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Bosma 12x56ED(賞月観星APO+12x56同等品?) [天文>機材>双眼鏡]

NLは個人的に星見でも最高の手持ち双眼鏡なのですが、WXやNLを持ち込むにはちょっと気が引ける場所に持ち込めるラフに扱える天体用双眼鏡があってもいいかな考えた結果手に入れたのがこちらです(もう何も言うまい…汗;)Desert Fox IIと言う商品名が付いていましたので以下DF2と呼称します。

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この双眼鏡は賞月観星のAPO+12x56IFと同等品と推測していますが(スペックはほぼ同じ)自分はこれを個人輸入で手に入れましたが賞月観星より特に安かった訳ではなく、何故敢えてリスクを冒してこちらの方を選んだのかと言えばこのデザートイエローの本体色に惹かれたからでした(^^;

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手元に届いて一目覗いておおこれは!と思わず目を見張りました。見掛け視界は広々としておりNL10x32(公称69度)と見比べても僅かに広く公称通り72度あると思われます。昼の景色を見る限り良像範囲も広く(体感9割)NLと見比べると流石にヌケの良さでは及びませんが大型プリズム採用とEDレンズ採用の謳い文句に違わず視野は明るく中心像は色収差を感じない、この口径を考えれば十分クリアな見え味で、軽く触って一発で気に入ってしまいました。

改めて外観を眺めるとNLの様な高級感は感じませんがラバーの貼り付け具合や各構成パーツの削り出し、塗装状態などを観察すると造りに丁寧さが感じられとても真面目に作られている印象です。対物レンズ、接眼レンズのコーティングを見てもとにかく反射光が暗く、良質なコーティングが施されているように感じられ、接眼部の合焦ヘリコイドの固さも丁度良くスムーズで、アイレリーフは19mmとなっていて目位置にも寛容で覗き易く視野環は明瞭で、1500gの重量ですが想像以上に持ち易く、総じて扱い易く出来ている双眼鏡と感じます。

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この双眼鏡の本領発揮となる星空の見え味ですがこちらも期待通り良像範囲が広く、賞月観星の商品説明では65%と書かれていましたがこれはかなり厳しめの評価かと感じられ、自分のいつもの感覚ではこの双眼鏡の良像範囲は8割強の印象です。9割超えてから崩れが少し大きくなりますがそれでも破綻はしておらず、良像範囲の狭い双眼鏡で星を見ると崩れた周辺像による圧迫感で観望の集中力を低下させ、没入感を著しく阻害しますが、この双眼鏡は普通に見れば全面フラットに近い印象で周辺減光も感じないのでストレスなく視野を見渡せて、WXの視野を切り取ったような見え味、と言うのは言い過ぎでしょうか。

NL10x32と比較するとバックグランドの暗さ、星像の鋭さは流石にNLは素晴らしいですが、DF2の方は微光星の量が格段に多く星の輝きが強く、瞳径4.7mmと程良いので像も十分鋭く、見掛け視界は同等、良像範囲も広いので没入感では負けていません、と言うより流石に口径が大きく違いますので星を見る目的であればはっきりこちらが向いていると言っていいでしょう。これであればNL42mm機でもある程度対抗出来るかもと思わせる程で星見での性能は素晴らしいと感じます。勿論こちらは重量が格段に重いですが。

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BOSMAと言うメーカーは中華の望遠鏡ブランドとして天文マニアの方であれば耳にした事もある方も少なくないのではないかと思いますが、個人的には割と良質な製品を販売しているメーカーのイメージもあって今回購入も不安視はそれ程していませんでしたが、この双眼鏡が入っていた段ボール箱にはセレストロン(星特朗)の名前が記されており、APMにも同じと思われる双眼鏡が販売されており、賞月観星も含めてどこかでOEM生産された双眼鏡と予想しますが、これだけ良く出来た双眼鏡であれば品質面を重視する各メーカーが自信を持って世に送り出しているのも頷けると思いました。

賞月観星の商品説明を見ると「世の中の現役の12x56双眼鏡たちをすべて超越」と書かれていて、購入者レビューを見ても「星空観察の決定版」「この双眼鏡が一番星が美しく」と言った最大級の賛辞を送る方も見受けられましたが自分もこれは決して誇大ではない、この双眼鏡の倍率や重量をデメリットと感じない人であれば逆に12x56と言うスペックは絶妙とも言え、万人受けはしないかも知れませんがこのレビューの様に感じる方がいても全く不思議ではないと感じました。

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天体観望の暗闇の中で双眼鏡を使っているとどうしてもぶつけたり転がしたりと言った思わぬトラブルに見舞われ易いですのでNLはその意味でも星見で使うのは少し抵抗がありましたが、今回の双眼鏡はショック耐性、防水性能も高い設計となっており気軽に扱える天体用双眼鏡として、当初の目的から言えば文句なく合格と言える双眼鏡です。

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ビクセン meglass H6x16 [天文>機材>双眼鏡]

スワロNLはそれはもう手持ち双眼鏡として至高なのですが、散歩のお供とするにはやや本格的過ぎるので手で持ちながら歩けるような、コンパクトさに特化したポケットサイズの双眼鏡が欲しいと感じて(つくづく度し難い…)今回選んだのがこちら(日本語では「メグラス」と呼称)です。

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軽量コンパクトな双眼鏡と言えば手持ちのヒノデ6x21-N1は今でも気に入っていますが、これより重いものの2軸ダハであるコーワSV25-8の折り畳んだ形状が個人的に持ち運び易いと感じる事も少なくなかった事から、2軸ダハの条件でよりコンパクトで高性能な双眼鏡はどんなものがあるだろうと物色を開始しました。

当初はスワロ、ライカ、ニコン、コーワと言った2軸ダハの最上位クラスの機種に食指が動きましたが(筆頭はライカUltravid8x20シルバー)その価格を見てふと我に返り、散歩のお供ならそこまで高性能で無くてもいいのでは?と考え直して他メーカーの製品を眺めていて目に飛び込んできたのがこのビクセンの双眼鏡でした。シルバーアルマイト仕上げの筐体にブルーの牛本革をあしらった上品なデザインが自分の琴線に直撃し、口径は16mmとやや小さいですがその分コンパクトで重量は140gと圧倒的に軽く何より日本製との事で、正に今回求めている条件に合致すると感じてNLが最後の双眼鏡!の願いも虚しく再びダイブしてしまったのでした。

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実物を手にすると期待通りの質感の良さで、ボディの金属加工の精度が非常に高く感じられ、可動部分の動きも精密感があり、折り畳んだ時のピタッと全体が一体となるこの公差の少ない感覚は流石日本製と思わせる心地良さを味わわせてくれます。ビクセンは今でも良い製品を生み出す力は十分あるメーカー、と言う事はこのブログでも度々書いてきましたが、この双眼鏡もビクセンの中でもクオリティ重視の、メーカーの良心が感じられる製品と言えるかも知れません。

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見え味に関しては普通に見えればOKと考えていましたが実際に覗いてみてびっくり、ヒノデN1やコーワSVと比べると視野の透明感で一目瞭然で差があり、これに比べるとこの2機種はガラス越しに見たような像の眠さを感じます。この2機種もこれまで特に性能が悪いと感じた事が無かったので口径差をものともしない期待を大きく超える見え味にひょっとしてこれは大当たりなのでは?とこれだけ良質な双眼鏡の評判を何故今まで全く耳にした事が無かったのだろうかと少し不思議な気分にもなりました。

また今回はコンパクト最優先ですので見掛け視界の狭さは気にしないつもりで選びましたが、N1やSVと比べると一回り視野が広くクリアな視界も相俟って開放感も段違いで、普通視野を広くするには接眼レンズ、プリズムの大型化が必要となるはずですので、この小ささでこの視界の広さ(実視界8.3度)を実現している点も驚きでした。またこの双眼鏡で星を見る事は考えていませんでしたが一応確認したところ良像範囲は8割位はありそうで普通に使えなくもありません。

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一方でこの双眼鏡はこの大きさの割に十分なアイレリーフを持っているだけに、見口を繰り出す機構が備わっていない点は個人的に少々残念に感じましたが、改めて他社製の200gを切る超軽量クラスの双眼鏡を見ると見口繰り出しが無いのは普通の事で、この双眼鏡のゴム見口は眼鏡使用時にレンズが傷つく事を防ぐ事が主目的のようにも感じられ裸眼では見口から少し浮かして見るような使い方になりそうですが、この双眼鏡に関しては6倍と低倍率な事もあり手ブレが少なく目位置にも寛容でとても覗き易いと感じるのでそれで特に不都合を感じる事はありません。

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この双眼鏡の付属品として本体と同じ素材の革ケースが付属しますが、当初出し入れがそれ程スムーズにいかないので汎用の布製ポーチでも別に用意しようかとも考えましたが、この純正ケースの特筆すべき点は本体を収納しても全体サイズが殆ど変わらない点で、バッグやポケットなどに入れて持ち運ぶなど極力嵩張らない事が望ましいと考えられる使用条件を想定すればこのケースは本体のコンパクトさを損なわない点でとても良く考えられていると感じられました。勿論仕舞う時には毎回双眼鏡を折り畳む必要があるのは少々手間ですがこの双眼鏡には前後キャップがありませんので、この革ケースのピッタリさはレンズキャップも兼ねていると考えればやはり良く出来ていると感じられましたので結局このケースを普段使いしています。

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尚この双眼鏡はピント移動で天板の全長が変動しますので、近距離にピントを合わせた状態だと全長が伸びてケースに入り難くなります(自分も当初苦戦しました)のでケースに入れるのがきつい、と感じた場合はピントを無限遠に合わせる(天板の長さを縮める)と入り易くなると思います。

また改めてこの双眼鏡の大きさについてですが本当に小さいです。下の比較写真の通り軽量コンパクトの目的で購入したヒノデN1と比べても更に一回りコンパクトである事が分かります。

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高級路線の2軸ダハ双眼鏡で現行品でこれより小さいものがあるのかどうか、自分には見つけられませんでしたが自分にとっては今回の目的でこれ以上の双眼鏡は無いのでは?と掘り出し物を見つけたような得した気分になれてとても満足しています。

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Swarovski NL Pure 10x32(Burnt Orange) [天文>機材>双眼鏡]

WXを覗いて以降、見掛け視界が65度程度の双眼鏡では狭く感じてストレスを感じるようになってしまった為、より広角で手軽に使える周辺まで良像の双眼鏡は無いものかと探し求めて行き着いたのが結局こちらになりました。

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今回はNLの10x42と10x32のどちらにするかでめちゃめちゃ悩みました(見掛け視界は倍率×実視界=75度以上が欲しいと考えた結果8倍機は候補から外れました)。手軽さと言う観点では32mm機が一見有利に思えますがNL42mm機は手で持った時のフィット感、重量バランスの良さ、ホールド性の高さが絶賛されており、これに比べると32mm機はそこまでの声はなくスペック程軽く感じないとの話も見受けられ、天文屋の自分としては星見にも使える事に越した事はありませんのでより口径の大きい10x42は倍率とのバランスも良さそうで非常に魅力的でした。

また形状的な美しさ、スタイルがNL32mm機より42mm機の方が上回ると個人的に感じられ、NLは広角でフラットな視野を実現しているとなれば普通の双眼鏡より大型の接眼レンズが採用されていると予想されますので、この部分が基本的に変わらずに対物レンズのみ小さく設計された(ように見える)NL32mm機はやや頭でっかちにも見受けられ、42mm機よりもエルゴノミクスの観点からもやや完成度、バランスを落としているように感じられなくもありません。

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それでも結果的に32mm機を選んだ理由としては、勿論価格的な理由も大きかったのですが、今回の双眼鏡に何を求めているかと考えれば見掛け視界の広さ、良像範囲の広さの次に来るのは旅先や公園などで歩きながら使う時の手軽さ、携行性の高さで、双眼鏡を覗いている時の重量感にNL42mm機と32mm機で大きな差が無かったとしても覗いて「いない」時の重量感、首からぶら下げて持ち運んでいる時に感じる負担感は純粋にこの200gの重量差(約24%軽い)が利いてくるのではと考え、また重さ以上になるべく嵩張らない双眼鏡が望ましかったので、NL42mm機と32mm機を並べた写真をネットで見る限り全体のサイズ感の差は自分的には小さくないように感じ、そこを重視した今回の選択となりました。

