間では知られた方法で目新しさは無いかも知れませんが、プレートを斜めにする事によって双眼鏡の片側対物と等倍ファインダーとの光軸を合わせる構造は一応自分で考え付きました。尚全体の高度、方位調整はプレートを微動雲台に載せて行います。

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今回比較的シンプルな構成で済んだ理由の一つとして今回のSR2x54は星座ビノとしては珍しいビノホルダーが取り付け可能な構造となっており、プレート上にビノホルダーを装着する事で自由に双眼鏡の着脱が可能で、必要な時はファインダーとして、そうで無い時は普通の双眼鏡として使い分ける事が容易になっています。

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実際の使用感は正にWideFinder28のパワーアップ版と言った趣で、WideFinderより嵩張る部分を除けば実用性は高く、覗き易く視野も広くなった事で導入し易さも大幅に向上しました。

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双眼鏡なのでもう片側の対物レンズからは障害物(等倍ファインダー)無しの星空を望む事も可能で、等倍ファインダーのレチクルが多少明るい事から導入対象が見え難くなる場合でも左右の対物の像を見比べる事で対象を見失わず、より確実な導入の助けともなっています。

作曲データ置き場3 [DTM>作曲]

《Silent Party》(V3.3.7)


シンセ音+エレピ+木管で主に構成されるインスト曲

《Twinkle Streamer》(V1.0.5)


小川のせせらぎをイメージしたインスト曲



自分は今の天文活動再開の前はシンセサイザー集めに傾倒していて一時期60台程所有していましたが、天文機材の増殖の裏でシンセが資金源となり現在では20台弱まで減りました。言い換えれば現在でも通用すると自分的に感じる厳選した機材が残りましたので、天文機材集めも終盤に差し掛かっている今(本当?)、DTM活動再開も本腰を入れようと準備を進めている今日この頃です。

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作曲データ置き場2 [DTM>作曲]

曲名の後ろに(Vx.y.z)のようなバージョン表記を付けていますが、これは自分が頻繁に曲データを修正する事によるもので、V1.0.0を初期リリースバージョンとして、

z:ベロシティ調整、ミキシング調整、エフェクト調整など主にオーディオレベルの調整
y:一部フレーズの修正、MIDIデータレベルでの変更、調整
x:パートを追加、アレンジの変更など曲編成を大きく変えるような変更

と言った変更を加えた時にバージョンアップして再投稿しています。

《木陰の散歩道》(V1.0.6)


アニソンっぽい?明るい雰囲気のインスト曲

《Liquid State Groover》(V1.0.1)


シンセ音中心のテクノ風インスト曲

タカハシ TPL-12.5mm [天文>機材>アイピース]

タカハシのAbbeシリーズがディスコンになった時(2022年2月)、タカハシHPに「後継製品を鋭意開発中」と書かれていましたがそれから約1年半後、待望の新型アイピースとしてこのTPLシリーズが発表されました。かつてのOrやAbbeはアッベ、LEはアストロプラン設計に対して今回はタカハシ初?のプローセルタイプとの事で今のご時世に新たにクラシックアイピースを開発してくれたタカハシの心意気に応える為にもこれに手を出さない訳にはいきませんでした。

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TPLの製品HP(第一陣HP第二陣HP)を見るとまず、「標準型アイピースの決定版」と銘打たれていて、更にその商品説明には「市場にはプローセルと冠したアイピースが多く出回っていますが玉石混淆なので、実際に覗いてみないとプローセルというくくりではひとえに判断できません」との一文が記されており、この言葉の裏を返せばTPLは「玉」である、と宣言しているに等しく、高屈折低分散のEDレンズを使用した色収差の低減が謳われていて、前シリーズのLEやAbbeとのスポットダイアグラムの比較まで公開されているところを見るとやはりタカハシのこのアイピースに対する並々ならぬ自信が窺えます。

TPLシリーズの当初(2023年7月)のラインナップは12.5mm、18mm、25mmの3種となっており、その後(2023年10月)に6mmと9mmが追加され、TOEシリーズを併せると短焦点から長焦点まで隙間の無い焦点距離ラインナップとなりました。かつてのOrシリーズにはHi-Or、LEにはHi-LEと言った超短焦点側に冠(恐らくは設計も)の異なるラインナップが用意されていましたが、今回成立したTOE-TPLのラインもこれまでのタカハシの販売手法を踏襲した、ある意味タカハシの標準視界アイピースの集大成とも言えるラインナップの様にも思えます(後でHi-TPLが出たらスミマセン)。

販売価格は税抜き価格19000~22000円となっており、今のご時世プローセルをこのお値段では普通には売れないのではと思いますので、タカハシのブランド力が無くては出せなかった、ある意味タカハシだからこそ本気で開発に取り組めたプローセルと言えるかも知れません。

ただ自分が大量の12mmクラシックアイピースを見比べて感じた事は日本製と欧米の有名メーカーのアイピースでは「欧米の壁」とも呼ぶべき見え味の差を感じ、例えばZeissのアイピースであれば設計のよく分からない顕微鏡用であっても総じて良く見える事から、この違いは設計よりも硝材の質や研磨の質への拘りに寄るところが大きいのでは?と感じたので、その部分で大きな差が感じられない国産アイピースが仮に革新的な設計を生み出したとしても果たしてそれだけで勝てるのだろうかと言う思いがあり、これは完全に自分の憶測による主観でしかありませんが、ZeissやTMB、Brandonなどの高性能アイピースにどこまで迫れるのかタカハシのお手並み拝見と言ったところです。

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実物をチェックすると外観はごく普通の国産アイピースと言う第一印象で特別高品質、高級感を感じるデザイン、質感では無いように感じましたが、この造りの真面目さ、丁寧さが感じられる普通さが逆にタカハシらしくもあり、国産アイピースの良さであるとも思います。レンズを観察するとアイレンズや視野レンズに曲率は感じられず、コーティングも普通に見えて外観からは特別な設計、製造精度なのかどうかは推し量る事は出来ませんが、バレル側から覗くととてもすっきりした凸凹の無い内部構造で、多くのクラシックアイピースに見られるレンズ押さえのネジ構造が存在せず、絞り環の内部に複数の遮光環らしきものも見受けられ、艶消し塗装も良質でここは造りに拘りが感じられました。バレルに脱落防止溝が無いのもGOODです。

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4、5回割と良好なシーイング下で月木星土星を他のアイピースと見比べた印象ですが、まず感じたのがピント合わせ時にピントがカチっと合う感触(ピントの山)が他のアイピースより鋭く感じ、木星の縞模様などは安定してシャープネスが高く、この感触、切れ味はTMBモノセンに近い印象です。次に感じたのはバックグラウンドの暗さ、ゴーストの無さで手持ちアイピースの中では特に迷光の少ない部類(ニコンOBrandonと同等以上)と感じられ、模様の詳細が浮き出て見える感覚もCZJ12,5-Oにも引けを取らない印象で、普通っぽい外見とは裏腹に総合性能が非常に高いアイピースに感じられ、今後も見比べの回数を増やしたいところですが現時点では例の自分の12mmランキングではBrandonと同等レベル、国産では初のSランクに文句無しで入れていいと感じました。

