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Nikon E20x(顕微鏡用接眼レンズ、12.5mm相当) [天文>機材>アイピース]

以前顕微鏡用接眼レンズ(UW20x)のインプレを初めて書きましたが、実は最初に手に入れた顕微鏡用接眼レンズはこっちになります。スペックは「20x/12」で例の計算式では焦点距離12.5mm、見掛け視界は約55度となり、UW20x程ではありませんが、手持ちの12mmクラシックアイピースの中ではかなり広い方です。

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見え味に関しては双眼装置で惑星を見る分には普通(に良く見える)と言ったところですが、特筆すべきは周辺像の歪曲の少なさで、同じ見掛け視界の広さを持つSterlingプローセルの場合、木星が視野の周辺に向かうにつれて形状が楕円に多少歪むのに対し、このE20xに関しては中心像と変わらない見え味、形状のまま視野の外にすっと消えて行く感じで、最周辺でも歪みを感じさせない性能の高さは望遠鏡用アイピースとは一味違うと感じさせるものがありました。

一方少し難ありと感じたのは迷光の出方で、木星を見ると周囲に円形のハロ(ゴースト?)と木星中心から四方八方に伸びる光条が重なって見えるのがかなり目障りに感じ、この迷光が木星表面の模様のコントラストを下げている様に思えましたが、後々この個体をよく見るとアイレンズに微細なキズが多数見受けられ、これが迷光の原因となっている可能性は低くないかも知れません。ただ仮にキズの影響が特に無かったとしても、この程度の迷光を発する望遠鏡用アイピースも無くはないです。

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これまでの自分の考えではクラシックアイピースで見掛け視界を広く取ろうとすると周辺像に何かしら無理が生じ、もしプローセル系ならアイレリーフも短くなる印象でしたので、このアイピースの周辺像の良さと覗き易さはどこから来ているのだろうかと気になり、LE12.5mmのインプレでも書いたように、顕微鏡の光学用語にプランと言う単語がよく見受けられるので、3群5枚のアストロプランに近い設計(この場合ただのプラン?)か、もしくはこの接眼レンズも90年代頃の製品らしく、ニコンOを最後にニコンのアイピースが天文ガイドから一時消え去った前後の時期でしたので、ニコンOの設計を引き継ぐプローセルの更なる改良型かも知れないと推察し、中身を見てみたい欲望に駆られ、キズも見受けられる個体だった事から思い切って分解する事にしました。

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ここで文字通り蓋を開けてびっくり、プローセルでもアストロプランでも無い、2群3枚のケーニヒに近い設計で、ケーニヒは一般的に視野レンズは凹面なのに対し、この接眼レンズは僅かに凸面となっており、前群の2枚貼り合わせレンズの内部もよく分からないので、ケーニヒに準ずる設計かどうかも定かではありません。

前群後群
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見掛け視界が広くて周辺像も良い設計となるとレンズ枚数が多くなるだろうと考えていた(実際見掛け視界の広いケーニヒの改良型はアイレンズを1枚増やした3群4枚の設計が多いと思われます)自分の固定観念が打ち砕かれた思いで、2群3枚でこれだけの性能を実現するニコンすごくない?と良い意味で期待を裏切ってくれた、自分には分からない事がまだまだまだまだ多いと実感させられた結果となりました。

惑星しか見ていないので分かりませんが、2群3枚となるとヌケの良さも期待でき、仮に望遠鏡用アイピースに迷光処理の点で一歩劣っていたとしても、惑星の様な光量の多い天体でなければこのデメリットも目立つ事も無く、この見掛け視界の広さと周辺像の良さを活かしたDSO観望などで威力を発揮する接眼レンズかも知れないと感じました。

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ニコン製で日本製ながら中古相場はそれ程高くなく(これが分解に踏み切った最大の理由)、比較的手の届き易い接眼レンズだと思いますので顕微鏡用接眼レンズがどんなものか興味ある方にはオススメできる一本かも知れません。