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そして10x32を選んだ決定打となったのが本体色にオレンジ色を選べる点でこれが32mm機を選んだ理由の半分位を占めるかも知れません笑 バードウォッチング目的の場合はこの色は敬遠されるかも知れませんが、風景観望が主目的の自分には恐らく支障は無く、極めて個人的な感覚ですが、オレンジ色のNL32mm機のオシャレな風貌は装身具として身に着けたくなるような魅力を放っており、機能美の面では42mm機に及ばなかったとしてもその弱点を補うのに十分なメリットと個人的に感じられ、NL32mmユーザーに与えられた特権とも考えれば持つ喜びを更に引き上げる要素と言えるかも知れません。

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実物を手にした印象は期待した通りやはり形状がスリムで負担を感じさせない軽さで、それでいて十分な存在感を放ち、身に着けて歩くには絶妙なサイズ感で、これを見て自分的には32mm機を選んでやはり正解だったかなと感じました。次に感じたのはとにかく質感が良い点で本体ラバーの手触りも去る事ながらフォーカスノブの感触、動作は勿論、前後キャップのフィット感、着脱の際本体と擦れる感触に至るまで心地良い気がします。ストラップを取り付ける部品なども小さな細かい工夫が施されていたり、本当に部品一つ一つをこだわり抜いて作られた感じが伝わってきます。

次は購入以前から気になっていたホールド感ですが、先入観もあってやはりフォーカスノブがやや中心寄りかな?と最初感じましたが、慣れてくると特に持ち難いとは感じない、片方鏡筒の対物レンズ前の部分を中指薬指小指で掴み、フォーカスノブに人差し指を乗せて親指の付け根で中央のくびれ部分を深めに握るように持つとかなりのフィット感で、軽い事もあって片手持ちでも十分に扱えると感じ、これはかなり持ち易いのでは?と印象が変わってきました。NL42mm機と比べると物足りなく感じるところもあるかも知れませんが、いきなりこの機種を手にした自分的には32mm機もこれはこれで十分考え抜かれた形状と思えました。

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見え味に関してはまず視野の広さ、手持ちのHC8x42と見比べてもやはり格段に広く、フラットさに関しても最周辺近くでも像が崩れる印象は殆ど無く、それ故に地上風景で視野を振ると視野の中央部分が凸面に歪む感じは若干ありますが(望遠鏡用アイピースで言えばナグラーの歪曲を軽くしたような印象)視野を止めている限りはフルフラットと呼んで差し支えない素晴らしい見え味だと感じます。ツイストアップ見口は6段階で自分が裸眼で覗く限りでは見口を一番引き出したところでビーンズエフェクトの生じない気持ちの良い視野を味わえ、アイレリーフは18mmと十分にあるので眼鏡使用でもこの広い視野を問題無く一望可能で、かつて所有していた名機ニコン8x30EIIが見掛け視界と引き換えにアイレリーフを犠牲にしていた設計であった事を考えると、NLは同等の視野の広さを持ちながら周辺像もほぼ完璧である事も考えれば、よくこんな性能を両立させた双眼鏡が作れたものだと驚かずにはいられません。

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星を見ての印象はこちらも素晴らしく、個人的には昼間の景色よりもおおっ!と思わせる見え味かも知れません。視野のフラットさ、透明感でWXに遜色が無く、口径の割に高倍率な事が逆に幸いしてか星像の鋭さは上回るようにも感じられ、WXを覗くと普通の双眼鏡で星を見る気にはならなくなりますがNLは覗いている時の気持ちの良さで勝負出来ています。勿論見掛け視界の広さと良像範囲の広さはWXは更に上回りますが(星での良像範囲はNLが90%~、WXは95%~の印象)それは重量を度外視して得られた性能であり、NLの場合重量を無視する訳にはいかない制約の中でここまでの性能を実現するにはWXの様に従来の双眼鏡の枠を打ち破る必要はあっただろうと推測します。

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見え味の描写の部分に関してはこれは正直に言えば自分の経験、眼力では掛け値なし、素晴らしく良く見える!以上の事が語れないのですが、HC8x42と比べてこちらが口径が小さく倍率が高いのにかかわらず明るく見えるのには驚きました。ただHCの名誉の為に書かせてもらえればこちらも十分に見える双眼鏡だと改めて感じるところですが、自分はツァイスFLとプリンスEDとの違いも余り感じられなかった眼力ですので詳細な描写の良し悪しについてのレビューはより造詣の深い方にお任せしたいところですσ(^_^;)

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それでも個人的には価格からすれば当たり前かも知れませんがとにかく総じて満足度の高い、完成度の高い双眼鏡と感じ不満に感じるところがありません。使えば使う程、これはいいな、本当にいい、素晴らしい、と思わず独り言が出てうんうんと頷いてしまうレベルで、パフォーマンスと重量の比率で考えれば世界最高と言って差し支えない双眼鏡の様に思え、自分にとってこれが双眼鏡病に終止符を打つ、最後の双眼鏡となるであろう事に疑いの余地はありません(えっ!?)

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APM MS25x100ED+双眼鏡並列同架用L字プレート構築 [天文>機材>双眼鏡]

APM20x80MSWXと同架しての観望は当初の想像以上に楽しめた事と架台の耐荷重にまだ余裕があると感じた事で一段口径をアップさせました。

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25x100双眼鏡であれば他に安価な製品も多く見受けられましたが20x80MSの性能、品質にはとても満足していたのでやはり同じAPM製品に狙いを定め、また直視双眼鏡は本来地上風景を見るのに適している事もあり、今回はフンパツしてEDモデルをチョイスしました。硝材はFK61とメーカーHPに書かれており、オハラS-FPL51相当品の様です。

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実物を触れてみて最初に感じたのは20x80(公称2500g)に比べるとかなり大きく重くなった部分で公称4080gとなっていますが、三脚アダプター装着状態では実測4.6kg程度ありました。重心もかなり対物側に寄っているので20x80は手持ち出来そうな手軽さがありましたがこちらは流石に三脚でなければ運用は難しいと感じます。一方製造品質面では20x80と変わりは無く、普通に満足できるものです。

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対物レンズの焦点距離は372mmと公称されており、F3.72の短焦点対物ですが、接眼レンズはCNで断面図が紹介されていて、これを見ると4群6枚(恐らく20x80も同じ)となっており、20x80も良像範囲が広いので予想はしていましたが、直視双眼鏡の接眼レンズとしてはかなり贅沢な設計がされていると感じます。

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また今回も接眼部には20x80と同様にフィルターワークが可能になるようにTS製M48メス-2インチスリーブアダプターを装着(流用)しています。但し前回の様にアダプターをそのまま接眼部に差し込もうとすると異常にきつく危険と判断、今回は接眼部周囲のグリップラバーは外してアダプターを装着(イモネジ3点で固定)させました。

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最初に覗いた時の第一印象は目位置にかなりシビアなのかすっきりと見えない、アイポイントからずれると像が悪化し易いと感じましたが、覗き慣れれば徐々に普通に見えるようになりました。見掛け視界は67.5度と広い一方で当初全視野が見渡し難いとも少し感じましたが、接眼レンズのゴム見口を上記アダプターに換装して、2インチのムーン&スカイグローフィルターを装着した状態では見え味に透明感が増して周辺も見渡し易くなった気がします。周辺像は20x80同様良好で良像範囲は9割程度あるのではと感じます。光軸は全く問題ありません。

この双眼鏡のスペック、口径100mmで25倍の倍率、実視界2.7度の視野はメシエ天体、特に散開星団観望にとても適していて、視直径1°程度の散開星団ととても相性が良く(散光星雲も良く見えますが)APM12cm対空では散開星団はやや星像が甘い印象に比べるとこちらは比較的シャープで、一方星像には文句の付けようが無いFL90S-BINOも裏像と言う弱点があり、またこの2つは大きさ的にベランダでは使用できない機材である事を考えると今回の25x100は我が家のベランダで観望可能な最大口径の双眼機材と言う点でも価値ある存在となっています。

この双眼鏡の弱点と言う点ではやはり直視双眼鏡での天体観望は首が痛くなる、姿勢が辛い、目位置を適切なアイポイントに持っていくのが難しいと言った点、また高度の高い天体の観望は難しく観望範囲が限定される点はデメリットかも知れませんが、アイピースの着脱が不要なこうした直視双眼鏡は架台を設置して本体を載せれば即観望可能となりますので、機材の設置撤収が格段に速い点は対空機材に勝ります。

また今回の双眼鏡の導入に伴い、これまで2台の双眼鏡を同架するL字プレートの縦のアリガタの上端面にアリミゾを設けて(特注加工)片方の双眼鏡を搭載する事で架台への負担を減らす工夫をしていましたが、この場合2台の接眼部で高さの差が生じる事で覗き比べる度に三脚のエレベーターの昇降が必要な部分が大きなストレスだったので、今回架台への負担を顧みず、2台の双眼鏡を横並びに搭載出来るようにプレートを新たに構築しました。この試みは大正解でWXとの見比べが格段にスムーズになり、導入時以外はエレベーターの操作が必要なくなったので劇的に観望が楽になって星見が本当に楽しい機材に生まれ変わった気がします。

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最初の見え味の印象はそれなりでしたが使い慣れていく内にどんどんお気に入り度が増して、以前のWXと20x80との組み合わせでは昨年ZTF彗星(C/2022 E3)をWXで導入、20x80で拡大像を観察すると言った楽しみ方が至福でしたので、今年期待(してはいけない?)の紫金山-アトラス彗星(C/2023 A3)をこの新しい組み合わせで眺めるのを楽しみにしています。

SkyRover 2x54星座ビノ [天文>機材>双眼鏡]

自分が以前所有していた笠井ワイドビノ28自作TC-E2ビノは優秀な星座ビノとして重宝していましたが細かい不満点もあり、その点今回のビノ(SR2x54ビノと呼称)は従来製品の全てを過去にする(は言い過ぎかもですが(^^;)、星座ビノの決定版とも言える出来に仕上がっていると思います。尚今回自分のビノはメーカー直輸入しましたが、笠井扱いのスーパーワイドビノ36と恐らく同じものと思われます。

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今回のビノの大きな特徴としては54mmの大口径の対物レンズを採用している点で、通常の望遠鏡であれば2倍と言う倍率から考えれば口径がケラレて無駄に大きいと意味の無いものに捉えられるところですが、多くの星座ビノに採用されるガリレオ式双眼鏡では話が変わってきます。吉田正太郎先生の「屈折望遠鏡光学入門」によればガリレオ式望遠鏡の視野の広さは、実視界の角半径をωとすると、

tanω=d/2m(a・m+i)…①

で与えられ、①式の各変数は、

・d:対物レンズ口径
・m:倍率
・a:接眼レンズから眼球中心までの距離
・i:対物レンズと接眼レンズの間隔

となっており、①式より実視界を広くするには、

1、対物レンズの口径dを大きくする。
2、倍率mを低くする。
3,目をなるべく接眼レンズに近づける(aを小さくする)。
4、焦点距離の短い対物レンズを使用する(iを小さくする)。

と言った条件が導かれます。つまり倍率が変わらなくても対物レンズを大きくすれば視野が広く取れる(=見掛け視界が広がる)のがガリレオ式の大きな特徴と言えます。

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その一方でではガリレオ式の実質の口径、集光力は?と考えた場合、まず射出瞳径は対物レンズ口径を倍率で割ったものですので、2x54ともなれば射出瞳径が54÷2=27mmとなり、最大瞳孔径を7mmとすれば遥かに大きいので盛大にケラレます。つまり実質の口径は、

【射出瞳径】=【対物レンズ口径】/【倍率】…②

【実質口径】=【対物レンズ口径】×(【7mm(最大瞳孔径)】/【射出瞳径】)…③

より、

【実質口径】=7mm×【倍率】…④

となります。つまり2倍の双眼鏡であれば実質口径は14mm、3倍の双眼鏡であれば実質口径21mmとなります。これにより集光力は、

【集光力】=(【実質口径】/7mm)2…⑤

からこれに④式を代入すれば、

【集光力】=【倍率】2…⑥

となり、倍率が2倍であれば集光力は4倍、3倍であれば9倍となります。
また極限等級は、

【極限等級】=6+5log(【実質口径】/7)…⑦

からこれに④式を代入すれば、

【極限等級】=6+5log【倍率】…⑧

となり、倍率が2倍の時は7.5等、3倍なら8.4等となります。

つまり射出瞳径が7mmを大きく超えるガリレオ式の場合は⑥、⑧式より集光力や極限等級は倍率のみに依存しますので対物レンズを大きくしても集光力や極限等級は上がらないけれども、①式より視野は広くする事が出来る点で大きな対物レンズは無意味ではない、と言う事が言えます。