正直当初は上述の欧米の壁を超える事は無いだろうと過大な期待をしていなかっただけにある意味今回の結果は(国産でもやればできたんだと言う)驚きで、ここに来てここまでのアイピースを出してきたタカハシの底力には敬服せざるを得ず、長いクラシックアイピースの歴史に新たな傑作アイピースとしてその名を刻むであろう事を予見させます。

木星デジタルスケッチ2023/10/24+散乱(scatter)の考察 [天文>デジタルスケッチ]

今年は酷暑に加えてこちらでは6~9月の間は殆ど晴れ間が見られない日々が続き悶々としていましたが、9月終わり頃から徐々に晴れる事も増えてきてこの日は最上に近いシーイングに恵まれて久々のスケッチに挑みました。

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今年の木星の模様は割としっかりとした(太い)SEBとNEBがどーんと居座っている印象で、以前の木星スケッチと見比べるとSEBとNEBのそれぞれ太さや形状、色調や位置がかなり違う事が分かり、昔は木星は太い縞が2本見えればそれで満足だったのですが、今ではこの様な縞模様の詳細の変化を感じられるようになってより楽しめるようになり飽きる事が無く幸せを感じます(^^

機材面では最近タカハシの新進気鋭のクラシックアイピースTPL-12.5mmに昔は手に入るとは考えていなかったフランスの銘アイピース、念願のClave12mmが加わってより見比べも楽しめるようになりました。一方でBrandonのアイレンズにヒビが入ってしまったり、BBHS天頂ミラーに誤ってキズを付けてしまったりとショックな出来事もありましたが、昔は良好なコンディションを維持する事に神経を尖らせていましたが、最近では機材とは使えばそうなるものなんだと少し割り切れるようにもなって、実用上問題無ければ多少の瑕疵は気にせず使えるようにもなって自身の精神面での成長が感じられます笑

ところでCloudy Nightsでアイピース関連のスレッドを眺めているとアイピースの性能を語る際に"scatter"が多い少ないと言う文言を目にする事が多く、これを日本語では個人的に「散乱」と呼ぶ事にしますが(フレアやハロと呼んでも良いのかも知れませんが)、これが何を意味するのか自分なりに調べたところ、特に明るい惑星で顕著な本体周囲に広がる背景?光を指していると解釈しました。これに対してゴーストは天体の手前側に主に点対称で現れる迷光と解釈していて、これらの違いを下記にイメージしてみました。

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散乱の広がりが大きいと視野のバックグラウンドを明るくし天体のコントラストが相対的に下がりますが、この迷光はゴーストと違いゼロになる事は無く、レンズの質に影響される迷光と思われ、言い方を変えればアイピースのレンズの質を本体の見え味以外で評価出来る貴重な判断材料と言えるかも知れません。これまでこの光に着目する事は無かったのですが、最近この部分を注視して見比べたところ確かにアイピースによって多少の差があるように感じられましたので、今後のアイピースの評価材料の一つとして加えていければと考えています。

作曲データ置き場1 [DTM>作曲]

これまで自作曲はMUSIC TRACKと言う音楽SNSを介して紹介させて頂いていましたが、今回音楽ファイルをクラウド(Dropbox)に設置して、このブログから直接再生出来るように仕様変更してみました。

《明日の向こうに》(V1.1.2)


穏やかポップなインスト曲

《Far Peak Moment》(V1.0.0)


ゲーム音楽風?インスト曲。その2

《Terminal of the Wind》(V1.0.0)


ゲーム音楽風?インスト曲。その1

インディゴ式 等倍延長レンズ(Mk-V双眼装置用) [天文>機材>双眼装置]

我が家の惑星番長ことオライオンUKのVX250L改めVX10L(25cmF6.3ニュートン)ですが、我が家の最大口径の鏡筒を惑星観望のみに使うのも勿体無いと感じ、かと言って単眼での観望は自分的にNGだった事から等倍双眼観望する手段として導入したELS双眼装置でしたが、やや癖のある見え味が性に合わず手放してしまったのですが、それでもこの鏡筒でのDSO双眼観望を諦め切れず、兼ねてより関心があったインディゴさんの等倍延長レンズ(Mk-V双眼装置用)の制作を意を決してお願いしたのでした。

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実は今回制作をお願いする前に等倍レンズを自作出来ないかと思案して、汎用の拡大撮影アダプターの外径が丁度2インチである事にたまたま気が付いた事で、これに顕微鏡用の1xリレーレンズ(Nikon製)内蔵する構成を試したのですが、バックフォーカスを140mm程引き出せて倍率的にもいい線いけた(1.1x位?)のですが、周辺像が壊滅的でお蔵行きになった経緯があり、これに対して制作をお願いして2ヶ月程経って手にしたインディゴさんのレンズを早速地上風景で確認すると、期待通り完全なる等倍で周辺像の崩れも感じない、ELS双眼装置の様な不自然さ(これは個人差があるかも知れませんが)も感じない見え味に、これは流石と唸らされました。

造りを見比べてもインディゴさんの方はレンズ口径は格段に大きく、後群レンズはぎりぎりまで双眼装置に近寄るように工夫、設計されており、これを見ると顕微鏡用のリレーレンズ一本で自作を目指そうとしたのはあまりに無謀な試みだったのかも知れませんが、この経験があったからこそインディゴさんのレンズの性能の凄さがより実感出来た気がします。

《前群側》
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《後群側》
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星での見え味はまずは31.7mm径アイピースで最大視野が得られるES24mm使用(倍率67倍、実視界1.02度)でしし座のトリオ銀河に向けるとR200SS-BINOでの見え味と比較すれば視野が若干狭く、倍率も高い事もあってやはり銀河は一段暗く、全体的に見劣りする事は否めませんがこれはある意味予想通りで、やはり周辺像の崩れも殆ど感じられず、等倍レンズ使用は反射双眼と違って裏像にはならない点も星図との対比がし易く大きな利点と言えると思います。

ただ個人的に一つ難を感じたのは視野の周辺減光で、視野の50%程度から外側が徐々に暗くなり視野環が判然としない見え味で、この周辺減光は仕様である事は事前に知ってはいましたが、想像以上に見え味に影響している印象です(但し周辺減光の程度はアイピースとの相性で変わる可能性があります)。そこでES24mmよりは若干視野が絞られるXW20(80倍、0.88度)に代えたところ周辺減光はかなり軽減され、これであれば自分的に観望にそれ程支障は無く、こちらを今回環境での最大視野、最低倍率用アイピースとして使う事にしました。

更にSSW14mm(114倍、0.73度)に倍率を上げると既に周辺減光は全く気にならないレベルで、高めの倍率なので球状星団を入れてみると一転してこれはいいな、と思わせる見え味で、単眼と比べれば明るさやツブツブ感は多少失われますがその度合いは大きくは無く、惑星状星雲も同様にトータルの見え味でR200SS-BINOのそれを上回っている様に感じました。球状星団や惑星状星雲は中央集光している天体で小さくとも輝度が高いので双眼装置のビームスプリッターによる光量損失よりも双眼視による視認性の向上、双眼装置使用によるメリットが上回る印象です。

