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Mk-V双眼装置用バローレンズの拡大率測定 その2 [天文>機材>バローレンズ]

これまでMk-V双眼装置用のバローの装着は31.7mm径のノーズピース先端に取り付けて、これにTVの2インチ→31.7mm変換アダプターを付ける事で2インチ接眼部に取り付けていたのですが、このアダプターによる光路消費を失くす為、双眼装置本体には2インチノーズピースを取り付けその先端に2インチフィルターネジを31.7mm径フィルターネジに変換するアダプターを取り付け、これにバローを装着する事でより少ない光路消費で使えるようになりました。

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バローの装着方法が変わった事により、バローとアイピースの間隔が以前と変わってしまった可能性があり、またバローの種類も以前より増えた事から各バローの拡大率を再測定する事にしました。

方法は前回同様、壁に貼り付けた方眼紙を望遠鏡で覗いて目盛りを読む事で算出しました。使用鏡筒はブランカ70EDT、アイピースはセレストロンのOmni PL12mmです。

<<バロー無し(等倍)>>
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視野の直径は約33.5mm

<<笠井 BS双眼装置用1.6xバロー>>
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直径は約19.4mm。よって拡大率は33.5/19.4=約1.73倍
実は手持ちの屈折鏡筒ではこのバローではピントが出ないので出番は少ないです。

<<笠井 BS双眼装置用2xバロー>>
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直径は約15.2mm。よって拡大率は33.5/15.2=約2.20倍
12mmアイピースで観望していて、シーイングが余り良くなくて倍率を下げたい時に重宝しています。

<<ミード 2xバロー(日本製)>>
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直径は約10.2mm。よって拡大率は33.5/10.2=約3.28倍
12mmアイピース使用で、気流がまずまず良好な時に出番が多いバローです。

<<ビクセン2xショートバロー>>
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直径は約9.6mm。よって拡大率は33.5/9.6=約3.49倍
ミード2xと笠井3xとの間でやや出番が少ないです。

<<笠井 BS双眼装置用3xバロー>>
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直径は約9.3mm。よって拡大率は33.5/9.3=約3.60倍
12mmアイピース使用でシーイングが良好と感じる時に使います。
1.6xバローや2xバローもそうですが、やはりBS双眼装置に付けるよりは拡大率は上がるようです。

<<バーダーハイペリオンズーム用2.25倍バロー>>
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直径は約8.0mm。よって拡大率は33.5/8.0=約4.19倍
12mmアイピースとの組み合わせではFの長いFC150SEDではやや過剰倍率となりますが、TSAを使う時は丁度良い高倍率になります。

<<ヤフオク購入中華3倍ショートバロー>>
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直径は約5.6mm。よって拡大率は33.5/5.6=約5.98倍
ブランカ70EDTなど短焦点鏡筒で強拡大したい時に重宝します。
他の鏡筒でも思い切った高倍率を出したい時にも使います。

高い倍率を出せるバローは充実してきましたが、まだ笠井2xバローとミード2xバローの中間、拡大率2.7倍程度となるようなバローが欲しいですので、まだ暫くバロー探しの旅は続きそうです。

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APM UF30mm(+マスヤマ32mmとの比較編) [天文>機材>アイピース]

ミニボーグ50-BINOの低倍率用アイピースとして焦点距離30mm前後の広角アイピースが欲しくなり、最終的にチョイスしたのがAPMのフラットフィールド性能を売りにしたこのアイピースでした。

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当初真っ先に候補に挙がったのが大井光機のMasuyama32mm/85°で、2インチのほぼ最大視野を確保できるこのアイピースであれば、ミニボーグ50との組み合わせであれば口径50mmで7.8倍、実視界10.88度の広視界が得られるのが何より魅力的でしたが、やはり懸念したのは周辺像の崩れ具合でした。

一方UFシリーズはUF15mmを使っていて周辺像の崩れの少なさは評価できるものがありましたので、その延長上のUF30mmに関しても期待が出来る一方、見掛け視界が70度となっているのでミニボーグ50との組み合わせでは8.3倍で実視界が8.4度となり、マスヤマ32mmよりかなり狭くなります。

ただここで気になったのがAPMのHPに掲載されている、UF30mmのスペック表です。

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これを見ると見掛け視界(Field of view)が75度となっており、何故この様な本体表記との食い違いが生じているのか分かりませんが、もし本当は75度で周辺まで良像であれば、良像範囲の絶対的な広さにおいてはマスヤマを凌駕する可能性も出てきます。

どちらにすべきかあれこれ考えましたが、周辺像の崩れ具合がどの程度生じるのか、またその生じた崩れに対して自分的にどの程度許容できるのか、これに関しては実際に覗いてみない事にはいくらスペックを眺めていても分かる事はありませんので、悩んだ挙句両方手に入れてしまったのでした。

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まず気になっていたUFの見掛け視界に関してはXWを一回り上回る程度で72、3度と言ったところでしょうか。ここで顕微鏡用接眼レンズの視野数から見掛け視界を算出する式を用いて、視野数=視野環径ですので、上のUFのスペック表から視野環径(Field stop)が38mmとなっている事から、38/30×180/π=72.57度と算出されますので、見た目の広さと合致しており、75度は無かったとしても70度はやはり超えていた事で少し得をした気分になれました。

コーティング色がマスヤマが赤茶系、UFが黄緑系で共にアイレンズは大きめですがブラックアウトするような事も無くどちらも覗き易い印象です。特にUFのアイカップの長さが絶妙で効果的に外からの迷光を遮断してくれます。

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バレル側から覗いてみるとUFの方がレンズが詰まっている事が分かり、重さは実測でマスヤマが437gで、UFが542gとかなりずっしりとした重さがあります。

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肝心の見え味についての比較ですが、ミニボーグ50(250mmF5)との組み合わせではマスヤマの良像範囲は6割、UFの方は9割と言ったところでやはり周辺像の補正に関してはUFが圧倒的に優れています。しかし良像範囲内の見え味を比べるとレンズ枚数が5枚のマスヤマは9枚のUFと比べるとやはりヌケが良く、微光星の見え方に若干の差があります。また昼の景色を見比べた場合はUFはやや黄色掛かっており、マスヤマはすっきりした見え味で透明感に優れた印象です。

サイドバイサイドで見比べる程お互いの長所短所がはっきりと認識できて、これはどちらが優秀と言うよりは設計コンセプトの違い、好みの問題の様に思えてきました。

UFは多少像質を落としてでも(と言っても声高に言う程悪い訳ではありません)とにかく周辺像の補正を優先させた設計で、他に周辺像が優れている30mmクラスの広角アイピースとなるとペンタXW30やナグラー31mmなどがありますが、これらが双眼ではとても使えない様な太い鏡胴となってしまうのに対して、双眼で使える太さの制約の中で有効最低倍率に近くなるF5対物との組み合わせにおいても周辺像を崩さずに、できるだけ広い視界を確保する事を目標にした設計のように思われ、72~73度と言う中途半端な見掛け視界もそのぎりぎりを攻めた結果だと考えれば合点がいく気がします。

個人的にはその割り切った姿勢に好感が持てて、双眼で使う前提だった事もあって今回はマスヤマではなくUFを選んだ次第ですが、よりFの長い対物との組み合わせで周辺像の崩れが少なくなるのであれば、恐らく淡い星雲などの検出ではより優れると思われるマスヤマを選択する可能性も大いにありました。ただ実際にミニボーグ50双眼でUFを覗いてみるとやはり個人的には周辺像の崩れが少ない方が星見に集中できて好みです。

UF30mmと近いスペックで似たようなコンセプトを持つアイピースとしてバーダーハイペリオンアスフェリック31mmがあった事を後から思い出しましたが、機会があればこれも見比べてみたいものです。

ビクセン APP-TL130三脚 [天文>機材>架台]

APZポルタGP2GPXAZ-3と言った架台をこれまでSXG-HAL130三脚一本を使い回して運用してきましたが、APZポルタをもっと気軽に出せる機材にしたいと思い、以前から評判が良く気になっていたこの三脚を手に入れてみました。

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実物を手にしてみるとやはり評判が良い理由が分かります。HAL三脚より相当軽く、それでいて強度はそれ程変わらないようにも感じます。実際APZポルタを取り付け、TSAを載せて高倍率での揺れ具合を比較してみましたが、揺れが収まる時間に殆ど違いはありませんでした。

HAL三脚との大きな違いがセンターポールの存在で、この為三脚開き止めの上にアクセサリートレイなどを置く事ができませんが、センターポールと開き止めが連結しており、この接続をロックできる事から、架頭→センターポール→開き止め→脚の三角構造が内部で形成され、各部のグラつきが抑制される非常に安定した構造となっています。また脚の付け根や開き止めと脚の接続部分がHAL三脚の様にガシャガシャグラグラ動かないのも安定感を生み出している大きな要因と思います。

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また任意の位置(開脚度)でセンターポールと開き止めをロックできる構造になっているので、脚を全開に開かなくても安定を確保でき、個人的にはベランダなど狭い場所で脚を少し狭く開いて使いたい場合で重宝しています。また脚を開脚したり畳む時もセンターポールを介して3本同時に開閉動作するので設置、撤収がスムーズに行えるのもこの構造の利点だと思います。

脚は三段の伸縮式ですが、ロック方式がレバー式なのもロックの状態が見た目や感触で分かり易く、個人的にはこちらが好みです。TG-S経緯台はナット式でしたが、観望会などで少し慌てて設置した際に、ロックしたつもりが完全に締まっておらず、観望中に脚が縮んで丸ごと倒れた事がありましたので、あまり好みではありません。

一点気をつける点はビクセンの架台は三脚取付部の形状がSX規格(φ45mm)のものと旧GP規格(φ60mm)のものがありますが、SX規格の三脚に旧GP規格の架台を取り付けるアダプター(GP60→45AD)を取り付ける事ができない構造となっている(アダプターを装着するには架台取り付けネジを長いものに取り替える必要がある)為、旧GP規格の架台を載せる事ができないのが個人的には少々残念ですが、今となってはそれ程困る事はないでしょう。

重量、使い勝手、性能のバランスが総じて良く、価格もリーズナブルですので誰にでも薦められる三脚だと感じました。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

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Nikon E20x(顕微鏡用接眼レンズ、12.5mm相当) [天文>機材>アイピース]

以前顕微鏡用接眼レンズ(UW20x)のインプレを初めて書きましたが、実は最初に手に入れた顕微鏡用接眼レンズはこっちになります。スペックは「20x/12」で例の計算式では焦点距離12.5mm、見掛け視界は約55度となり、UW20x程ではありませんが、手持ちの12mmクラシックアイピースの中ではかなり広い方です。

