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APM UF30mm(+マスヤマ32mmとの比較編) [天文>機材>アイピース]

ミニボーグ50-BINOの低倍率用アイピースとして焦点距離30mm前後の広角アイピースが欲しくなり、最終的にチョイスしたのがAPMのフラットフィールド性能を売りにしたこのアイピースでした。

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当初真っ先に候補に挙がったのが大井光機のMasuyama32mm/85°で、2インチのほぼ最大視野を確保できるこのアイピースであれば、ミニボーグ50との組み合わせであれば口径50mmで7.8倍、実視界10.88度の広視界が得られるのが何より魅力的でしたが、やはり懸念したのは周辺像の崩れ具合でした。

一方UFシリーズはUF15mmを使っていて周辺像の崩れの少なさは評価できるものがありましたので、その延長上のUF30mmに関しても期待が出来る一方、見掛け視界が70度となっているのでミニボーグ50との組み合わせでは8.3倍で実視界が8.4度となり、マスヤマ32mmよりかなり狭くなります。

ただここで気になったのがAPMのHPに掲載されている、UF30mmのスペック表です。

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これを見ると見掛け視界(Field of view)が75度となっており、何故この様な本体表記との食い違いが生じているのか分かりませんが、もし本当は75度で周辺まで良像であれば、良像範囲の絶対的な広さにおいてはマスヤマを凌駕する可能性も出てきます。

どちらにすべきかあれこれ考えましたが、周辺像の崩れ具合がどの程度生じるのか、またその生じた崩れに対して自分的にどの程度許容できるのか、これに関しては実際に覗いてみない事にはいくらスペックを眺めていても分かる事はありませんので、悩んだ挙句両方手に入れてしまったのでした。

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まず気になっていたUFの見掛け視界に関してはXWを一回り上回る程度で72、3度と言ったところでしょうか。ここで顕微鏡用接眼レンズの視野数から見掛け視界を算出する式を用いて、視野数=視野環径ですので、上のUFのスペック表から視野環径(Field stop)が38mmとなっている事から、38/30×180/π=72.57度と算出されますので、見た目の広さと合致しており、75度は無かったとしても70度はやはり超えていた事で少し得をした気分になれました。

コーティング色がマスヤマが赤茶系、UFが黄緑系で共にアイレンズは大きめですがブラックアウトするような事も無くどちらも覗き易い印象です。特にUFのアイカップの長さが絶妙で効果的に外からの迷光を遮断してくれます。

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バレル側から覗いてみるとUFの方がレンズが詰まっている事が分かり、重さは実測でマスヤマが437gで、UFが542gとかなりずっしりとした重さがあります。

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肝心の見え味についての比較ですが、ミニボーグ50(250mmF5)との組み合わせではマスヤマの良像範囲は6割、UFの方は9割と言ったところでやはり周辺像の補正に関してはUFが圧倒的に優れています。しかし良像範囲内の見え味を比べるとレンズ枚数が5枚のマスヤマは9枚のUFと比べるとやはりヌケが良く、微光星の見え方に若干の差があります。また昼の景色を見比べた場合はUFはやや黄色掛かっており、マスヤマはすっきりした見え味で透明感に優れた印象です。

サイドバイサイドで見比べる程お互いの長所短所がはっきりと認識できて、これはどちらが優秀と言うよりは設計コンセプトの違い、好みの問題の様に思えてきました。

UFは多少像質を落としてでも(と言っても声高に言う程悪い訳ではありません)とにかく周辺像の補正を優先させた設計で、他に周辺像が優れている30mmクラスの広角アイピースとなるとペンタXW30やナグラー31mmなどがありますが、これらが双眼ではとても使えない様な太い鏡胴となってしまうのに対して、双眼で使える太さの制約の中で有効最低倍率に近くなるF5対物との組み合わせにおいても周辺像を崩さずに、できるだけ広い視界を確保する事を目標にした設計のように思われ、72~73度と言う中途半端な見掛け視界もそのぎりぎりを攻めた結果だと考えれば合点がいく気がします。

個人的にはその割り切った姿勢に好感が持てて、双眼で使う前提だった事もあって今回はマスヤマではなくUFを選んだ次第ですが、よりFの長い対物との組み合わせで周辺像の崩れが少なくなるのであれば、恐らく淡い星雲などの検出ではより優れると思われるマスヤマを選択する可能性も大いにありました。ただ実際にミニボーグ50双眼でUFを覗いてみるとやはり個人的には周辺像の崩れが少ない方が星見に集中できて好みです。

UF30mmと近いスペックで似たようなコンセプトを持つアイピースとしてバーダーハイペリオンアスフェリック31mmがあった事を後から思い出しましたが、機会があればこれも見比べてみたいものです。

ビクセン APP-TL130三脚 [天文>機材>架台]

APZポルタGP2GPXAZ-3と言った架台をこれまでSXG-HAL130三脚一本を使い回して運用してきましたが、APZポルタをもっと気軽に出せる機材にしたいと思い、以前から評判が良く気になっていたこの三脚を手に入れてみました。

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実物を手にしてみるとやはり評判が良い理由が分かります。HAL三脚より相当軽く、それでいて強度はそれ程変わらないようにも感じます。実際APZポルタを取り付け、TSAを載せて高倍率での揺れ具合を比較してみましたが、揺れが収まる時間に殆ど違いはありませんでした。