これを踏まえてこのビノの54mmの対物口径は恐らく最小目幅(=鏡筒外径)を双眼望遠鏡などでは通例となっている58mmと初めに設定した上で、鏡筒(対物セル)と対物レンズ抑えを合わせた肉厚を2mmと限界まで薄くする事で実現した最大口径(54mm=58mm-2mm×2)ではないかと思われ、市販の星座ビノとして限界の広視界を目指した設計と考えればやはりある意味究極の星座ビノと呼んでも差し支えない観望機材の様に思えます。

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視界の広さだけで言えば自作のVCL-1452ビノは実視界60度程度あり圧倒的な広さがありますが、倍率が1.4倍と低いので暗い星が見え難く、光害の強い夜空では効果が薄いと感じる事もありますが、これに比べるとSR2x54ビノは倍率(集光力)と視界の広さのバランスが取れていて、光害地で星座を確認する用途ではこちらが格段に向いていると感じます。

見え味に関しても視野の透明感に関してはテレコンビノ最優の呼び声高いTC-E2ビノが若干上回る印象ですが、テレコンビノには難しいピント調整、目幅調整が可能な点、アイレンズが大きく旧ワイドビノより格段に覗き易い点や、シャープな像質で周辺像の崩れも殆ど感じられない点など、使い勝手も含めたトータルの星座ビノとしての完成度は今回のビノが上回ると個人的に感じます。

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このビノは光害地での星座確認用途以外でもSQM21を超える環境でこのビノで星空を眺めると正に星の海と言った趣で、超低倍率広視界の他では味わえない景色を楽しめる機材としても手放す事の出来ない存在となっています。

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Fujinon HC8x42|HYPER-CLARITYシリーズ [天文>機材>双眼鏡]

WXのお陰で手持ちの双眼鏡の良さを再認識する事になり、星見ではWX一択ですが旅行などで地上風景を鑑賞するにはやはりWXでは重量や持ち運びの面で厳しいものがありますので、手軽に持ち運べるコンパクトで高品質なダハ双眼鏡が欲しくなり手に入れたのがこちらです。

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実は今回この双眼鏡を選んだ最大の理由はデザインでした。WXを手にして見え味だけでなくその機能性溢れる精巧なデザインもすっかり気に入ってしまい日本製の双眼鏡の良さをしみじみ感じていましたが、このHYPER-CLARITYシリーズもメタリックな質感やスタイリッシュなデザインがWXに通じるものを感じ、直線基調の独特且つ、日本製らしい派手さを抑えた上品なデザインに好感が持て、何より理屈抜きで自分にはカッコイイと感じるデザインだった事から今回は自分のこれは欲しいと思う直感に素直に従いました。

勿論デザイン倒れで光学性能が悪ければ本末転倒ですが、フジノンは高性能、高評価の天体用双眼鏡を作り続けている天文ファンには馴染みの深い、高い実績を持つメーカー、ブランドであり自分もFMTシリーズなどは実際何度もポチりそうになった事もあった事からフジノンの双眼鏡に一度は触れてみたいと言う想いがあり、このHYPER-CLARITYシリーズは現在フジノンのダハ最上位機種となっていますのでそこで躊躇する理由はありませんでした。

偏にデザイン重視と言っても欧州御三家の様なエルゴノミクスを追求した上での機能的なデザインと今回のHCの目指すデザインはベクトルが違うかも知れませんが、実物を触って動かしてみてこれは決して無意味なデザインではなく機能性の延長上にあるデザインだと感じられ、機能性を損なわないながらもそこから一歩踏み出した(双眼鏡の枠を破る、と言うメーカーの謳い文句通り)デザインで差別化を図り、付加価値を高め、デザインが双眼鏡の性能の一つとして認められる事を目指した制作者の意図が感じられる気がします。

またデザインは素晴らしくても造りが雑だったり質感が安っぽかったりなど品質が悪ければ台無しになりかねませんので実物を見るまでは気が抜けませんでしたがこれも全くの杞憂で、期待した通り素材にも拘った日本製の精緻な作り込みを感じさせる、持つ喜びを味わえるには十分な仕上がりとなっています。ファッションでも良いものを身に付ければ気分が良くなったり、より行動的になれたりする事は誰もが実感するところと思いますが、HCもその様な気持ちの良さを与えてくれる双眼鏡と言えるかも知れません。

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光学性能の面では手持ちのプリンスED6.5x32、WX10x50といずれも瞳径5mmの機種で見比べましたが、まずプリンスEDとHCで見比べるとHCが一目見て視野が明るく非常に透明感を感じる見え味で、白をより白く見せ、黒はより黒く見せるコントラストの高さも際立つ印象で、プリンスEDはHCに比べると視野が若干黄色く感じます。プリンスEDもかつてツァイスFLと見比べて見え味に遜色無いと判断して手元に残した機種ですので十分に優秀な双眼鏡と考えていますが、これであればHCも欧州機とも十分に渡り合える実力があるだろうと感じました。一方WXとの見比べでは差は小さいですが、明るさ、ヌケでWXが若干上回る印象でやっぱりやばいなこの双眼鏡と改めて思いました笑。視野の透明感をWXを100点とするならHCは97点、プリンスEDは93点位の印象でしょうか。

個人的にHCで一つ気になったとすれば視野周辺の色収差で、中心像は色収差は皆無でシャープネス、コントラスト共に非の打ち所がない見え味と感じますが、マンションの壁や電柱が画面の中心から外れた時のその縁に現れる倍率色収差?の出方はプリンスEDよりやや大きい様に感じられました。ただ何度か公園などで使用していて木々の間の鳥の様子を観察するなど見たいものを中心に持ってくる覗き方ではこれが気になる事は殆ど無く、他の同クラスの双眼鏡とも見比べていないのでもしかするとこれで普通なのかも知れません。因みにWXはプリンスEDやHCよりも圧倒的な視界の広さでありながら周辺の色収差もこれらより目立たずやっぱりどうなってんのこの双眼鏡と言う印象です笑。

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良像範囲は個人的にかなり気になるポイントでしたが星が点で見える範囲と言う点で評価すればプリンスEDが70~75%程度とすればHCは80~85%程度とかなりフラットで(WXは95%~)、視野の最周辺にやや周辺減光を感じますがやはり透明感があり星像も綺麗です。WXを見てしまうとどうしてもどちらも(かなり)物足りなさを感じるのが正直なところですが、HCも実視界8度、見掛け視界64度と通常の双眼鏡を基準とすれば十分に広角ですのでお気軽観望用としては十分にその威力を発揮してくれそうです。

各部の特徴を見ていくとターンスライド式の2段階のアイカップは切削アルミで、目に接触する面のみにゴムが貼られている凝った造りで、目に対するフィット感は非常に良く星を見ても横からの光が効率よく遮断されます。綾目ローレット加工が施されたピントノブは回転が固いとの評判も目にしていましたが、手触りも良く自分には丁度良い固さで全く気になりませんでした。「SUPER EBC FUJINON」と銘打たれた青緑色のマルチコーティングが施された対物レンズも見るからに透明感があり、WXやツァイスFLにも通じる上品な深みのある反射光が印象的です。

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個人的にはこの双眼鏡には対物先端にフィルターネジ(M46P0.75)が切られている点も大きな購入動機となっていて、対物レンズが外に近いのでキャップの着脱でレンズに触ってしまいそうな懸念がありましたが、このフィルターネジのお陰でWXと同様にレンズフードをスマートに取り付ける事が出来ました。更にこのケンコーのレンズフードの先端はφ49mm径となっていましたので、これをφ48mm径に落とすステップダウンリングも装着する事で、UHCやOIIIなどの2インチフィルターを装着可能としています。

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純正ケースもオシャレなのですが大きさが小さめでアイカップを伸ばした状態では蓋が閉まらない程度の大きさしか無く、フードを付けてしまうとこれは完全に入りませんのでこのケースの使用は諦めて、汎用のケンコーの双眼鏡ポーチを見つけて(これもやや小さめですがフードが無ければぴったりです)収納しています。ストラップもデザイン重視でエツミの汎用品を見つけましたが、ポーチと合わせて期せずしてデニム素材で統一されており、双眼鏡のオシャレ感がなるべく損なわれない様な選択となったかも知れません。

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いざ双眼鏡選びとなれば光学性能が良いものを探す事がまず第一条件となると思いますが、各社の製造技術が高まった今となってはアッパーミドルクラスの双眼鏡ともなれば自分の様な一般眼力の人間が見比べてももはや違いが分からないレベルに達していますので、この様な水準の双眼鏡の中から自分に合う双眼鏡を選ぼうとする場合、使う喜びが感じられる道具として、デザインに価値を見出して双眼鏡を選ぶ事もまた重視されて然るべきかも知れないと今回感じた次第です。

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APM 20x80MS その2(フィルター装着編) [天文>機材>双眼鏡]

APM20x80双眼鏡は口径、倍率、視野の広さのバランスがとても良く、お手軽にメシエ天体を眺めるにはとても適した機材だと感じて気に入っていましたが、この度フィルターの装着が可能になりました。

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中口径双眼鏡にフィルターを取り付ける例としてはフジノンのFMTシリーズなどはオプションで接眼レンズに取り付けるネビュラフィルターが販売されていましたがこれを参考に、接眼レンズ手前にフィルターを装着する方法は無いものかと思案していましたが、この双眼鏡の接眼レンズの周囲のラバー部分の外径が50~51mm程度とほぼ2インチサイズであった事から2インチスリーブアダプターを差し込んで対物側ネジにフィルターを取り付けるアイデアを思い付き、上手く適合するアダプターは無いものかと物色して見つけたのがこのTSM48-2インチスリーブアダプター(国内では星見屋さんで取り扱い)でした。

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このアダプターは全長が17.8mmと短いので双眼鏡の接眼部に差し込んでも本体に突き当たる事が無く、対物側がM48メスネジですので2インチフィルターをそのまま取り付けられる絶妙な設計でしたが、今回はM48を31.7mmフィルター径に変換するアダプターを装着して31.7mm径のフィルターを装着する運用としています。

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アダプター装着により接眼レンズ部外径が大きくなったので(φ60mm)鼻がアダプターに当たる事もありますが、自分的には許容範囲内で思った程覗き易さは悪化してはいない印象です。ただフィルターと目がかなり近づくので曇り易く、アイレリーフ的にも眼鏡使用では全視野は見通せない裸眼専用機材となってしまうかも知れません(2インチフィルターで運用する形態にすれば多少改善しそうです)。

それでも可逆的な改造でフィルターが使用できるようになり、今後運用の幅も広がりそうです。また今回の手段は恐らくこの双眼鏡とほぼ同じ筐体設計と思われる賞月観星のED KING80mmシリーズや接眼部が同様と思われるAPMの10cmや11cmのMSタイプの直視双眼鏡にも適用出来るのではないかと思われますのでご参考になれば幸いです。

APM 20x80MS [天文>機材>双眼鏡]

WXを快適に運用出来るようにZERO経緯台やエレベーター式三脚(Manfrotto 475B)を用意しましたが想像以上に頑丈で(逆に言えばお手軽では無く)耐荷重的にまだまだ余裕があった事から(ZEROは7kg、475Bは12kg)、WXより一クラス上の口径の直視双眼鏡を同架出来ればより観望が楽しめそうと考えて相方として手に入れたのが今回の双眼鏡です。