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見え味に関しては双眼装置で惑星を見る分には普通(に良く見える)と言ったところですが、特筆すべきは周辺像の歪曲の少なさで、同じ見掛け視界の広さを持つSterlingプローセルの場合、木星が視野の周辺に向かうにつれて形状が楕円に多少歪むのに対し、このE20xに関しては中心像と変わらない見え味、形状のまま視野の外にすっと消えて行く感じで、最周辺でも歪みを感じさせない性能の高さは望遠鏡用アイピースとは一味違うと感じさせるものがありました。

一方少し難ありと感じたのは迷光の出方で、木星を見ると周囲に円形のハロ(ゴースト?)と木星中心から四方八方に伸びる光条が重なって見えるのがかなり目障りに感じ、この迷光が木星表面の模様のコントラストを下げている様に思えましたが、後々この個体をよく見るとアイレンズに微細なキズが多数見受けられ、これが迷光の原因となっている可能性は低くないかも知れません。ただ仮にキズの影響が特に無かったとしても、この程度の迷光を発する望遠鏡用アイピースも無くはないです。

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これまでの自分の考えではクラシックアイピースで見掛け視界を広く取ろうとすると周辺像に何かしら無理が生じ、もしプローセル系ならアイレリーフも短くなる印象でしたので、このアイピースの周辺像の良さと覗き易さはどこから来ているのだろうかと気になり、LE12.5mmのインプレでも書いたように、顕微鏡の光学用語にプランと言う単語がよく見受けられるので、3群5枚のアストロプランに近い設計(この場合ただのプラン?)か、もしくはこの接眼レンズも90年代頃の製品らしく、ニコンOを最後にニコンのアイピースが天文ガイドから一時消え去った前後の時期でしたので、ニコンOの設計を引き継ぐプローセルの更なる改良型かも知れないと推察し、中身を見てみたい欲望に駆られ、キズも見受けられる個体だった事から思い切って分解する事にしました。

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ここで文字通り蓋を開けてびっくり、プローセルでもアストロプランでも無い、2群3枚のケーニヒに近い設計で、ケーニヒは一般的に視野レンズは凹面なのに対し、この接眼レンズは僅かに凸面となっており、前群の2枚貼り合わせレンズの内部もよく分からないので、ケーニヒに準ずる設計かどうかも定かではありません。

前群後群
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見掛け視界が広くて周辺像も良い設計となるとレンズ枚数が多くなるだろうと考えていた(実際見掛け視界の広いケーニヒの改良型はアイレンズを1枚増やした3群4枚の設計が多いと思われます)自分の固定観念が打ち砕かれた思いで、2群3枚でこれだけの性能を実現するニコンすごくない?と良い意味で期待を裏切ってくれた、自分には分からない事がまだまだまだまだ多いと実感させられた結果となりました。

惑星しか見ていないので分かりませんが、2群3枚となるとヌケの良さも期待でき、仮に望遠鏡用アイピースに迷光処理の点で一歩劣っていたとしても、惑星の様な光量の多い天体でなければこのデメリットも目立つ事も無く、この見掛け視界の広さと周辺像の良さを活かしたDSO観望などで威力を発揮する接眼レンズかも知れないと感じました。

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ニコン製で日本製ながら中古相場はそれ程高くなく(これが分解に踏み切った最大の理由)、比較的手の届き易い接眼レンズだと思いますので顕微鏡用接眼レンズがどんなものか興味ある方にはオススメできる一本かも知れません。

タカハシ LE12.5mm [天文>機材>アイピース]

LEシリーズはLE50mmが1989年に発売されて以来、国産アイピースの中でも異例のロングセラー製品となっています。焦点距離ラインナップは5mm/7.5mm/10mm/12.5mm/18mm/24mm/30mm/40mm/50mm、これに超短焦点のHi-LE2.8mm、Hi-LE3.6mmが後に加わり豊富なラインナップとなっています。

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LEとはロングアイレリーフの意味らしく、その為か短焦点のLE5mm、7.5mmはスマイスレンズ入りの設計となっています。これより長焦点は3群5枚の所謂アストロプラン、もしくはその改良型と言える設計かも知れません。

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国産のアストロプラン設計のアイピースと言えば笠井APが個人的に馴染みでしたが、焦点距離ラインナップは5mm/7.5mm/10mm/12.5mm/15mm/20mmとなっており、LEと比較すると5mm、7.5mmはスマイスレンズは内蔵されておらず、LEには15mmや20mmの焦点距離は存在せず、アイレリーフや見掛け視界、アイレンズの大きさも異なる(LE:約12mm、AP:約13mm)ので別の設計と自分は見ています。

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ところで最近顕微鏡用接眼レンズに手を出した事で顕微鏡の仕組みについて色々調べたところ、Plan/プランと呼ばれる単語がよく目に付き、これはドイツ語で「平面」の意味が語源とされ、顕微鏡光学系においては像面湾曲や非点収差などの周辺像が補正された設計を指すらしく、例えば顕微鏡の対物レンズにはプランアクロマート、プランアポクロマートと言った種類が存在します。

よって天体向けのアストロプランやプラノキュラー(Planokular)と言ったアイピースは天文向けのPlan接眼レンズ、平坦なアイピースと言った意味合いが込められているのではと推察します。

3群5枚とアッベオルソやプローセルに比べてレンズが1枚多いアストロプラン設計の長所が個人的に今一つ分からないところがありましたが、アッベオルソは見掛け視界45度未満のものが多いのに比べると見掛け視界が多少広く、同様の見掛け視界を持つプローセルと比較した場合には周辺像の補正に優れており、更にアイレリーフも長いとするならば、アストロプラン設計の特徴、長所が見えてくる気がします。

95年頃の天文ガイドを見るとLEシリーズの広告に、

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と書かれており、タカハシの最新のカタログ(2020年度)のLEシリーズの説明にも「52°の視野の周辺まで星像が崩れにくいスタンダードなアイピース」と記されています。

室内環境で以下のアイピース、

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アイピース名アイレリーフ見掛け視界
タカハシ LE12.5mm 9mm 52度
笠井 AP12.5mm 10.6mm 50度
Meade SP12.4mm 8mm 52度

APは同じ日本製のアストロプラン設計と言う事と、SPは同じ見掛け視界を持つ日本製プローセルと言う事で周辺像に着目して見比べたところ(鏡筒はブランカ70EDT)、LEとAPの良像範囲は9割程度に対してSPは8割程度で歪曲も比較的大きい印象で、まずまず推測通りと言ったところでしょうか。

中心像に関しては良く出来たアイピースの標準と言ったところですが、扱い易く性能のバランスの取れたシリーズで、自分もアイピースを見比べする時に良し悪しの基準にする事も多いアイピースです。

タカハシ TSA-120 その2(2代目導入編) [天文>機材>望遠鏡]

ブランカ150SED購入資金として旅立って行ったTSA-120でしたが、自分は大抵機材を手放しても後でそれで困ったと感じる事は余り無いのですが、あの見え味、扱い易さを両立させたあの鏡筒に関しては手放すべきでは無かったとの想いが日に日に募っていった結果、ライトブルー鏡筒と言う比較的新しい固体で状態が良さそうながら中古で比較的安価で出されているこの鏡筒を見つけてしまい、耐え切れずに手に入れてしまったのでした。

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TSAの再入手を考えた時に、より安価に同等の見え味が得られそうな鏡筒として、笠井ブランカ125SED、タカハシμ180C、スカイウォッチャーBKMAK180などが有力候補に挙がっていましたが、TSAに比肩する見え味との噂もある125SEDに関しては鏡筒のサイズがTSAより若干大きいのが気になった事、18cmカセグレンに関しては性能の出し易さに関して少し気難しいところがあるかも知れない懸念から、何と言っても以前所有していてその実力が十分に分かっている手堅さを優先させました。

手持ち鏡筒の大きさを比較比較するとFCとTSAと150SEDで鏡筒径が95mm→125mm→156mm、重量では約4kg→約7kg→約11kgとFCと150SEDの中間を埋めるにはこれ以上無い鏡筒と言えるかも知れません。以下の写真は上からBLANCA-150SED→TSA-120→FC-100DLBLANCA-70EDTとなってます。

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鏡筒バンドは今回はMoreBlueのものにしてみましたがとても良い感じです。丁度良いバンド幅、軽さ、デザイン性など洗練されたものを感じます。キャリーハンドルの選定も悩みましたが、この鏡筒の重心が前側の鏡筒バンド付近に来る為、この上に手の引っ掛かりがあれば持ち手として十分機能する判断からビクセンのキャリーハンドルに回帰、但しネジ一点止めのハンドルだと回転してしまうのでそれを防ぐ為にハンドルとバンドの間にミスミで注文した金属製のプレートを挟み込む事で対策しています。

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久々に見る惑星の見え味は本当に流石ですが、やはり扱い易さとのバランスの良さが最高です(個人的に)。高倍率の惑星の見え味に点数を付けるなら、FCと150SEDの中間より150SED寄りになると思います。再入手して良く出来た10cmアポの見え味を安定的に上回ると言う事実が如何に凄いかを再認識した次第で、今回は中古購入でしたが見え味は先代と微塵も変わっておらず、ここまでの見え味の性能を安定供給できるタカハシの生産体制も流石だと改めて感じざるを得ませんでした。

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架台に関しては以前は最低でもGP2以上は無いときついと思い込み、APZポルタに載せようと考えた事が無かったのですが、今回試しに載せてみたところびっくり、思ったより普通に使える事が分かり、この架台で使えるとなると格段に機動性が上がりますので、今後は前回以上に活躍させてあげようと思いを新たにした次第です。

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Nikon UW20x(顕微鏡用接眼レンズ、12.5mm相当) [天文>機材>アイピース]

顕微鏡用の接眼レンズを望遠鏡用として流用すると意外に性能が良いと言う話はこれまで耳にした事があったもののこれまで特に食指が動く事は無かったのですが、20倍の顕微鏡用アイピースが焦点距離が12.5mm相当と聞いて俄然興味が湧いて少し調べる事にしました。

顕微鏡用接眼レンズには本体に例えば「10x/22」と言ったスペックが表記されている事が多く、左側の数値は倍率を示し、右側の数値は視野の広さを示す視野数と呼ばれる性能値が書かれています。

これは望遠鏡用のアイピースとして考えた場合何を意味するかと言えば、まず顕微鏡の世界では明視距離(物体をはっきりと見易い距離)を250mmとする決まり事があり、よって物体を10倍の倍率で見る接眼レンズの焦点距離は25mmとなり、20倍であれば12.5mm、30倍なら約8.3mmと言った具合に250mmを倍率で割る事で焦点距離に変換できます。