HAL三脚との大きな違いがセンターポールの存在で、この為三脚開き止めの上にアクセサリートレイなどを置く事ができませんが、センターポールと開き止めが連結しており、この接続をロックできる事から、架頭→センターポール→開き止め→脚の三角構造が内部で形成され、各部のグラつきが抑制される非常に安定した構造となっています。また脚の付け根や開き止めと脚の接続部分がHAL三脚の様にガシャガシャグラグラ動かないのも安定感を生み出している大きな要因と思います。

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また任意の位置(開脚度)でセンターポールと開き止めをロックできる構造になっているので、脚を全開に開かなくても安定を確保でき、個人的にはベランダなど狭い場所で脚を少し狭く開いて使いたい場合で重宝しています。また脚を開脚したり畳む時もセンターポールを介して3本同時に開閉動作するので設置、撤収がスムーズに行えるのもこの構造の利点だと思います。

脚は三段の伸縮式ですが、ロック方式がレバー式なのもロックの状態が見た目や感触で分かり易く、個人的にはこちらが好みです。TG-S経緯台はナット式でしたが、観望会などで少し慌てて設置した際に、ロックしたつもりが完全に締まっておらず、観望中に脚が縮んで丸ごと倒れた事がありましたので、あまり好みではありません。

一点気をつける点はビクセンの架台は三脚取付部の形状がSX規格(φ45mm)のものと旧GP規格(φ60mm)のものがありますが、SX規格の三脚に旧GP規格の架台を取り付けるアダプター(GP60→45AD)を取り付ける事ができない構造となっている(アダプターを装着するには架台取り付けネジを長いものに取り替える必要がある)為、旧GP規格の架台を載せる事ができないのが個人的には少々残念ですが、今となってはそれ程困る事はないでしょう。

重量、使い勝手、性能のバランスが総じて良く、価格もリーズナブルですので誰にでも薦められる三脚だと感じました。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

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Nikon E20x(顕微鏡用接眼レンズ、12.5mm相当) [天文>機材>アイピース]

以前顕微鏡用接眼レンズ(UW20x)のインプレを初めて書きましたが、実は最初に手に入れた顕微鏡用接眼レンズはこっちになります。スペックは「20x/12」で例の計算式では焦点距離12.5mm、見掛け視界は約55度となり、UW20x程ではありませんが、手持ちの12mmクラシックアイピースの中ではかなり広い方です。

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見え味に関しては双眼装置で惑星を見る分には普通(に良く見える)と言ったところですが、特筆すべきは周辺像の歪曲の少なさで、同じ見掛け視界の広さを持つSterlingプローセルの場合、木星が視野の周辺に向かうにつれて形状が楕円に多少歪むのに対し、このE20xに関しては中心像と変わらない見え味、形状のまま視野の外にすっと消えて行く感じで、最周辺でも歪みを感じさせない性能の高さは望遠鏡用アイピースとは一味違うと感じさせるものがありました。

一方少し難ありと感じたのは迷光の出方で、木星を見ると周囲に円形のハロ(ゴースト?)と木星中心から四方八方に伸びる光条が重なって見えるのがかなり目障りに感じ、この迷光が木星表面の模様のコントラストを下げている様に思えましたが、後々この個体をよく見るとアイレンズに微細なキズが多数見受けられ、これが迷光の原因となっている可能性は低くないかも知れません。ただ仮にキズの影響が特に無かったとしても、この程度の迷光を発する望遠鏡用アイピースも無くはないです。

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これまでの自分の考えではクラシックアイピースで見掛け視界を広く取ろうとすると周辺像に何かしら無理が生じ、もしプローセル系ならアイレリーフも短くなる印象でしたので、このアイピースの周辺像の良さと覗き易さはどこから来ているのだろうかと気になり、LE12.5mmのインプレでも書いたように、顕微鏡の光学用語にプランと言う単語がよく見受けられるので、3群5枚のアストロプランに近い設計(この場合ただのプラン?)か、もしくはこの接眼レンズも90年代頃の製品らしく、ニコンOを最後にニコンのアイピースが天文ガイドから一時消え去った前後の時期でしたので、ニコンOの設計を引き継ぐプローセルの更なる改良型かも知れないと推察し、中身を見てみたい欲望に駆られ、キズも見受けられる個体だった事から思い切って分解する事にしました。

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ここで文字通り蓋を開けてびっくり、プローセルでもアストロプランでも無い、2群3枚のケーニヒに近い設計で、ケーニヒは一般的に視野レンズは凹面なのに対し、この接眼レンズは僅かに凸面となっており、前群の2枚貼り合わせレンズの内部もよく分からないので、ケーニヒに準ずる設計かどうかも定かではありません。

前群後群
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見掛け視界が広くて周辺像も良い設計となるとレンズ枚数が多くなるだろうと考えていた(実際見掛け視界の広いケーニヒの改良型はアイレンズを1枚増やした3群4枚の設計が多いと思われます)自分の固定観念が打ち砕かれた思いで、2群3枚でこれだけの性能を実現するニコンすごくない?と良い意味で期待を裏切ってくれた、自分には分からない事がまだまだまだまだ多いと実感させられた結果となりました。

惑星しか見ていないので分かりませんが、2群3枚となるとヌケの良さも期待でき、仮に望遠鏡用アイピースに迷光処理の点で一歩劣っていたとしても、惑星の様な光量の多い天体でなければこのデメリットも目立つ事も無く、この見掛け視界の広さと周辺像の良さを活かしたDSO観望などで威力を発揮する接眼レンズかも知れないと感じました。

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ニコン製で日本製ながら中古相場はそれ程高くなく(これが分解に踏み切った最大の理由)、比較的手の届き易い接眼レンズだと思いますので顕微鏡用接眼レンズがどんなものか興味ある方にはオススメできる一本かも知れません。