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Canon 12x36IS III その2(テレコンでパワーアップ編) [天文>機材>双眼鏡]

Canonの防振双眼鏡の12x36ISの対物レンズ前に同じくCanonの1.6倍のテレコンバーター、TC-DC52Bを装着する事で、19.2倍の防振双眼鏡としてパワーアップさせました。

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双眼鏡での天体観望における防振の効果は絶大で、揺れが止まって微光星が浮き出てくるこの見え方を体感してしまうともう普通の双眼鏡に戻る事は出来ません。個人的にはそれ故に対象天体によってはもう一声倍率が欲しいと感じる事がありより倍率の高い15x50ISや18x50ISにも食指が動く中、Twitterのフォロワーさんが対物レンズ前にテレコンバーターを取り付ける事によって倍率を上げる裏技を紹介されていて(どなたかは失念<(__)>)、試しに12x36ISの前に自作テレコンビノのVCL-1452ビノをかざしてみたところ普通に倍率が上がって見え味も防振性能もほぼそのままでこれはイケる!と感じたもののVCL-1452の外径が大きい為に12x36ISの対物レンズの幅に合わせる事が出来ず、もっと外形が小さいテレコンは無いものかと物色する事になりました。

調べるとCNに防振双眼鏡とテレコンを組み合わせるスレッドが存在し(本当あちらは何でもありますねw)その中でも評価の高かった今回のテレコンに自分も狙いを定めたもののやはりそこはとっくの昔にディスコンになった製品、そう簡単には見つからず、その後一年以上掛かってようやく2本揃える事が出来ました。

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このテレコンを2つ並べた間隔が12X36ISの対物レンズの間隔以内に収まるかが第一の懸念点でしたが、何と共に約70mmのジャストの寸法で冷や冷やしましたが、ある意味理想的と言える組み合わせかも知れません。但し先のCNのスレッドで、テレコンに組み合わせる防振双眼鏡は対物にフィルターネジを装備した10x42LIS、15x50ISと言った機種が主でフィルターネジが存在しない12x36ISに取り付ける話は存在しませんでした。

そこでこの双眼鏡に取り付ける方法を思案した結果、Euro EMCの太陽フィルターの取り付け方法からヒントを得て双眼鏡の対物フードに引っ掛ける方法を考えて色々試した結果、ハクバの52mm径レンズフードの対物側の内径が双眼鏡の対物フード外形とほぼ一致(φ58mm)している事が分かり、双眼鏡側がラバーの分だけ僅かに大きかった事が奏功し、レンズフードを逆向きに対物フードに押し込む事でかなりしっかりと取り付ける事が出来て、ここに52mm径の継手リングを介する事でテレコンを取り付ける事が出来ました。

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テレコンでの倍率強化に於ける注意点として、まず左右の視軸が維持されるのかが心配でしたが、今回の組み合わせでは特に問題ありませんでした。但しより倍率が高くなればズレが許容出来なくなる事も予想されるのでやはり1.5倍前後のものに留めておくのが無難ではないかと思います。また無限遠のピント位置がかなりシフト(後退?)し、近距離でピントを合わせる事が出来なくなりましたのでこれ以上の拡大率のテレコンでは無限遠でもピントが合わない(双眼鏡のピント調整範囲を超える)可能性もあります。またテレコンの焦点距離に個体差がある場合ピントが左右で僅かに違う場合がありますが、これは双眼鏡の視度調整の機能で合わせる事が可能です。

また今回のテレコンの後端レンズの径が双眼鏡の対物レンズよりも小さいので口径がケラれる懸念もありましたが、太陽光(並行光線)を接眼レンズから入射させて、テレコンのレンズ前に白いビニールを張って投影される光束の直径を測定したところ約40mmあり、これより元の36mmより若干口径が拡張されていると思われます。だとすれば当初倍率しか求めていなかった自分的には思わぬ副産物と言ったところです。

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倍率が上がった状態での防振の効き具合ですが、正直なところノーマル状態のボタンを押すとピタッと視野が止まる感覚は薄れ、低倍率の双眼鏡を手持ちした感覚に近い少量の小刻みな振動が残ります。特に地上風景より星見の方がより揺れにシビアでピタッとは止まらないので微光星が浮き上がる効果も薄くなりますが、この状態から防振を解除すると手振れでまともな観望が難しいレベルになりますので、それを手持ちの低倍率双眼鏡レベルまで揺れを抑え込むのですから相変わらず防振の効果は絶大と言えます。

そして倍率が上がる事によって対象の詳細が見えてくるようになり、特に月面観望では絶大な威力を発揮し、ノーマル状態(12x)では全景を眺めると言った趣から、テレコン装着では個々のクレーターの様子が観察出来るレベルになって飽きが来ません。メシエ天体などもノーマル倍率では存在確認レベルだったものが一気に見応えが出てきて言ってみれば双眼鏡から望遠鏡の見え味に近くなる印象です。星像もシャープなままでテレコンを付けた事で悪化する印象もありません。

またこの状態でより快適に星を見るテクニックとして車の屋根などに肘を付いて覗くと更にぐっと振動が減ってノーマル状態の微光星が浮かび上がる感覚がこの倍率でも現れてきます。肘を付いていても防振を切ってしまうと小刻みに揺れてやはりこうはならず、この状態であればじっくりとした天体観望も可能になり、双眼鏡の機動力、自由度の高さと望遠鏡の見え味を両立させた観望機材としての強みが一層増してくる印象です。

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但しこの状態での実視界は3.13度となり導入が難しくなる弱点が出てきますので万人向けとは言い難く、ノーマル状態の方が手持ちで視野が止まる感覚が失われない上限の倍率を設定していると思われる点でやはりバランス、完成度が上と感じますが、一部のマニアの需要に特化した性能を求めるならば今回の様な改造もまたメリットが大きいと考えられ、防振双眼鏡でなくても手持ちの双眼鏡の倍率をもう少し上げたいと思われる方にとっても有用な手段となりえるかも知れません。