また視野数に関しては、これはアイピースの視野絞りの直径(視野環径)をmmで表した数値で、以下の数式、

[実視界]=[視野環径] ÷ [望遠鏡の焦点距離] × 180/π ・・・①

[実視界]=[見掛け視界] ÷ [倍率]
[実視界]=[見掛け視界] ÷ [望遠鏡の焦点距離]/[アイピースの焦点距離] ・・・②

この2式から、

[見掛け視界]=[視野環径] ÷ [アイピースの焦点距離] × 180/π

と導けますので、視野数、即ち視野環径が22であれば倍率10倍(焦点距離=25mm)の場合、見掛け視界は約50.42度、大体見掛け視界50度のアイピースと算出できます。

今回顕微鏡接眼レンズを選定するに当たり、ebayで出品されている数多の中古品から絞り込んだ条件は、冒頭に書いた通り倍率は20倍のもので、メーカーは有名どころでZeiss、ニコン、オリンパス辺りから選びたいと考え、当初Zeissの顕微鏡接眼レンズを調べましたが殆どが10倍のもので、20倍の接眼レンズを殆ど見つける事ができず断念、次にニコンを調べてみると幾つか候補が見つかりましたが、20倍の接眼レンズはバローが内蔵されていると思しきものや、アイレンズが12.5mmにしては不自然に大きいものが目立ち、こうした接眼レンズはハイアイや広角を目指した現代風の設計の可能性があり、自分が求めるのは惑星観望用にレンズ枚数が少ない、クラシックな設計のアイピースでしたので、商品画像を吟味してバローを内蔵して無さそうなもの、アイレンズの大きさが12mmのクラシックアイピースとして妥当なもの、そして日本製と思われるものに限定して物色し、その中で特に面白そうに感じたのが今回の接眼レンズでした。

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顕微鏡用接眼レンズは望遠鏡用アイピースに比べるとネット上での情報開示に乏しく、この接眼レンズがどのような設計かなど詳しい情報は得られませんでしたが、販売年代は1990年代とされている情報をかろうじて見つける事ができました。この接眼レンズのスペック表記は「20x/15」となっており、先述の式から算出すると焦点距離が12.5mmで見掛け視界が約69度となります。もしこの接眼レンズの設計がクラシックなものであった場合、見掛け視界69度となると望遠鏡用アイピースでもあまり類を見ないかなり広角な部類に入り、このクラスの焦点距離でここまでの広角を実現しているクラシックアイピース(の改良型)となると他にはユニトロンのワイドスキャン笠井のEWV、復刻版Masuyama位しか思い浮かばず、こんな接眼レンズをニコンが作っていて、星見にも使えると考えるだけでテンションが上がります。

但し、顕微鏡のアイピースは望遠鏡アイピースとはバレルサイズが違い、そのままでは使う事ができません。顕微鏡アイピースのバレル径は30mmと23.2mmが規格となっており、望遠鏡のバレルサイズ(31.7mmや24.5mm)より一回り小さいですのでバレルにテープなどを貼ってサイズを合わせる事で流用するのが一般的なようです(流用そのものが一般的かどうかはさておき)。今回は植毛紙を試しに貼ってみたところまずまず具合が良かったのでそのままこれを採用しました。

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実物を手に入れてまず見掛け視界の広さをXWと比べたところ70度のXWより僅かに小さく、計算通り約69度程度ありそうです。またアイレンズを見ると紫色のマゼンダコートの様なコーティングが施されていますが、色合いに深みを感じるのでマルチコートなのかシングルコートなのか判断が悩ましいところです。一方バレル側から覗くとやはりバローは入っていない模様で、それ程長くは無いアイレリーフや全体のサイズ感からシンプルな設計、クラシックアイピースに類するものと推測されますが、見た目よりかなりずしりとした重さがあり、より凝った設計の可能性も十分考えられます。

まずF6屈折(ブランカ70EDT)を使用して室内環境で周辺像のチェックしたところ良像範囲は8割以上あり、同じ環境でEWV-16mmをチェックするとこちらは良像範囲は6割程度と言ったところで、良像範囲の絶対的な大きさで比べるとUWの方が広い印象です。

次に双眼装置で惑星を見た時の印象は、この時は自分的に望遠鏡用アイピースとして標準的な見え味(所謂「普通に良く見える」)と評価するタカハシLE12.5mmやGSO PL-12mmなどと比較して、中心像に関してはそれ程違いは感じませんでしたが、やはり視野の広さは圧倒的で、他の12mmアイピースでは木星土星を200倍以上で観望すると衛星が少なからず視野からはみ出るのに対して、この接眼レンズであれば多くの衛星を捉えられるのでより宇宙を感じさせてくれる、最近惑星は標準視界で覗く事に慣れていた自分的に、久々に広角の良さを思い出させてくれた印象深い体験となりました。

また望遠鏡用アイピースと見比べていて感じたのは顕微鏡用接眼レンズと言っても使用感は殆ど変わらないと言う点で、12mmのクラシックアイピースとしては比類ない広角を実現しつつ、中心から周辺まで良像で広角アイピースとしてバランスが取れたある意味ニコンらしい見え味で、この様なユニークで質の高い製品を手に入れる事が出来ただけでも顕微鏡用接眼レンズに目を向けた甲斐があったと思いました。

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因みにこの接眼レンズの製造年代が恐らく90年代と言う事で適当に97年の天文ガイドを見ると、ビクセンはLVやOr、K、H、タカハシはLEにMC Or、ペンタックスはXLやXP、SMCオルソ、Meadeは4000SPなどを販売していた時代で、ニコンの名前は既にここにはありませんが、やはりハイアイのアイピースが流行る前の日本製のクラシックアイピースが市場を席巻していた頃と言えるかも知れません。

この頃のクラシックアイピースは今でも銘アイピースとして評価の高いものも多く、こうしたアイピースを好む自分がこの頃のニコンのクラシックアイピースを覗いてみたいと考えた場合に、顕微鏡用接眼レンズに手を出す事になったのは必然だったのかなと思わなくもありません。

Long Perng Plossl/Sterling Plossl 12.5mm [天文>機材>アイピース]

台湾Long Perng社のプローセルですが海外ではSterling Plosslの名称で広まっており、こちらでもSterlingPLもしくはスターリングプローセルと呼称します。

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このアイピースの特徴は基本設計はプローセルでありながら55度と言う広い見掛け視界を実現しており、国内ではスタークラウドがHCW(ハイクオリティワイド)プローセルの名称で販売し、40層のマルチコーティングが施され、98%の透過率を持つとされ、Long Perngが製造しているだけあってビルド品質も非常に高く、安価な中華プローセルが市場に多く出回る昨今、現代の技術で本気で改良を目指した中華プローセルと言えるのかも知れません。(安価な中華プローセルの実力は決して侮れませんが)それでいてやはりリーズナブルでしたので海外でも評価の高いアイピースです。

実物を見るとアイレンズ、視野レンズ共に凹レンズの使用が認められ、テレビューのPLよりは曲率が大きく、北軽のRPLよりは恐らく少ない、見掛け視界やアイレリーフなどのスペック的にも両者の中間的な存在と言えるかも知れません。

双眼装置を使って惑星を見た印象ですが、普通に良く見える、と言ったところで逆に言えば手持ちの数多の12mmアイピースの中では、中心像に関しては特筆する程の特徴は見出せなかったのが正直なところです。勿論見掛け視界の広さはこのアイピースならではですが、木星を見ると視野周辺8割位から形状が楕円に変形するので歪曲がそこそこあるのかなと言う印象です。また恐らくこの広角の代償として他の12mmクラシックアイピースと比べるとアイレリーフが短く、人によっては多少の覗き難さを感じるかも知れません。

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ただ2群4枚の少ないレンズ構成で徹底したマルチコートが施されている事もあって、コントラストやヌケは良いように感じます。この辺りは限界的に暗い2重星の検出などで有利に働くかも知れません。また室内環境でチェックする限りは周辺の歪曲は多少ありますが像面湾曲は少なく、周辺まで星を点に見せる性能は他のアイピースより高いように思えます。よって惑星よりもDSO向けのアイピースと言える知れませんが、この広い見掛け視界を活かした月面観望などでも威力を発揮してくれる、ある意味オールマイティに使える良質なアイピースと思いました。

ネオワイズ彗星(C/2020 F3)を振り返る [天文>日記]

日本で観望できる彗星としてはここ十数年で最も明るいと評判のネオワイズ彗星でしたが、丁度梅雨時期に重なってしまった事で見たいのに見られない、頼むから晴れてくれとtwitterのタイムラインも阿鼻叫喚の巷と化し、良くも悪くも天文界隈を多いに盛り上げてくれました。

過去50年間を振り返って未だに語り継がれる程の大彗星と言えば、古くはベネット彗星(C/1969 Y1)、ウエスト彗星(C/1975 V1)、比較的近年では百武彗星(C/1996 B2)、ヘールボップ彗星(C/1995 O1)が4強と言っても差し支えないと思いますが、今回のネオワイズ彗星はこれら4強には及ばないとしても最大1~2等級程の明るさと立派な尾を見せてくれた事で天文ファンを魅了するには十分な彗星だったと言えるでしょう。

個人的にはこの彗星のまともな姿を2回拝む事ができました。北海道は梅雨が無いと一般的に思われているかも知れませんが道東、十勝に関してはこの時期は本当に晴れず、1~2ヶ月間で2、3回しか夜空が見えなかったと言う年も珍しくありません。

そんな中一回目は7月10日早朝、プリンス6.5x32双眼鏡で見つける事ができ、ダメ元でスマホ(Asus Zenfone3)で何度か撮影にトライした結果、かろうじて姿を捉える事ができました。撮影時刻は午前2時35分、5秒露出です。

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このスマホで星を撮ろうと思っても相当明るい天体でなければ写りませんので、薄明、低空の中でこの程度でも写ったと言うだけでも大(中?)彗星の証と言えると思います。この後12x36防振双眼鏡で見た姿が見応えがありました。

二回目の機会は7月19日に訪れました。この時は両親にも見せてあげたいと望遠鏡(ブランカ70EDT)を設置、ACクローズアップレンズアイピース(約10倍、実視界5度)で日没の空を捜索したところ、点に収束しないぼやけた天体がいきなり視界に飛び込んできて、この感じはもしや・・・?と念の為スマホコリメートで写真を撮りました。これが19時50分頃。

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その後暗くなってきて尾が見え始めたのでネオワイズだと確信できて改めて写真を撮りました。これが20時30分頃、5秒露出。

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この時で既に前回よりは暗い様に感じられ、2回とも肉眼では確認できなかったのですが、双眼鏡ではその雄姿を堪能できて、両親にも見せてあげる事が出来て満足できる観望となりました。

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百武やヘールボップの頃は天文活動休止中でまともな星見機材を持っていませんでしたので、今回はまともな機材で立派な姿を堪能できたと言う点で想い出深い彗星になったと思います。現時点でまだ5、6等級の明るさがあるそうなのですが、もうワンチャンあるかな?

