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LOMO K20x(顕微鏡用接眼レンズ、12.5mm相当) [天文>機材>アイピース]

LOMO(レニングラード光学器械合同、ЛОМОと表記)はロシアの光学機器メーカーで、Wikiによれば20世紀初頭よりそのルーツが存在し、第二次大戦後にはドイツに勝利した旧ソ連がツァイスの技術も取り込んで更なる発展を遂げ、カメラ、望遠鏡、顕微鏡などを開発製造し、今尚ロシアの宇宙開発、軍事面においても影響力を誇るロシア有数の光学工場との事です。今回はこのメーカーの顕微鏡用の接眼レンズを入手する事が出来ました。

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このメーカーの一般の天文ファンにも馴染み深い話と言えば、昭和の天文ファンなら誰もが知っているアメリカのパロマー天文台の口径5mのヘール望遠鏡を超える口径6mの反射望遠鏡BTA-6が1976年にゼレンチュクスカヤに建設され、その後長らく世界最大の望遠鏡として君臨していましたがこの望遠鏡を開発、建造したのがLOMOとの事で高い技術力が伺えます(望遠鏡としてあまり実力は発揮出来なかった様ですが)。

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LOMOの接眼レンズにはメーカー名が表記されていない事も多いですが、倍率を意味する「x」の表記が小さく上付きで書かれているのが識別する一つの手掛かりとなっています。レンズは見たところノーコートでこれで星がちゃんと見えるのか一抹の不安がよぎりますが、反射光を眺めるとレンズ表面が水面の様にとても滑らかそうに見えます。バレル径は23.2mmです。

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顕微鏡用接眼レンズの設計には謎が多いですが、この接眼レンズの様に若干古めの製品には「K」の文字を冠している事が多く、これは手持ちの顕微鏡接眼レンズではツァイスのPK20xやKpl20xにも当て嵌まります。このKの意味がずっと謎でしたが、Twitterのフォロワーさんのぼすけさん、Lambdaさんから教えて頂き、このKが「コンペンゼーション方式」を恐らく意味する事が分かりました。望遠鏡用アイピースで例えるならアクロマートハイゲンスに近い設計のようです。

このコンペンゼーションとはオリンパスのHPに解説が載っており、

1、コンペンゼーション方式
コンペンゼーション方式とは、対物レンズで発生する収差を、結像レンズ側で打ち消しあう補正方法です。
2、コンペンゼーションフリー方式
コンペンゼーションフリー方式は、対物レンズ、結像レンズそれぞれが個々に収差補正を完結する方式です。

との事で、PK20xやKpl20xなどが中心像は抜群に優れていますが周辺像に崩れが若干目立つ見え味でしたので、やはり望遠鏡の対物レンズとの相性が良くなかったと考えれば合点が行きます。

このLOMOの見え味に関しても周辺像はそれなり(それでもPKやKplよりは崩れは少ない)ですが、やはり中心像は非常に良く、木星の模様の詳細を見せる性能はツァイスのアイピースと遜色ありません。個人的にはしっとりとした柔らかい描写と言う印象で、迷光処理の面でも目障りな迷光は感じられず(横からの光の入り込みは弱い)、またロシア製と言う事で予測していた像の着色も特に感じられません。総じて良く見える接眼レンズと言えます。

自作 Hastings 12.5mm [天文>機材>アイピース]

EO(Edmund Optics)で販売されている3枚玉アクロマートレンズ、ヘイスティングス・トリプレット(Hastings-Triplet)の焦点距離12.5mmの商品を取り寄せて1群3枚のアイピースを自作してみました。

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このレンズの直径は8mmでしたので、8mmのレンズが収まっているアイピースの筐体を流用しようと探した結果、以前見え味の良さと面白い設計ながらも製造品質の余りの悪さに評価を断念して部屋に転がっていたDatyson PL12.5mmのレンズの収納部分が丁度8mm径で、レンズを入れた隙間を埋める8mm径の中空スペーサーをミスミで調達する事で(内部はつや消し塗装しました)31.7mm径のアイピースとして使用出来るヘイスティングスを自作する事が出来ました。

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天文ファンであれば1群3枚のアイピースと言えばヘイスティングスよりモノセントリックの名前がまず頭に浮かぶかと思いますが、今回はこのモノセントリックの開発の経緯について自分なりに調べてみました。

まず最初のモノセントリックはヒューゴ・アドルフ・スタインハイル(Hugo Adolph Steinheil)によって1883年頃に考案され、厚いガラスを貼り合わせた非常に特異な外観ですが、レンズの各曲面が同一の中心を持っており、モノセントリック(Mono-Centric:単一の中心を持つ)と呼ばれる由来となっています。

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この断面図を見て単一の中心、と言われてもピンと来ないかも知れませんので、図解すると、

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この様なイメージになります。(※実際はこの初期のスタインハイル・モノセントリックでも厳密には中心は一つではなく複数持っていたと言う話もあります)こうして見るとボールレンズアイピースの発展型、と捉える事も出来るかも知れません。

このスタインハイルの設計を改良したのがチャールズ・ヘイスティングス(Charles Sheldon Hastings)で、単一の中心を持たない、厚みが薄く左右対称な、シンプルな形状ながら優秀な設計として有名となり、視野は狭いながらも惑星用アイピースとしては不動の地位を築いたTMBのスーパーモノセントリックの原型とも言われています。

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一方Zeissでもモノセントリックのアイピースを開発していますが、これは1890年にエルンスト・アッベとポール・ルドルフによって開発されたトリプレットが原型となっており1911年にZeissの特許を取得して、その後製品化されており、現在では高いプレミアがついています。

形状としてはヘイスティングスとZeissのモノセントリックはとても似通っており、開発時期もほぼ同時期ですので開発競争などもあったのでは無いかと想像しますが、現在モノセントリックと呼ばれる1群3枚のアイピースは実は本来の意味(単一の中心を持つ)でのモノセントリックではなくヘイスティングスがその原型としてマニアには認知されているようです。

ですのでTMBスーパーモノセントリックもモノセントリックと呼称するのは語弊があるような気もするのですが、Zeissもそう呼ぶ様にこの様なトリプレットをモノセントリックと呼ぶのは慣習となっていたのかなと想像しています(モノセントリックと呼ぶのは間違いだ!と主張する方もいます)。

今回EOでヘイスティングス・トリプレットを単品で販売されている事を知って、モノセントリックを自作出来る!と考えたのですが、モノセントリックの名前の陰に隠れて中々表に出てこないヘイスティングスの名前をせめてこの自作アイピースには冠してみようと思ったのでした。

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実際の見え味ですが木星で他のアイピースと見比べると予想以上にかなり良く見える印象で、このレンズが入っていた袋のラベルにはMade in Japanの文字が記されていましたが、他の日本製の優秀なアッベやプローセルに比べても遜色無い、もしくはそれを上回る見え味です。モノセントリックと言えばゴーストが出易い印象で、TMBモノセンはコーティング技術で発生を抑えていますが今回のヘイスティングスはシングルコーティングとの事でしたので発生を覚悟していましたが実際には特に目立つ事も無く、一応迷光処理も施した効果も出たのかストレスの感じない観望が可能です。

今回のレンズは設計が如何に優れていたとしても特に望遠鏡用のパーツとして販売されているものではありませんでしたので、望遠鏡用のアイピースとしての使用に耐える品質、精度を持っているのかは未知数で、設計だけに期待して購入するのは一つの賭けでもありましたがその様な心配は杞憂である事が分かり、どちらかと言えば自己満足で作ってみたかったアイピースでしたが期待以上の実力で、今後の観望に向けて力強い武器が加わって楽しみが増えました。

PENTAX O-12 [天文>機材>アイピース]

このSMC PENTAXオルソ(以下ペンタオルソ、もしくはペンタOと呼称)は1980~90年代に製造されていたアイピースで国内は元より海外での評判も未だに高く、最も優れた惑星用アイピースを議論する際に引き合いに出される機会も多い、日本が生んだクラシックアイピースの傑作の一つと言えるかも知れません。

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焦点距離ラインナップは5mm/6mm/7mm/9mm/12mm/18mmで見掛け視界は42度、バレルサイズはツァイスサイズ(24.5mm)となっています。

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設計はtwitterのフォロワーさんのこもロハスさんに見せて頂いた資料(地人書館『天体望遠鏡のすべて'87年版』→その後自分でも手に入れました)にレンズ構成図が掲載されていますが、アッベを発展させたペンタ独自設計で、トリプレットの前群レンズの各曲面も異なるように見受けられ工夫が感じられます。