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当初2~3万円台の安価な20x80双眼鏡を物色していましたが、以前安価な15x70を所有していて有口径が実測で約63mm(対物口径の9割)しか無かった事から20x80も同じ欠陥を抱えていないかが気がかりで、15x70と20x80の外観を見比べて対物レンズ以外のプリズム収納部分は部品が共通(大きさが同じ)に見えた事からやはり少し怪しいと感じ、別設計と思われる20x80を探してみたところこのAPMの製品が価格は大きく上がりますがプリズム部分の大きさは一回り大きく見え、安価な双眼鏡は視軸のズレの当たり外れも懸念材料だったので、その点でAPM製品は自分でもこれまでいくつか手にしてきて品質面や性能、サポート面で高い信頼のおけるメーカーの認識でしたので今回は確実性、安心感を優先させました。

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実物を手にした感想はWXではないですがこれまた軽い!が第一印象でした。重量は約2.5kgとなっていますが見た目の大きさ、質感から得られる感覚より相当軽く感じます。また気になる有口径ですが瞳径を測定してきちんと4mmありましたので口径のケラレは無く一安心しました。そして見え味ですがこれも驚きで、以前スカイマスターや安価な25x100双眼鏡も所有していましたが昼間の景色は色収差が顕著でベールが掛かったような眠たい画質、ただ星見にはそれ程支障は無い、と言う印象でしたが今回の20x80は昼間の景色を見ても視界が透き通っており、EDは使用していないモデルですが色収差もあまり感じず(APM12cm双眼より格段に少ない)全く鑑賞に耐えます。もう一つ心配していた視軸のズレも皆無でした。

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また星見では気になる良像範囲ですがこれも想像以上に素晴らしく、見掛け視界66度の広角に関わらず微光星を見る限りではほぼ視野最周辺まで点像なのは嬉しい誤算で(1等星以上の明るい星だと8割位から若干崩れます)星像もシャープです。この双眼鏡の対物レンズの焦点距離が公称305mmとなっている事から口径80mmからF値は約3.8となり、20倍の倍率から接眼レンズの焦点距離は約15mmと算出され、この短焦点対物に広角アイピースの組み合わせでこの良像範囲の広さは正直立派な性能と感じます。この双眼鏡全体のレンズ構成はスペックシートを見ると5群8枚となっていますが、この内対物レンズは1群2枚で残りは4群6枚、この内3群5枚を接眼レンズとしても一枚余りますのでやはり性能の良いフラットナーが入っている(もしくはアイピースのフラット性能が高い)構成なのではないかと推測しています。

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また双眼鏡全体の造りの良さも触れておきたい部分で、高級感を感じたり持つ喜びを感じる、まではいかないかも知れませんが外装のラバーの貼り付けはとても丁寧で、対物レンズのフードの構造や開け閉めの感覚が絶妙だったり、ピントを合わせる感触も固すぎず柔すぎずこれも絶妙だったり、外からは見えない部分の使い易さの面でも良く考えて作られていると感じます。こう言った抜かりの無い部分は流石APMの製品と言ったところでしょうか。

WXとの同架はWXの導入により退役した55FL-BINOのL字プレートを再構築し水平側のプレートをより長いものに換装、SVBONYのアリミゾを装着しこちらに20x80を搭載、垂直側はプレート上部のファインダーアリミゾに視軸調整用のSLIKの微動雲台を介してこちらにWXを搭載しています。

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この形態では経緯台搭載物全体の重心がやや高く、仰角を上げた時にZERO経緯台の上下軸フリクション調整ノブを目一杯締め付けても手前側に全体がおじぎしてしまう動きが止められなかった事から、経緯台のフォークアームとL字プレートの間に引っ張りばねを(長さ6cm、10mm径)を2本入れる事で支障の無い動作が可能となりました。ZERO経緯台は拡張性を考えてあちこちネジ穴が設けられていますが、今回はその構造に助けられました。

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この双眼鏡の実視界は3.3度となっており、散開星団を観望するには正に打って付けの広さで、この場合ファインダー代わりともなるWXとの相性は抜群です。WXの9度の視界で俯瞰した景色を楽しんでそこで見つけた気になる天体を20x80で拡大して観察するこの観望スタイルで期待通り楽しめる天体の幅が大きく広がりました。

以前は自分的に天体観望用の双眼機材は対空式に強い拘りがありましたが、WXの導入により直視双眼鏡が自分の中で解禁となった事で思わず増やした双眼鏡でしたが、直視双眼鏡は口径の割に軽くアイピースを着脱する手間なども不要ですので他の観望機材に比べれば格段に設置撤収が楽な上に、この双眼鏡が見え味に良像範囲に製造品質も購入前の予想より大きく上回っていた事で、これであればこの双眼鏡単体でも十分に楽しめそうで今後お手軽機材として使用する機会も増えそうです。

その後フィルターの装着を可能にしました。

Nikon WX10x50 その2(自分的運用編) [天文>機材>双眼鏡]

WX10x50を自分なりに使い勝手が良くなるように幾つか手を加えた部分を以下にご紹介します。

《ストラップ》
WXは購入以前は三脚使用前提の運用しか考えていませんでしたが実際に手にしてみて手持ちでも十分に使えると感じた事からやはりストラップを付ける事にしました。但し今回は標準付属のものは敢えて使用せず、たまたま家にNikonのカメラ用?本革ネックストラップが余っていましたのでこちらを使っています。スリムな形状なので嵩張らずに使い勝手は上々です。

《フード》
WXの鏡筒先端部にはφ55mmのネジが切ってありますが、この先端部から対物レンズまでの距離が結構近く、うっかりレンズに触ってしまう事を防ぐ為にハクバのレンズフード(KMH-55)を装着しています。レンズ保護が第一の目的ですが、結露防止の効果も兼ねています。

《キャップ》
対物/接眼レンズキャップは純正で革製のものが付属していますが自分的にはどうにも使い勝手が悪く感じ、対物側は上のレンズフードを付けるとフード先端がφ58mm径のネジとなる事から、ここにカメラ用の同径のレンズキャップを装着しています。接眼側は純正キャップを紐で本体に括り付けていますがこちらの具合は上々です。

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《フィルター》
対物レンズ側にネジが切ってある双眼鏡にフィルターを付けない手はありませんので通常の天体観望用としてケンコーのスターリーナイトフィルターのφ58mm径を導入しました。スターリーナイトフィルターは撮影用のフィルターの名目ですが、透過特性グラフを見る限り所謂ムーン&スカイグローフィルターと同等品ですので、眼視用として使っても全く問題がありません。当初保護フィルターを付けようかと考えたのですが、それであればムーン&スカイグローフィルターは主に光害カットの効力があり、天体に悪さをしないフィルターですのでこれをWXでの天体観望でのデフォルトとしています。

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またUHCやOIIIを使うケースも想定して58mm→48mmのステップダウンリングを調達しフード先端に取り付ける事で2インチフィルターを装着可能としています。対物口径50mmに対して2インチ(φ48mm)径のフィルター装着でケラレが発生しないかは気になる部分でしたが問題無さそうです。

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《ヘッドレスト》
この双眼鏡での手持ち観望は可能、むしろこの見え味を手持ちでも味わえる事がこの双眼鏡の大きな魅力、醍醐味とも感じたので、より快適に手持ち出来る方策としてヘッドレストを自作しました。

スワロフスキーのフラッグシップ双眼鏡のNL Pureには振動対策でヘッドレストが純正オプションで用意されており、WXにこのヘッドレストが付けられないかと色々考えましたが良い方法が思い付かず、汎用のアリガタ、アリミゾの組み合わせで同等の機能の実現を試みました。

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純正三脚アダプターTRA-5は大きく2つのパーツから構成されており、この二つを接続するネジを長いものに交換して長さ20cmの(ファインダー)アリガタを装着、ここにアリミゾを介して額にあたる部分のアリガタを取り付けています。アリミゾのスライドによって額に接触する位置は前後に調整可能となっています。

汎用パーツの寄せ集めにしては具合は上々で、手持ちによる観望ではこれまで目の周り(2点)で支えていたところをこのヘッドレストの追加で3点で保持出来るようになり、目に掛かる重量負担が軽減され(特に高い天体を覗く時)視野の安定性が向上し、より長い時間でも手振れを抑えた観望が可能になりました。

《三脚》
当初架台はAPポルタ高さ調節機能付き椅子で間に合わせるつもりでしたが、高い仰角で苦痛を感じずに覗く為には双眼鏡側のきめ細やかな高さ調節が必須と感じこれにはエレベーター式三脚が必要と判断、自分的にカメラ三脚には殆ど知識がありませんでしたが、有名メーカーでハンドルで昇降可能なエレベーターが装備された、耐荷重が10kg程度あり、且つ中古で数万程度と言う条件を満たしたこのマンフロットの三脚(475B)を手に入れましたが想像以上に具合が良く、これで問題無く覗けるようになりました。と言っても椅子に座りながらでは仰角6~70度程度まででしょうか。

《架台》
475B三脚は3/8インチカメラネジで接続する三脚でしたので、このネジで接続出来る架台が必要でしたが、自分的には相変わらず架台には手動微動が必須と考えていた為、またWXを載せるとなるとそこそこ耐荷重のある架台が欲しかった事から、在庫払底直前にとりあえず確保していたものの使い道が定まっていなかったスコープテックのZERO経緯台が正にこの条件に合致していて、微動ハンドルの動きがスムーズさに欠ける印象ですが、本体が軽量でやはり折り畳みが可能と言う点で優れた経緯台で、今ではWXにとって無くてはならない架台となっています。

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《L字プレート》
架台と双眼鏡を結ぶL字プレートはケンコーのSky Explorer L字ブラケットを採用。かなり小型のL字プレートなので幅的にWXを載せられるかが微妙でしたがぎりぎり大丈夫でした。

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《ケース》
ケースは純正アルミケースがかなりごつくて嵩張ると感じ、もっと手軽に持ち運べるケースが欲しいと考えて、結果天文界隈では有名なK NebulaさんのHPで紹介されていたアウトドアケース、B&W Type4000を自分も選びました。このケースは三脚アダプターを取り付けた状態のWX(フード付き)を収納する場合、横幅と高さが本当にジャストで(ヘッドレスト装着状態でもかなりきつきつですが入ります)奥行きには若干余裕がありますが、そこにはフィルターやL字プレートなどのアクセサリーの収納場所として有効活用出来、造りもしっかりしていて見た目もカッコ良くて満足しています。

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手を加えたのは大体この様なところでその後WXの運用を続けた感想ですが、使用方法として三脚使用か手持ちかの割合は2:8位で当初の予想より遥かに手持ちでの出番が多いです。ちょっとあの天体を見たいな、と感じた時にひょいと持ち出して、この本格的な見え味を味わえるのは労力に対するリターンと言う点では自分所有の機材ではトップに君臨する存在だと思います。遠征時にもこの双眼鏡一つお供させるだけでその日の観望の楽しみの幅を大きく広げてくれるとても有難い存在となっています。

手持ちで一度に覗いていられる時間は2、3分位かと思いますが、2、3分あれば一つの天体を導入して鑑賞、堪能するには十分で(個人的に)、間に休みを入れながらこのサイクルを繰り返す事で特に疲れを感じずにいくつもの天体を眺めていく事が可能です。勿論三脚を使用すれば星図(SkySafari)を片手にこの双眼鏡の視野が既にファインダー相当の(むしろそれ以上の)広さですのでスターホッピングで思うがままに星空巡りをする事が可能となり、この様にして使っているとこれは双眼鏡のカテゴリーを超えた超広角直視双眼望遠鏡と呼んでも差し支えない機材だと感じます。

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見え味も見る度にうっとりとする眺めで特に透明感が素晴らしく、とにかく視野に見える星の数が他の機材より多く見えるように感じ、超級の視野の広さと相俟って天の川に浮かぶ複数のメシエ天体を一網打尽にするようなこの贅沢な見え味(それも双眼で)は他の機材では味わえない点で、究極のRFT(リッチフィールドテレスコープ)とも言っても過言ではない天文機材と言えるかも知れません。

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Nikon WX10x50 その1(ファーストインプレッション編) [天文>機材>双眼鏡]

ざくたは激怒した。必ず、かの双眼鏡の王を手に入れなければならぬと決意した。ざくたには経済がわからぬ。けれども値上げに対しては、人一倍に敏感であった --『ポチれざくた』より冒頭の一節