ACクローズアップレンズBINO その2 [天文>機材>望遠鏡]

先日MoreBlueの目幅調節装置を導入し、ACクローズアップレンズBINOの台座をこれに換装させる事で、目幅調整に視軸調整が格段にやり易くなりましたが、この目幅調節装置の左右の台座の最小間隔は60mmとなっており、以前のBINOの最小目幅(57mm)を出せなくなった事が少々不満だったので改善策を考える事になりました。

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この目幅調節装置は鏡筒をファインダーアリガタを介して左右の台座のアリミゾに取り付ける構造となっていましたので、ファインダーアリガタを2段重ねにした上で上段のアリガタを内側にそれぞれオフセットさせる事により、以前の最小目幅を出せるようになりました。

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この2種類のアリガタは共にMoreBlue製で型番はFG304(上段側:40mm長)、FG310(下段側:80mm長)となっています。

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このBINOは接眼部を31.7mm径に妥協する代わりにXWA9mmを利用した100度双眼視が目幅の小さい方でも体験可能な部分が利点でしたので、この長所を引き継ぐ事ができて安心しました。

自作 Dollond 12mm(Version.K) [天文>機材>アイピース]

かつてクチュールボール(Couture Ball)なる光学ガラスのボール玉をレンズにしたアイピースが存在し、見掛け視界は10~15度程度と非常に狭いながらも想像以上によく見えたらしく、やはり構成するレンズ枚数が少ないのはアイピースの設計においては大きな強みと感じ、この様な極限的にシンプルなアイピースは他に無いものかと古典アイピースのデザインをネットで眺めていて目に付いたのがこのDollondと言う設計でした。因みにこの方(John Dollond [1706-1761])はラムスデンの義理の父との事です。

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この構成図を見る限り平凸の色消しダブレットのみと言うデザインですので、単純にプローセルを分解して前群のみ利用すれば実現できそうで、これによりレンズ透過による光量損失もプローセルの半分となり、臨界F値はf/15、見掛け視界は20度となっていますが、双眼装置使用(バロー併用)による惑星観望に限定すればこの条件下でも支障なく使用が可能ですので、1群2枚と言う極限に近いレンズ構成を活かした究極の双眼用プラネタリーアイピースができるでは?と期待が高まり、自作できないか考える事になりました。

まずは手持ちのプローセル(セレストロン Omni PL12mm)を分解してみましたがシンメトリカルな設計となっており、アイレンズも視野レンズも見たところ平面です。これが設計を改良したプローセルの場合、曲率を持たせている場合がありますので、今回の目的においては逆にこの様な安価なプローセルを使用した方が良いかも知れません。またこの構成から後群を取り除くと焦点距離は長くなりますので、12mmのDollondを作ろうとなるとより短焦点のプローセルからレンズを調達する必要があります。

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そこで何mmのプローセルが必要かを考えた場合に、シンメトリカルな平凸レンズ2枚をほぼ接する形で12mmの焦点距離を出しているのなら半分の6mmのプローセルを用意すれば良さそうに感じ、中古で入手が容易なところでケンコーのPL6.3mmを入手、後群を取り除き、双眼装置でOmni PL12mmと並べて見比べたところ計算通り(計算など微塵もしていませんが;)ほぼ同倍率となっており、計画実現の可能性が高くなった事から後群のレンズを抜いた事で生じる隙間を埋める為のパイプ状のスペーサーをミスミで調達する事で、割とあっさりとDollond 12mmの自作が完成しました。

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問題の見え味については木星土星をFC-100DLTSA-120ブランカ150SEDなどで覗いてみましたが、第一印象がやはり見掛け視界の狭さで、分かってはいましたが覗いていてかなり窮屈に感じます。それでも双眼装置にBS3xバロー(約3.5x)を組み合わせていますので良像範囲は7~8割程度はあり、300倍でも木星の視直径以上は十分にありますので表面模様の観察に支障はそれ程ありません。解像度は狙い通り良好でよく出来たアイピースとして及第点(Aランク)をあげられる見え味ですが、150SEDの様な光量の多く得られる鏡筒で木星を見るとかなりのフレアが発生して表面模様のコントラストを大きく下げてしまいます。自作する上で迷光対策の類は何もしていないので、その辺りを工夫すればもっと良く見えるアイピースとなるかも知れません。

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他のアイピースより特段優れているかは現時点では分かりませんが、使用条件に上手く合わせれば期待に応える見え味を発揮してくれる事が分かり、古典アイピースの侮れない実力を再認識した次第です。

アイピース室内チェック環境構築 [天文>機材>アイピース]

先日双眼装置のバローの拡大率を算出する為に室内の窓ガラスに方眼紙を貼り付けて計測していましたが、思ったよりも方眼紙の表面の詳細が見えた事から室内でアイピースの見え味の比較が出来ないだろうかと考え始めたそんな折、ふと視界を方眼紙から壁に向きを変えて見たところ顕微鏡で見るような表面の詳細が見えて、歪曲収差を見るには方眼紙が向いていますが、解像度や明るさ、ヌケやコントラストと言った性能を量るにはこっちの方が適しているのでは?と感じて試験的に見比べを始めてみました。

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後日双眼装置のバローの取り付け方を変更した事から再度拡大率を測ろうと機材をセットし、夜で室内照明だけでは暗かったのでライトを使って方眼紙付近を照らして測っていましたが、例によって視界を方眼紙からその横のすりガラスにずらしてみたところそこには驚きの光景が。

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何とライトの光を反射した無数の点光源が視野一杯に広がっており、さながら満天の星空のようで、更に明るい光点には綺麗なジフラクションリングまで見えています。室内照明を落として、ライトの光量も落とす事で更に夜空に近い雰囲気が得られ、点光源以外の部分でも淡い濃淡のガラスの表面模様が星雲の見え方に通じるところもあり、これなら室内で見え味を比べる環境としては理想的、とまでは行かなくとも実用レベルに達しているではと思わなくもありませんでした。

自分は基本的に望遠鏡の性能を見るのに昼の景色で判断するのは当てにならないと考えており、景色で望遠鏡を見比べてAよりBが良いと判断しても、星で見ると見え味が逆転する事が当たり前に起こるので、見比べは実際の天体で判断する事に拘っているのですが、今回の環境であればある程度参考になる性能比較が可能になるのではないかと期待しています。

何より天候やシーイングに左右されないでじっくり見え味を確認できるのは本当に楽で、これに慣れると星で見比べする気にならなくなるかも知れませんwそれは冗談として、今後は星だけでなくこちらの環境での見え味もインプレする上での参考としてみようかと考えています。

2020年6月21日部分日食 [天文>日記]

今回の部分日食は北海道では食分が小さいですが、何と言ってもこれを逃すと国内で見られる部分日食は10年後との事でしたので、特に親に見せてあげたいと思い、期待していましたが、天気予報は生憎の完全な曇りの予報でしたので半ば諦めて寝ていました。

しかし夕刻目が覚めて外を見ると日が差しており、マジで!?と飛び起きて急遽機材をセットアップ、何とか無事に欠けた太陽の姿を拝む事ができました。

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晴れ間が覗いていたのは本当にこの時だけで、この後10分もすると雲に隠れてしまい、その後再び太陽の姿を見る事はありませんでした。ただこの短い間に両親を呼び寄せて日食を見てもらう事が出来て、良いもの見せてもらったと喜んでくれたので、短い天体ショーでしたが良い想い出になりました。

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Mk-V双眼装置用バローレンズの拡大率測定 [天文>機材>バローレンズ]

Mk-V双眼装置用のバローレンズとして、自分的には純正のGPCは余り使わず、31.7mmノーズピース先端に取り付け可能なハイペリオンズームバローBS双眼装置用のバローが着脱が楽なのでこちらを主に使っていましたが(純正のGPCが2.6xでもピントが出ない鏡筒があったのが最初の理由でしたが)正確な拡大率が分からず、よって覗いている倍率が曖昧だったのが今まで気にはなっていました。

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最近この様に使えるバローが更に増えた事もあって、これを機に正確な拡大率を測ってみる事にしました。方法としては壁に貼り付けた方眼紙を望遠鏡で覗いて目盛りを読む事で算出しました。使用鏡筒はブランカ70EDT、アイピースはセレストロンのOmni PL12mmで勿論Mk-V双眼装置を付けての測定です。

<<バロー無し(等倍)>>

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最小目盛りは1mmですので、視野直径は33mm位でしょうか。

<<ビクセン2xショートバロー>>

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これは9.5mm位。つまり拡大率は33/9.5=約3.47倍

中古でアイピースを買ったおまけで付いてきたものですが、普通に使えました。今後はVX2xバローと呼称。

<<笠井 BS双眼装置用3xバロー>>

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これは9.2mm位。よって拡大率は33/9.2=約3.59倍

やはりBS双眼装置とMk-V双眼装置では光路長が結構違いますので拡大率も変わってきますね。今後はBS3xバローと呼称。

<<バーダーハイペリオンズーム用2.25倍バロー>>

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これは7.8mm位。よって拡大率は33/7.8=約4.23倍

これは今まで約4xバローと呼んでましたが大体合ってたかな?今後はHZバローと呼称。

<<バーダーハイペリオンズーム用2.25倍バロー+延長筒>>

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これは7.3mm位。よって拡大率は33/7.3=約4.52倍

こっちも今まで4.4倍程度と見積もってました。

<<メーカー不明3倍ショートバロー>>

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これは5.5mm位。よって拡大率は33/5.5=約6倍

このバローはブランカ70EDTに12mmアイピースの組み合わせでは惑星を見るのに4倍程度のバローでも倍率が足りないと感じていたので、もっと高倍率が出せそうなバローは無いかと探してヤフオクで見つけたものですが、拡大率6倍となるとこの鏡筒でも12mmで210倍を出せるので、ようやく木星表面模様がじっくり観察できるバローが手に入って満足しています。今後はYA6xバローと呼称。

こうして市販の様々なバローが流用できるのは便利ですが、先端が外れるタイプのバローであってもネジが合わず取り付かないものもあります。自分が試したところではSvBonyのバロー(一部かも知れません)、テレビューのバローが規格が合わず取り付けできませんでした。

MoreBlue 小型双眼組用 目幅調節装置 [天文>機材>アクセサリー]

ACクローズアップレンズBINOは小型軽量で遠征時のサブ機材としてとても活躍してくれていますが、観望会などで他の人に覗いてもらう時に、現行のアリガタレール上のアリミゾ金具をスライドさせる目幅調整方法では常にサポートする人(自分)が必要でスムーズに調整できない事が多く、やはりきちんとした目幅調整機構を設けないと運用が厳しいと感じ(一人で使う分には問題無いのですが)、解決策を模索していた中、Twitterのタイムラインに流れてきて目に入ったのがこのMoreBlueの目幅調節装置でした。