これ以降のペンタのアイピースはXP、XL、XO、XWと言った撮影用、又は広角やロングアイレリーフのレンズ枚数を増やした現代風高性能アイピースへの開発へとシフトしましたので、このペンタオルソはペンタが本気で作った最後のクラシックアイピースと考えるとマニア心が擽られます。

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またペンタの光学製品には御馴染みのスーパーマルチコーティングが空気に接する全面に施され、アイレンズからは黄緑色の深みのあるコーティング色が見て取れます。

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このアイピースとの出会いはヌプカの観望会でペンタ150EDで見た天王星がこれまで見た事のない凄い見え味で、もう少しシーイングが良ければ天王星の衛星を見る事も可能に思える程で、優秀な15cmアポだとここまで見えるんだと感銘を受け、ブランカ150SEDを購入するきっかけにもなったのですが、この時使われていたアイピースがペンタO-6でこの凄い見え味は鏡筒の性能も去る事ながらアイピースの性能のお陰もあるのでは?と感じたのが、このシリーズに関心を持ったきっかけでした。

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ただO-12を手に入れて我が家の数多の12mmアイピースと見比べた正直な感想を言えばやはりとても良く見えますが、惑星を見た時の中心像の見え味に関してはツァイスやTMBにはちょっと及ばないかな?と言う印象で、やはりツァイスであれば国産オルソと比べて一段木星の模様の詳細が見えてくる感じ、TMBの様な一見して明るく見えると言った際立つ特徴は個人的にはそこまで感じませんでした。優秀で真面目な国産オルソらしい透明感のある見え味、バランスの良さはある意味際立っていますが、そこから一歩突き抜けた個性の様なものが今一つ感じられず、自分の12mmアイピースランキングではA+ランク止まりとなっています。

但しこれは最上級クラスのアイピースと比べての印象であって国産アイピースの中で比べれば普通にトップクラスの見え味で、望遠鏡の性能を引き出すには十分に優秀なアイピースである事には違いありません。海外での評価は自分が思う以上に高く、ヤフオクなどで状態の良い個体が出品されると高確率で海外の業者が入札してきます。そのせいもあって中古相場は完全にプレミアが付いている状態です。

他に気付いたところとしては室内環境で周辺像の崩れ具合をチェックした際に、歪曲収差の無さでは顕微鏡用接眼レンズやCZJ 12,5-Oが最優秀と感じましたが、最周辺まで星を点像に結ぶ性能(非点収差や像面湾曲の無さ)に関してはこのペンタOが更に上回り、オルソスコピックの名に恥じない見え味で、PENTAXの技術の高さ、妥協を許さない姿勢が随所に感じられるアイピースと思いました。

ハイゲンスからの単レンズアイピース自作における焦点距離の選定 [天文>機材>アイピース]

究極にシンプルなアイピースと言えばレンズを1枚しか使わない単レンズのアイピースですが、個人的にはボールレンズに魅せられた一方でやはり元祖と言えばケプラー式望遠鏡であれば両凸レンズになるのかと思います。

ケプラー接眼レンズについての自作、考察についてはtwitterのフォロワーさんのLambdaさんがブログで書かれていますが、ケプラーの単レンズは両凸では無く平凸レンズを使用するアイデアもあったそうで、Lambdaさんはこちらを採用されていますが、ブログにも書かれている様に中心像は侮れない、むしろ独特の素晴らしい見え味との事で、自分も雑に自作した水晶玉アイピースを覗いた印象からしても良く見えるであろう事は想像に難くありません。

その様な訳で自分もケプラーの自作に興味が湧きましたが、ドロンドの場合はプローセルを単に半分にすれば良いと言う自作のし易さがありましたが、ケプラーにはこのアイデアは通用しません。アイピースを自作する時はレンズの調達よりもむしろ筐体、鏡胴の調達に頭を悩ませる事が自分的には多いですが、単レンズを上手く収める筐体の調達に難を感じて結局自作には至りませんでした。

そんな折同じくtwitterのフォロワーさんのnagano kinyaさんがハイゲンスの視野レンズを取り払う方法で単レンズアイピースを自作されて楽しまれている事を知り、確かにハイゲンスであれば視野レンズとアイレンズの保持が別々であり(自分の知る限り)、視野レンズだけを外してもアイレンズも一緒にポロっと落ちる様な事はありませんのでこれは単レンズアイピースを自作する手法としてはとてもシンプル且つ合理的ではないかと思いました。

問題は焦点距離を何ミリのハイゲンスを調達すれば、目的の焦点距離の単レンズアイピースが出来上がるのか、と言う点です。この場合目的の焦点距離は勿論12mmです笑。これを求めてみようと考察したのが今回の本題になります。

まず一つのレンズの焦点距離は誰でもイメージが湧くと思いますが、複数のレンズを使った場合のトータルの焦点距離はどうやって求まるのか、と言う部分が疑問で調べた結果、吉田正太郎先生の書籍(望遠鏡光学・屈折編)にヒントが載っていました。二つの光学系(二系)が光軸上に並んでいる時、前群レンズの焦点距離をf1、後群レンズの焦点距離をf2、前群と後群の間の距離をdとすると、二系の合成焦点距離fは、

f=f1xf2/(f1+f2ーd) ・・・①

となるそうです。今回の場合ハイゲンスですので、f1が視野レンズの焦点距離、f2がアイレンズの焦点距離、dがレンズ間隔として合成焦点距離を求める事が出来ます。

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ここでハイゲンスは倍率の色消しが成立する光学系の為、

d=(f1+f2)/2 ・・・②

の関係が成り立ちます。実際にはハイゲンスのf1:d:f2の比率は4:3:2、もしくは3:2:1との事で、ここから、

f1=2xf2 ・・・③ (視野レンズ焦点距離がアイレンズ焦点距離の2倍)

もしくは

f1=3xf2 ・・・④ (視野レンズ焦点距離がアイレンズ焦点距離の3倍)

と導けます。目的の『視野レンズを外して、アイレンズのみにした時に焦点距離が12mmとなる』、つまりf2=12を代入して求まる合成焦点距離のハイゲンスを調達すれば良い事になります。これらの式から最終的には、

③式が成り立つハイゲンスの場合 → f=4/3xf2

④式が成り立つハイゲンスの場合 → f=3/2xf2

となり、アイレンズのみの12mmの単レンズアイピースとするには、前者の場合16mm、後者の場合は18mmのハイゲンスを調達すれば良い事が解りました。

しかしここで調達に動き出したところで更なる問題が・・・と言うのはハイゲンス(ミッテンゼーハイゲンスでも可)で16mmや18mmのアイピースは中古市場でも余り見掛けないのです。16mmは殆ど見つからず、18mmはたまに見掛けますが、もし買ってみても視野レンズとアイレンズの焦点距離の比が2:1の設計なのか、3:1の設計なのかまでは窺い知る事は出来ません。

一か八かで買ってみて実測してみればどちらの設計かは分かるかも知れませんが、そこまでやるのもなあ・・・と言ったところで二の足を踏んでいるのが今の現状です(^^;

ただお手軽に単レンズアイピースを自作する方法としては可逆的な改造で新たな部品の調達も必要無く、細かい焦点距離に拘らなければ単レンズアイピースの見え味を楽しむ方法としては有用ではないかと思います。

星ナビさんで当ブログが紹介されました [天文>日記]

星ナビ2021年9月号の「ネットよ今夜もありがとう」コーナーにて当ブログを紹介して頂きました。

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「もっと宇宙の話をしよう!」のTaizoさんよりバトンを受け継いで(その節は大変お世話になりました<(__)>)星ナビ編集部さんより250文字程度の紹介文の作成を依頼されましたが、ウケ狙いは止めて極力無難な紹介とさせて頂いたつもりです笑。

このブログを始めたのが2015年の7月ですのでもう6年も経つんですね。機材ネタメインの内容ですので、機材欲が無くなればネタ切れとなる排水の陣でブログを続けてきましたが、ここを見て下さる皆さんのお陰で未だモチベは継続しています。いつも本当にありがとうございます。

これを機に更なる内容の充実を・・・と言いたいところですが、あまり背伸びはせずに身の丈に合った、それでも訪れて下さる人にとって少しでも新たな発見が見つかる様な内容を目指しつつ、何より自分自身が楽しんで書けるブログを今後も目指したい所存です。


自作50mm水晶玉ボールレンズアイピース [天文>機材>アイピース]

