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APM 120mmSA対空双眼鏡 [天文>機材>双眼鏡]

FL90S-BINOの構築に伴い口径が近いので手放したAPM10cmセミアポ対空双眼鏡でしたが、こうなるとR200SS-BINOを含めた上位口径のBINOが裏像双眼のみとなってしまった事で、この間の口径で正立双眼が出来る機材が欲しくなり、結果としてAPMの対空双眼鏡が口径アップして戻ってくる事となりました。

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実はSE120双眼やC6双眼の自作などもかなり検討していましたが、自作BINOは運用面で制約や面倒が生じる事も多く、対空双眼鏡の扱い易さは10cmで身に染みて感じていた事もあり、今回は自作は避けて完成品のお世話になる事にしました。

実物をチェックした感想は、まずアイピース交換式の初期の90度対空双眼鏡は口径がケラれているとの評判を聞いた事があり、今の製品ではそんな事は無いだろうと思いつつも気になるポイントでしたがルーペで射出瞳径を測定したところ計算通りで全くの杞憂でした。

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次に接眼部ですが前の10cmでは接眼側の開口径が幾分絞られており、長焦点広角のアイピースではケラれる心配ありましたが、今回はアメリカンサイズ目一杯の開口径があり、自由にアイピースの選択が出来るようになりました。

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今回はアイピース固定の締め付けリングの上端がアイピース当たり面まで来ている事でリングがアイピースの脱落防止溝に入らない設計となっており、10cmの時はリングが溝に入らない様に一工夫する必要もありましたが、今回はその心配も不要となりました。

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一般的にアイピース交換式の対空双眼鏡はバックフォーカスが短く、10cmの頃はピントが出ないアイピースも結構ありましたが、この点に於いても今回の双眼鏡は10cmでは結構ぎりぎりだったXW20SSW14mmなども余裕を持って合焦し、ピントに余裕がある設計に改善されていると感じました。

三脚台座には2箇所の1/4インチカメラネジ間に3/8インチネジが切られており(合計3箇所)、ここには予めアダプターが仕込まれていて1/4インチネジとしても使用可能になっています。ここにアリガタとしてBORGのVプレート125【3125】を取り付けています。

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架台はTマウント経緯台いつものL字プレートを装着しアリガタアリミゾで双眼鏡を着脱するシステムとしましたが強度的な問題はありません。ただ写真では使用していませんが実際の観望では転倒防止の為にカウンターウエイトを装着した方が安心出来るでしょう。また取っ手の部分には付属スポットファインダー取り付け用のネジ穴が2箇所設けられていましたのでここに汎用のファインダーアリミゾをやや強引ですが装着しています。

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視軸に関しては同梱されていた品質保証書?に何mmのアイピースを使って何倍までOKだったかのテスト結果が記載がされており(具体的な数値は伏せます)、自分がこの双眼鏡で使用を想定していた最高倍率(XWA9mm使用で73倍)は余裕を持ってクリアされており、実視でも全く問題はありませんでした。

見え味に関してはまず地上風景を見ると色収差が割と盛大に出ていて、セミアポを称するこの双眼鏡ですが正直何処にアポの要素があるのか分からない印象ですが、像自体はシャープに結像しており球面収差は悪くなさそうな印象です。下の写真はHD-OR12.5mm使用(52.8倍)でスマホでコリメート撮影したものです。

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色収差に関してもこの程度でしたら大口径短焦点アクロマートと考えれば普通ですし、APMの対空双眼鏡にはSDレンズを使用したモデルも販売されていますが、自分的には対空双眼鏡は構造上高倍率は向かない機材の認識でしたので、中低倍率での天体観望が前提であればセミアポ仕様が価格と性能のバランスが取れている様にも感じるところです。

天体の見え味に関してはSQM値21程度の空でM51、M81、M82、M87、マルカリアンチェーン、M22、M28辺りを見た印象では銀河や球状星団は光量のあるR200SS-BINOの方がやはり良く見えますが、網状星雲、M17、M16、M8、M20、M27、らせん状辺りをOIIIやUHCを付けて見ると写真の(を薄くした)様にも見え、Hβを使えばカリフォルニア星雲も視認できる程で、R200SS-BINOが銀河に特化したギャラクシービノとするならば、こちらは屈折のコントラストの高さを活かした散光星雲、惑星状星雲に滅法強いネビュラービノと言った趣かも知れません。

またR200SS-BINOやFL90S-BINOは裏像での観望となるのに対してこの対空双眼鏡では正立像で観望出来る点も大きく期待していた部分でしたが、天体導入においてはファインダーもメイン鏡筒も正立である事で星図との見比べによる視野内の天体の同定が格段に楽で、特徴的で豊かな形状の多い散光星雲は写真で形状が予め脳内にインプットされているものも少なくない事から、実物を見た時の違和感を感じない点もやはり大きなメリットと感じます。

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使用アイピースはXWA9mm(倍率73.3倍、実視界1.36度)、SSW14mm(47.1倍、1.76度)、XW20(33倍、2.12度)辺りがメインで、以前45度の対空双眼鏡では仰角を上げた状態でのアイピースの交換は下に落ちてくるアイピースを押さえつけながら固定する必要があり若干ストレスでしたが、今回90度対空では落下の心配は無く、やはり地上風景を少しでも見るのであれば45度対空(+EDレンズ)の意義がありますが、天体観望専用であれば90度対空が選択として妥当と感じました。

重量は公称9.6kgと10cm(6.4kg)から3kg重くなった程度ですが、持ち上げるのには両手が必要になったり体感では倍以上重くなった印象で、架台もAPポルタでは扱えない点など手軽な機材とは言えなくなったのが少し残念なところですが、12cm口径の屈折双眼と考えれば非常にコンパクトにまとまっていると感じられ、パーツの組み上げや調整が必要な自作のBINOと比べるとセッティングや撤収、運搬などの面で手間が掛からずとにかく扱いが楽と言うのが強く実感するところです。

収納に関しては以前R200SS用に購入したOptics Asiaの30インチケースがこの双眼鏡にもジャストサイズでした。このケースは中を縦に2列に仕切って望遠鏡や三脚を並べて収納する事が想定されており、それぞれの列の機材を固定するベルトが配置されているのですが、これがこの双眼鏡を収納する場合にも左右の鏡筒をそれぞれ固定してケースの中で動かないようにする役目を果たしています。

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全体として以前の10cmと比べるとあらゆる点で改良が施されており、非常に完成度が高い、洗練された機材に仕上がっていると感じました。双眼望遠鏡を自作するのも愛着が湧いて良いものですが、やはり完成品の対空双眼鏡は面倒が無く、双眼望遠鏡の自作は存外お金が掛かる事を考えると割安で手に入れる事が可能で、この様な製品が市販されている事はとてもユーザーにとって有難い事だと思います。