更にUW9mm(178倍)やUW6mm(267倍)を使うとそのまま惑星観望に使用するレベルに倍率が引き上げられ、勿論惑星観望であれば通常のバロー使用に12mmクラシックアイピースの組み合わせに比べれば、等倍レンズを使用した上にスマイス入りの広角アイピースを使用しての惑星観望では見え味の点で不利になる事は否めませんが、アイピースの見比べ等本気の惑星観望でなければ十分な見え味で、DSO観望と惑星観望を切り替えをパーツの変更無くシームレス、気軽に行える点でこちらの等倍レンズ使用の恩恵は大きいと感じられます。

bv-imdg-tl_1.jpg

31.7mm径の最大視野での観望が個人的に厳しいのは残念でしたが高倍率でのDSO双眼観望の見え味(特に球状星団)は期待以上で、一方R200SS-BINOは中低倍率、広視野の観望に強いものの高倍率の運用が逆に難しく、この等倍レンズのお陰でお互いの弱点が上手く補完された格好となりました。

今回は口径25cmニュートンとの組み合わせでしたがどの様な望遠鏡であっても等倍で双眼観望可能とするこのレンズがあれば大口径のドブソニアンと組み合わせれば並の双眼望遠鏡では太刀打ちできない見え味が得られる可能性がある事を考えるととても夢のあるアイテムだと感じました。

APM-TMBデザイン 1.8x EDバロー [天文>機材>バローレンズ]

Nikon双眼装置用のバローとして拡大率が2.7倍(ビクセンDX2xバロー使用)から3.7倍(Meade2xバロー)の間のものがあれば欲しいと色々見つけては試していた中で、かつてZeissのアッベバローと並んで非常に評価の高く、TMBスーパーモノセントリックと共に販売されていたTMB1.8xEDバローが31.7mm径バレル先端に取り付け可能な形で再構成されて再販された事を知って、この形であれば我が家の双眼装置用バローとして使用出来、性能面でも最高峰となる事が期待されたので手に入れたのでした(以下TMB1.8xバローと呼称)。

blw-tmb18x_1.jpg

このバローの以前の形状から狙いの拡大率が得られそうな感触はありましたが、一か八かで手に入れるにはかなりのお値段でしたので当初様子見していたところ国際光器さんでこれがレンタルされている事を知って飛びつき、例によって室内で拡大率を測定したところ約2.9倍と丁度良い拡大率である事が分かり(アイピース間の光路長は恐らく130~140mm程度)無事に正式注文、狙いが外れた場合の散財のリスクを避ける事が出来てレンタル様様でした。但しこの拡大率の割には焦点引き出し量に余裕が無い事が分かり(笠井BS2xバローと同程度)、双眼装置のバレル先端とこのバローの間に31.7mm径の長さ12mmの延長筒を挟んでいます。

blw-tmb18x_2.jpg

これに伴いこれまで持っていたバローの拡大率も再測定して(下表の括弧内のx値です。前回との拡大率の違いは誤差で、目測による計測の為どちらが正しいとも言えません。あくまで目安です)、双眼装置に12mmアイピースを各鏡筒で使用した場合の倍率を表に一覧としてみました。

Nikon双眼装置12mmアイピース使用時各鏡筒倍率》
 FL-90S BLANCA-102EDP TSA-120 BLANCA-150SED VX10L 
・BS1.6x
(1.9x)
128倍178倍 143倍190倍253倍
・BS2x
(2.5x)
169倍234倍 188倍250倍333倍
・VixenDX2x
(2.7x)
182倍253倍 203倍270倍360倍
TMB1.8x
(2.9x)
196倍271倍 218倍290倍387倍
・Meade2x
(3.7x)
250倍346倍 278倍370倍493倍
・BS3x
(4.2x)
284倍393倍 315倍420倍560倍
・Baader2.25x 
(4.8x)
324倍449倍 360倍480倍640倍
・中華3x
(7.1x)
479倍664倍 533倍710倍947倍

こうして見るとどの鏡筒でも低過ぎず高すぎずのとても使い勝手の良い倍率で、光学性能も非常に高いバローと思われますので、これまで惑星双眼観望用として高性能の12mmクラシックアイピースを集めてはきたつもりでしたがそれに組み合わせるバローの性能についてはそれ程拘っていませんでしたので(ピントが出る事が最優先だった為)、性能面でもこれらに見合うバローが手に入ったのではないかと、アイピースの性能を更に引き出すバローとしても今後活躍を期待するところです。

12x36IS+テレコン用自作太陽フィルター [天文>機材>フィルター]

防振双眼鏡12x36ISに1.6xテレコンを装着した事でお手軽に月を眺めるのに丁度良い倍率となった事で、それであれば太陽も丁度良く見えるはず考えて、テレコンを付ける以前はEuro EMCのSF-100-1太陽フィルターが適合していましたが、テレコンを付けた状態に合う市販のフィルターが見当たらなかった為、バーダーのアストロソーラーフィルターが1枚余っていた事もあってそちらを有効活用し、タミヤの1mm厚のプラ板と5mmの角棒で工作して枠を自作してみました。

flt-bsslr_3.jpg

現物合わせでプラ板をカットし、コーナー部分を角棒で補強して、テレコンと接触する部分には植毛紙を貼る事でフリクションを確保、接着はプラモデル用の接着剤に透明テープを多用して形にしました。本当はテレコンの形状に沿った丸みを形成したかったのですが工作が苦手な自分には難度が高く、結果として見れば誰でも作れるようなシンプルな構造のフィルター枠となりましたがこれはこれで悪くないと思っています。

flt-bsslr_5.jpg

また以前はSF-100(=バーダーアストロソーラー)フィルターだけでは太陽がやや眩しく感じた為にNDフィルターを間に挟んでいたので、今回も減光、UV/IRカット目的のフィルターを挟もうと考え、結果として以前格安購入したAstro LPRフィルター(31.7mm径)を周辺に植毛紙を巻いて径を大きくしたものを接眼側のゴム見口内にはめ込むというやや強引な手段で取り付けましたが塩梅は悪くなく、覗いた時の目の負担がアストロソーラー単体に比べて明らかに低減されて、太陽は青緑色になりますが色収差も軽減されているように感じられ、全体として機能的に必要十分ながら出費を抑える事が出来ました。

flt-bsslr_2.jpg

見え味はやはり倍率が上がった事で黒点の詳細などがかなり見易くなり、じっくり観察すると光球面の周辺部や黒点周辺に白斑の存在が確認出来て、自分はこれまで白色光での太陽観望は精度の高い鏡筒でハーシャルプリズムでも使用しなければ黒点しか見るものが無いと思い込んでいましたので、この双眼鏡でそれ以外の模様が見える事が分かった事は思わぬ収穫で、Hαの太陽像との比較など白色光での太陽観望の楽しみが今後倍増しそうです。