直径50mmの水晶玉を使用したボールレンズアイピースを自作してみました。

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ボールレンズの焦点距離の求め方は、焦点距離をf、ボールレンズの直径をD、硝材の屈折率をnとすると、

f=nD/4(n-1)

として求められ、今回は直径D=50mm、ボールレンズの材料は水晶ですので水晶の屈折率をn≒1.55とすると、焦点距離fは約35.2mmと求められます。

何故いきなりこんなアイピースを作ったかと言えば、かつてクチュールボール(Couture Ball)の名前で知られた光学ガラスのボール玉を使ったアイピースを知ってからボールレンズアイピースに興味が湧いて自作を模索したものの、自分が見比べたい焦点距離12mmのアイピースを作るには上記の式から導くと直径17~18mmのボールレンズが必要で、EOなどで取り扱われているBK7などの光学硝材で作られたボールレンズは直径10mmまでの商品しか取扱いが無く、それ以上のガラス玉が欲しいとなると安価な水晶玉しか入手が難しく、何よりボールレンズを31.7mm径のアイピースとして使用する為の鏡胴の調達が難だったので、とりあえずボールレンズアイピースがどの様な性能と特徴を持つのかを知る上で最も製作が容易な組み合わせを模索した結果、50mmのガラス玉であれば、2インチ(50.8mm)の延長筒に丁度良く収まるのでは?と考えて、Amazonで800円で手に入れた水晶玉に、既に持っていたボーグパーツ、50.8→M57/60AD【7425】に2インチホルダーSII【7504】を組み合わせる事で出来上がったのが今回のアイピースです。

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見た目的にボールレンズを使っている事をアピールする外観に仕上げたい狙いがありましたが、割と思い付きで作ったにしては収まりが良く出来たかと自画自賛しています。2インチホルダーSIIのアイピース固定ネジの先端にはテフロンチップが埋設されているので水晶玉にキズが付けずにホールド出来るのも密かなアピールポイントです。

問題の見え味ですが、ミニボーグ45ED鏡筒に付けて覗いたところ、安価な水晶玉だけに気泡やキズなどが入りまくりですがそこを避けるようにボールの取り付けを調整すると評判通り中心像は割と普通に見えます。目位置も割と寛容で覗き易いです。

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周辺像はそれはもう壊滅的ですがきちんとした視野絞りを作ってあげれば良像範囲は見掛け視界でやはり10~20度程度かと思いますが、惑星観望用としては使えるかも知れません。ネタアイピースとしては合格と言ったところでしょうか。

やはり水晶玉と言えばスピリチュアルな界隈向けに販売されている商品ですので、これを覗く事で運気を呼び込んだり、身体の調子が良くなったり、天体が映し出される事で地球外生命との交信も期待できそうな、霊験あらたかな効能も期待されます。

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冗談はさておきこの品質の水晶玉でここまで見えるなら、きちんと研磨された光学ガラスを使用したボールレンズアイピースであれば相当良く見えるのではないかと知見が深まったのが大きな収穫でした。

惑星デジタルスケッチ2021/06/22+ブランカ150SEDの実力について [天文>デジタルスケッチ]

この日は久しぶりに晴れたのでフンパツしてブランカ150SEDTマウント経緯台でお手軽出動させたところ近年稀に見る好シーイングで、これはスケッチ取らないと勿体無いと思い急遽メモスケッチを準備して記憶が薄れない内にデジタルで仕上げました。

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この時の木星で印象的だったのはガリレオ衛星の小ささで、シーイングが良ければここまで締まって見えるんだと驚きました。NEBが単なる太い縞ではなく、その中央に一際濃い細い縞が通っているのを確認できたのも初めてだったかも知れません。

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土星もスケッチでは表すのが難しいですが、この時はとにかく立体感を感じました。細かく煌びやかな衛星がたくさん見えたのも印象的でしたがメモを取っておらず、上のスケッチでは衛星の位置はうろ覚えです。

これまでブランカ150SEDの実力、高倍率での惑星の見え味に関して、TSA-120と比べて『恐らく』上回っている、条件が良ければ『多分』上回る、と言った想像や仮定を含む評価でしたが、今回の観望で先日のTSAで見た木星も良い条件だった事もあり、はっきりと150SEDの方がTSAを上回ると断言出来る性能を持っている事が確認できました。

これまでTSAに比べると150SEDの見え味は若干眠さを感じており、解像度では150SEDが上回るがシャープネスではTSAが上回る?と言う印象だったのですが、この日の見え味ではシャープさでもTSAに遜色無い15cmアポとしてまず真っ当な性能が出ていると感じました。以前観望会でPENTAX 150EDで観た木星や土星が15cmアポの見え味としてこれまで目に焼き付いていましたが、この日の150SEDの見え味であればそれ程負けていなかったと思います。

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ようやくこの鏡筒が信頼のおける性能を持っている事を確認できたのは大きな収穫でしたが、この判断が下せるまでに購入から一年半を待たなければならなかった事を考えると大口径アポの実力を引き出す難しさも改めて感じた次第です。

ビクセン SG-L01(天体観測用ライト) [天文>機材>その他]

これまで天体観望用のヘッドライトにはPETZL タクティカプラス(E49P)を愛用してきましたが、ブラスチック部品が割れて接着剤で直したり再び壊れたりなどかなりくたびれてきたので、天体観測用と銘打たれたビクセンのこのライトに買い替えてみました。

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パッケージを開封した時の第一印象はプラスチック部品の質感が安っぽく、これでこのお値段はいささか高くないです?と一瞬思ったのですが、少し使ってみて評価はがらりと変わりました。正に天体観測用のヘッドライトとしてとても良く出来ていると思います。ここでタクティカプラスとの違いを列記してみます。

《明るさ》
まずはこの製品の大きな売りとなっているライトの明るさ(暗さ)、やはりタクティカプラスと比べてみても最小光量はこちらが一段暗く、またライトの点灯が最小光量から始まるのが何より便利で、タクティカプラスが最大光量から始まり、最小光量にする為にスイッチを数回押して切り替える手間が必要だった事を考えると、暗順応した目をなるべく刺激したくない天体観測者の要望に応えた設計だと思いました。

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《光量の変更》
光量の変更はタクティカプラスは大→中→小→点滅と段階的にスイッチで切り替えていたのに対し、SG-L01は点灯状態からスイッチを押し続ける事で連続的に光量が変化し、光量が最大に達すると点滅してそこが上限だと知らせてくれます(上限を超えると暗くなって行き、最小光量になるとここでもお知らせで点滅します)。素早く明るさを変えられるのは前者ですが、好みの明るさに調整出来るのは後者のメリットだと思います。

《ライト色の切り替え》
赤ライトと白ライトの切り替えは、タクティカプラスは白色LEDの前に赤い透明プラスチックのシャッターを下ろす事で実現しているのに対し、SG-L01は赤ライト点灯時に素早く(2秒以内)再度スイッチを押す事で白ライトに切り替わります。逆に言えば白ライトでいきなり点灯させる事が出来ないのですが、後継製品のSG-L02では初期点灯色も自由に選べるそうです。

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《白ライトの照らし方》
白ライトで両者を比べると、タクティカプラスは真っ白なLED光に対して、SG-L01は電球色LEDとなっており、光り方もタクティカプラスは光が中央に集中して一部を明るく鋭く照らすのに対し、SG-L01は光の広がりが緩やかで広い範囲を均等に柔らかく照らす違いがあります。パーツの調整など手先の細かい作業をするには前者が向いており、機材の撤収や物を探す作業などでは後者が向いているように感じました。

また電球色は物体の色味が変わって見えますので、機材の色の確認が必要な作業には後者は不向きかも知れませんが、やはり電球色は目を刺激しないので天体観望中の使用には概ね適していると言えます。

《電池交換》
電池の交換はタクティカプラスは単四電池3本に対し、SG-L01は単三電池1本で済み、電池ホルダーの開け閉めの構造もSG-L01がシンプルで扱い易いです。

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どちらのヘッドライトも一長一短があり、両者の機能の違いをよく見極めた上でどちらのタイプが自分に向いているか判断する必要がありますが、やはりSG-L01のウリであるライトの暗さが他のライトには無い特徴であり、天体観測用として一歩抜きん出た存在のように思えます。

またビクセンからはSG-L01の後継の製品としてSG-L02が現在販売されています。大きな違いは電源で、L01は電池駆動ですが、L02はUSB充電式の内蔵バッテリー駆動で、個人的には充電式乾電池のエネループが好きだった事がありこれが使える前者を選びましたが、その様な拘りが無い方はL02の方が軽くて良いかも知れません。