自作の双眼望遠鏡は市販の双眼鏡に比べれば設計の自由度が高いので自分にとって至高のスペックの機材を追い求める事が出来る点が魅力的で、この中で低倍率広視界観望用途の自分なりの完成形として作り上げたのがミニボーグ55FL-BINOでしたが、このBINOの構築中、常にその向こう側に見え隠れしながら様々思考を巡らせても自作ではどうしても届かないと脱帽せざるを得ない、究極のスペックを実現したこの双眼鏡の値上げの報を聞き居ても立ってもいられず過去最高高度からの清水ダイブをキメてしまったのでした。

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この双眼鏡の究極と言える部分は、10x50のスペックで実視界9度の広視界、見掛け視界90度の超広角でありながら視野最周辺までの良像を実現している点で、例えば55FL-BINOにUF30mmの組み合わせも見掛け視界72度の広角で良像範囲ほぼ100%を実現した自分としては完成度の高いBINOと自画自賛していましたが、WXはこれを圧倒する見掛け視界に加え実視界をも上回り、瞳径も5mmと個人的により天体観望に適した(バックグラウンドが暗く、コントラストが良く、乱視の影響も出難い)スペックである事も大きな魅力でした。

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このスペックを実現する上で要となるのはやはりアイピースではないかと個人的に思いますが、WX10倍のアイピースのスペックを推測するならば対物レンズの焦点距離が200mm(F4)でアイピースの焦点距離を20mm、見掛け視界を90度と仮定すれば瞳径は5mm、倍率10倍で実視界は9度となりこの双眼鏡のスペックと一致します。仮にアイピースがこのスペックとして絞り環径を算出すると、

[視野環径]=[見掛け視界] × [アイピースの焦点距離] × π/180

より

90×20×π/180≒31.4mm

と算出されます。これはイーソス17mmの公称値29.6mmを上回り(あくまで仮定ですが)、イーソス17mmは鏡胴径が62.5mmと双眼用として使うにはやや太いのに対してWXのアイピース部分の鏡胴径は58mmに抑えられている事や、短焦点対物と超広角アイピースとの組み合わせと考えればこの見掛け視界で周辺までピンポイントの良像範囲を実現しているとなれば正に驚異的な設計と言えると思います。

恐らくこの性能はアイピース単体では実現は難しく、対物レンズやプリズム、フラットナーも含めたトータルの設計で生み出されていると考えればWXの為だけのオーダーメイドの(=通常のアイピースの様な販売数が見込めない)アイピースとも言え、更に双眼鏡なので2本必要と考えればアイピースだけで3、40万しても不思議ではない気がします(因みに現時点でのイーソス17mmの販売価格は一本148,500円となっています)。

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もしかするとこの様にアイピースだけ切り取って語っても意味が無いかも知れず、EDレンズを片側鏡筒だけで3枚使用していたり、Nikonの開発ストーリーを読むと最も開発に苦労したとエンジニアが口を揃える大型、高精度のアッベケーニッヒプリズムを採用している事なども考えればトータルの製品価格としてはやはり今の価格は妥当なのだろう(むしろ安いのでは?)と考えるところです。

スペックだけでなく見え味の点でも最高となるようにコーティングや迷光対策などの面でも惜しみなく技術が投入されており、防水設計は勿論、耐久性、耐候性を考慮しつつ限界まで軽量化された筋肉質なボディに窒素封入とおよそ現時点で考えられる性能向上の要素がふんだんに盛り込まれ、日本が世界に誇る光学機器メーカーのNikonが正に威信を掛けて開発した究極と呼んでも差し支えない双眼鏡と言えると思います。

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実物を手にした第一印象は、あれ?軽い?と手持ちでの使用を毛頭考えていなかった自分でしたが想像するより遥かに軽く感じ、公称重量2.5kgとの事でかなり身構えていましたが両手で持てば普通に眺められ、本当にこれ2.5kgもあるの?と思う程です。目玉を包み込むようにフィットする見口の形状が非常に優れており、恐らく手で持った時の前後バランスが絶妙でとても持ち易く、覗いている時の振動は10倍とは思えない程安定しています。

見え味に関してもやはりこの視界の広さは本当に圧倒的です。但し最初にこの双眼鏡を覗く前に一つ強くお勧めしたいのは他の普通の双眼鏡を直前に覗いてから見比べる事です。と言うのも望遠鏡のアイピースには既にナグラーやイーソスと言った超広角のものが出回っていますので、そうしたアイピースを見慣れている人であればうん、すごい程度で感動が薄くなる可能性があります。この双眼鏡の凄さが分かるのは他の双眼鏡を覗いた時で、WXを覗いた後に例えば自分の場合プリンスED6.5x32を覗くと(この双眼鏡も見掛け視界65度の広角です)うげっ狭っ!とその狭さに逆にびっくりします。普通の双眼鏡を覗いてから改めてWXを覗いて初めてとんでもない双眼鏡だと気付かされます。その意味ではやはり異次元の見え味です。

スペックだけを追い求めると疎かになりがちな覗き易さの面でもこの双眼鏡は特筆すべきものがあり、望遠鏡用の広角アイピースでは星見に最適化され昼間に使用すると目位置にシビア、ブラックアウトがし易いものも少なくないですが、この双眼鏡では当然かも知れませんが昼間の使用が想定されており、この見掛け視界から考えればとても目位置に寛容と言えると思います。勿論目位置をきちんと合わせずに視野をギョロつかせるとビーンズエフェクトは発生しますが、6段階のクリック付きターンスライド方式のアイカップがとても良く出来ており、きちんと合わせればとても快適に覗く事が出来ます。裸眼で近視気味の自分は3段目で使用していますが、見口を一番縮めれば眼鏡使用でも全視野が見通せるアイレリーフも持ち合わせており、アイレンズが凹んでいるので眼鏡と接触する心配もまずありません。

画質面でもやはり非の打ちどころが無く、透き通った歪の無い映像で眼前が満たされる印象で没入感が半端ではありません。自分的にはミニボーグ45ED-BINOから始まる低倍率広角のBINOを自作してきて、実/見掛け視界の広さと良像範囲の広さを両立させる対物レンズとアイピースの選択には本当に苦労させられたので、WXがこれらを凌駕する視界の広さでありながら隅々まで星が点に見える事は覗いていて本当にすごいなーすごいなーと言う言葉しか出てきません。正にマニアを唸らせる、と言うよりマニアこそ黙らせられる、そんな双眼鏡かも知れません。

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この双眼鏡の世間の評判を見るともっと口径が小さくても良いので安く軽くして欲しいとの要望も見受けられますが、この基本設計を踏襲する限り口径を下げても安価にも軽量にもならないと思われ、もし見掛け視界を下げてしまえばアイピースが小型軽量化され、全体のダウンサイジングにも繋がるでしょうが、それではスペック的に他の双眼鏡と競合してしまい、この双眼鏡の魅力が半減してしまう事でしょう。

またこの双眼鏡の開発ストーリーを先のニコンのHPで見ると開発には天文好きのエンジニアが多く携わっており、開発陣がこの双眼鏡での天体観望を強く意識していた事が窺われ、口径的に天体用には50mmは欲しいと言う想いがあったのだろうと、逆にこれ以上口径大きくしてしまうと手持ちの限界を大きく超えてしまう点でこの口径を採用したぎりぎりの判断があったのではと推察するところです。

この双眼鏡を手にしてIFでのピント合わせや重量の面でこれは双眼鏡人口の多いバードウォッチング趣味の方々は恐らく手を出さないだろうと感じ、人口の少なそうな天文趣味それも眼視派をターゲットにこの様な超絶価格の双眼鏡を販売するのはマーケティング的に余りに冒険的過ぎてよく商品化が許されたものだと感じられ、本当にこれは採算度外視(この価格でも)でNikonの開発者の半分趣味で作られたのではないかと、大企業Nikonの創業100周年記念と言う大義が無ければ作る事が許されなかった双眼鏡ではなかろうかと感じざるを得ません。



その2(自分的運用編)に続きます。

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APM 120mmSA対空双眼鏡 [天文>機材>双眼鏡]

FL90S-BINOの構築に伴い口径が近いので手放したAPM10cmセミアポ対空双眼鏡でしたが、こうなるとR200SS-BINOを含めた上位口径のBINOが裏像双眼のみとなってしまった事で、この間の口径で正立双眼が出来る機材が欲しくなり、結果としてAPMの対空双眼鏡が口径アップして戻ってくる事となりました。

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実はSE120双眼やC6双眼の自作などもかなり検討していましたが、自作BINOは運用面で制約や面倒が生じる事も多く、対空双眼鏡の扱い易さは10cmで身に染みて感じていた事もあり、今回は自作は避けて完成品のお世話になる事にしました。

実物をチェックした感想は、まずアイピース交換式の初期の90度対空双眼鏡は口径がケラれているとの評判を聞いた事があり、今の製品ではそんな事は無いだろうと思いつつも気になるポイントでしたがルーペで射出瞳径を測定したところ計算通りで全くの杞憂でした。

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次に接眼部ですが前の10cmでは接眼側の開口径が幾分絞られており、長焦点広角のアイピースではケラれる心配ありましたが、今回はアメリカンサイズ目一杯の開口径があり、自由にアイピースの選択が出来るようになりました。

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今回はアイピース固定の締め付けリングの上端がアイピース当たり面まで来ている事でリングがアイピースの脱落防止溝に入らない設計となっており、10cmの時はリングが溝に入らない様に一工夫する必要もありましたが、今回はその心配も不要となりました。

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一般的にアイピース交換式の対空双眼鏡はバックフォーカスが短く、10cmの頃はピントが出ないアイピースも結構ありましたが、この点に於いても今回の双眼鏡は10cmでは結構ぎりぎりだったXW20SSW14mmなども余裕を持って合焦し、ピントに余裕がある設計に改善されていると感じました。

三脚台座には2箇所の1/4インチカメラネジ間に3/8インチネジが切られており(合計3箇所)、ここには予めアダプターが仕込まれていて1/4インチネジとしても使用可能になっています。ここにアリガタとしてBORGのVプレート125【3125】を取り付けています。

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架台はTマウント経緯台いつものL字プレートを装着しアリガタアリミゾで双眼鏡を着脱するシステムとしましたが強度的な問題はありません。ただ写真では使用していませんが実際の観望では転倒防止の為にカウンターウエイトを装着した方が安心出来るでしょう。また取っ手の部分には付属スポットファインダー取り付け用のネジ穴が2箇所設けられていましたのでここに汎用のファインダーアリミゾをやや強引ですが装着しています。

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視軸に関しては同梱されていた品質保証書?に何mmのアイピースを使って何倍までOKだったかのテスト結果が記載がされており(具体的な数値は伏せます)、自分がこの双眼鏡で使用を想定していた最高倍率(XWA9mm使用で73倍)は余裕を持ってクリアされており、実視でも全く問題はありませんでした。

見え味に関してはまず地上風景を見ると色収差が割と盛大に出ていて、セミアポを称するこの双眼鏡ですが正直何処にアポの要素があるのか分からない印象ですが、像自体はシャープに結像しており球面収差は悪くなさそうな印象です。下の写真はHD-OR12.5mm使用(52.8倍)でスマホでコリメート撮影したものです。

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色収差に関してもこの程度でしたら大口径短焦点アクロマートと考えれば普通ですし、APMの対空双眼鏡にはSDレンズを使用したモデルも販売されていますが、自分的には対空双眼鏡は構造上高倍率は向かない機材の認識でしたので、中低倍率での天体観望が前提であればセミアポ仕様が価格と性能のバランスが取れている様にも感じるところです。

天体の見え味に関してはSQM値21程度の空でM51、M81、M82、M87、マルカリアンチェーン、M22、M28辺りを見た印象では銀河や球状星団は光量のあるR200SS-BINOの方がやはり良く見えますが、網状星雲、M17、M16、M8、M20、M27、らせん状辺りをOIIIやUHCを付けて見ると写真の(を薄くした)様にも見え、Hβを使えばカリフォルニア星雲も視認できる程で、R200SS-BINOが銀河に特化したギャラクシービノとするならば、こちらは屈折のコントラストの高さを活かした散光星雲、惑星状星雲に滅法強いネビュラービノと言った趣かも知れません。

