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ビクセン カスタム60Lオフセット双眼望遠鏡 [天文>機材>望遠鏡]

オフセット双眼望遠鏡構築における特有の課題の一つとして下側鏡筒のバックフォーカスを如何に引き出すかが挙げられ、バックフォーカスが足りない場合は鏡筒切断などによる短縮改造が必要になる事もありますが、今回はバローレンズで焦点を引き出す事により、鏡筒改造無しのオフセット双眼望遠鏡の構築に挑んでみました。

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この場合バローを常用する事により低倍率は出し難いBINOとなりますが、今回は惑星観望用の高倍率専用機として割り切る事でデメリットを感じさせないBINOに仕上げました。鏡筒の選定は当初高倍率適性の高い小口径アポ屈折も検討していましたが、かねてより長焦点アクロの高倍率性能も確認してみたかった事もあり、ベランダで運用が可能な長さとしてスペックは6cmF15程度、また余りに古い鏡筒は避けたかった事と比較的程度の良い中古が安価に出回っていた点も勘案して(個人的には見た目もカッコイイと思える)ビクセンCUSTOM-60L(口径60mm、焦点距離910mm)に今回白羽の矢を立てました。

バックフォーカス引き出しに使用したバローレンズは笠井のBS双眼装置用の1.6xエクステンダーでこれをダイアゴナル先端(+延長筒)に装着、M42の延長筒を間に入れる事により拡大率を約2.2倍、12mmアイピースを使用した時に有効最高倍率付近(約167倍)となるように調整しています。

また今回のBINOのもう一つの構築目的は裏像ではない惑星観望を可能とする事で、高倍率に耐える裏像にならないダイアゴナルとして笠井の31.7mmDXペンタプリズムを採用し、これまで自分の惑星観望では定番のアポ屈折単筒に天頂ミラー+双眼装置と言った組み合わせでは裏像を許容するしかありませんでしたが、このBINOの構築で我が家の惑星観望用機材としては唯一裏像とはならない(倒立像)双眼観望を可能とさせました。

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今回BINOの特徴としては下段鏡筒からファインダー支持リングを介して上段鏡筒を支持する事で、ファインダー調整と同じ要領で視軸調整を可能としている点で、これはかつて自作したGuideFinder50-BINOで用いた手法ですが、高倍率での視軸調整は少し慣れは必要ですが微動雲台などを使用する方法に比べて調整機構が極めて簡素で軽量に仕上がる部分が大きなメリットと考えています。目幅調整はFL90S-BINOと同様に下側ダイアゴナルの傾斜で対応していますがやはり個人的に問題は感じません。これらの簡素な機構の積極的な採用によって重量は約3.5kgと10cmアポ単筒(102EDPの場合約4.7kg)よりも軽量に仕上がっています。

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見え味は月を見ても色収差を殆ど感じず、木星や土星も非常にシャープ(参考までのデジタルスケッチはこちら)でアポと遜色が無い印象、長焦点アクロの高倍率性能の高さを味わうには十分な見え味で、初心者向けの望遠鏡としてこれだけの性能が出ていれば十分良心的な鏡筒と感じました。また裏像ではない事で月面観望においてガイドブックに掲載されている地形との照合が容易(と言うか裏像では困難)な部分はやはり大きなメリットと感じます。

とは言え口径6cmの鏡筒なので出せる倍率は木星で180倍位までと言う印象で、FL-90Sでは最高250倍程度まで使える事を考えると見え味を点数化するならFL-90Sを61点、BLANCA-70EDTを54点とするなら53~55点位かなと感じました。また小口径BINOの利点として冬季の温度順応が早い事が挙げられ、9cm単筒と6cm双眼で比較しても双眼の方が別々に冷えていくので温度順応が早く、素早く観測体制に入れるのもこのBINOならではのメリットとなっています。

昔の自分は高倍率の惑星観望用途としてアクロ鏡筒の使用は正直アウトオブ眼中なところがありましたがCZJのC50/540を覗いた時から認識が変わり、これだけの長焦点鏡筒を用いれば十分高倍率での惑星観望にも耐えるだろう事は予想は付きましたがやはり期待通りの見え味でコストパフォーマンスはとても高いと感じられ、入門機として今も昔も長焦点アクロが定番なのは極めて合理的であると再認識した次第です。