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こうした目幅調整装置はミニボーグBINOで使用している、Howie Glatter社のPSTを双眼望遠鏡化するベース架台、『Solar Binocular Telescope Platform』(以降PST双眼架台)が有名でしたがディスコンになってしまい、その後このような機能を持つ天文パーツが発売される事が無かったですので、需要はそれ程多くないと思われる中、よくぞこんなマニアックなアイテムを作ってくれたと感謝しつつ即座に注文したのでした。

実物を手にして見ると思ったより小ぶりのパーツですが、目幅調整機構も視軸調整機構もしっかり備わっており、左右の鏡筒は付属のファインダーアリガタを介して左右の台座のアリミゾに取り付ける造りとなっています。これにより鏡筒の着脱が容易で鏡筒のパーツ構成を変えたい時などに役立ちます。

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視軸調整機構は上下方向、左右方向共に片側の台座側に備わっており、PST双眼架台の場合は押し引きネジを工具で回して調整する方法だったのに比べて、今回架台は工具レスで必要な時にすぐさま視軸調整が行えるのが非常に便利です。

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目幅調整のツマミ(銀色の)は反対の台座側にあり、これを回す事で台座が左右にスライドし、60mm~75mmの範囲での目幅調整が可能となります。こちら側の台座は4本のシャフトで支えられており、精度と強度を両立した造りとなっています。

百聞は一見にしかずで、Youtubeに公式の動画で機能が紹介されています。

https://www.youtube.com/watch?v=-uEyd-lSQt8

この調節装置のお陰でACクローズアップレンズBINOが進化して更に使い易い機材になりました。

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値段も18000円とリーズナブルでPST双眼架台は個人輸入でも4万円はしたと記憶していますので、コスパは高いと思います。

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自分も目幅調整方法の解決策をあれこれ考えましたが、目幅調整をツマミ一つでスムーズに、且つ左右鏡筒の視軸調整も可能と言うパーツを自力で作るのは相当ハードルが高く、今他にこの様な天文パーツは見当たらないと思いますので、積極的にこの製品を活用して、自作BINOの世界(沼)に飛び込む方が増えて欲しいと思いました。



その後の調べでこの様な自作BINO用のベース架台がAOKで売られているらしい事が分かりました。但し、EMS/EZMを使用した双眼望遠鏡向けで左右の台座の幅が広く大きく、視軸調整機能があるかどうかが不明で、今回調節装置と同様に使えるかどうかは不明です。

50万PV突破 [天文>日記]

当ブログの総PV数が50万を超えました。

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ここを訪れて見て下さる皆様のお陰です。本当にありがとうございます。

自分のブログ運営方針はどんなつまらないものでも良いのでとにかく自分で実際に触れた感想を書くようにしています。その方針が支持されているかはさておき、天文パーツへの物欲が続く限りこれまで通り続ける所存ですので、暖かく見守って頂ければ幸いです。

今は大変な状況で、自分自身も長期間体調を崩している最中ですが、単独でもとことん楽しめる天文を趣味にしていて良かったとしみじみ思う今日この頃です。皆様も可能な限りこの趣味をエンジョイしつつ、この困難を乗り切れるよう切に願う次第です。

バニーあおちゃん [お絵描き>萌え系]

恋アスアニメ面白いですね!

かつての星咲高校天文部(現地学部)に存在したバニーコスプレで歓待する伝統(?)の復活に願いを込めました。

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笠井 BLANCA-150SED その2(落下防止対策編) [天文>機材>望遠鏡]

鏡筒を架台に載せる際にアリミゾにアリガタ底面がちゃんと接しておらず、僅かに斜めになって浮いている事に気付かす固定ネジをしっかりと締めつけたつもりが、その後グラつきを確認してちゃんと固定されていなかった事に気付いたヒヤリハットが何度かあり、もしこの状態で鏡筒を振り回せばストーンと落下する事態は間逃れませんので、特にブランカ150SEDの様な重くて割と高く持ち上げる必要がある鏡筒に関してはその様なヒューマンエラーが起こり易いと感じたので万一の為の落下防止策を講じる事にしました。

アリミゾから滑り落ちるのを防止する事態を防ぐ一般的な方法はアリガタの端に突起を付ける方法ですが、この鏡筒のアリガタにそれができるのか、加工や買い替えが必要になるかどうかチェックしたところ、アリガタを固定する前方のネジ穴が長穴になっている事に気付き、ここにストッパーネジを取り付けられないかを試してみる事にしました。

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このアリガタの上面はRが付いており、中央が凹んだ形になっていた事からナットを一個入れるぎりぎりの隙間があった事が幸いし、適当なネジを立てる事ができました。ちょっとネジが長すぎる気がしましたが、丁度良い長さのものが手持ちの中では見当たらず、この場合長は短を兼ねると考えてこのままで。

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150SEDの鏡筒バンドは上に取っ手が付いている関係上バンド幅を動かす事ができなかったので、ストッパーネジを追加した状態でアリガタの固定ネジが入るのか微妙でしたが、ぎりぎり固定する事ができました。よってストッパーネジをこれ以上太くする余裕はありません。

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結果として無加工でストッパーネジを立てる事ができましたが、このネジを追加してももし滑り落ちて架台にこのネジが引っ掛かった場合に、反動で三脚架台ごとひっくり返る危険性もあって完全に安心はできないのですが、ダブルブロック締め付け式のアリミゾとの組み合わせでフェイルセーフ的な機構になった事である程度は安心して使えそうです。

TRUSCO ポケットレベル35×70(アナログ水平器) [天文>機材>その他]

これまで三脚の水平を取る為にスマホの水準器アプリを入れていたのですが、定期的にキャリブレーションをしないと表示が狂う事が多く、いざ使おうとした時にキャリブレーションが必要な状況で、水平な場所が見つからないと水平が取れない時があり、不便に感じる時がありました。

またスマホがデリケートな機械ですので、三脚の架頭に載せる使い方では脚の長さを調整する際に落下させて壊す危険性があり、また厳寒期の観望で気温が氷点下10度を切るような環境ではスマホ自体が動かなくなる可能性も考えられた為、構造が単純な故に信頼性が高く、耐久性、耐候性も高いアナログの気泡管を使った水平器を使ってみる事にしました。

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構造が単純とは言え測定器ですので何となく日本製のこの製品を選びましたが、視覚的にも水平が分かり易く何で素直に最初からこうした製品を使わなかったのかと後悔するレベルの使い易さです。衝撃で壊れる心配もまずありませんので、天体観望の様な半分アウトドアな用途で使うにはこうしたアナログの計測器が向いていると思いました。

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一点難があるとすれば角が尖っていて持っていて手に刺さると痛い点で、面取りしてくれると嬉しかったかも知れません。


恒星の仮想等級、及び2つの恒星の明るさの比の算出ツール Ver1.0 [天文>Webツール]


【 恒星の仮想距離における明るさの算出 】

実視等級: 距離:光年
仮想距離:光年

【仮想等級】: -
【絶対等級】: -



これは恒星までの距離を任意に変更した場合に、見た目の明るさがどのように変化するかを計算するツールです。絶対等級も併せて求めています。

使い方としては、例えばリゲルがシリウスの距離にあった場合にどの位の明るさになるかを知りたい場合、リゲルの明るさ(0.28等)と距離(860光年)をそれぞれ入力し、シリウスの距離(8.58光年)を仮想距離として入力する事で、仮想距離における明るさを仮想等級として算出する事ができます。この場合-9.73等となり、シリウスの-1.44等よりも相当明るくなる事が分かります。

【 2つの恒星の明るさの比の算出 】

《恒星A》
実視等級: 距離:光年
《恒星B》
実視等級: 距離:光年

【Aの絶対等級】: -
【Bの絶対等級】: -
AはBの: -倍の明るさ



これは任意の明るさ、距離を持つ2つの恒星AとBの本来の明るさがどの程度違うのかを算出するツールです。それぞれの恒星の絶対等級も併せて算出します。

使い方としては、例えばデネブとベガはそれぞれ1.33等と0.02等でベガの方が明るいですが、距離はそれぞれ1400光年と25光年とデネブの方が相当遠く、もしこの二つの恒星を並べた場合どちらが何倍明るいかをそれぞれの値を入力する事で算出できます。この場合約938倍デネブがベガより明るい星である事が分かります。

※注意事項
PCでの使用を前提としています。モバイル環境では上手く動作しない可能性があります。
・ソースコードの二次使用はご遠慮ください。

※変更履歴
Ver1.0:公開



参考までに上記二つのツールの算出式を以下に示します。

参考にしたのは『物理のメモノート(https://physmemo.shakunage.net/)』HPより、天体の見かけの等級と絶対等級の項で紹介される、ポグソンの式、

m1 - m2 = -2.5log(F1/F2) ・・・①

星1の等級をm1、明るさ (フラックス)をF1、星2の等級をm2、明るさ (フラックス)をF2とした場合の上記の関係式を用い、また二つの星の明るさの比は距離の比の二乗の逆数、例えば距離が100倍大きい(遠い)と明るさが1/10000となる事から、

F1/F2 = (r2/r1)2 ・・・②

の式が成り立ち、①と②から、

m1 = m2 -5log(r2/r1) ・・・③

と求まります。このm1が仮想等級、m2が実視等級、r1は仮想距離、r2は実距離として求めています。

二番目のツールの二つの恒星の明るさの比の出し方は、まず③の式からr1=32.61564光年(=10パーセク)する事でそれぞれ絶対等級を求め、これをma1、ma2とすると、①の式にこれらを代入し、

F1/F2 = 10-(ma1-ma2)/2.5

として絶対等級から明るさ(フラックス)の比を求めています。

賞月観星の製品リンク [天文>日記]

アイピースのXWAシリーズや双眼鏡のプリンスEDシリーズなど、コスパの高い製品の取り扱いで話題の賞月観星ですが、メーカーHPがブログ形式になっており、製品のスペックなどを参照したい時に該当の記事をすぐに見つけるのが難しかった事から、製品ページへのリンクを作ってみる事にしました。

《アイピース》
・XWAシリーズ(100°~110°)
http://blog.livedoor.jp/forrest1437/archives/76362468.html

・UWAシリーズ(82°)
http://blog.livedoor.jp/forrest1437/archives/90099412.html

・SWA原点シリーズ(70°)
http://blog.livedoor.jp/forrest1437/archives/90118892.html

・UFシリーズ(フラットナーアイピース)
http://blog.livedoor.jp/forrest1437/archives/77236765.html

《双眼鏡》
・原点HR6.5x32WP
http://blog.livedoor.jp/forrest1437/archives/92093424.html

・APO+6.5x32IF & APO+8x32IF
http://blog.livedoor.jp/forrest1437/archives/90394035.html