Carl Zeiss Jena PK20x/w(10)(顕微鏡用接眼レンズ、12.5mm相当) [天文>機材>アイピース]

我が家の個性豊かな顕微鏡用接眼レンズの中でも一際イロモノ感が漂う外観を呈しています。CZJで無ければ手に入れる事を躊躇したレベルかも知れません笑。

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CZJなので伊達や酔狂で接眼レンズは作らないだろうと判断し、入手してみるとバレル径が30mmと言う事もあって、12,5-Oより設計、製造が新しく感じます。アイレンズのコーティングは恐らくシングルかと思うのですがマルチコートを思わせる深みのあるコーティング色をしており、12,5-Oのコーティングよりは明らかに反射が少なく上質に感じます。

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接眼レンズの後端にはレンズユニットが組み込まれており、スマイスレンズの類にも見えます。

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この接眼レンズを分解してみると、アイレンズ、視野レンズ、後端レンズの大きく3つのレンズユニットに分かれ、それぞれを電灯にかざして反射光の数を数えると、3-2-2と言った具合でした。つまりアイレンズは1群2枚の貼り合わせ、視野レンズは凸単レンズ、後端レンズは凹単レンズと言うトータル3群4枚構成ではないかと思われます。

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勿論望遠鏡のアイピースではこの様な構成は見た事も聞いた事もありません。更に面白いのは視野絞りがアイレンズと視野レンズ?の間に存在しますので、負の接眼レンズ(ハイゲンスの改良型?)、と言う事になるのでしょうか。

またこのままの状態ではバレル長が長くて双眼装置の内部に当たってしまう為、バレルに同焦点リングを取り付ける事で奥まで挿し込まれない様に調整しています。

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この様なヘンテコな接眼レンズが果たして星見に使えるのだろうか?と疑心暗鬼になりながら、それ程大きな期待も抱いていなかったのですが、例によってアポ屈折+Mk-V双眼装置で惑星を見てみるとまたもや意外、他のアイピースとの見比べでは木星の模様の解像力やコントラストの高さでは12,5-Oと同等でコーティングの差でトータルではこちらの方がワンランク上、つまり我が家の数多の12mmクラシックアイピースの中でもトップクラスの見え味と判断しました。但し周辺像は幾分悪化し、良像範囲は5割程度と感じましたが、これはアイピースの性能がどうこうと言うより望遠鏡の対物レンズとの相性の問題の様にも思えます。それにも関わらず中心像は抜群に良く見えるのには本当に驚かされます。

自分の中ではアッベオルソやモノセントリックと言った歴史ある優秀な設計がプラネタリーアイピースの完成形、と言う先入観がどうしてもあるので、この様なよく分からない設計の接眼レンズがそれらに比肩、もしくは凌駕するような像を見せてしまうと、設計以外のファクター、例えばレンズの研磨精度や透過率、均質性などと言った製造条件が、アイピースの性能にとってより重要なのだろうかと考えさせられます。

ツァイスともなればその辺りの気配りも抜かりないでしょうが、こうした製品を作ってしまうツァイスの、最善を目指す為には常識や慣習に囚われない柔軟な姿勢、懐の広さを改めて感じさせられた次第です。

木星デジタルスケッチ 2021/06/10 [天文>デジタルスケッチ]

今シーズンもようやく待望の木星土星の観望が出来るようになってきましたが、やはりこの時期はシーイングが悪く今一つの惑星像しか拝めていなかった中で、この日ようやく木星模様の詳細が見えるシーイングに恵まれたのでデジタルスケッチしてみました。

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昨年の火星のデジタルスケッチで試みた、一度紙に軽くメモスケッチを取ってからPCで本番を描く手法を木星にも取り入れて見ましたが、やはり情報量が多く描き応えがありました。

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やはり記憶のみで描くよりも正確な表現が出来たように思い、NEB内のモヤモヤした部分、少し青っぽいフェストーンなどがまずまず見た目に近い表現が出来たかなと思っています。

ところで今回使用したTSA-120は昨年誤って対物レンズ付近をベランダの手摺りに強打させてしまい、それ以降光軸に疑心暗鬼になってしまったので、これを解消する為にTOMITAさんに光学系メンテナンス+接眼部調整をお願いし、先日戻ってきてからの性能確認の目的もあって積極的に観望に出していたのですが、今回の観望、スケッチで全く問題なく調整、TSAの実力が十分に発揮されている事が確認出来て安心しました。

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メールでの対応もとても親切で光軸調整後の星像テストの結果も添付されていたり内容にも信頼が置けるものでした。メーカー以外にもこうした技術のあるメンテナンス業務を請け負ってくれる業者さんが居てくれる事はユーザーにとってはとても頼もしい事ですね。

2021年5月26日 皆既月食 [天文>日記]

今回の皆既月食は部分食の開始が早く、日没から見張っていて月の姿が確認できた時には既に大きく欠けていました。

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この事を予見して早めに望遠鏡を設置したのですが、暫く月観望をしていなかったので月の昇る位置を大きく見誤り、全く月が見えない位置にポジショニングしてしまい頭を抱える事に。そうこうしていると父親が二階ベランダでデジカメで撮ろうとしていたので、そんなんじゃ撮れないってー!あー撮れた撮れた!双眼鏡だともっと綺麗に見えるよ!などと遊んでいる内に食は進み、もうこのまま軽く済ませてしまおうかと思いましたが、日食とは違い月食は比較的時間的余裕がありましたので、意を決して望遠鏡を設置し直す事にしたのでした。

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今回満を持して持ち出したのがこのFL-90Sのオフセット双眼望遠鏡です。まだ細かいところが未完成ですが丁度皆既中の月の姿を見て、この望遠鏡のポテンシャルの高さを実感出来たのが収穫でした。これだけ見えてるならスマホコリメートでも結構写るのでは?と挑んでみましたがちょっと厳しかったです;

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今回の月食はスーパームーンと重なる珍しい現象だったとの事で、ニュースでの取り上げ方もいつもより大きく感じられ、コロナ禍で多くの人々がストレスに晒される中、癒しをもたらしてくれる天文趣味の有難さを再認識した次第です。

拡大撮影アダプター流用自作可変バローレンズ [天文>機材>バローレンズ]

個人的に高倍率観望は双眼装置+中焦点アイピース+バローの組み合わせで行うスタイルで、単眼での観望を殆どしない関係で現在短焦点のアイピースを持っていないのですが、それでもたまに単眼で高倍率を出したい状況でどうするかを考えた時に、やはり大量の12mmのクラシックアイピースを持っているのでこれを活かさない手は無いと感じ、単体の高性能短焦点アイピースに手を出すよりはバローで倍率を出す方法が自分にとっては得策と判断しましたが、個人的に12mmを3~4mm程度のアイピースとして使用したいと考えた場合、市販品でよく見かける3倍バローでは倍率が足りず、かと言って5倍では倍率が高すぎる事情から適当な倍率のバローの先端(レンズ)部分と適当な長さの31.7mm径のスリーブ延長筒の組み合わせで欲しい倍率を手に入れようと思い至ったのでした。

ネットで延長筒を物色していて目に付いたのが割とありふれた拡大撮影アダプターで、長さが可変なので倍率も可変できるのが魅力に感じ、これの光路長が丁度Mk-V双眼装置の光路長(120mm)前後だった事から、これに適合するバローとしてビクセンの2xバローが丁度良さそうに思えましたが、外観からこれと同じOEM製品では無いかと推測してより価格の安いSVBONYの2xバローを手に入れて、接眼側にはM42-31.7mmアイピースアダプターを取り付けてみたのがこちらです。

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これが短縮時、

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これが伸長時、

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となります。早速ミニボーグ50-BINOを使ってこの拡大率を測ってみます。

・バロー無し

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視野円の直系は約69.5mm、

Omni PL12mm+バロー(最短時)

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視野円の直系は約21.8mm、
よって拡大率は、69.5/21.8mm=約3.19倍

・Omni PL12mm+バロー(最長時)

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視野円の直系は約18.5mm、
よって拡大率は69.5/18.5mm=約3.76倍

この結果12mmアイピースを約3.2mm~3.8mm程度の間で使う事が出来、狙い通りの拡大率が得られました。弱点はこれを単体の短焦点アイピースとして使うには全長が長い事ですが、頻繁に使う機会は無いと思われますので臨時用としてはこれで十分かと思っています。