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ACクローズアップレンズNo.5-BINO [天文>機材>望遠鏡]

ACクローズアップレンズアイピースミニボーグ55FL-BINOなどの退役によって余っていたパーツを再活用して構築してみたBINOがこちらです(以下CUpレンズNo5-BINOと呼称)。

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構成は対物側から、

・MARUMI 58mm-48mmステップダウンリング
・Kenko ACクローズアップレンズNo.5 58mm・・・余り物
・42mm-58mmステップアップリング
・中華M42ヘリコイド(25-55)・・・余り物
・48mm-42mmステップダウンリング
・SC2インチ90°正立プリズム(目幅短縮加工)・・・余り物
/100mmファインダーアリガタ
/MoreBlue目幅調節装置・・・余り物
/45度三角アリガタ

となっています。

今回BINOの構造的な特徴は2インチ正立プリズムの底面にファインダーアリガタを直接取り付け(M2.3x12mmのネジを使用)、これをMoreBlueの目幅調節装置に装着する事で鏡筒(鏡胴)部分を持たないBINOとなっており、これにより対物レンズとして焦点距離200mmのACクローズアップレンズNo.5(今回は58mm径)を使用してもピントを出す事が可能となり、イーソス17mmの使用で見掛け視界100度で実視界8.5度(倍率11.8倍、射出瞳径3.3mm)とWXにかなり肉薄するスペックを実現する事が出来ました。と言っても今回は周辺像の崩れを抑える目的とMasuyama32mmの使用を考慮して口径を39mm(F5.1)に絞っており、最小目幅もワンオフ加工したこの正立プリズムを以てしても63mm止まりとなっていますのでやはり実視界9度、口径50mm、最小目幅58mmを実現するWXの凄さをここでも再認識した次第です。

tlscp-accup5bn_2.jpg

それでもイーソスを使用した時の見え味はクローズアップレンズ使用であっても像が甘い印象は特になく、良像範囲は8割程度でWXには敵いませんが見掛け視界がWXの90度とイーソスの100度とでは視野の広さの印象の違いは結構あり、没入感ではこのBINOが上回っているかも知れません。またMasuyama32mmを使用した時の良像範囲も7割程度と意外に広く、正立プリズムの開口径の関係で視野が若干ケラれますがそれでも実視界13度近く(倍率6.3倍、射出瞳径6.2mm)を出せており、こちらも普通の双眼鏡では中々見られない景色を味わう事が出来ます。

WXとの最大の違いはこちらは90度対空(正立)となっていますので架台に載せての天頂付近の観望が容易となっており、今回のBINOの重量は約1930gとアイピース込みで考えるとWXより重いですが手持ちも何とか可能で、また机や台に載せれば三角アリガタ部分を支点にする事により架台を使わずに手振れを抑えた、腕が疲れない卓上BINOとして使える点も今回BINOのユニークな部分かも知れません。

tlscp-accup5bn_3.jpg

低倍率広視界のコンセプトで観望対象が若干WXと被るとは言え、ほぼ余り物のパーツで組み上げた割には存外しっかりとした見え味に機能も備わっており、正立プリズムとアリガタを固定するかなり細いネジに負荷が掛かっているのは不安材料ではありますが、スペック面でも(WXが無ければ)ユニークで実用的な機材が出来上がり、気軽に星空散歩する機材として有効活用していければと思っています。

顕微鏡用ハイゲンス5x(焦点距離50mm相当) [天文>機材>アイピース]

我が家の太陽双眼観望用の最低倍率用として新たに手に入れた接眼レンズがこちらです。

eyep-hyg5x_1.jpg

これまで最低倍率用としてはAH40mmが活躍していましたが次第に更に低い倍率で観たい欲求が高まり、望遠鏡用のアメリカンサイズ以下のアイピースでは焦点距離40mmより長いものは殆ど見当たらないものの顕微鏡用の接眼レンズに目を向けると5xであれば50mm相当、4xであれば62.5mm相当とより長焦点のものが存在するので狙い目でしたが、この長焦点で覗き易さを考えるとハイゲンス以外では厳しいだろうと思われた為、設計が製品名や外観からは判断し難い顕微鏡用接眼レンズからそれを引き当てるのは難しく積極的に探す事もしていませんでしたがそんな折、ツイッターでシベットさんが顕微鏡用の格安ハイゲンスセットを発掘されたツイートを見てその中に5xの倍率が存在し見え味も良好との事でこれは!と思わず自分も手を出したのでした。

顕微鏡用でバレル径は23mmですので例によってバレルに植毛紙を貼って24.5mm→31.7mmアダプターに差し込んで双眼装置で使えるようにしています。中を開けてレンズ構成を確認すると確かに2群2枚のハイゲンスで外装は金属製で格安接眼レンズの割には造りはしっかりしている印象ですが、中のレンズを支えるスペーサーがプラスチック製ですので長時間の太陽観望で使用する(観望会など)のは少し気を付けた方がいいかも知れないと思わなくもありません(ここまでそのような熱はこない?とも思うのですが)。

eyep-hyg5x_2.jpg

見掛け視界は確かに狭いのですが、自分の環境では太陽フルディスクは問題無く観望出来る必要十分の広さで、期待通り長焦点に関わらず非常に覗き易く像も問題ありません。AH40mmより一段小さく引き締まった太陽像を眺める事が出来て、一時は自作も考えましたがお安く目的を果たせて助かりました。

Hα太陽デジタルスケッチ2023/06/01 [天文>デジタルスケッチ]

兼々挑んでみたいと思っていた太陽望遠鏡でのHα太陽像を初めてスケッチしてみました。

ttsct2306-1_3.jpg

太陽像は惑星に比べると描画面積が広く、もし太陽活動が低迷している時期であればのっぺらとした赤い球の絵にしかならないところですがここ最近の活発な太陽活動とダブルスタックのお陰もあって、黒点、ダークフィラメント、プラージュ、プロミネンスに着目して模様を抽出、描き出す事で多少はHα太陽像の眼視イメージに近づけたかも知れません。

ttsct2306-1_2.jpg

但し太陽望遠鏡は視野内の模様の見え方が均一ではないので、太陽を視野の中で動かしながら一番模様が見えるポイントで上のスケッチのメモを取っていましたので細かい取りこぼしがあるかも知れませんが、これは太陽望遠鏡の特性上致し方ないところです。その点で最近低倍率を出せるアイピースが揃ってきた事でより俯瞰した観察が出来るようになった気がします。

ttsct2306-1_4.jpg

太陽望遠鏡は光学パーツが経年劣化する事が少なくないので長年に渡っては使えないかも知れず、素人には調整やメンテナンスが難しく超高精度の機材なので扱いにとても気を遣いますし、個体差が大きい故に見えは常に疑心暗鬼が付き纏い、観望中は苦行のように超暑く、何と言っても超絶高いなどつくづく罪深き沼機材だと思うところですが、熱心な愛好家の方の日々のご活動によりプロミネンスへの誘惑に狂わされた方々が後を絶たない様子を見て密かに喜んでいます笑

