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国際光器 Fujiyama HD-OR12.5mm(起源考察編) [天文>機材>アイピース]

現行の貴重な国産アッベオルソです。かつて笠井HC-Orが販売終了後まもなく谷オルソも販売終了となり、国産アッベオルソの供給が途絶えたと思われた中で国際光器からこのHD-ORを始め、サイトロン、BORG、タカハシから一斉に似たような国産アッベオルソが発売されましたが、これらは全てマスヤマアイピースで有名な大井光機(http://www.ohi-optical.co.jp/)で製造されたOEM製品と思われます。海外での評判も上々の様子でプアマンズZAO(ツァイス・アッベ・オルソ)との呼び声も高く、個人的にはリーズナブルでゴム見口が無いアイピースが好みなのでこのHD-ORを手に入れてみました。

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HD-OR発売以前は国産のアッベオルソと言えば笠井のHC-Or、そして谷光学研究所の谷オルソが有名でしたが、このHD-ORがどっちの流れを汲むアイピースなのかずっと気になっていました。笠井HC-Orの焦点距離のラインナップは5mm/6mm/7mm/9mm/12mm/18mmとなっており、一方谷オルソのラインナップは4mm/5mm/6mm/7mm/9mm/12.5mm/18mm/25mmと2種類多く、HD-ORのラインナップは谷オルソのラインナップと同一だったので、当初HD-ORは谷オルソのマルチコート版では?と仮説を立てていました。

しかしtwitterのフォロワーのLambdaさんとこの件について情報交換している内に、笠井HC-Orと同じOEMと思われる海外アイピース、University OpticsのHDオルソシリーズ(見た目はほぼHC-Orと同一)に後から4mmと25mmが追加された情報が得られ、これで谷オルソとラインナップがほぼ一緒になった事から焦点距離からHD-ORのルーツを推測する根拠が薄れてしまいました。

ここで手元にあるHC-OrとHD-ORを見比べてみます。

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外観的には多少違いがあり、HD-ORの方がよりコンパクトで、想像以上に上質な造りです。スコープタウンのOrなどは値段の割に見え味が良いと評判ですが外観はやはり安っぽさが感じられるのに対し、HD-ORはHC-Orと同様に品質面でも手を抜いていないように感じられ好感が持てました。何よりバレルから脱落防止溝を廃した判断は賞賛に値します(個人的に)。

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アイレンズの大きさに着目して見比べるとほぼ一緒に見えます。ここでアイレンズを電灯にかざした反射像を見比べてみます。

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こちらがHC-Or、

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こちらがHD-ORで画像の通りコーティングの色こそ異なりますが、5つ見える電灯の反射像の出方がほぼ一緒でした。

HC-Orは笠井の商品説明曰く、「3枚+1枚のクラシックなアッベオルソ設計を忠実に踏襲し」となっており、一方谷オルソはスコープタウンの解説(https://scopetown.co.jp/SHOP/696464/list.html)によれば「正確にはアッベオルソとは相違あります」「アッベの視野レンズの1面について、凸面のところが平面になっています。」となっていますので、この説明を信じるならばHC-Orと谷オルソでは視野レンズの設計が大きく異なっており、HD-ORがもし谷オルソと同じ設計であれば反射像の内一つはHC-Orとは大きく異なるはずと予想していましたが、この結果からHC-OrはHD-ORとほぼ同様の設計で、その光学設計や製造は大井光機が担い、一方谷オルソは光学設計は谷光学によるもので、上記のリンクに書かれているように大井光機からレンズ供給を受けた上で手作りで製造されていたのではないかと推測しています。

そう考えると谷光学が廃業したにも関わらず谷オルソの設計が何故か残ったと考えるよりは、大井光機がHC-Orをリニューアルし、各所への販売を再開させたと考える方がしっくりくる気がします。

海外の評判を見てもHC-Orの系列アイピース(Baader GenuineオルソやUniversity Optics HDオルソ)もかつてプアマンズZAOとの評価を受けており、HD-ORも同様の評価を受けているのもある意味当然なのかも知れません(下手すると光学設計は変わっていないので)。

なので当時HC-Orが販売終了となった時は残念に思ったものですが、実はその設計は今でも生きていたと考えると今度こそ国産アッベオルソが途絶えてしまわないように応援してあげたい気持ちになりました。とは言えHC-Orを既に所有している現状で、中身がほぼ一緒と考えると双眼での見比べ用として2本揃えるかどうか少々悩ましいところです。

勿論この推測は個人的な仮定に基づいたものですのでどこか間違えているかも知れず、業界の方が見たらそんな事も知らなかったの?の一言で済まされそうな内容かも知れませんが、一般人には知る由もない話ですので、自分の中でひとまず答えが導き出せたのはスッキリできて良かったです。



その後2本揃えました