ユーハン工業 Tマウント経緯台 [天文>機材>架台]

ブランカ150SEDをもっとお手軽に使いたいと考えていた矢先に手動微動が可能な片持ちフォーク経緯台としては耐荷重において最強クラスと思われるこの経緯台を中古で見つけてしまい思わずポチってしまったのでした。

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この経緯台はメーカー直販の他、国際光器でも取り扱いされていましたが、エンコーダーが内蔵のものがT-REX経緯台、非内蔵のものがこのTマウント経緯台と大きく2つの機種が存在し、T-REXはエンコーダーユニットが一段間に挟まっている構造上、全長や重量がTマウントより長く重くなっており、エンコーダーが不要で架台にはシンプルさを求める自分的にはこちらが性に合っていました。

それでも最初に手にした時に感じた第一印象はやはりその重さ(アリミゾ、ハンドル込み約7.3kg)で、これまで触ってきた経緯台と比べると桁違いに頑丈、重厚です。それ故に安定感は抜群で150SEDを載せて振り回しても強度に不安を感じる事はありません。ただ口径の大きい鏡筒を載せる場合にはカウンターウェイトが必要になる事もあるかと思います。

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この架台でやや気難しいと感じたところがウォームギアの嚙み合わせ調整でほんの少し強めに締め付けただけで微動が完全に回らなくなります。APポルタGPなどではガタが出ないように気持ち強めに締め付けて、多少微動が重くなってもゴリゴリ動かせる使い易さがあったのですが(あまりよろしくは無い使い方かもですが)、その点Tマウントは調整が相当にシビアである意味余裕がありません。また鏡筒の前後バランスの崩れにも敏感で、バランスが偏った状態で微動を回すとガクガクとスムーズに動かず、如何にもギアに無理が掛かっているような嫌な感触が伝わってきます。個人的には双眼装置を外した状態等バランスがきちんと取れていない状態で微動させたい状況もありますので、その様な時は手でサポートしながら微動させますが、もうちょっと寛容に微動が動いて欲しいのが自分としては正直な感想です。

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ユーザー側でのウォームギアの嚙み合わせ調整はメーカーでも余り推奨はされていませんが、構造としてはギアボックスの外側の4つのキャップネジは引きネジ、その内側4つのイモネジは押しネジとなっていて、押しネジを緩めて引きネジを締めればギアの間隔は狭まり、逆に引きネジを緩めて押しネジを締めれば間隔は空きます。この締め過ぎず、緩め過ぎずの按配が超微妙な事に加えて、4つ×2セットのネジを均等に緩める/締める事を意識しないと偏った締め付けではギアボックスが斜めに固定されてしまい、よってギアも斜めに接触する事になるのでそのまま微動を回せば故障、破損の原因になります。よってしっくりこない、メーカーアジャストの状態から大きく狂った、もしくは傾き具合が分からなくなったと感じたら大人しくメーカーに調整に出すのが賢明と思います。

自分的にやや難を感じた点に細かく触れましたが、バランスがちゃんと取れていれば不都合無く使える上に、やはり片持ちフォーク経緯台としては唯一無二とも言える耐荷重の高さを考えれば大した事では無いのかも知れません。当初150SEDを載せる目的で、と思ったのですが試しに25cm反射(VX250L)を載せてみても普通に使えることが分かり(これにはちょっとびっくり)、我が家の重量級機材をお手軽に運用させてくれる架台として大事にしたいと思います。

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Edmund Optics RKE28mm [天文>機材>アイピース]

RKEのアイピースを調べていて一部マニアに絶賛されている28mmの「フローティングエフェクト(floating effect)」なる見え味がどうしても気になって、手に入れてみました。

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既に手持ちのTVのPL32mmと近いスペックですが、このアイピースに手を出したもう一つの理由として、PL32mmは31.7mm径をほぼフルカバーできる視界の広さを持っていますが、これが逆に対空双眼鏡や双眼装置、正立プリズムと言った接眼側の開口径が最大径より幾分絞られている機材に取り付けるとケラレが生じる為、こうした機材でケラれない範囲でぎりぎり広い視野、低倍率を得られるアイピースとしてこのRKE28mmの見掛け視界45度と言うスペックはより適していると判断した事がありました。

届いたこのアイピースを手に取ってまず中空に向けて覗くと何となく視野が迫ってくるような見え方に普通のアイピースと一味違う印象を持ちました。次にミニボーグ50BINOで昼間の風景を覗くとやはり非常に臨場感や立体感のある見え方をします。

これをTV PL32mmに替えてみるとやはりその様には見えず、所謂PLらしい真面目な、悪く言えば「面白みを感じない」「平坦な」見え味で、このRKEの独特の見え方は単に見口の形状の違いかも知れないと考えて、PL32mmの見口を全部外して覗いてみましたが、やはりRKEの様な臨場感のある見え方にはなりません。比べるとどうしても「狭い穴を覗いている」感じに見えます。

見掛け視界50度のPL32mmと見比べて、45度のRKE28mmは視野が狭く見えるはずですが、一見した時にどう見てもRKEの方が広く見えたので、たまによくあるカタログスペックと実際のスペックが違うパターンでこれは60度位あるだろうと当初本気で思いました。しかし他のアイピースとサイドバイサイドで見比べてほぼ公称値である事が分かり、広く見えたのは錯覚であった事が分かりました。

このこれまで感じたことの無い見え味にこれは結構スゴいアイピースなのでは?と星での見え味にも期待が膨らみ、APM10cm対空双眼鏡で星空を見たところ臨場感、像が迫ってくる感覚がより増したように感じ、違う言い方をすればアイポイントに目を置くとアイピースの存在が消える、と言う表現が近いかと思います。この像のみが見える感覚がフローティングエフェクトと言われる現象なのでしょう。心配していた周辺像も悪くありません。

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これは自分の見解ですが、RKE独特のカルデラ状の見口はきちんとした狙いがあり、やはりアイポイントに目を置いた時に視界周辺のアイピースの枠を目立たなくさせる効果を狙ったものではないかと思われ、RKE28mmではこれが見事にハマって稀有な見え味を実現させましたが、例えばRKE12mmではそこまでの効果は得られておらず、RKE8mmに至っては見口の周囲の山の出っ張りが邪魔で逆に覗き難くさせていると不評を買っているところを見ると、他の焦点距離でもフローティングエフェクトを狙ったものの効果が上手く出せなかったのではないかと推測しています(RKE21mmはどうなのかは分かりません)。

こうして考えると所謂ボルケーノトップ(Volcano Top、略してVTとも呼ばれる。「火山」の意)デザインと呼ばれる谷オルソに代表される見口が山の形状のアイピースもRKEと同様の効果を狙って作られたのかも知れないと思わなくもありませんが、残念ながら谷オルソ、谷エルフレを覗く限りではその様な効果を感じる事はありませんでした。ただ思い起こしてみると谷オルソ25mmはアイレリーフがかなり長く、少し浮いた感じがあったかも知れませんが、それ以前にアイポイントがシビアすぎてまともに覗く事が出来ず手放した経緯がありましたので、RKE28mmのシビア過ぎるとは感じさせないアイポイントの設計も巧みなのではと思わせます。

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その様な訳で自分も思わず絶賛するような感想になってしまいましたが、他の方が同じ様な印象を持つかどうかは個人差があるところと思いますが、自分的には非常に面白い、ユニークなアイピースを手に入れる事が出来て星を見る楽しみが増えたと喜んでいます。

ビクセン SSW14mm [天文>機材>アイピース]

31.7mm径の接眼部を持つ対空双眼鏡/BINO用のアイピースとして、これまで主戦力として使っていたXW20XWA9mmの2本により低倍率のRKE28mmが加わった事からXW20とXWA9mmの間のアイピースが欲しくなり、焦点距離は14mmが丁度良く感じて当初XW14を候補としていましたが、出来れば見掛け視界も70度と100度の中間の80度クラスが望ましいと考えて正にこの要求にズバリ適合するこのアイピースの存在を思い出し、既にディスコンに向けて処分価格となっていたのをこれ幸いと手に入れたのでした。

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事前にネットの評判を見ると目位置にシビアでインゲン豆現象が出易いとの評判が目に付きましたが、確かに目が近過ぎるとブラックアウトが生じ、離れ過ぎると全視野が見渡せない若干の気難しさも感じましたが、アイカップの出来が非常に良いのでピタリと来る位置に調整すれば覗き難さは特に感じなくなりました。