・APO6x30CF & APO8x30CF
http://blog.livedoor.jp/forrest1437/archives/90035481.html

・APO+12x56IF
http://blog.livedoor.jp/forrest1437/archives/89494287.html

・APO8x56IF
http://blog.livedoor.jp/forrest1437/archives/88852569.html

・APO6x30IF & APO8x30IF
http://blog.livedoor.jp/forrest1437/archives/88158168.html

・プリンス6.5x32WP
http://blog.livedoor.jp/forrest1437/archives/86886184.html

・Pleasing ED HR8x25WP
http://blog.livedoor.jp/forrest1437/archives/85686466.html

・Pleasing Goddess HR10x50WP
http://blog.livedoor.jp/forrest1437/archives/85607235.html

・プリンスUFシリーズ
http://blog.livedoor.jp/forrest1437/archives/84673224.html

・プリンスED10x50WP
http://blog.livedoor.jp/forrest1437/archives/84493704.html

・APO10x50
http://blog.livedoor.jp/forrest1437/archives/84168451.html

・プリンスUWAシリーズ
http://blog.livedoor.jp/forrest1437/archives/81435269.html

・プリンスED9x32WP&11x42WP
http://blog.livedoor.jp/forrest1437/archives/80678544.html

・プリンスED6.5x32WP&8x42WP
http://blog.livedoor.jp/forrest1437/archives/76850170.html

・Pleasing Goddessシリーズ
http://blog.livedoor.jp/forrest1437/archives/79460928.html

・PleasingⅡ(原点)シリーズ
http://blog.livedoor.jp/forrest1437/archives/79022896.html

・Pleasing HR8x25WP
http://blog.livedoor.jp/forrest1437/archives/80661574.html

・Pleasing(原点)シリーズ
http://blog.livedoor.jp/forrest1437/archives/67965554.html

・ED KING 80mm径シリーズ
http://blog.livedoor.jp/forrest1437/archives/78701995.html

・ED KING 50mm&70mm径シリーズ
http://blog.livedoor.jp/forrest1437/archives/75951282.html

《単眼鏡》
・Pleasing ED Mono 32㎜径単眼シリーズ
http://blog.livedoor.jp/forrest1437/archives/78424869.html

・Pleasing ED Mono HR8×25WP
http://blog.livedoor.jp/forrest1437/archives/73696890.html

《フィールドスコープ》
・W-ED 25-75x95APO-S直視型
http://blog.livedoor.jp/forrest1437/archives/80763113.html

・W-ED APO-A 傾斜型
http://blog.livedoor.jp/forrest1437/archives/76277403.html

主要な製品はこんなところでしょうか。漏れががあったらすみません。

笠井 BLANCA-150SED [天文>機材>望遠鏡]

TSA-120は見え味と使い勝手のバランスが傑出していて非の打ち所の無い鏡筒と言う自分の中での評価に変わりはありませんが、FC-100DLとの2cmの口径差が徐々に微妙に感じ始め、FCもとても良く見える鏡筒だった事からより見え味の差が大きい、より大口径のアポへステップアップしたい気持ちが強くなっていきました。

しかし国産、欧米製の大口径アポは価格的に自分には非現実的でしたので、ここ最近大口径の選択肢も増えてきた中華アポに狙いを定め、当初候補としたのはAPMのZTA140 SDアポでした。対物レンズの硝材が最近評判のFPL-53とランタン素材の組み合わせで、中華アポはとにかく製造品質が心配でしたが、TMB時代からアポ製造の高い実績を持つAPMの製品であれば品質管理面で比較的安心できそうと考え、ほぼこの鏡筒への乗り換えを決め掛けていました。

そんな折、ZTA140と同じFPL-53(+ランタン素材)を採用しつつ15cmF8のスペックを引っ下げて突如笠井から発売されたのがこのBLANCA-150SEDでした。大口径アポ導入に当たり、高倍率性能、惑星の見え味を最重要視する自分にとってはZTA140はF7とやや短焦点である事が唯一気になる点でしたが、よりFも長く、かねてより15cmアポへの憧れも持っていた自分にとっては150SEDのスペックは正に理想的で、それでいて価格も同じ(その後、ZTA140の価格は若干下がった模様です)と言う事で、これはもう買うしかないでしょ!と急遽方針転換したのでした。

しかし考える事は皆同じなのか、150SEDの初回ロットは何と発売後数日で『瞬殺』完売してしまい、このスペック、価格の鏡筒が待ち望まれていた事が窺えます。自分も本来ネットで評判を見聞きするまではいきなり新製品に手を出す事はしないのですが、笠井のBLANCAシリーズに関しては既に所有している70EDTがとても良く見える事、観望仲間の方が所有するビノテクノ102SED-BINOも高倍率性能が高く、125SEDもTSA-120とも遜色無い見え味とのもっぱらの評判でしたので、笠井がこの基準で販売する製品を選定しているのであれば150SEDにも期待できると判断し、通算n回目の清水ダイブを決行したのでした。

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次ロット納期は3ヵ月後の9月予定との事でしたが、実際に届いたのは更に3ヵ月後の12月に入ってからでした。サイズ200オーバーの巨大な箱が玄関に届いた時は眩暈がしましたが、それでもこの鏡筒にはアルミケースが付属していない事が逆に自分にとっては幸いでした。保管や運搬には適当なソフトケースを見繕うつもりでいましたので、巨大で重いアルミケースが付属していても持て余す事が目に見えていたからで、この部分もこの鏡筒の購入を後押しした小さくない理由でした。

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本体もやはり重く大きく、TSAの手軽さは失われた感はありましたが、GPX赤道儀に載せると無理なく運用できそうな感触で、2枚玉なので極端にトップヘビーではなく、15cmアポとしては扱い易い部類なのではないかと思います。重量を測るとバンドアリガタ込みで11kgを切っており(+キャリーハンドルで約11.3kg)、FPL-53を使用した15cmアポとしては最軽量の部類と思われ、アリガタもビクセン規格のものが装着されていましたので、ビクセン規格のアリミゾの架台しか持っていない自分的には面倒が無くて助かりました。

以下の写真は150SED、FC-100DL、BLANCA-70EDTを並べたところです(でかい!)。

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鏡筒表面の処理は70EDTと同様の少しザラザラな仕上げ(サテンホワイトフィニッシュ)で質感は可もなく不可もなくと言ったところで、特に高級感がある訳でもありませんが安っぽくも無く、中華鏡筒でありながら造りに雑に感じるところが特に見受けられないのは大いに評価できるポイントだと思います。ストロークが大きめの伸縮式フードの移動も滑らかで縮めると思いの外コンパクトになり、ソフトケースに入れて自分のコンパクトカーの後部座席に横にして置く事も可能で、これにより運搬の労力が格段に軽減されるので遠征用の機材としても活躍してくれそうです。

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接眼部は2.5インチのラックアンドピニオンですが、今まで笠井鏡筒の接眼部にはあまり良い印象が無く、具体的には重量アクセサリーを取り付けた場合にドロチューブのテンションを締め付けるとデュアルスピードフォーカサーの微動が空回りする現象がとても使い難いと感じていましたが、150SEDの接眼部では双眼装置を含めた重量アクセサリーをフルで取り付けても微動が問題なく使用でき、不満を感じずに使える中華接眼部に初めて出会えた気がします。最近は大口径アポには3インチや4インチと言った太い接眼部の採用も多く見受けられますが、眼視オンリーの自分的にはこの控え目な2.5インチ接眼部が鏡筒重量の軽量化にも寄与していると考えれば丁度良い大きさに思えました。

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見え味に関しては惑星シーズンが終わってしまったので、今年の惑星シーズン到来までどうこうは言えませんが、光軸に関してはしっかり調整されており、300倍超でリゲルやシリウスを見ても焦点内外像から中心に像が収束していく様子は見ていて気持ちが良く、焦点像も十分シャープに感じられ、これであれば惑星もかなり見えそうな手応えが感じられます。

後日の観望会にこの鏡筒を持ち出して半月の欠け際を350~400倍で観察しましたが、これまで見た事が無いようなクレーターの詳細が見え(月は個人的にあまり見ていない事もありますが)、解像度にはまだ余裕が感じられ、15cmアポの実力が垣間見えました。過剰倍率での像のシャープさ、ヌケやキレに関してはTSAには及ばない気がしますし、色も僅かにあったかも知れませんが、そこに完璧を求めるとなるとやはりTOA-150の様なハイエンドアポが必要になると思いますし、この鏡筒が15cmの2枚玉である事を考えると十分良好な収差補正がなされている様に感じました。

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ただ現時点では見え味云々よりも心配していた調整面に問題を感じなかったので気持ち良く使える点を評価したいところです。外観や可動部分を含めた全体を通して不満に感じる部分が(現時点では)特に無いと言う点も、大口径の中華アポと言うリスクが高そうな鏡筒である事を考えれば実はすごい事かも知れません。光学系にも期待できそうですので今年の火星木星土星が揃い踏みの惑星シーズンが今から楽しみです。



その後アリガタに落下防止対策を施しました。

その後ようやく好シーイングに恵まれて見え味を評価する事が出来ました。

その後ロンキー像を撮りました。

Celestron Omni 12mm Plossl [天文>機材>アイピース]

12mmクラシックアイピース対決を実施するにあたり、欧米の評価の高いアイピースに加えてごく標準的な、中華製の低廉なアイピースも比較対象として加えたいと考えて、以前太陽望遠鏡用に購入したセレストロンのOmniプローセルの印象が良かったので、この12mmを手に入れてみました。

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外観の造りはやはり若干荒っぽく、ゴム見口はヘナヘナでその内千切れそうな予感がしたので(個人的にゴム見口が好きではない事もあって)取り払ってしまいましたが、鏡胴がシルバーのデザインが中々カッコイイ様に思えます。

上述の対決では見え味はB+ランクとしましたが、当初の予想通りとても良く見えるアイピースでこれはAランクでも良いかなと考えた程です。迷光処理は若干甘いかも知れませんが、月惑星を見る限り中心解像力においては高級アイピースとの差異は殆ど感じられません(自分の眼では)。

とにかく手荒に使っても惜しくない安さで、扱いに神経質にならなくて良いので使っていて気が楽で、それでいて信頼の置ける性能を持っているので、最近観望会に行く時は12mmは専らこのアイピースしか使っていません。

アイピースに特段の拘りが無ければ、安くて性能も必要十分なアイピースとしてオススメです。


Nikon O-12.5 [天文>機材>アイピース]