ユニトロン Konig12mm [天文>機材>アイピース]

このアイピースは海外ではその特徴的な縞々のリングが装着されている事から「ゼブラ(Zebra)」ケーニヒとも呼ばれているシリーズです。個人的には惑星観望用途としてレンズ枚数が少ない2群3枚のケーニヒに兼ねてから興味があり、Konigの名を冠したこのアイピースがユニトロンから販売されていた事を知って気長に2本手に入れたのでした。

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このアイピースの販売時期を手持ちの古い天文ガイドを漁って調べてみたところ、1986年5月号のユニトロンの広告に「NEW」の文字と共に掲載されていましたがアイピース径は24.5mm/36.4mmとなっており、この時点ではアメリカンサイズのものはまだ発売されていなかったようです。

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その後86年10月号にはアメリカンサイズの広告が写真付きで出ていますので今回のアイピースの販売時期はこの頃ではないかと予想されます。

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偏にケーニヒと言ってもその設計は多種多様で普通ケーニヒと言えばアッベの簡略設計とも思える2群3枚、2-1のデザインが一番有名ではないかと思いますが(RKEもこれに近い設計です)吉田先生の望遠鏡光学屈折編にはいくつもの紹介があり、2群4枚のプローセルの改良型などレンズを4枚以上使用した設計も多くあったようです。

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今回手に入れたケーニヒも2-1設計である事を期待していたのですが、CNでこのアイピースが分解された写真を発見し、それによると1-2-1の3群4枚のレンズ設計の様でそこは個人的に少し残念に感じました(^^;この構成のケーニヒは上の吉田先生の書籍によれば広角用の設計と紹介されていて、上記天ガの広告でも見掛け視界60度となっていますが今回手に入れた2本は見掛け視界は実測約40度となっていて、広角モデルは周辺像が余り良くないとの評判も目にしたのでその後敢えて絞ったのかも知れません。

eyep-untrn-konig12mm_3.jpg

個人的には12mmアイピースは惑星観望用途なので見掛け視界が狭くても支障はありませんが、もし広角設計のアイピースをわざわざ絞ったのならば中心像はそれ程でも無いのかも知れないと大きな期待をしていなかったのですが実際に木星を見てびっくり、抜群に良く見えます。例のランキングで言えばぱっと見これはSランクの見え味では?と感じましたがその後の見比べで自分的にHC-OrニコンOと同等のA+クラスと判断しました。レンズ枚数が4枚、期待より一枚多かったと言ってもアッベやプローセルと同じ枚数と考えれば大きな問題とはならないのかも知れません。

SkyRover 2x54星座ビノ [天文>機材>双眼鏡]

自分が以前所有していた笠井ワイドビノ28自作TC-E2ビノは優秀な星座ビノとして重宝していましたが細かい不満点もあり、その点今回のビノ(SR2x54ビノと呼称)は従来製品の全てを過去にする(は言い過ぎかもですが(^^;)、星座ビノの決定版とも言える出来に仕上がっていると思います。尚今回自分のビノはメーカー直輸入しましたが、笠井扱いのスーパーワイドビノ36と恐らく同じものと思われます。

bn-sr2x54cnst_2.jpg

今回のビノの大きな特徴としては54mmの大口径の対物レンズを採用している点で、通常の望遠鏡であれば2倍と言う倍率から考えれば口径がケラレて無駄に大きいと意味の無いものに捉えられるところですが、多くの星座ビノに採用されるガリレオ式双眼鏡では話が変わってきます。吉田正太郎先生の「屈折望遠鏡光学入門」によればガリレオ式望遠鏡の視野の広さは、実視界の角半径をωとすると、

tanω=d/2m(a・m+i)…①

で与えられ、①式の各変数は、

・d:対物レンズ口径
・m:倍率
・a:接眼レンズから眼球中心までの距離
・i:対物レンズと接眼レンズの間隔

となっており、①式より実視界を広くするには、

1、対物レンズの口径dを大きくする。
2、倍率mを低くする。
3,目をなるべく接眼レンズに近づける(aを小さくする)。
4、焦点距離の短い対物レンズを使用する(iを小さくする)。

と言った条件が導かれます。つまり倍率が変わらなくても対物レンズを大きくすれば視野が広く取れる(=見掛け視界が広がる)のがガリレオ式の大きな特徴と言えます。

bn-sr2x54cnst_1.jpg

その一方でではガリレオ式の実質の口径、集光力は?と考えた場合、まず射出瞳径は対物レンズ口径を倍率で割ったものですので、2x54ともなれば射出瞳径が54÷2=27mmとなり、最大瞳孔径を7mmとすれば遥かに大きいので盛大にケラレます。つまり実質の口径は、

【射出瞳径】=【対物レンズ口径】/【倍率】…②

【実質口径】=【対物レンズ口径】×(【7mm(最大瞳孔径)】/【射出瞳径】)…③

より、

【実質口径】=7mm×【倍率】…④

となります。つまり2倍の双眼鏡であれば実質口径は14mm、3倍の双眼鏡であれば実質口径21mmとなります。これにより集光力は、

【集光力】=(【実質口径】/7mm)2…⑤

からこれに④式を代入すれば、

【集光力】=【倍率】2…⑥

となり、倍率が2倍であれば集光力は4倍、3倍であれば9倍となります。
また極限等級は、

【極限等級】=6+5log(【実質口径】/7)…⑦

からこれに④式を代入すれば、

【極限等級】=6+5log【倍率】…⑧

となり、倍率が2倍の時は7.5等、3倍なら8.4等となります。

つまり射出瞳径が7mmを大きく超えるガリレオ式の場合は⑥、⑧式より集光力や極限等級は倍率のみに依存しますので対物レンズを大きくしても集光力や極限等級は上がらないけれども、①式より視野は広くする事が出来る点で大きな対物レンズは無意味ではない、と言う事が言えます。



これを踏まえてこのビノの54mmの対物口径は恐らく最小目幅(=鏡筒外径)を双眼望遠鏡などでは通例となっている58mmと初めに設定した上で、鏡筒(対物セル)と対物レンズ抑えを合わせた肉厚を2mmと限界まで薄くする事で実現した最大口径(54mm=58mm-2mm×2)ではないかと思われ、市販の星座ビノとして限界の広視界を目指した設計と考えればやはりある意味究極の星座ビノと呼んでも差し支えない観望機材の様に思えます。

bn-sr2x54cnst_3.jpg

視界の広さだけで言えば自作のVCL-1452ビノは実視界60度程度あり圧倒的な広さがありますが、倍率が1.4倍と低いので暗い星が見え難く、光害の強い夜空では効果が薄いと感じる事もありますが、これに比べるとSR2x54ビノは倍率(集光力)と視界の広さのバランスが取れていて、光害地で星座を確認する用途ではこちらが格段に向いていると感じます。

