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自作 Dollond 12mm(Version.K) [天文>機材>アイピース]

かつてクチュールボール(Couture Ball)なる光学ガラスのボール玉をレンズにしたアイピースが存在し、見掛け視界は10~15度程度と非常に狭いながらも想像以上によく見えたらしく、やはり構成するレンズ枚数が少ないのはアイピースの設計においては大きな強みと感じ、この様な極限的にシンプルなアイピースは他に無いものかと古典アイピースのデザインをネットで眺めていて目に付いたのがこのDollondと言う設計でした。因みにこの方(John Dollond [1706-1761])はラムスデンの義理の父との事です。

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この構成図を見る限り平凸の色消しダブレットのみと言うデザインですので、単純にプローセルを分解して前群のみ利用すれば実現できそうで、これによりレンズ透過による光量損失もプローセルの半分となり、臨界F値はf/15、見掛け視界は20度となっていますが、双眼装置使用(バロー併用)による惑星観望に限定すればこの条件下でも支障なく使用が可能ですので、1群2枚と言う極限に近いレンズ構成を活かした究極の双眼用プラネタリーアイピースができるでは?と期待が高まり、自作できないか考える事になりました。

まずは手持ちのプローセル(セレストロン Omni PL12mm)を分解してみましたがシンメトリカルな設計となっており、アイレンズも視野レンズも見たところ平面です。これが設計を改良したプローセルの場合、曲率を持たせている場合がありますので、今回の目的においては逆にこの様な安価なプローセルを使用した方が良いかも知れません。またこの構成から後群を取り除くと焦点距離は長くなりますので、12mmのDollondを作ろうとなるとより短焦点のプローセルからレンズを調達する必要があります。

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そこで何mmのプローセルが必要かを考えた場合に、シンメトリカルな平凸レンズ2枚をほぼ接する形で12mmの焦点距離を出しているのなら半分の6mmのプローセルを用意すれば良さそうに感じ、中古で入手が容易なところでケンコーのPL6.3mmを入手、後群を取り除き、双眼装置でOmni PL12mmと並べて見比べたところ計算通り(計算など微塵もしていませんが;)ほぼ同倍率となっており、計画実現の可能性が高くなった事から後群のレンズを抜いた事で生じる隙間を埋める為のパイプ状のスペーサーをミスミで調達する事で、割とあっさりとDollond 12mmの自作が完成しました。

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問題の見え味については木星土星をFC-100DLTSA-120ブランカ150SEDなどで覗いてみましたが、第一印象がやはり見掛け視界の狭さで、分かってはいましたが覗いていてかなり窮屈に感じます。それでも双眼装置にBS3xバロー(約3.5x)を組み合わせていますので良像範囲は7~8割程度はあり、300倍でも木星の視直径以上は十分にありますので表面模様の観察に支障はそれ程ありません。解像度は狙い通り良好でよく出来たアイピースとして及第点(Aランク)をあげられる見え味ですが、150SEDの様な光量の多く得られる鏡筒で木星を見るとかなりのフレアが発生して表面模様のコントラストを大きく下げてしまいます。自作する上で迷光対策の類は何もしていないので、その辺りを工夫すればもっと良く見えるアイピースとなるかも知れません。

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他のアイピースより特段優れているかは現時点では分かりませんが、使用条件に上手く合わせれば期待に応える見え味を発揮してくれる事が分かり、古典アイピースの侮れない実力を再認識した次第です。