12mmクラシックアイピース見比べ企画での参加アイピースとして、この往年の銘アイピースは外せませんでした。我が家で初めてのニコンのアイピースとなり、ツァイスサイズでありながら古さを感じさせないデザインにPentaxと並ぶニコンのセンスの良さを感じます。

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手に入れる前はこのアイピースの形式はプローセル系らしいと言う事しか知らなかったのですが、後に調べてみるとどんなプローセルかと言う事が少し分かってきました。twitterでこもロハスさんより見せて頂いた資料(地人書館『天体望遠鏡のすべて'87年版』)によればBrandonに似た非対称の改良プローセル設計(O-5のみ3群5枚のアストロプラン設計)となっており、abe1998さんのブログ(Zeiss_Telementor_World:https://abe1998.blog.fc2.com/)を読むと、かつてA.ケーニヒがプローセルの視野レンズ側を凸面にした改良プローセルの設計を考案し(ケーニヒが考案した多くのアイピース設計の一つとして)、これを採用したのがかの有名なフランスのClaveとの事で、これに対しアイレンズ側を凸面に設計したのが米国のBrandonであり、ニコンOはこれに対し視野レンズを凹面にした設計を採用しています。これを略図で表すと、

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設計 視野レンズ側  アイレンズ側 
 Konig/Clave凸面平面
 Brandon平面凸面
 Nikon凹面凸面
表:各プローセルの設計の違い

このような違いがあり、プローセルを元により優れたアイピースを作ろうと世界各地で模索されてきた経緯を知ると、後発のニコンがClaveやBrandonに対してどの程度勝負できるプローセルを作ったのか、見比べが一層楽しみになりました。因みにテレビューのプローセルはこれら3種とも違う、アイレンズ側を凹面とした(恐らくは視野レンズ側も)設計を採用していたり、北軽のRPLのような広角を実現した意欲的な設計のプローセルもあり、市場には多種多様なプローセルの亜種が出回っているのかも知れませんね。

ニコンのオルソ(以下ニコンOと呼称)のラインナップはO-5/O-7/O-9/O-12.5/O-18の種類が存在し、手持ちの天文ガイドで確認する限りでは、10cmEDや8cmEDではO-7、O-12.5、K-25が標準付属アイピースとなっており、O-12.5は比較的入手し易い方、なのかも知れませんが、これらは中古市場では既に定価の2~3倍のプレミアが付いています。

肝心の見え味に関してはやはりとても良く見える印象で、今回見比べた他の国産クラシックアイピースより頭一つ抜きん出ている気もします。特に印象的なのが視野のバックグラウンドの暗さで迷光処理が優秀なお陰か、土星の立体感や木星の表面模様などの表現力に優れたアイピースの印象を受けました。Brandonとの見比べでは当初はBrandonが上回っている印象でしたが、見比べる回数を重ねるごとにニコンOが追い上げている気がします。

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来年の惑星観望シーズンで更に見比べる予定ですが、30年前の製品ながら現在でも十分通用する優秀なアイピースである事は間違い無さそうです。

ACクローズアップレンズ自作アイピース(広角化編) [天文>機材>アイピース]

今回は例のACクローズアップレンズNo.17を使用した自作60mmアイピースにACクローズアップレンズNo.5、更にMCクローズアップレンズNEO No.4を足す事で、見掛け視界を60度程度に広角化させてみました。これにより焦点距離は45mm程度に短縮されています。

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構成は、

----<アイカップ部分>
・ノーブランド 55mm→37mmステップダウンリング
・ノーブランド 58mm→55mmステップダウンリング
・ノーブランド 58mm継手リング(メスーメス)
----<本体部分>
・ケンコー MCクローズアップレンズ NEO No.4 58mm
・ケンコー ACクローズアップレンズ No.5 58mm
・ノーブランド 58mm継手リング(オスーオス)
・ケンコー ACクローズアップレンズ No.17 58mm
・ノーブランド 58mm継手リング(メスーメス)
・BORG M57→M58AD【7407】
・BORG 50.8→M57/60AD【7425】

となり、これによりレンズ構成は6群7枚、重量は約414gと、見た目も普通の2インチ広角アイピースの風格が出てきました笑。

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広角化のきっかけとなったのはふと見掛けた古い天文ガイドの元祖マスヤマアイピースの広告で、マスヤマアイピースのラインナップの中で25mmのみ広角のモデルが存在していましたが、そのレンズ構成図を見たところではマスヤマアイピースの基本となる構成(アストロプラン設計)の手前に平凸レンズを一枚足しただけのように見えました。

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また以前12mmクラシックアイピース対決で使用したSVBONYのWA-12mmのレンズ構成も2群3枚のケーニヒの構成にやはり手前側に平凸レンズを足したような構成でしたので、これは標準視界のクラシックな構成のアイピースの手前に平凸レンズを足せばお手軽広角アイピースになるのでは?と考えて手元にあったACクローズアップレンズNo.9をNo.17にかざしてみたところ予想通り見掛け視界が70度程度に大きく広がり、これはいけるかも!?と期待に胸が膨らみます。

実際にブランカ70EDTでオリオン座周辺をPentax XL40と見比べてみたところまずまずの見え味でしたが、周辺像の崩れが大きかったのでNo.9では値が大き過ぎると判断、今度はAC No.5で試してみると見掛け視界は60度弱に下がったものの周辺像の崩れも少なく、これならもう少し広角にできるのでは?と欲が出て、更にMC No4を足してみたところ見掛け視界65度弱となり周辺像もまずまず、これによりアイレリーフも短縮し、ブラックアウトも殆ど発生しなくなり格段に覗き易くなったのでこの組み合わせで完成させる事にしました。

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また視野最周辺の星像の崩れが少し気になったのでほんの少し絞れないかと考え、2インチバレル部分を構成する50.8→M57/60AD【7425】の内側に48mmのフィルターネジが切ってある事を利用して、この内側から2インチフィルターの枠のみ取り付ける事で丁度良い絞り環となり、見掛け視界は60度程度に下がりましたが普通のアイピースと変わらない視野環がくっきりとした見え方となりました。

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出来上がったアイピースの性能を確かめようとミニボーグ60ED-BINOを使用し、XL40とサイドバイサイドで見比べたところ、周辺像はこちらのアイピースが上回ってましたが微光星の見え味で結構な差があり、やはりレンズを追加した事により透過率が下がってしまった可能性があるので素直に60mmアイピースとして使う方が無難だったかも知れません。しかしクローズアップレンズを適当に組み合わせたこのアイピースがPENTAXの高性能アイピースにまともに勝負ができる時点で既に驚きと言えましょう。

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後日ヌプカの観望会にこのアイピースを持参し、再び施設のPentax 150EDで覗かせてもらえましたが、導入されていたペルセ二重星団がかなり綺麗に見えました。鏡筒のFがかなり長い事もあって周辺の崩れは認められず、透過率が特に悪いようにも感じられませんでしたので、高性能アイピースとサイドバイサイドで見比べなければこれでも十分実用になるように思えました。

あわよくばXL40からこのアイピースに乗り換えられればと考えていましたが、そこまでは行かなかったとしても構成を組み替えるだけで60mm~40mmの間で焦点距離を可変できる非常にユニークなアイピースとして今後の活躍も見込めそうです。


国際光器 Fujiyama HD-OR12.5mm(起源考察編) [天文>機材>アイピース]

現行の貴重な国産アッベオルソです。かつて笠井HC-Orが販売終了後まもなく谷オルソも販売終了となり、国産アッベオルソの供給が途絶えたと思われた中で国際光器からこのHD-ORを始め、サイトロン、BORG、タカハシから一斉に似たような国産アッベオルソが発売されましたが、これらは全てマスヤマアイピースで有名な大井光機(http://www.ohi-optical.co.jp/)で製造されたOEM製品と思われます。海外での評判も上々の様子でプアマンズZAO(ツァイス・アッベ・オルソ)との呼び声も高く、個人的にはリーズナブルでゴム見口が無いアイピースが好みなのでこのHD-ORを手に入れてみました。

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HD-OR発売以前は国産のアッベオルソと言えば笠井のHC-Or、そして谷光学研究所の谷オルソが有名でしたが、このHD-ORがどっちの流れを汲むアイピースなのかずっと気になっていました。笠井HC-Orの焦点距離のラインナップは5mm/6mm/7mm/9mm/12mm/18mmとなっており、一方谷オルソのラインナップは4mm/5mm/6mm/7mm/9mm/12.5mm/18mm/25mmと2種類多く、HD-ORのラインナップは谷オルソのラインナップと同一だったので、当初HD-ORは谷オルソのマルチコート版では?と仮説を立てていました。

しかしtwitterのフォロワーのLambdaさんとこの件について情報交換している内に、笠井HC-Orと同じOEMと思われる海外アイピース、University OpticsのHDオルソシリーズ(見た目はほぼHC-Orと同一)に後から4mmと25mmが追加された情報が得られ、これで谷オルソとラインナップがほぼ一緒になった事から焦点距離からHD-ORのルーツを推測する根拠が薄れてしまいました。

ここで手元にあるHC-OrとHD-ORを見比べてみます。

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外観的には多少違いがあり、HD-ORの方がよりコンパクトで、想像以上に上質な造りです。スコープタウンのOrなどは値段の割に見え味が良いと評判ですが外観はやはり安っぽさが感じられるのに対し、HD-ORはHC-Orと同様に品質面でも手を抜いていないように感じられ好感が持てました。何よりバレルから脱落防止溝を廃した判断は賞賛に値します(個人的に)。

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アイレンズの大きさに着目して見比べるとほぼ一緒に見えます。ここでアイレンズを電灯にかざした反射像を見比べてみます。

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こちらがHC-Or、

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こちらがHD-ORで画像の通りコーティングの色こそ異なりますが、5つ見える電灯の反射像の出方がほぼ一緒でした。

HC-Orは笠井の商品説明曰く、「3枚+1枚のクラシックなアッベオルソ設計を忠実に踏襲し」となっており、一方谷オルソはスコープタウンの解説(https://scopetown.co.jp/SHOP/696464/list.html)によれば「正確にはアッベオルソとは相違あります」「アッベの視野レンズの1面について、凸面のところが平面になっています。」となっていますので、この説明を信じるならばHC-Orと谷オルソでは視野レンズの設計が大きく異なっており、HD-ORがもし谷オルソと同じ設計であれば反射像の内一つはHC-Orとは大きく異なるはずと予想していましたが、この結果からHC-OrはHD-ORとほぼ同様の設計で、その光学設計や製造は大井光機が担い、一方谷オルソは光学設計は谷光学によるもので、上記のリンクに書かれているように大井光機からレンズ供給を受けた上で手作りで製造されていたのではないかと推測しています。