見え味に関しても視野の透明感に関してはテレコンビノ最優の呼び声高いTC-E2ビノが若干上回る印象ですが、テレコンビノには難しいピント調整、目幅調整が可能な点、アイレンズが大きく旧ワイドビノより格段に覗き易い点や、シャープな像質で周辺像の崩れも殆ど感じられない点など、使い勝手も含めたトータルの星座ビノとしての完成度は今回のビノが上回ると個人的に感じます。

bn-sr2x54cnst_4.jpg

このビノは光害地での星座確認用途以外でもSQM21を超える環境でこのビノで星空を眺めると正に星の海と言った趣で、超低倍率広視界の他では味わえない景色を楽しめる機材としても手放す事の出来ない存在となっています。

笠井トレーディング Super WideBino36 スーパーワイドビノ36
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ミニボーグ55FL対空正立ファインダー その2 [天文>機材>ファインダー]

光学性能的には個人的に最高と思える自作ミニボーグ55FLファインダーですが、SCT/2インチスリーブ部分をAstroStreet扱いのM42/2インチスリーブに変更する事により光路長が短縮され、前回はピント合わせはアイピースの抜き差しで行っていましたが、これによりヘリコイドを挟む余裕が生まれて合焦機構を設ける事が出来ました。

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これにより構成は、

・BORG ミニボーグ55FL対物レンズ【2555】
・BORG M57ヘリコイドS【7757】
・Pixco BORG互換延長筒14mm
・BORG M57/60延長筒L【7604】
・57-55mmステップダウンリング
・55-42mmステップダウンリング
・M42回転装置
・Baader T-2/90°アミチ天頂プリズム(#02)
・M42オス-オスAD10mm
・AstroStreet M42/2インチスリーブ変換アダプター
・APM UF30mm

と変更になりました。

fndr-fl55mk2_2.jpg

2インチスリーブが短くなった事によりアイピースの重心が下がって更に使い易くなり我が家の導入番長の名を欲しいままにしています。

AstroStreet T2ネジ 2インチスリーブ 変換アダプター
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大井光機 Masuyama 32mm/85° [天文>機材>アイピース]

これまでFL90S-BINOの低倍率用アイピースとしてSWA-32mmACクローズアップレンズアイピースの2本を使い分けていましたが、F9のこの鏡筒との組み合わせであれば以前UF30mmとの対決の結果惜しくも手放したMasuyama32mmの泣き所の良像範囲の狭さが解消されるのでは?と考えて、実視界や見掛け視界の広さの点でもこれまで使用してきた2本を1本にまとめられるスペックが魅力的でしたので再び試してみる事にしました。

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かつてのマスヤマシリーズは見掛け視界は52度が基本でしたが、復刻版は焦点距離が32mm以短は見掛け視界85度、それより長いものは標準視界となっており、設計は3群5枚(エルフレorアストロプラン?)と見掛け視界80度クラスのアイピースとしてはシンプルな構成が特徴的で、やはり周辺像の補正よりは(中心)像質の良さを優先させた割り切った設計の様に思えます。スマイスレンズを使用していないのでバローを併用する双眼装置などで超広角を味わいたい場合にはナグラーUWAシリーズの様な現代設計の同等スペックのアイピースよりも適性は高いだろうと推測します。

実際にFL90S-BINOで使用した時の良像範囲の広さは7~8割と言ったところで以前ミニボーグ50-BINO(F5)で検証した時の印象から期待する程は広くはなりませんでしたが単焦点鏡筒との違いは周辺の崩れの緩やかさで、遠征でも使ってみて周辺像の崩れで観望への集中が切れると言う事が殆どありませんでしたので、問題無く使えるアイピースとしてこれまでの2本から無事置き換わる事になりました。いざ実戦で使用してみるとミニボーグ71FL-BINOでも意外に周辺像の崩れは気にならず、見え味もやはり視野に透明感がありDSOの観望には向いていると感じます。

eyep-msym32_3.jpg

気になった点としては視野最周辺が周辺減光していて視野環がはっきりとしない部分で、特にねじ込み式の見口を付けた状態では視野の中央を見ていると全視野が見えている気がしますが視線を周辺に向けると視野がケラレてしまい、最周辺を見るには横から覗き込むようにしないと見えない、見掛け視界がスペック程広く感じない印象でしたので見口を外したところ、アイポイントが宙に浮いて目位置を固定し難くなり視野の陰りが生じ易くはなりますが全視野を見通し易くはなり、見口は観望時には使用せずキャップとして使う事にしました。

eyep-msym32_2.jpg

このアイピースはドブなどの短焦点鏡筒で使用した時の周辺像の崩れに耐えられないと拒絶される方も少なくない印象ですが、焦点距離30mmクラスで双眼に使用出来る鏡胴径と2インチをフルカバー出来る視野の広さを両立している点で他に代替出来るものが殆ど見当たりませんので、また周辺像の崩れが気になるかどうかは個人差も大きく、慣れの部分もある(買った当初は気になっても使っている内に気にならなくなる事もある)かも知れませんので、とにかく広い見掛け視界と実視界の両方が(双眼で)欲しい!と少々の欠点は許容出来る人であれば唯一無二のアイピースとして手放せない存在になるかと思います。

世界の現地時間取得ツール Ver1.0 [天文>Webツール]



地図上をクリックするとカーソル(赤い縦線)が移動し、その地域の経度、日本からの時差、現地時間が下記に表示されます。

 [ 日本時間(JST)  : -  ]


◆経度  : 東経135度
◆日本からの時差  : 0時間
◆現地時間  : -



自分は海外から機材を入手する事も少なくない為、ふと相手国の現地時間を知りたいと思った時に計算せずに知る事が出来るようなツールを作ってみました。

※注意事項
・時差は1時間刻みの表示です。
・各国のサマータイムなどは考慮していません。
・PCでの使用を前提としています。モバイル環境では上手く動作しない可能性があります。
・ソースコードの二次使用はご遠慮ください。

※変更履歴
Ver1.0:公開

ミニボーグ71FL-BINO [天文>機材>望遠鏡]

以前小口径広視界型のBINOとしてミニボーグ45ED-BINO60ED-BINOを切り替えて使用していましたが、45ED-BINOはその後ミニボーグ50-BINO55FL-BINOとそのコンセプトが継承されていった一方で60ED-BINOの口径、視野の広さのバランスの良さも捨て難く、このBINOは対物レンズ外径による68mmと言う最小目幅がネックとなって対物口径が制限されていましたがこの状況を打破する為に意を決してビノテクノのEZMを導入、更に対物レンズをミニボーグ71FLに口径アップする事で中型のBINOへと進化させたのがこちらです。

tlscp-mb71flbn_5.jpg

鏡筒部の構成は、

・BORG ミニボーグ71FL対物レンズ(WH)【2571】
・BORG M57/60延長筒SS【7601】
・Pixco BORG互換M57延長筒28mm
・BORG M57ヘリコイドDXII【7761】
・BORG M57/60延長筒M【7603】/K-ASTEC TB-60AS鏡筒バンド
・BORG 2インチホルダーSII【7504】
・ビノテクノ EZM(左右ペア/誘電体コート)