またR200SS-BINOやFL90S-BINOは裏像での観望となるのに対してこの対空双眼鏡では正立像で観望出来る点も大きく期待していた部分でしたが、天体導入においてはファインダーもメイン鏡筒も正立である事で星図との見比べによる視野内の天体の同定が格段に楽で、特徴的で豊かな形状の多い散光星雲は写真で形状が予め脳内にインプットされているものも少なくない事から、実物を見た時の違和感を感じない点もやはり大きなメリットと感じます。

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使用アイピースはXWA9mm(倍率73.3倍、実視界1.36度)、SSW14mm(47.1倍、1.76度)、XW20(33倍、2.12度)辺りがメインで、以前45度の対空双眼鏡では仰角を上げた状態でのアイピースの交換は下に落ちてくるアイピースを押さえつけながら固定する必要があり若干ストレスでしたが、今回90度対空では落下の心配は無く、やはり地上風景を少しでも見るのであれば45度対空(+EDレンズ)の意義がありますが、天体観望専用であれば90度対空が選択として妥当と感じました。

重量は公称9.6kgと10cm(6.4kg)から3kg重くなった程度ですが、持ち上げるのには両手が必要になったり体感では倍以上重くなった印象で、架台もAPポルタでは扱えない点など手軽な機材とは言えなくなったのが少し残念なところですが、12cm口径の屈折双眼と考えれば非常にコンパクトにまとまっていると感じられ、パーツの組み上げや調整が必要な自作のBINOと比べるとセッティングや撤収、運搬などの面で手間が掛からずとにかく扱いが楽と言うのが強く実感するところです。

収納に関しては以前R200SS用に購入したOptics Asiaの30インチケースがこの双眼鏡にもジャストサイズでした。このケースは中を縦に2列に仕切って望遠鏡や三脚を並べて収納する事が想定されており、それぞれの列の機材を固定するベルトが配置されているのですが、これがこの双眼鏡を収納する場合にも左右の鏡筒をそれぞれ固定してケースの中で動かないようにする役目を果たしています。

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全体として以前の10cmと比べるとあらゆる点で改良が施されており、非常に完成度が高い、洗練された機材に仕上がっていると感じました。双眼望遠鏡を自作するのも愛着が湧いて良いものですが、やはり完成品の対空双眼鏡は面倒が無く、双眼望遠鏡の自作は存外お金が掛かる事を考えると割安で手に入れる事が可能で、この様な製品が市販されている事はとてもユーザーにとって有難い事だと思います。

Canon 12x36IS III その2(テレコンでパワーアップ編) [天文>機材>双眼鏡]

Canonの防振双眼鏡の12x36ISの対物レンズ前に同じくCanonの1.6倍のテレコンバーター、TC-DC52Bを装着する事で、19.2倍の防振双眼鏡としてパワーアップさせました。

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双眼鏡での天体観望における防振の効果は絶大で、揺れが止まって微光星が浮き出てくるこの見え方を体感してしまうともう普通の双眼鏡に戻る事は出来ません。個人的にはそれ故に対象天体によってはもう一声倍率が欲しいと感じる事がありより倍率の高い15x50ISや18x50ISにも食指が動く中、Twitterのフォロワーさんが対物レンズ前にテレコンバーターを取り付ける事によって倍率を上げる裏技を紹介されていて(どなたかは失念<(__)>)、試しに12x36ISの前に自作テレコンビノのVCL-1452ビノをかざしてみたところ普通に倍率が上がって見え味も防振性能もほぼそのままでこれはイケる!と感じたもののVCL-1452の外径が大きい為に12x36ISの対物レンズの幅に合わせる事が出来ず、もっと外形が小さいテレコンは無いものかと物色する事になりました。

調べるとCNに防振双眼鏡とテレコンを組み合わせるスレッドが存在し(本当あちらは何でもありますねw)その中でも評価の高かった今回のテレコンに自分も狙いを定めたもののやはりそこはとっくの昔にディスコンになった製品、そう簡単には見つからず、その後一年以上掛かってようやく2本揃える事が出来ました。

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このテレコンを2つ並べた間隔が12X36ISの対物レンズの間隔以内に収まるかが第一の懸念点でしたが、何と共に約70mmのジャストの寸法で冷や冷やしましたが、ある意味理想的と言える組み合わせかも知れません。但し先のCNのスレッドで、テレコンに組み合わせる防振双眼鏡は対物にフィルターネジを装備した10x42LIS、15x50ISと言った機種が主でフィルターネジが存在しない12x36ISに取り付ける話は存在しませんでした。

そこでこの双眼鏡に取り付ける方法を思案した結果、Euro EMCの太陽フィルターの取り付け方法からヒントを得て双眼鏡の対物フードに引っ掛ける方法を考えて色々試した結果、ハクバの52mm径レンズフードの対物側の内径が双眼鏡の対物フード外形とほぼ一致(φ58mm)している事が分かり、双眼鏡側がラバーの分だけ僅かに大きかった事が奏功し、レンズフードを逆向きに対物フードに押し込む事でかなりしっかりと取り付ける事が出来て、ここに52mm径の継手リングを介する事でテレコンを取り付ける事が出来ました。

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テレコンでの倍率強化に於ける注意点として、まず左右の視軸が維持されるのかが心配でしたが、今回の組み合わせでは特に問題ありませんでした。但しより倍率が高くなればズレが許容出来なくなる事も予想されるのでやはり1.5倍前後のものに留めておくのが無難ではないかと思います。また無限遠のピント位置がかなりシフト(後退?)し、近距離でピントを合わせる事が出来なくなりましたのでこれ以上の拡大率のテレコンでは無限遠でもピントが合わない(双眼鏡のピント調整範囲を超える)可能性もあります。またテレコンの焦点距離に個体差がある場合ピントが左右で僅かに違う場合がありますが、これは双眼鏡の視度調整の機能で合わせる事が可能です。

また今回のテレコンの後端レンズの径が双眼鏡の対物レンズよりも小さいので口径がケラれる懸念もありましたが、太陽光(並行光線)を接眼レンズから入射させて、テレコンのレンズ前に白いビニールを張って投影される光束の直径を測定したところ約40mmあり、これより元の36mmより若干口径が拡張されていると思われます。だとすれば当初倍率しか求めていなかった自分的には思わぬ副産物と言ったところです。

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倍率が上がった状態での防振の効き具合ですが、正直なところノーマル状態のボタンを押すとピタッと視野が止まる感覚は薄れ、低倍率の双眼鏡を手持ちした感覚に近い少量の小刻みな振動が残ります。特に地上風景より星見の方がより揺れにシビアでピタッとは止まらないので微光星が浮き上がる効果も薄くなりますが、この状態から防振を解除すると手振れでまともな観望が難しいレベルになりますので、それを手持ちの低倍率双眼鏡レベルまで揺れを抑え込むのですから相変わらず防振の効果は絶大と言えます。

そして倍率が上がる事によって対象の詳細が見えてくるようになり、特に月面観望では絶大な威力を発揮し、ノーマル状態(12x)では全景を眺めると言った趣から、テレコン装着では個々のクレーターの様子が観察出来るレベルになって飽きが来ません。メシエ天体などもノーマル倍率では存在確認レベルだったものが一気に見応えが出てきて言ってみれば双眼鏡から望遠鏡の見え味に近くなる印象です。星像もシャープなままでテレコンを付けた事で悪化する印象もありません。

またこの状態でより快適に星を見るテクニックとして車の屋根などに肘を付いて覗くと更にぐっと振動が減ってノーマル状態の微光星が浮かび上がる感覚がこの倍率でも現れてきます。肘を付いていても防振を切ってしまうと小刻みに揺れてやはりこうはならず、この状態であればじっくりとした天体観望も可能になり、双眼鏡の機動力、自由度の高さと望遠鏡の見え味を両立させた観望機材としての強みが一層増してくる印象です。

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但しこの状態での実視界は3.13度となり導入が難しくなる弱点が出てきますので万人向けとは言い難く、ノーマル状態の方が手持ちで視野が止まる感覚が失われない上限の倍率を設定していると思われる点でやはりバランス、完成度が上と感じますが、一部のマニアの需要に特化した性能を求めるならば今回の様な改造もまたメリットが大きいと考えられ、防振双眼鏡でなくても手持ちの双眼鏡の倍率をもう少し上げたいと思われる方にとっても有用な手段となりえるかも知れません。



プリンス6.5x32 vs 7x42FL [天文>機材>双眼鏡]

旅行に行く時はいつも7x42FLをお供に持って行くのですが、以前旅行に行った際プリンス6.5x32も同伴させました。

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旅行先の湖の湖面、湖面に浮かぶブイ、湖面の光の反射、浮かんでるボートに書かれた文字の見え具合、岩山の山肌の質感など見比べましたが、中心像のシャープさはプリンスが勝っているように見える時もあれば、FLが勝っているように見える時もあって対象や状況によって印象が変わりましたので、トータルではやはり互角と言って良いかも知れません。

口径の大きいFLはぱっと見明るくて解像度も高いのですが、プリンスはヌケの良さでFLを上回っている印象で、FLの後にプリンスを覗くとベールが一枚取れたようなすっきりした見え味で、倍率が低い事も関係しているかも知れませんが全体的に像が引き締まっている様に見えました。

色合いに関してもFLに比べるとプリンスは暖色系、ややもするとプリンスの方が自然な色合いに感じました。FLは白を白く見せる性能には定評がありましたが、プリンスの方が着色が無いように見えるのは自分の好みの問題なのだろうか?と自問自答する状況に。

今まで最高クラスの性能と思っていたFLが、価格が10分の一以下の双眼鏡に劣るように見える事があって良いのかとか、自分の双眼鏡を見る目に少々自信が無くなってくる始末でしたが、プリンスが高い性能を持つ双眼鏡なのはやはり疑い無いように思えます。ただ夕方に薄暗くなると全般的にFLの方が良く見える気がしました。

次に星見における見え味の違いについて、天の川の星が密集している場所を見て比較観望しましたが、FLは口径が大きいので星が明るく煌びやかな点はプリンスでは勝てない部分ですが、やはり良像範囲が狭く、視野の5割程度より外の星像が円周方向に伸びる非点収差のような崩れが個人的に不快で、これがあるのでFLを星見に使う気になれないところです。

一方プリンスは歪曲(樽型)を感じますが、周辺像の崩れ方がFL程不快な感じを受けないので、星見では普通に使える印象です。32mmと言う口径が星見には物足りないかも知れませんが、倍率が低く、実視界も広いのであれば視野に占める星の量、リッチフィールドの観点から言えば40mmクラスの双眼鏡にも見劣りする事は無く、手振れの影響も少なく、目的の天体を探しやすい点においても星見には向いている双眼鏡だと思います。

個人的には昼の景色にはFL、夜の星見にはプリンスと言う使い分けになりそうです。

賞月観星 プリンスED6.5x32WP [天文>機材>双眼鏡]

個人的にはあまり耳慣れなかったこちらのメーカーですが、この双眼鏡のスペックを知ってえ?マジで??と久々に双眼鏡に食指が動きました。6.5倍の低倍率機でありながら見掛け視界が65度と広角で、実視界も10度と二桁台を実現、21mmのハイアイレリーフにツイストアップ見口を装備。自分的にこんなのが欲しかったと思わせるスペックで、発売日に注文して手に入れました。

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この双眼鏡が他の双眼鏡と大きく違うところは7倍以下の低倍率のポロ機でありながら広角を実現している点です。普通7倍以下のポロ機では見掛け視界は標準視界である事が多く、コーワやヒノデ、勝間と言った6x30の双眼鏡(ポロ機)を見ても見掛け視界は50度前後、実視界は8度強が普通です。ここで各双眼鏡のスペックを表にしてみます。

機種コーワ
YF30-6
ヒノデ
6x30B+
勝間
QF6x30
ニコン
8x30EII
賞月観星
プリンス6.5x32
倍率6倍6倍6倍8倍6.5倍
有効径30mm30mm30mm30mm32mm
ひとみ径5mm5mm5mm3.8mm4.9mm
実視界8度8.4度8.5度8.8度10度
見掛け視界48度50.4度51度70.4度65度
アイレリーフ20mm20mm15mm13.8mm21mm
重量470g482g770g575g730g