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個人的に気になっていたのは周辺像の崩れ具合でしたがAPM10cm対空双眼鏡で見る限りは視野周辺まで点像でとても収差補正は良好に感じます。何より気に入ったのが素直な像質で、とても透明感のあるヌケの良い像を提供してくれます。

これまで周辺像の収差補正と視野の平坦さ、像質の良さのバランスで、ストレスの少ない見え味と言う部分でXW20が個人的に絶対的な信頼感がありましたが、このSSW14mmも83度のより広い見掛け視界でありながらバランスの良さで負けていません。日本製と言う事もあってビルド品質の面でも非常に優れており、ネットのカタログ写真から受ける印象よりも高級感が感じられ、トータル性能でとても完成度の高いアイピースだと感じました。

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最近コンセプトや製品の長所、ウリが分かり難いとも噂されるビクセン製品ですが、個人的にAPのユニットにしてもA62SSにしてもこのSSWにしても実物を見ると良い物を作っていると強く感じるのですが、発売時の価格設定がどうにも高く見えて敬遠されてしまい製品寿命の終わり際に処分価格となったものが再評価されるパターンが多い気がするのがちょっと可哀想な気がします。折角良い製品を生み出す力は持っているメーカーと思いますので良いループに転換できる事を祈ります。


ミニボーグ50-BINO [天文>機材>望遠鏡]

ACクローズアップレンズBINOを構築した事でミニボーグ45ED-BINOと口径がほぼ同じBINOが2つになってしまった事からミニボーグ45ED-BINOの対物を60ED固定とする事で差別化を測っていましたが、ミニボーグ60ED-BINOとして運用すると最小目幅が68mmとなってしまい、他の人に覗いてもらうのが難しい点が不満に感じ、遂にここに来てEMS/EZMの導入を考え始め、EMSを導入するなら対物の口径もより大きく出来る事から更なる大口径のBINOの構築を検討する事になりました。

そこでEMSを導入するとこれまで使用していた2インチ正立プリズムが不要となり、これも最小目幅を縮める為に加工をお願いしたワンオフものとなっていた事からこれを使わなくなるのも勿体無く感じ、有効活用しようとACクローズアップレンズBINOを2インチ化する事を検討し始めました。

しかし試行錯誤した結果この組み合わせではバックフォーカスを出すのが難しい事が分かり、ここは思い切ってACクローズアップレンズBINOとは全く別にに2インチ対応の小口径BINOを作る方向に舵を切り、ボーグパーツにはやはりボーグの対物レンズが相性が良い事から、ディスコンが決まり在庫限りとなっていたミニボーグ50の対物レンズを急遽手に入れて、ミニボーグ45ED対物レンズよりも焦点距離が短い事からより広い視界が稼げるBINOとして出来上がったのがこちらです。

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片側の鏡筒部の構成は、

・ノーブランド 52mm→48mmステップダウンリング
・BORG ミニボーグ50対物レンズ【2050】
・Pixco マクロエクステンションチューブ(ボーグ互換延長筒)14mm
・BORG M57ヘリコイドS【7757】
・BORG M57/60延長筒S【7602】
・BORG DZ-2【7517】
・BORG 2インチホルダーSSII【7501】
・スタークラウド SC2インチ90°正立プリズム(目幅短縮仕様)

となりました。対物レンズフードの先端には2インチフィルターを装着出来るようにステップダウンリングを取り付けています。またミニボーグ50の対物レンズの色が黒に仕様変更されていた事からBINO全体の色が黒一色となり何となく味気が無かった事からボーグ互換延長筒部分と正立プリズムの加工部分に紫色のテープを貼り付けてアクセントを出してみました。

BINOのベースとなる台座パーツはACクローズアップレンズBINOに導入したMoreBlueの目幅調節装置の鏡筒の着脱方法がアリガタアリミゾだったので、今回のBINOの鏡筒にもファインダーアリミゾを取り付け、用途によって鏡筒を差し替える形で台座は兼用としています。

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このBINOでの使用アイピースは、

UF30mm(倍率8.3倍、見掛け視界72度、実視界8.64度)
イーソス17mm(倍率14.7倍、見掛け視界100度、実視界6.8度)
XWA9mm(倍率27.8倍、見掛け視界100度、実視界3.6度)

辺りを想定しています。今回は合焦機構がM57ヘリコイドSのみとなった事でピントの移動範囲が10mmしかありませんので、どんなアイピースでもピントが出る造りでは無くなってしまった事からイーソス17mmを使って無限遠でヘリコイドの中央でピントが出るように光路長を調整しています。

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見え味に関してはF5対物との事で広角アイピースでは周辺像が辛くなるところですが、UF30mmはこの部分の性能に特化した設計なだけあり良像範囲は9割程度あり、イーソス17mmの方も元々短焦点に強くこちらも9割程度の良像範囲がありますので覗いていて周辺像の崩れが特に気になる事はありません。

これらのアイピースの組み合わせの場合実視界が6度~8度超を実現出来ますので、視直径が5度以上あるような天体、例えばヒアデスやMel20と言った大きい散開星団の全体を俯瞰して見る事が可能で、ぎょしゃ座のM36、M37、M38をまとめて同一視界で眺めたり出来るなどこのBINOでなければ味わえない世界を体験できます。

このクラスの実視界は手持ちの双眼鏡であれば割と一般的なスペックですが、50mmの口径で超広角の見掛け視界と広い良像範囲を両立しているものは殆ど見当たらず、対空双眼鏡として架台に取り付けて楽な姿勢で天体を眺められる利点も併せると使用感は手持ちの双眼鏡とは全く別物で、倍率こそ近いですがやはり望遠鏡の範疇に入る機材だと思います。

総重量はL字プレート込みで約2780gでAPポルタとの組み合わせで準備も撤収も楽なお手軽双眼観望機材として今後活躍してくれそうです。

Leica 20x/12 10446356(顕微鏡用接眼レンズ、12.5mm相当) [天文>機材>アイピース]

天文ファンでもライカと言えばカメラや双眼鏡、フィールドスコープのメーカーとして多くの方に知られた存在ですが、顕微鏡の大手メーカーとしても名が知られており、自分的に顕微鏡用接眼レンズの天文用への流用を考える上でも外せない存在でした。

しかしやはり20倍の接眼レンズとなるとライカと言えども選択肢が少なく、例によってクラシックアイピースに類すると思われるものを物色して今回見つけたのがこの接眼レンズでした。

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この接眼レンズが開発された経緯やどの様な設計であるかなどはやはり調べても自分には分かりませんでしたが、30.0mm径の接眼レンズである事から比較的新しい製品と考えられ、外観を見るとやはりスマイスレンズの類は入っておらず、現代風の設計では無さそうなところを見ると、ニコンのE20xやUW20xと同年代(90年代頃)の製品かも知れません。スペックは20x/12と明記されていますので、望遠鏡換算で焦点距離が12.5mm、見掛け視界55度と導き出せます。

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外観を見て目を引かれるのはアイレンズの大きさで、望遠鏡用の12mmクラスのクラシックアイピースと並べてみても一際大きいです。またコーティング色も黄色系でギラギラと輝いているような、これも望遠鏡用ではちょっとありえない特徴ある外観を誇っています。筐体も金属は一切使われておらず、樹脂製の材質と思われますが、貧弱さや安っぽさは一切感じられず、またこのお陰で非常に軽い(約48g)仕上がりとなっています。

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見え味は例によってアポ屈折にバローを付けた双眼装置で惑星を高倍率で見た印象ですが、一目見てこれは良く見える接眼レンズだと感じました。ヌケとコントラストが良く上質な天文用アイピースと比べても互角以上の見え味に感じます。おまけに見掛け視界も良像範囲も広いですので見え味に妥協せずに経緯台でじっくり眺めたい時には自分の中では最適解に近い接眼レンズとなっています。

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ライカは何故か望遠鏡業界には参入をしていませんので、ライカの光学製品を天文用に流用するにはこうした手段を用いる以外にありませんが、ライカの歴史を紐解くと特に顕微鏡事業(ライカマイクロシステムズ)に関してはこれまで様々な企業(ワイルドやボシュロムなど)と合併して現在のライカグループを構成している様ですので、エルンスト・ライツ直系の開発製品であるかどうかは見抜くのは難しく、ライカの名を冠していても設計思想の異なる製品が存在する可能性がありますが、それらも受け入れる寛容さが必要となるかも知れません。

火星デジタルスケッチ2020 その2 [天文>デジタルスケッチ]