そう考えると谷光学が廃業したにも関わらず谷オルソの設計が何故か残ったと考えるよりは、大井光機がHC-Orをリニューアルし、各所への販売を再開させたと考える方がしっくりくる気がします。

海外の評判を見てもHC-Orの系列アイピース(Baader GenuineオルソやUniversity Optics HDオルソ)もかつてプアマンズZAOとの評価を受けており、HD-ORも同様の評価を受けているのもある意味当然なのかも知れません(下手すると光学設計は変わっていないので)。

なので当時HC-Orが販売終了となった時は残念に思ったものですが、実はその設計は今でも生きていたと考えると今度こそ国産アッベオルソが途絶えてしまわないように応援してあげたい気持ちになりました。とは言えHC-Orを既に所有している現状で、中身がほぼ一緒と考えると双眼での見比べ用として2本揃えるかどうか少々悩ましいところです。

勿論この推測は個人的な仮定に基づいたものですのでどこか間違えているかも知れず、業界の方が見たらそんな事も知らなかったの?の一言で済まされそうな内容かも知れませんが、一般人には知る由もない話ですので、自分の中でひとまず答えが導き出せたのはスッキリできて良かったです。



その後2本揃えました

12mmクラシックアイピース対決 その2 [天文>機材>アイピース]

以前は新品で手に入るアイピースにしか関心が無く、双眼装置での最高倍率用として個人的に使用する12mmのアイピースに関してはTMBモノセン、Brandon、笠井HC-Or、笠井APの4種をそれぞれ新品購入し、その見え味の違いを楽しんでいましたが、アイピースを中古で購入する事に徐々に抵抗が無くなった事で往年の銘アイピースの見え味に興味が湧いてしまい、その後手始めにニコンO-12.5を入手してしまいました。

それまで古アイピースには目を向けない事でアイピースの増殖を抑えてきた自分でしたが、中古で、あまつさえツァイスサイズのアイピースに手を出してしまったとなってはもう誰にも止める事はできません汗;あらゆる種類の焦点距離12mmのクラシックアイピースを見比べてみたくなり、集めたのが以下のアイピースです。

名称生産国形式バレル径
TMB スーパーモノセントリック12mm ドイツ モノセントリック 31.7mm
Brandon 12mm 米国 改良プローセル 31.7mm
笠井 HC-Or12mm 国産 アッベオルソ 31.7mm
笠井 AP12.5mm 国産 アストロプラン 31.7mm
Nikon O-12.5 国産 改良プローセル 24.5mm
Pentax O-12 国産 改良アッベ 24.5mm
スコープタウン Ke12mm 国産 ケルナー 24.5mm
SVBONY WA-12mm 中華 改良ケーニヒ 31.7mm
Celestron Omni PL12mm 中華 プローセル 31.7mm
ビクセン HM12.5mm 国産 ミッテンゼーハイゲンス 24.5mm

本当は現行品である、国際光器 Fujiyama HD-OR12.5mm、タカハシ LE12.5mmも比較対象に加えたかったのですが、前者は同じ国産アッベオルソのHC-Or12mm、後者は国産アストロプランのAP12.5mmと殆ど差異は無いだろうと判断し、今回は見送りました。

鏡筒は主にFC-100DLを用い、たまにブランカ70EDTも使いました。今回見比べは殆ど木星と土星で行い、主に中心像(見掛け視界で言えば30度程度の範囲)を使って見え味を評価していましたので周辺像の良し悪しは殆ど評価しておらず、また高拡大率バロー(+双眼装置)を使用した評価の為、短焦点鏡筒との相性なども評価の対象としていません。故に長焦点鏡筒における惑星の見え味をメインとした、中心像に着目したアイピースの評価とお考えください。評価項目は解像度、コントラスト、明るさ、ヌケなどの要素に加え、迷光処理や覗き易さも加味した総合力をアイピースの実力として以下にランク付けしてみました。

《S+ランク》
・TMB スーパーモノセントリック12mm
《Sランク》
・Brandon 12mm
《A+ランク》
・Nikon O-12.5
《Aランク》
・Pentax O-12
・笠井 AP12.5mm
・笠井 HC-Or12mm
《B+ランク》
・スコープタウン Ke12mm
・Celestron Omni PL12mm
・ビクセン HM12.5mm
《Bランク》
・SVBONY WA-12mm

A+とAの差は小さく、A+のアイピースの方がよく見えるような『気がする』程度の差しかありません。条件によっては評価が逆転してもおかしくない微妙な差で、木星の表面模様はペンタOが一番見えると感じた時もあれば、土星は笠井APが一番見えた気がする時もあり、見る対象によっても順位が入れ替わるかも知れません。この4種でコンスタントに良く見えると感じたのがニコンOでしたので現時点ではこの様なランク付けとなっています。

またAとBも惑星の表面模様の詳細を見る事ができる解像力と言う点では殆ど差はありません。Bランクでもここまで見えれば十分と思えるレベルで、ブラインドテストで判別できるか?と言われれば見分ける自信は正直ありません汗;ただ例えばWA-12mmであれば木星の両端に色が付く、Ke12mmはゴーストが発生する、Omni PL12mmやHM12.5mmは木星などを見ると光条や迷光が目に付くと言った点で差を付けています。

またBよりAの方が例えば土星を見た時の本体の立体感や環の前後が判別し易いなどの表現力の様な部分で差を感じた事がありその点を加味していますが、低廉な中華製アイピース代表として比較対象に加えたOmni PL12mmや、子供の頃に見たイメージの再確認の目的で入手したHM12.5mmが高価なアイピースと比べてもそれ程遜色無く見えたのはある意味ショックだったかも知れません笑

一方Sランクですが、A以下のアイピースから交換した時にはっとするような見え味の違いを感じ、模様の詳細に関してはAでもBでも見えているのですが、Sのアイピースはそれらが見易い、くっきりあるいは立体的に見えると言った差を感じます。個人的には欧米アイピースを特に信仰してはいないつもりですが、評価の高いアイピースにはやはりそれなりの理由があるのかなと得心するところです。TMBとBrandonの差は特に明るさで、どのアイピースと比べてもまず明るいと感じさせるTMBはやはり特異なアイピースなのかも知れません。

これらのアイピースを見比べて感じたのは、今時普通に手に入るアイピースで、標準視界のクラシックアイピースと言う範疇であれば、これは見えない、使えない、と言う製品は殆ど存在しないのでは?と言う印象で(製造不良による個体差はもしかするとあるかも知れませんが、設計的にはおかしいものは無さそう)、ある意味初心者の方でも安くて良く見えるアイピースが手に入る良い時代になったのかなと思うところです。自分は特に鋭眼の持ち主ではありませんので、逆に言えば今のアイピースは安価な製品でも普通の眼力の人であれば高価なアイピースと比較しても差が殆ど分からないレベルには仕上がっている、と今回のテストでは言えるのかも知れません。

一方BrandonやTMBが他より良く見える、と感じた事も事実で、高くても良いので一本最上級の惑星用クラシックアイピースが欲しいと考える方には、現行品で入手可能なBrandonを買えば間違いないだろうと個人的には思うところです。それでも価格に見合う見え味かどうか気になる方は丁度国際光器でBrandonのデモ品がレンタル(それも現時点ではタダ!)されていますのでこれを利用してみるのも良いかと思います。

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本来はこの見比べは評価の高い欧米、国産のアイピースが良く見える事を実感したくて始めたつもりだったのですが、安価なアイピースと見比べる程、思った(期待した?)程の差が無い事が分かり、今時の低廉なアイピースの基本性能の良さを逆に実感する結果となりました。とは言え良し悪しの感じ方も個人差があるかも知れませんし、何度も見比べている内に評価が変わる事もありますので、あくまでご参考までです。

夕焼けと宵の明星 [お絵描き>風景]

前回より赤色成分多めの夕焼けを描いてみました。

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スコープタウン Ke12mm [天文>機材>アイピース]

12mmアイピース見比べ企画でこの焦点距離のケルナーの見え味も確認してみたくなり、谷ケルナーなどの中古品の入手も考えましたが、スコープタウンのケルナーは25mmを持っていて非常に良く見える事と、現行品の国産ケルナーと言う部分で応援する気持ちも込めて、このアイピースを新品購入しました。

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スコープタウンの日本製アイピースは31.7mm径と24.5mm径のラインナップがありますが、24.5mm径にしか存在しない製品もあり、この中でもKe6mmと12mmは鏡胴のデザインが他のラインナップと毛色が違った為、手持ちのKe25mmと製造が別なのでは?と気になって聞いてみましたが、両者とも同じ大一光学製との事でした。

見え味は予想通り良く見えますが、木星などを見るとゴーストが発生が目に付きます。これはかつて持っていたINTESのモノセントリックの見え味を想い出しますが、これと同様に対象と点対称の位置にゴーストが発生するので対象を中心から外せば重なりを回避できます。この部分が気にならなければ解像度はとても高い見え味ですので、惑星観望用にも適していると思います。

ビクセン HM12.5mm [天文>機材>アイピース]

12mmクラシックアイピース見比べ企画で古いアイピースに手を出してしまった事で、どうせなら子供の頃覗いてたミッテンゼーハイゲンスの見え味も確かめてみたいと思い、数あるMHの中で特に高級でも低廉でもない、ごく標準的な出来と思われたビクセンのHMを中古で(千円以下)手に入れました。

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アイレンズが他の12mmアイピースに比べると極小で、個人的にアイレリーフの短い、覗き難いアイピースは好みでは無いのですが、バロー併用の双眼装置越しに見ているせいか、見掛け視界も広くない事もあり(公称40度)、目を密着させなくても普通に視野を見渡せて思った程見辛くありません。

さてさて当時の見え味は?と正直全く期待していなかったのですが、覗いた瞬間、は?・・・良く見えるじゃん!?と一見他のアイピースと遜色ない見え味に衝撃を受けましたw 色々見比べましたが、ペンタOで見たNEBの微細な輪郭は・・・見えるじゃん!笠井APで見たカッシーニのキレの良さは・・・見えるじゃん!これ、レンズ2枚なんだよね??とミッテンゼーハイゲンスのポテンシャルの高さに驚く結果となったのでした。

迷光処理が若干甘いのかフレアが対象によっては目に付きますが、解像度そのものは現行のアイピースに引けを取りません。他のアイピースより特別良く見える、とまでは行かないかも知れませんが、普通に高倍率観望に耐えます。

本当はちょっと懐かしの見え味を確認したらすぐに手放すつもりだったのですが、鏡筒が高性能ならちゃんと期待に応えられるアイピースと分かり、初心に帰る、原点に立ち返る意味でこれは持っておこうかと思い直しました。アイピースの見比べなどに疲れた時にこのアイピースを覗くと何故か癒される気がします笑 心の故郷アイピース(←?)と言ったところでしょうか。