この中では勝間の6x30を以前所有していて、とても良く見える双眼鏡でしたがやはり視界が標準視界だった事が当時の自分の好みには合わず手放してしまいました。

低倍率双眼鏡とする為には比較的長焦点のアイピースを使う必要があり、その為見掛け視界も標準的となっているのが実情ではないかと推測するのですが、これを単に広角アイピースにしようとすれば恐らく短焦点化してしまうので、低倍率を維持するには対物レンズの焦点距離を短くする必要があり、短いF値の対物に広角アイピースの組み合わせとなると周辺像の崩れがかなり厳しくなる為、あまり採用されない設計なのではと思っています。

またアイピースを短焦化すれば一般に(スマイスレンズを入れてなければ)アイレリーフも短くなりますので、ハイアイを目指す場合も広角はネックになるポイントではないかと思われ、実際8x30EIIではこのクラス(ポロ30mm機)では比類ない広角を実現する為にアイレリーフを犠牲にしてる形です。ならば長焦点広角アイピースにすれば全て解決かと言えば望遠鏡用のアイピースが物語るようにサイズ、重量が肥大化し、価格も跳ね上がりますので、アイピースが二つ必要な双眼鏡では採用が難しくなるでしょう。

なので低倍率で広角、且つハイアイな機種に仕上げるのはかなり難度が高いのではと想像しますが、スペック上これを全て満たしているのが今回のプリンスEDでチャレンジングな製品と言えると思います。こうした双眼鏡は他には宮内のビノン5x32などがかつてありましたが現行機種では殆ど見る事ができません。

ここで上記の表のスペックに合致するように各双眼鏡の対物レンズとアイピースの焦点距離を割り出してみました。あくまで勝手な推測ですが、下記のスペック(各焦点距離)であれば上記のスペック(実視界、ひとみ径)が実現できます。

機種コーワ
YF30-6
ヒノデ
6x30B+
勝間
QF6x30
ニコン
8x30EII
賞月観星
プリンス6.5x32
倍率6倍6倍6倍8倍6.5倍
有効径30mm30mm30mm30mm32mm
対物レンズ焦点距離(予想)150mm150mm150mm160mm130mm
見掛け視界48度50.4度51度70.4度65度
接眼レンズ焦点距離(予想)25mm25mm25mm20mm20mm
対物レンズのF値F5F5F5F5.33F4.06

上記の推測が概ね当たっていると仮定すれば、コーワ、ヒノデ、勝間の3種はF5の対物でPL25mm相当のアイピースの組み合わせと考えると無理の無い、悪く言えば無難でありきたりな設計ですが、その分見掛け視界以外の光学性能は上げ易いスペックではないかと思います。

一方プリンスはF4対物に65度の広角アイピースの組み合わせ(予想)で、従来の双眼鏡より厳しいスペックを追い求めている部分は評価されますが懸念されるのはやはり周辺像の崩れで、これをどこまで抑えられているかがこの双眼鏡の評価を分けるポイントだと考えていました。勿論シャープネスやコントラスト、色収差補正と言った要素も重要ですが、その部分だけで判断すれば他にも優秀な双眼鏡は存在しますので。

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実際覗いてみて感じたのはまず像質の良さで、広角以外の見え味の部分で優秀な双眼鏡は他にもある、と書きましたがこの双眼鏡、その部分だけでも相当に優秀です。ツァイス7x42FL(以下FL)と昼間の風景を見比べましたが、中心像の解像度、階調表現、色収差の少なさなど見劣りしません。特にヌケの良さはFLに勝っているのでは?とすら感じます。

見掛け視界はFLの方が僅かに広く、倍率も僅かに高い事から実視界の広さも両者殆ど同じに感じます。スペックから言えばFLは見掛け視界60度相当ですので、プリンスよりは狭いと予想していたのですがこれは逆の結果となり、じゃあプリンスがひょっとしてカタログスペックより狭いのかと言えばそんな事は無く、XL40と見比べて同等の見掛け視界は確保されてますので、FLは今まで気づきませんでしたがカタログスペック以上の広さを持っていると言う事かも知れません。

その様な訳で、見掛け視界に実視界、倍率に像質を含めた全体的な見え味で両者拮抗しているので、同じ様な見え味の双眼鏡二つあっても運用に無駄が生じるのでこれはどっちか手放そうかな・・・と考える程にプリンスはFLに肉薄している印象です。ただ自分の眼力にはそれ程自信はないので、ある程度以上の画質になると「よく見える!」以外の感想が出てこないので、鋭眼のツァイスオーナーの人が見るともしかすると細かい違いが見えてくるのかも知れませんが、自分の目にはやはり大きな差は無いように感じます。

問題のプリンスの周辺像に関してですが、やはり周辺は崩れますが良像範囲は7割程度あり、この崩れ方もFLと似かよっていますが、良像範囲を超えた部分の崩れ方はプリンスの方が若干穏やかかも知れません。ただFLは元々中心像の鋭さに特化した双眼鏡で、周辺像の収差補正にはそれ程気を使っていないコンセプトですので、言わば弱点とも言えるFLの周辺像で見比べてプリンスが優位だとしても優秀とは言い切れないかも知れませんが、それでもこのクラスの広角双眼鏡としては十分合格点をあげられる見え味ではないかと思います。

見え味以外で気になった部分と言えばアイレンズがとても大きいので覗き易いのですが、視野が広いので周辺を見ようと眼を動かすとブラック(ホワイト?)アウトし易いかな?と最初思いましたが、3段階のクリックストップのあるツイストアップ見口が上手く機能している事もあって、慣れればFLと比べても普通だと感じました。他に難点があるとすれば意外に重たい事位でしょうか。

とにかくこの出来で18000円と言う価格は尋常でないコストパフォーマンスの高さではないかと思います。『コスパが良い』と表現すると『値段の割には』と言う意味合いにも聞こえてしまいますが、値段を意識しなくても絶対的な見え味の良さで高級機に劣らないポテンシャルを持っており、また低倍率広角と言った稀有なスペックも持ち合わせ、光学性能以外の部分も含めたトータルの完成度も非常に高い双眼鏡ですので初心者の方には勿論、マニアの方でも一度覗いてみて欲しいと感じる双眼鏡です。

その後、旅行にプリンスと7x42FLを持って行って比較観望してきました。星見での見え味も検証。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

賞月観星プリンスED6.5x32WP
価格:19800円(税込、送料別) (2020/10/23時点)



ヒノデ 6x21-N1 [天文>機材>双眼鏡]

昔から家に眠ってたルビーコート全開の逆ポロコンパクト双眼鏡とコーワSV25-8で見え味を比べようと思い付き、勿論比較にならなかったのですが、このコンパクト双眼鏡を持った時に思わず「軽っ!」と声を上げてしまうほどの軽さに驚き(150g弱)、SV(270g)も軽量と思っていましたが、この軽さを体感してしまうとその部分だけは羨ましくなってしまい、安さにつられて買ったSVですが、多少値が張ってもこの位軽くてちゃんと見える双眼鏡があれば散歩用には最高では?と探してみる事に。

コンパクト双眼鏡は各メーカーで色々販売されていますが、画質優先なら日の出光学が間違いないだろうと判断、その中でどれを選ぶか悩みましたが、5x20-A4は重さがSVとあまり変わらず、6x21-S1は懐具合が厳しい事情もあり、何より一番軽いと言う理由から6x21-N1を選ぶ事にしました。

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見え味に関しては多少迷光対策が甘いのか外光が入り易く、ヌケやコントラストの面で弱い印象もありましたが高級機と比べなければ気になる事はないでしょう。星を観たところでは個人的に気になる周辺像も視野の9割は点像で、視野はそれ程広くはありませんがSW-5257x42FLの様に周辺像の崩れが気になる事もありません。今回一番重要視した軽さの面ではSVはポケットには入るものの多少ずっしり感を感じていたのに対し、こちらは実測で143gと持っている事を忘れる程の軽さで、レンズは全て光学ガラスを使用し、プリズムに筐体の重さに加え、双眼鏡に求められる基本的な機能が全て備わっていながらPL32mmなどのアイピース一本より軽く出来ている事が何やら不思議に思えてきます。

大きさも折り畳んだSVより一回りコンパクトで当初の目的だった散歩のお供として個人的に最良の選択となりました。双眼鏡で何かを観る事が目的でなく、他の目的のついでに携帯したい、でも見え味に妥協したくない、そんな目的に合致する双眼鏡かと思います。観る目的で使っても何の差し支えもありませんが。

あと気に入った部分は今では珍しい日本製と言う事もあってか外装の仕上げが非常に良いです。中華製品は必ずと言っていいほどどこか造りの甘さ、値段なりの安っぽさを感じてしまいますが、この双眼鏡にはそうした甘さが全く感じられません。スペックに表れない部分の品質で手を抜いていないかつての日本製の良さを感じさせる、持つ喜びが味わえる製品で、楽天でランキング一位になったのも頷ける一品だと思います。
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コーワ SV25-8 [天文>機材>双眼鏡]

散歩のお供に双眼鏡を持ち運びたいと常々思っていましたが首からぶら下げる双眼鏡を持って行く気にはなれず、小型軽量の双眼鏡を欲していたところにAmazonで何故か3400円と言う格安で売られていたこの双眼鏡の存在を知り、2軸ダハ双眼鏡は今まで持った事が無く、折り畳めれば気軽に持ち運べそうなので思わずポチってしまいました。

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光学性能も定評あるコーワの双眼鏡なので普通に良く見えます。やや寒色系で倍率口径の関係でやや暗めですが、周辺像も良好で星見にも使えます。個人的にはツイストアップ見口の繰り出し量が絶妙で覗き易いのが気に入りました。

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実測270gと今まで所有した双眼鏡の中では群を抜く軽さで、防水でラバーコートのボディは耐久性がありそうで、折り畳めばジャンパーのポケットに入るサイズなので値段の事もあり、少々ラフに気楽に扱えるのが自分にとって一番の利点かも知れません。



その後SVII25-8としてリニューアルされ、本体色が緑色になりました。

KOWA (コーワ) 双眼鏡 ダハプリズム式 25口径 SVII25-8 (8倍)
Amazon

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キヤノン 12x36IS III [天文>機材>双眼鏡]

10x30ISを使用して防振の威力が期待以上だったので、10x30購入以前に比較検討していた12x36が再び気になり出し、倍率が高ければより防振の効果が実感でき、口径が大きい方が当然星見では有利となるので10x30購入3ヶ月で買い替える結果となりました(10x30は品薄が続いていた事もあって新品とほぼ同額で売れました)。

相変わらずストラップが穴に致命的に通し難く、キヤノンばかじゃないの!??と心の中で数回叫びながら、対物キャップが無い事にも改めて不思議に思いましたが、実際覗いてみるとやっぱり素晴らしい見え味でこれがギャップ萌えか・・・と思ったり思わなかったり。

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倍率が上がった事で個々の天体が観易くなり、手持ちでメシエ天体等をじっくり観望できるのはこの双眼鏡ならではの芸当と言ったところで、以前は倍率的に少々物足りなかったお気軽月見用にも最高です。

ただ月を見ると色収差が目立ち、防振を利かせるとピントが揺れ動く感じで像が落ち着かず、防振も一見静止しているようで微細な振動が残る感じはありますが、これは以前より倍率が大きくなった事で目立つようになっただけで10x30でも小なり感じた部分です。これら現象は月見で気づきましたが、星や景色では気にならない、と言うか気づきませんでした。普通に使う分には気になる事は無いでしょう。

防振の素晴らしさも去る事ながら周辺像の良さも特筆すべきで、星を見てほぼ視野全面が点像で見ていてとても気持ちが良く、色収差も意地悪な見方をしなければ、LISまで行かなくても(見比べなければ)こちらで十分満足できる像質だと感じます。やはり見ていて楽しい双眼鏡ですね。

その後、太陽観望用のフィルターを入手しました。

その後、テレコンバーターを装着して倍率を19.2倍にアップしました。


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キヤノン 10x30IS II [天文>機材>双眼鏡]

ネット最安値のショップで注文してから届くまで2ヶ月掛かりました。やっぱり人気あるんですね。

星見用途であればより口径の大きい12x36ISも魅力だったのですが、実視界の広いこちらを選択しました(値段もかなり違うので)。防振の威力に関して今更自分が書く事も無いですが、特に対象が暗く点光源の星見ではその効果は絶大で、手持ちの振動が如何に見え味を損ねているかを実感させられます。

