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Carl Zeiss Jena PK20x/w(10)(顕微鏡用接眼レンズ、12.5mm相当) [天文>機材>アイピース]

我が家の個性豊かな顕微鏡用接眼レンズの中でも一際イロモノ感が漂う外観を呈しています。CZJで無ければ手に入れる事を躊躇したレベルかも知れません笑。

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CZJなので伊達や酔狂で接眼レンズは作らないだろうと判断し、入手してみるとバレル径が30mmと言う事もあって、12,5-Oより設計、製造が新しく感じます。アイレンズのコーティングは恐らくシングルかと思うのですがマルチコートを思わせる深みのあるコーティング色をしており、12,5-Oのコーティングよりは明らかに反射が少なく上質に感じます。

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接眼レンズの後端にはレンズユニットが組み込まれており、スマイスレンズの類にも見えます。

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この接眼レンズを分解してみると、アイレンズ、視野レンズ、後端レンズの大きく3つのレンズユニットに分かれ、それぞれを電灯にかざして反射光の数を数えると、3-2-2と言った具合でした。つまりアイレンズは1群2枚の貼り合わせ、視野レンズは凸単レンズ、後端レンズは凹単レンズと言うトータル3群4枚構成ではないかと思われます。

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勿論望遠鏡のアイピースではこの様な構成は見た事も聞いた事もありません。更に面白いのは視野絞りがアイレンズと視野レンズ?の間に存在しますので、負の接眼レンズ(ハイゲンスの改良型?)、と言う事になるのでしょうか。

またこのままの状態ではバレル長が長くて双眼装置の内部に当たってしまう為、バレルに同焦点リングを取り付ける事で奥まで挿し込まれない様に調整しています。

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この様なヘンテコな接眼レンズが果たして星見に使えるのだろうか?と疑心暗鬼になりながら、それ程大きな期待も抱いていなかったのですが、例によってアポ屈折+Mk-V双眼装置で惑星を見てみるとまたもや意外、他のアイピースとの見比べでは木星の模様の解像力やコントラストの高さでは12,5-Oと同等でコーティングの差でトータルではこちらの方がワンランク上、つまり我が家の数多の12mmクラシックアイピースの中でもトップクラスの見え味と判断しました。但し周辺像は幾分悪化し、良像範囲は5割程度と感じましたが、これはアイピースの性能がどうこうと言うより望遠鏡の対物レンズとの相性の問題の様にも思えます。それにも関わらず中心像は抜群に良く見えるのには本当に驚かされます。

自分の中ではアッベオルソやモノセントリックと言った歴史ある優秀な設計がプラネタリーアイピースの完成形、と言う先入観がどうしてもあるので、この様なよく分からない設計の接眼レンズがそれらに比肩、もしくは凌駕するような像を見せてしまうと、設計以外のファクター、例えばレンズの研磨精度や透過率、均質性などと言った製造条件が、アイピースの性能にとってより重要なのだろうかと考えさせられます。

ツァイスともなればその辺りの気配りも抜かりないでしょうが、こうした製品を作ってしまうツァイスの、最善を目指す為には常識や慣習に囚われない柔軟な姿勢、懐の広さを改めて感じさせられた次第です。