2021年に入ってもう一度くらい火星のスケッチが取れないかなと思ったのですが、視直径が小さくなった事も去る事ながら火星の仰角がどんどん上がって行って、ベランダからの観望が不可能になってしまったので昨年12月の残りのスケッチ分をアップします。

以下が12/14にFL-90Sでスケッチした火星です。

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横長の黒い模様は太陽湖からシレーンの海に掛けてに相当します。この時の視直径は12.6"と既に次々回(2025年1月中旬)の最接近時の大きさ(14.6")を下回っているに関わらず、小口径でもシーイングがそこそこならまだ模様を楽しめる見え味だった事から、例え今回の様な大接近ではなくてもちゃんと楽しめそうな感触が得られたのが収穫でした。

以下は12/27にTSA-120でスケッチした火星です。

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これまでTSA-120を使って火星のスケッチを取った事が無かったので、一回はこの鏡筒で取りたいと機会を窺って思いようやく得られたものですが、300倍超を掛けて観望しましたがやはり大分小さくなった印象が強かったです。ただ小さいながらもヘラス平原の白っぽい部分や一瞬シーイングが良い時は大まかな模様の輪郭までは判別出来そうな見え味でしたので、高性能の鏡筒に良好なシーイングに恵まれれば、やはり小さい火星でも十分楽しめるように思いました。

またこの時は先日の木星土星大接近で実戦投入した片持ちフォークSP赤道儀改で自動追尾での観望が出来たので、久々に見掛け視界の狭いTMBモノセンやKpl20xを観望に使えました。今後はこの架台による自動追尾での観望の機会も増えると思われるので、火星観望は暫くお預けとなりますが、今シーズンの木星や土星の観望がこれまでよりじっくり行えそうで、デジタルスケッチも少しでもレベルアップ出来るように頑張りたいところです。

Edmund Optics RKE12mm [天文>機材>アイピース]

このアイピースは知る人ぞ知る球形マウント卓上望遠鏡アストロスキャンを製造したEdmund Optics(以下エドモンド、もしくはEOと呼称)が設計したアイピースで、自分的にはケーニヒの設計のアイピースに興味が湧いて調べていた時に、この2群3枚構成でケーニヒに近い、逆ケルナーとも言えそうなこのシリーズを見つけました。

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RKEと言うネーミングからしてやはりリバースドケルナーの略では?と一見想像してしまうのですが、このアイピースを設計をしたDavidRank博士曰く、Rank、Kaspereit、Erfleの3氏(敬称略)の頭文字を取ったネーミングとの事です(Rank博士のケルナーと言う説もあるようです)。

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で、こんな設計のアイピースもあったんだで話が終わりそうだったのですが、調べると何とこれが現行品で、今でもEOのHPで普通に買える事が分かり、12mmの焦点距離が存在した事から即座に2本注文してしまいました。RKEの焦点距離ラインナップは8mm/12mm/15mm/21mm/28mmとの事でしたが現在は15mmはディスコンとなっている模様です。

形状はアイレンズの周囲が盛り上がって山になっているデザインが特徴的で、短焦点のモデルはこのお陰で覗き難いとの不満の声もあるようですが12mmは特に問題無く覗けます。ビルド品質は金属加工による微キズが散見されアメリカンな雑さを感じますが中華製のそれとは違い、質感がブランドンにとても似通っていて、安っぽさはありません。

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このアイピースの評判を調べると特に評価されているのは28mmのモデルで、アイレンズから像が浮き上がって、飛び出して見える独特な見え味が特徴的で、これはフローティングエフェクト、フローティングイメージ等と呼ばれている様です。他では得られない宇宙を直接覗き込むような体験が得られるとの事で、この見え味に魅了された方には唯一無二のアイピースとして手放せない存在となっている模様です。

RKE28mmが一部で絶賛されている一方で他の焦点距離の見え味についての情報が殆ど得られず、個人的にRKE12mmにも他の12mmクラシックアイピースでは見られない独特な見え味が得られるのではと期待した部分もありましたが、実際に惑星を見る限りでは特にそうした効果は感じられませんでした。

見え味に関しては短焦点のアストロスキャンとの組み合わせを前提に作られたアイピースとの話もあり、長焦点鏡筒との相性や高倍率での使用には不向きとされる意見も見受けられましたが、確かに合成F30程度の環境で覗いても周辺の歪曲が顕著に見受けられ、木星などが視野の周辺ではかなり楕円に変形します。ただ中心像は優秀で高倍率でも見え味に何の問題も感じられませんでした。

昨年のアイピース見比べでは見え味にこれと言った特徴が感じられなかった事からB+ランクとしましたが、その後の観望でとても見えると感じる時もあって、今はもうちょっと上でもいいかなと感じています。

海外の評判を見ると割と廉価な位置づけのアイピースの印象を受けましたが、その性能を高く評価するマニアの方も少なからず存在し、今では数少ない"Made in USA"の製品と言う事もあって設計もユニークですので、個性的なアイピースを求める方には惹き付ける魅力があるアイピースと思います。

片持ちフォークSP赤道儀改 [天文>機材>架台]

自分はベランダでの観望は手軽さを重視するので経緯台で観望する事が多いのですが、たまに赤道儀を持ち出してモータードライブで自動追尾するとその楽さに改めて感激する事が多かったので、経緯台の手軽さと赤道儀の便利さを両立させた架台があればなあと考える事が多くなりました。

自分的に赤道儀の使用が億劫に感じる最大の理由がバランスウェイトの存在で、片持ちフォーク経緯台を好んで使う理由もウェイトが無くてもバランスが取り易い理由によるもので、どんなに優秀な経緯台であってももしウェイトの使用を余儀なくされれば自分にとっては赤道儀を使った方が良いと言う判断になります。

その様な訳でウェイトを使用せずに自動追尾できる架台を考えた場合に、片持ちフォーク経緯台を北に傾けて、水平軸をモーター駆動できれば実現出来そうと考え、ここで思い付いたのがこれもFL-90Sと同様に学生時代から使っていて想い入れがあったものの現在使い道が無く、物置に眠っていたビクセンSP赤道儀の活用でした。

結果としてSP赤道儀の赤経体のみ使用し、フォーク部分は丈夫さには自分的に定評があるAPM10cm対空双眼鏡用L字プレート、上下微動の微動体はAPZポルタの手動モジュールを流用する事で出来上がったのがこちらです。

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補強策としてAmazonで見つけたコーナー金具を一箇所ネジ穴を開けてL字プレートに取り付けたところ格段に強度が上がり、これでTSA-120を載せても運用出来そうな目途が立ちました。またこの運用の場合極軸望遠鏡が不要になりますので外した上でφ55mm径のレンズキャップがこの部分の蓋としてジャストフィットしています。

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SP赤道儀を久々にモータードライブで動かす上で手間取ったのがクラッチの調達でした。GP赤道儀用とSP赤道儀用のクラッチでは微妙に仕様が違っており、当初GP用を使おうとしたところギアが装着出来ず、家宅捜索してSP用を発掘して事無きを得ましたが、GP用が取り付かなかった原因は赤道儀の微動ハンドル取り付け部分の平らに削られた部分の深さがSPは浅く、GP用クラッチを使うとイモネジが長すぎて飛び出るのが原因で、短いイモネジを別途調達できればGP用でもSPで使えるのではないかと思われます。

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この架台の弱点は鏡筒を北に向けられない点ですが、南向きのベランダでの使用に限定すれば問題とはならず、はっきり言ってメリットしかありません。架台全体の重量も相当軽く、経緯台と変わらないお手軽さで自動追尾の恩恵も受けられる自分にとっては本当に便利な架台が出来上がり、何より思い入れの深いSP赤道儀に再び活躍の場を与えられたのが嬉しく感じられました。

後で調べると同じ様な試みをされている方は何人も見受けられ、既製品でもこの様な架台が既に存在する事は薄々知ってはいましたがその使い道は今一つ理解していませんでしたので、今回自分なりにこの解に行き着いた事でその意義をより深く実感出来た気がします。


2020/12/21 木星-土星超大接近デジタルスケッチ [天文>デジタルスケッチ]

実は最接近の21日は観望が出来ず、じっくり観望してスケッチが取れたのはその前後の20日と22日となりました。

以下12月20日のスケッチです。この視野円の大きさ(実視界)は0.42度となっています。

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気合を入れて寒い中TSAを持ち出したもののシーイングが今一つで正直このスケッチほど惑星はシャープでは無く、実際はもっとユレユレでボケボケでしたが絵で表現するのが難しく、もしシーイングが良かったら、と言う想像も混じったスケッチとなったかも知れません。