と60ED-BINOからの派生とは言っても全くの別物となっています。前作から継承されているのは台座のHowie Glatter製PST BinoPlatform位でしょうか。

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EZMを採用するのであればより大口径も狙えたのですが、このBINOはアンドロメダの全景をなるべく大きな口径で眺めたいと言う目的があり、構造面でも台座パーツやヘリコイドの耐荷重の問題もあり、片手で持ち運べる手軽の範疇の機材に収めたい狙いからも71FLのスペックが最適と判断しました。

今回のBINOの製作で一番苦労したのが台座パーツと鏡筒を繋ぐプレートの特注でした。製作はユーハン工業にお願いし、設計する際の寸法の計測が目見当に頼らざるを得ない部分があり、現物合わせでの修正が必要になるなど一筋縄ではいきませんでしたが無事に出来上がりました。重量は約4.1kgとなっています。

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使用アイピースはほぼイーソス17mm固定となっており、倍率23.5倍、実視界4.25度での100度双眼視の世界はやはり他の機材では味わえない、新たな眼視体験を提供してくれます。このBINOを作る目的ともなったアンドロメダを見るとM100、M32も含めた全景がバランス良く視野に収まり、これまでの45EDや60ED-BINOで物足りなかった部分がかなり解消され、実視界の広さでは敵いませんが没入感や視野の透明感と言った部分ではWXにも引けをとっておらず、この見え味であれば作る価値があったと満足出来ました。

他にも網状星雲も東側(NGC6992-5)と西側(NGC6960)の両方を一望可能でUHCやOIIIを使用した見え味は写真の様で、北アメリカ星雲もフィルター使用で淡いですが全景が収まり、すばるや二重星団などの散開星団も繊細な描写でありながら迫力があり、小口径ではありますがその分視野が広くイーソス双眼の威力も相俟って、APM12cm双眼などより大口径の双眼機材と比べても見た目のインパクトで遜色の無い天体像を描写してくれます。

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ケースはAmazonで非常にピッタリなサイズのアルミケースを見つける事が出来ました。

ここで我が家の双眼機材の特徴を以下に示します。

 接眼部向き 接眼部径 適正倍率
 R200SS-BINO逆向き31.7mm 裏像低~中倍率 
 APM12cm対空90°対空31.7mm正立像 低~中倍率
 FL90S-BINO90°対空2インチ裏像低~高倍率
 APM20x80MS直視交換不可正立像低倍率
 ミニボーグ71FL-BINO 90°対空2インチ正立像低~高倍率
 CUSTOM60L-BINO90°対空31.7mm倒立像中~高倍率
 ミニボーグ55FL-BINO90°対空2インチ正立像低~中倍率
 WX10x50直視交換不可正立像低倍率
 CUpレンズNo5-BINO90°対空2インチ正立像低倍率

どの機材も一長一短がありますが、個人的に天体用機材で望ましいと考える条件(上の表の赤字部分)、90°対空で正立像、2インチアイピースが使用可能で、低倍率から高倍率まで観望可能と言った条件を全て満たすのは今回のBINOだけとなっています。

きちんとしたBINO用台座(PST BinoPlatform)のお陰で自作では難度の高い精度のある目幅調整、視軸調整機構が備わっており、EZMの使用で正立での高倍率観望においても像の劣化を感じる事は無く、最小目幅や使用アイピースの制限も無いと言った点で自分の手持ちのBINOの中でも恐らく最も完成度が高く、とにかく運用面でも見え味の面でもバランスの良さが光る機材となったと満足しています。

Zeiss West Germany Kpl10x/16(顕微鏡用接眼レンズ、25mm相当) [天文>機材>アイピース]

ミニボーグ50-Hα太陽望遠鏡用のアイピースはこれまでAH40mmTV PL32mmを使用していましたが、もう少し高い倍率の出る焦点距離25mmのアイピースが欲しいと物色して入手したのが今回のアイピースでした。

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自分のHα太陽観望は双眼装置バローを使用するのでアイレリーフの長いアイピースを使用するとブラックアウトが生じ易く極めて覗き難い為、アイレリーフの短いハイゲンスが太陽観望には向いていると考えましたがハイゲンスの25mmは新品で買えるところが見つからず、中古だとNikonのH-25mm、五藤のMH-25mm、CZJの25-Hなどが候補に挙がりましたがこれらも滅多に中古市場に現れず、たまに出ても高騰して双眼用に2本揃えるのは困難だった事から焦点距離が25mmであれば顕微鏡用では豊富な10x接眼レンズが流用出来ると考えて、顕微鏡用は2本セットで出品される事も多かった事からこちらに目を向けて物色を開始しました。

顕微鏡用の接眼レンズはレンズ設計が印字からはほぼ読み取れませんので外見から判断する事になりますが、ハイゲンスの特徴としてはまずアイレンズが他設計と比較して小さい事、そして視野レンズがバレル先端に装着されている事などが考えられましたが、現代風のアイピース設計はハイアイ仕様でバレル先端に装着されたレンズはスマイスレンズの可能性もありましたので、ハイアイの概念が薄かったと思われる古い時代の接眼レンズに着目しました。

個人的に惑星観望用の12mmアイピースを集めていて顕微鏡用でもZeissの接眼レンズは非常に見え味が良いと感じていた事から10倍も東西冷戦時代のZeiss接眼レンズに狙いを定めましたが外見からハイゲンスに見える製品は少なく、冷戦時代の製品ともなるとコンディションが悪そうな個体多いのが悩ましいところでやはり望遠鏡用のCZJ 25-Hを気長に探す道も考えましたが、日課のようにebayを物色していたある日外見が上記条件に合致する、何と未開封新品の今回のKplを見つけ一も二もなくポチってしまったのでした。

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この接眼レンズの視野数は16となっていますので見掛け視界は37度となり、Kplはコンペンゼーション(対物の色収差を接眼レンズで打ち消す設計)の接眼レンズと思われますので望遠鏡で普通に使用すれば視野周辺で色収差が発生すると予想されましたが、太陽相手のHα単色観望ではこれは全く問題になりません。気になる設計は視野レンズ側から中を覗いても視野絞りらしきものが見当たらず正か負かの判断が難しいですが、視野レンズとアイレンズの間にレンズも無さそうに見えるのでやはりハイゲンスっぽいように感じました。

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何はともあれ欲しいのはアイレリーフの短さですので実際太陽観望に使用してみるとこれは明らかに他の設計のアイピース(プローセルやアストロプランやケルナーの25mmも試しました)よりアイレリーフが短くブラックアウトの発生は感じられず格段に覗き易いですのでやはりハイゲンスに類する設計なのではないかと推測するところです。見え味に関しても全く問題無く、惑星観望用途のKpl20xもその性能は自分的に折り紙付きですので(但しこちらはハイゲンス系では恐らくありません)、Hα太陽観望用の25mmアイピースとしては個人的に最適に近いものが手に入ったのではないかと満足しています。

Fujinon HC8x42|HYPER-CLARITYシリーズ [天文>機材>双眼鏡]