防振の機能は素晴らしく、見え味も文句なしですが、対物レンズキャップが無かったり、ストラップを通す穴の位置と大きさが最悪でめちゃめちゃ通し難い事やソフトケースの形状が悪くて使い難い(7x42FLのソフトケースを代用してます)など、光学系以外の部分で残念な部分が目に付き、折角Ⅱにモデルチェンジしたなら一緒に改善して欲しかったところです。

手持ち観望の自由度と架台固定の安定性を両取りできる革新的な観望機材で、星見では手持ち双眼鏡はこれとテレコンビノしか持ち出さなくなりました。

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テレコンビノ (SONY VCL-1452ビノ) [天文>機材>双眼鏡]

以前のテレコンバージョンレンズの比較でSONY VCL-1452Hの性能が良かったので、アクリル板を使ったテレコンビノを自作しました。

例によって2mm厚のアクリル板の3枚重ねで瞬間接着剤で接着したのでアクリルがあちこち白く変質してえらい事になってます。

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VCL-1452の外径はφ83mm程度あり人の目幅を大きく超えてますが、アイレンズが4cm強と大きく、TC-E2と違い目位置に寛容でアイレンズのどの位置から見ても像の劣化がさほど感じられない為、BINO化して多少中心から外れる(内側の)位置から覗いてもこれなら十分実用になると判断しました。

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実際BINO化してみて見掛け視界が90度程度あり、倍率もTC-E2より更に低い事もあって視野に北斗七星からアークトゥルスまで収まる(!)驚愕の超広視界BINOとなりました。アイレンズも大きいので光学系を覗いていると言う感覚が薄れ、これガラス素通しで見てるのと同じじゃね?と錯覚するレベルですがこれを外してみると当然倍率が掛かって肉眼より暗い星が見えている事が分かります。良像範囲も9割程度あり、この見掛け視界を考えると光学系も優秀です。

自分の場合近視の為ややピントが合わない感じがあり、TC-E2ビノの様に何か補正レンズのような物を組み込めないかと考えたのですが、普通のメガネ越しでも視野のケラレが生じない事が分かり、問題無く使えるようになりました。

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ワイドビノ、TC-E2ビノと比べるとVCL-1452ビノのレンズの大きさが際立ち、重さもワイドビノ295g、TV-E2ビノが365gに対しこのビノが530gと結構な重さになります。

倍率が低く集光力も小さい(2倍)ので肉眼をすこーしだけパワーアップした感じの見えですが、星座が2つ3つ同時に見られる超視界を活かして流星群を見るのに最強の機材なのではと思っています。
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テレコンビノ (ニコン TC-E2ビノ) [天文>機材>双眼鏡]

以前のテレコンバージョンレンズの比較で評判通りTC-E2の性能が良かったので、アクリル板を使ったテレコンビノを自作しました。

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DIYでのアクリル板の加工が想像以上に難しく、ネットのアクリル板加工業者に穴開けと角を丸くする加工を依頼し、鼻が当たる部分のカットとストラップを通す穴開け加工は自力で行いました。加工がし易いように2mm厚のアクリル板にそれぞれ加工を施しこれを3枚重ねしています。接着はアクリルには不向きとされている瞬間接着剤を使用し、接着箇所が白く変質して見た目は宜しくない感じになりましたが接着力は問題ないと思います。

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TC-E2は若干目位置にシビアなので自分の目幅に合わせてレンズ間隔を70mm固定としました。ワイドビノとの見比べでは見掛け視界が1.5倍位あり、実視界もワイドビノではオリオン座がすっぽり入る感じですが、こちらは冬の大三角形がすっぽり入る広さがあります。ワイドビノは肉眼で星が見え難い光害地の中で星座を確認する為の道具として使いますが(個人的に)、TC-E2は星座観望を楽しむ用途に使えます。

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ただTC-E2と比較する事でワイドビノの良さを再認識した部分もあります。まずワイドビノの方が倍率が高い分TC-E2より暗い星が見え、幅広い目幅調整やピント調整が可能な点などクセの強いガリレオ式オペラグラスをなるべく広視界で多くの人が使えるようにと口径や倍率がよく考えられた感じもしないでもありません。考えたのは星見を想定してないロシア人だと思いますがw

またTC-E2だと目の調子によってはピントが微妙に合わない感じで、メガネを使うとピントが合うのですが、メガネを使った場合の視界の広さが裸眼で見た時のワイドビノと大体同じ位なので、メガネ使用者の方にはそれ程大きなメリットは感じないかも知れません。

とこのようにテレコンビノはあまり融通が利かない部分はありますが、裸眼でピントが合えばその性能はワイドビノを凌駕しており、ハマれば他の機材では味わえない、星見に新しい楽しみを与えてくれるアイテムだと思います。

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その後片方のレンズが少し曲がって付いているのでは?と感じ、レンズをぐりぐりと動かそうとしたところレンズとアクリル板との接着が剥がれてしまいました。瞬間接着剤では接着力が足りなかったようで、動かさなければ問題無かったかも知れませんが、接着法をどうするか再考しているところです。

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その後接眼部に視度補正レンズを組み込みました。
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Zeiss 7x42T*FL [天文>機材>双眼鏡]

この双眼鏡のお陰で双眼鏡の増殖を食い止める事ができました。但し中心像に特化していて良像範囲がそれ程広くないので星見にはあまり向いていないかも知れません。日中の景色を見るには無双できる性能で旅行などではこれを必ず持って行きます。

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ニコン 8x30EII [天文>機材>双眼鏡]

ミニボーグ45ED対空双眼鏡の最低倍率と実視界がEIIと同じ位になるのでこちらを手放そうと考えたのですが、他の鏡筒を使っている状況で、ファインダーで基準となる星から目標の天体を導入する道筋を事前にシミュレートするのにこの双眼鏡の広い視界がとても役に立つので手元に残しています。

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ミザール SW-525 [天文>機材>双眼鏡]

実視界15.5度を誇る超広視界双眼鏡で、見掛け視界もナグラーに匹敵する広さがあり、価格からすると破格なスペックの超広角双眼鏡です。見え味もヌケが良くクリアーで、このタイプの双眼鏡としてはそれまで笠井のSUPER-VIEW 4x22EWを使っていましたが、実視界以外の全ての部分でSW-525が上回っていたので手放しました。

ただ星を見ると口径の割にあまり明るく感じられず、良像範囲も5、6割程度で周辺像の崩れも気になりますが、見掛け視界がとにかく広いので、空の暗い天の川の見えるようなところでは他の双眼鏡では味わえないダイナミックな光景を見せてくれます。造りはやはり安っぽいところがあり、ピントリングを回した感触がぐにゃぐにゃして若干ガタがある感じですが星見ではそれ程問題にならないでしょう。この機種がディスコンになった時、ミザールに電話掛けてこの双眼鏡の素晴らしさと再販の要望を伝えたりしましたがwこのスペックを受け継ぐSW-550がその後販売され、その見え味も気になるところです。

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セレストロン SkyMaster 15x70 [天文>機材>双眼鏡]

10cmクラスの大口径双眼鏡と4~5cmクラスの普通口径の間を埋める双眼鏡として格安のこの双眼鏡を買いましたが口径と倍率のバランスが良いのか他のスペックの双眼鏡に比べて星がたくさん見える気がします。フジノンの16x70FMTやニコンの18x70SPが名機と言われるのも、この口径倍率の組み合わせの妙が利いているのかも知れません。格安双眼鏡だけに地上風景を見ると像の眠さはありますが星見には影響が無く、見掛け視界が意外に広く実測70度程度の広々とした視界で、これだけ見えればFMTやSPまでいらないかも、と感じるほどです。全体的な造りは安っぽく、実質的な有効径が63mmしかなかったりする部分もありますが、それを補って余りある安さと見え味なのでこのスペックの入門機として最適かと思います。

15倍なので手持ちは基本的に厳しいですが、対物レンズの付け根の細い部分を掴んで、肘をどこかに固定すると意外にブレないで観望できます。



大事な事を書き忘れていましたが、この双眼鏡は当たり外れあります。自分も3台覗いて1台は光軸が怪しかったです。怪しいと思ったらショップに問い合わせすれば多分ショップもその辺りは認識してると思うので良品に交換してくれる、かも知れません。

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笠井 ワイドビノ28 [天文>機材>双眼鏡]

自分の住んでいる肉眼で2~3等星しか見えないような光害地で星座を確認するのに絶大な威力を発揮する個人的に無くてはならない双眼鏡です。復刻版の初期ロットなのでコーティングの色が赤茶色です。何だかんだで所有してから結構な年月が経ち、金属部分があちこちサビてきていますw 落下防止にビクセンのストラップを付けています。

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APM10cmセミアポ対空双眼鏡 [天文>機材>双眼鏡]

現在笠井トレーディングで販売されている天体望遠鏡用アイピース交換式45度対空双眼鏡のSUPER-BINO 100CLTのスペック的にはほぼ同等品(焦点距離は550mm、重量実測6.4kg)です。この双眼鏡はAPMで『APM 100mm ED-SemiApo Binocular』として売られており、本体横には『Doublet SemiApo』の印字があり、笠井のSUPER-BINO 100CLTは対物レンズが3枚玉との事で中身は違うと思われます。実際この双眼鏡の説明書に光学レイアウトが掲載されており対物レンズが2枚玉と3枚玉の外観が同じで中身の違ういくつかのモデルが存在する事も記載されています。

余談ですが、APMからこの双眼鏡と一緒にTMBスーパーモノセントリック18mmを2本注文したのですが、この双眼鏡でTMBを使うつもりか?無限遠でピントが出ないが、とのメールが来て、望遠鏡で双眼装置で使うので大丈夫と返事しましたが中々親切でした。個人輸入する上で最も懸念していた光軸も問題ありませんでした。

この双眼鏡の大きな特徴は市販の天体望遠鏡用アイピースが使えることで、バックフォーカスにそれ程余裕が無いので選ぶアイピースのピント位置には注意する必要がありますが、高性能アイピースと組み合わせる事で性能が化ける双眼鏡です。色々組み合わせを試した結果、ペンタックスXW20(絞り環径26.5mm、倍率27.5倍、実視界2.76度)とテレビューナグラー9mm(絞り環径12.4mm、倍率61.1倍、実視界1.29度)の2種類に絞り込んで使っていますが付属のアイピースに比べると格段に良く見え、星像もシャープで地上風景を見てもヌケが良く安価な大型直視双眼鏡で感じるような像の眠さがありません。これ以上の高倍率は望遠鏡で双眼装置を使った方がいいと考えているので全く試していませんが、ナグラー9mmで見た土星は中々綺麗に見えました。望遠鏡の性能の半分はアイピースで決まるとはよく言ったものです。

やはりこの双眼鏡の得意とする倍率レンジは20倍~60倍程度の低中倍領域で、この領域には見栄えのする星雲星団が多く存在し、特に広がりの大きい散開星団はこの双眼鏡の独壇場と言ったところでこの双眼鏡で見るペルセウス二重星団は絶品でこの為だけに買って良かったと思えるほどです。

アイピースの固定方法はチャック締め付け式ですが締め付け回転部がやや固めでかなり回さないと締め付けされないのでアイピースの着脱にやや手間取るのが不満の残るところでしょうか。それ以外の使い勝手はとても良く、過積載ながらもポルタで使っているので(揺れはそれ程気になりません)、10cm双眼ながらもフットワークが軽く気軽に持ち出せます。標準でアルミケースが付いているのも大きいです。

最近は天体を双眼で見る事が一部ブームになりつつありますが、双眼装置での観望はどうしても倍率が高くなりがちで、それ故月惑星観望用途に限定される事も多く、50倍を下回るような低倍率や2~3度を超える実視界を双眼で得るためには、鏡筒切断などの強攻策を取るか松本式EMSなどの双眼望遠鏡に移行するしかありません。どちらの手段もお手軽とは言い難い解決法ですので、面倒を避けて低倍率、広視界での双眼観望を実現したい人にとってはこうした対空双眼鏡は福音となる存在となるでしょう。

昔宮内BJが登場した時、対空?双眼鏡にこんなにお金掛けてどうするの??とその良さが理解できませんでしたが、当時これを評価していた先人の方々の意識にようやく追いついた気がしますw

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ファインダーは双眼鏡を載せるマルチプレートに同架しています。
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