WXのお陰で手持ちの双眼鏡の良さを再認識する事になり、星見ではWX一択ですが旅行などで地上風景を鑑賞するにはやはりWXでは重量や持ち運びの面で厳しいものがありますので、手軽に持ち運べるコンパクトで高品質なダハ双眼鏡が欲しくなり手に入れたのがこちらです。

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実は今回この双眼鏡を選んだ最大の理由はデザインでした。WXを手にして見え味だけでなくその機能性溢れる精巧なデザインもすっかり気に入ってしまい日本製の双眼鏡の良さをしみじみ感じていましたが、このHYPER-CLARITYシリーズもメタリックな質感やスタイリッシュなデザインがWXに通じるものを感じ、直線基調の独特且つ、日本製らしい派手さを抑えた上品なデザインに好感が持て、何より理屈抜きで自分にはカッコイイと感じるデザインだった事から今回は自分のこれは欲しいと思う直感に素直に従いました。

勿論デザイン倒れで光学性能が悪ければ本末転倒ですが、フジノンは高性能、高評価の天体用双眼鏡を作り続けている天文ファンには馴染みの深い、高い実績を持つメーカー、ブランドであり自分もFMTシリーズなどは実際何度もポチりそうになった事もあった事からフジノンの双眼鏡に一度は触れてみたいと言う想いがあり、このHYPER-CLARITYシリーズは現在フジノンのダハ最上位機種となっていますのでそこで躊躇する理由はありませんでした。

偏にデザイン重視と言っても欧州御三家の様なエルゴノミクスを追求した上での機能的なデザインと今回のHCの目指すデザインはベクトルが違うかも知れませんが、実物を触って動かしてみてこれは決して無意味なデザインではなく機能性の延長上にあるデザインだと感じられ、機能性を損なわないながらもそこから一歩踏み出した(双眼鏡の枠を破る、と言うメーカーの謳い文句通り)デザインで差別化を図り、付加価値を高め、デザインが双眼鏡の性能の一つとして認められる事を目指した制作者の意図が感じられる気がします。

またデザインは素晴らしくても造りが雑だったり質感が安っぽかったりなど品質が悪ければ台無しになりかねませんので実物を見るまでは気が抜けませんでしたがこれも全くの杞憂で、期待した通り素材にも拘った日本製の精緻な作り込みを感じさせる、持つ喜びを味わえるには十分な仕上がりとなっています。ファッションでも良いものを身に付ければ気分が良くなったり、より行動的になれたりする事は誰もが実感するところと思いますが、HCもその様な気持ちの良さを与えてくれる双眼鏡と言えるかも知れません。

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光学性能の面では手持ちのプリンスED6.5x32、WX10x50といずれも瞳径5mmの機種で見比べましたが、まずプリンスEDとHCで見比べるとHCが一目見て視野が明るく非常に透明感を感じる見え味で、白をより白く見せ、黒はより黒く見せるコントラストの高さも際立つ印象で、プリンスEDはHCに比べると視野が若干黄色く感じます。プリンスEDもかつてツァイスFLと見比べて見え味に遜色無いと判断して手元に残した機種ですので十分に優秀な双眼鏡と考えていますが、これであればHCも欧州機とも十分に渡り合える実力があるだろうと感じました。一方WXとの見比べでは差は小さいですが、明るさ、ヌケでWXが若干上回る印象でやっぱりやばいなこの双眼鏡と改めて思いました笑。視野の透明感をWXを100点とするならHCは97点、プリンスEDは93点位の印象でしょうか。

個人的にHCで一つ気になったとすれば視野周辺の色収差で、中心像は色収差は皆無でシャープネス、コントラスト共に非の打ち所がない見え味と感じますが、マンションの壁や電柱が画面の中心から外れた時のその縁に現れる倍率色収差?の出方はプリンスEDよりやや大きい様に感じられました。ただ何度か公園などで使用していて木々の間の鳥の様子を観察するなど見たいものを中心に持ってくる覗き方ではこれが気になる事は殆ど無く、他の同クラスの双眼鏡とも見比べていないのでもしかするとこれで普通なのかも知れません。因みにWXはプリンスEDやHCよりも圧倒的な視界の広さでありながら周辺の色収差もこれらより目立たずやっぱりどうなってんのこの双眼鏡と言う印象です笑。

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良像範囲は個人的にかなり気になるポイントでしたが星が点で見える範囲と言う点で評価すればプリンスEDが70~75%程度とすればHCは80~85%程度とかなりフラットで(WXは95%~)、視野の最周辺にやや周辺減光を感じますがやはり透明感があり星像も綺麗です。WXを見てしまうとどうしてもどちらも(かなり)物足りなさを感じるのが正直なところですが、HCも実視界8度、見掛け視界64度と通常の双眼鏡を基準とすれば十分に広角ですのでお気軽観望用としては十分にその威力を発揮してくれそうです。

各部の特徴を見ていくとターンスライド式の2段階のアイカップは切削アルミで、目に接触する面のみにゴムが貼られている凝った造りで、目に対するフィット感は非常に良く星を見ても横からの光が効率よく遮断されます。綾目ローレット加工が施されたピントノブは回転が固いとの評判も目にしていましたが、手触りも良く自分には丁度良い固さで全く気になりませんでした。「SUPER EBC FUJINON」と銘打たれた青緑色のマルチコーティングが施された対物レンズも見るからに透明感があり、WXやツァイスFLにも通じる上品な深みのある反射光が印象的です。

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個人的にはこの双眼鏡には対物先端にフィルターネジ(M46P0.75)が切られている点も大きな購入動機となっていて、対物レンズが外に近いのでキャップの着脱でレンズに触ってしまいそうな懸念がありましたが、このフィルターネジのお陰でWXと同様にレンズフードをスマートに取り付ける事が出来ました。更にこのケンコーのレンズフードの先端はφ49mm径となっていましたので、これをφ48mm径に落とすステップダウンリングも装着する事で、UHCやOIIIなどの2インチフィルターを装着可能としています。

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純正ケースもオシャレなのですが大きさが小さめでアイカップを伸ばした状態では蓋が閉まらない程度の大きさしか無く、フードを付けてしまうとこれは完全に入りませんのでこのケースの使用は諦めて、汎用のケンコーの双眼鏡ポーチを見つけて(これもやや小さめですがフードが無ければぴったりです)収納しています。ストラップもデザイン重視でエツミの汎用品を見つけましたが、ポーチと合わせて期せずしてデニム素材で統一されており、双眼鏡のオシャレ感がなるべく損なわれない様な選択となったかも知れません。

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いざ双眼鏡選びとなれば光学性能が良いものを探す事がまず第一条件となると思いますが、各社の製造技術が高まった今となってはアッパーミドルクラスの双眼鏡ともなれば自分の様な一般眼力の人間が見比べてももはや違いが分からないレベルに達していますので、この様な水準の双眼鏡の中から自分に合う双眼鏡を選ぼうとする場合、使う喜びが感じられる道具として、デザインに価値を見出して双眼鏡を選ぶ事もまた重視されて然るべきかも知れないと今回感じた次第です。

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