このスケッチではガリレオ衛星が5つあるように見えますが、木星から一番遠い光点はHD191250と言うやぎ座の7.5等の恒星で、この世紀の超大接近にしれっとガリレオ衛星に成りすましていたのが面白かったですwこの日はこの恒星も含めて土星から木星までの星の並びで数字の「7」を思わせるアステリズムが形成されていたのも(但し鏡像で)楽しませてくれました。

以下は最接近の翌日、12月22日のスケッチです。この視野円の大きさ(実視界)は0.23度となっています。

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やはり一段と木星と土星が近くなり、約250倍でも余裕で同一視野に収まって見えました。この日はFL-90Sに口径を下げたものの低空の割にシーイングが良好で、20日にTSAで見たよりも詳細が良く見えました。ただ20日はタイタンがかすかに見えていましたが、この日は視認する事が出来ませんでした。

割と最近始めたデジタルスケッチですが、じっくり観望した上で記録としても残せるのは自分にとっては一石二鳥と言ったところで、今シーズンの木星、土星の観望の締め括りとしては一生の想い出として残る、最高の体験が出来たと満足しています。

2020/12/21 木星-土星超大接近 [天文>日記]

ここまでの接近は397年ぶりとなった木星と土星の世紀の超大接近ですが、普段視界が限られたベランダで惑星観望している自分的に木星土星の観望は10月頃で一段落し、その後火星の観望に注力していたので12月の下旬になっても木星土星がまだベランダから見えるのかどうかが不透明で、もしベランダから狙えないならお手軽観望で済まそうかなどと、この時点ではそこまでこの現象を熱心には捉えていませんでした。

しかし火星も次第に小さくなる中でこの現象が更にクローズアップされて改めて木星土星の位置を確認すると、確かに高度はどんどん下がってきていますが、それと同時に冬至に向かって日の入りもどんどん早くなっていったので当日ぎりぎりベランダから見えそうな希望が見えてきました。

ベランダで見られると分かれば俄然やる気が湧いてきて、基本写真はしない自分もスマホで撮ってみたいと考えましたが、高倍率の惑星をスマホで撮るのは自分には困難と思われたので、少ない観望時間をなるべく直接目に焼き付けたいとの思いもあり、そうだ、こんな時こそスケッチを取ってやろうと思い立ち、準備を始めたのでした。

以下最接近の一日前の12月20日に予行演習として観望している様子です。

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この写真ではかろうじて木星と土星が分離して見えていますがやはり非常に近いです。150倍の倍率でも同一視野に捉える事が出来てこれは凄いと感じ、急遽両親を呼び寄せてあまり関心が無さそうでしたが、これが如何に貴重な現象かを熱弁する事により多少満足してくれた様子だったので自分も満足しました。

これで翌日の最接近もより楽しみとなりましたが、この日のー5℃の気温の中での観望で少し風邪を引いてしまい、肝心の21日の観望はチラ見しかできず残念でしたが、実は22日も21日と殆ど変わらない接近具合なのを事前調査で知っていたので、目標を22日に切り替えて体調の回復に努めました。

以下、22日に再度挑んだ様子ですが、やはり20日よりは接近していてこの写真では分離しているように見えません(僅かに2つに見える??)。

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望遠鏡では250倍でも同一視野に収まっており、改めてこれは凄いと再び両親を呼び寄せて、20日との位置の違いや大きさの違いを体感してもらって、この貴重な体験を分かち合う事が出来て嬉しかったです。

幼少から惑星、特に木星と土星を眺めるのが何よりも好きだった自分にとっては正に夢の競演と呼ぶに相応しい光景で、こんな事が現実に起こるんだなあと不思議な感覚に見舞われ、少しでも記憶に刻み込んでおこうと、低空で隣家の屋根に隠れるまでの短時間でしたがその姿を堪能していました。

この時の接近の様子をスケッチしたのがこちらです。

LED 光拡散キャップ 3mm 赤(SD-1減光対策用) [天文>機材>アクセサリー]

赤道儀用のモータードライブとして使用しているSD-1コントローラーですが、駆動確認用の緑発光のLEDが眩しく観望の妨げになる事が多く、観望会に持っていった時に話題になった事もあって何か手を打つ事を考える事になりました。

最初赤セロハンでも貼ろうかと思いましたがもっとスマートな方法は無いものかと調べていて見つけたのがこのキャップでした。

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3mmのものを購入しましたが、SD-1のLEDにぴったりサイズで特に接着などしなくてもただ被せるだけでしっかり食い付いており、通常使用で取れる事はまず無いと思います。

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このキャップを装着してSD-1の電源を入れるとLEDの明るさが減光されると同時に色もアンバー(橙)色となりました。

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天体観望において暗順応を妨げないライトと言えば赤色のものが昔からの定番ですが、LEDが普及して必ずしもベストな選択では無くなったとの意見も見受けられ、赤色の代わりにアンバー色のライトを推奨する意見も最近見受けられるようになりました。現にビクセンから天体観測用として電球色のヘッドライトも販売されています。

このキャップを被せただけで緑色のLEDが適正な色(特性)となっているかは厳密には分かりませんが、以前はとにかく目に刺さる眩しさだったものが、非常に目に優しい光に変化を遂げ、観望の妨げとなる事が殆ど無くなり、確かにアンバー色の視認性と目の優しさを両立させたライトの有用性はあるように感じられ、この色のヘッドライトにも少し興味が湧いた今回の試みでした。

復活のFL-90S [天文>機材>望遠鏡]

我が家で最も古い天文機材、高校時代から使っているFL-90Sですが、FC-100DLを手に入れて以降出番がめっきり減ってしまい、同じF9の2枚玉フローライトと言う点でキャラクターが被っており、より口径の小さいFLを手放す事を何度も考えたのですが想い入れの深い鏡筒なのでどうしてもそれが出来ず、一方最近TSA-120APZポルタで使うようになって格段に使用機会が増え、逆にFCの稼働率が下がっていった事から、ここは思い切ってFCを手放して、更にブランカ70EDTも手放す事で、小口径アポはFLで一本化しようかなと考え始めました。

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とは言えFCもブランカも性能に信頼の置けるお気に入りの鏡筒ですので、FLが優秀な鏡筒である事は分かってはいましたが、これらを手放しても後悔しない惑星観望性能を有しているかを改めて確認する事としました。

しかしFLを使わなくなってしまったのは別の問題もあって、このFLは純正接眼部を社外2インチ接眼部に換装させる際に加減が分からず鏡筒を切断し過ぎてしまい(約10cm)、これを補う為に8cmの延長筒を付けると言う本末転倒な運用を余儀なくされていましたが、Mk-V双眼装置4.2xバローを付けて観望しようとするとこれでも長さが足りず、惑星観望に十分な高倍率が出せなかった事から積極的に使う事が無くなっていったのでした。

そこで今回ボーグパーツを使って長さを可変できる延長筒を作る事を思い立ち、折角なので2インチ固定部分もバーダーの2インチクリックロックを採用する事で程よい長さでアクセサリーの着脱も格段にスムーズになり、更にフォーカサーは奮発してフェザータッチフォーカサーを奢っていた事からピント合わせの感触も抜群で、接眼部の使い勝手に関してはFCよりも上回る仕上がりとなったのでした。

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FCと同等の倍率が出せるようになって惑星の見え味を公平に見比べる事が出来るようになりましたが、やはり口径1cmの差がありますのである意味当然ですが絶対的な見え味ではFCが上です。ただFLも12mmアイピースに4.2xバロー使用で280倍超と口径の3倍以上の倍率を掛けても像は破綻せず、火星の割と細かい模様も識別できるレベルで、ビクセンの誇る名機と呼ばれるFLの光学性能の高さも改めて感じる事になりました。

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何れにしてもFLは個人的に絶対に手放せない鏡筒の位置づけですので、FCに勝とうが負けようが機材整理の方針には変わりが無いのですが、この結果を受けて踏ん切りがつきました。30年前の鏡筒が最新アポと渡り合える実力を持っている事は驚くべき事で、8cmクラスのサイズ感と10cmクラスの見え味を両立させた鏡筒と考えると個人的な想い入れを抜きにしても高い実用性を持つ鏡筒と言えると思います。

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その様な訳で幾度もの売却の危機を乗り越えてメイン機材として返り咲いたFLでしたが、天文機材、特にレンズ回りに関しては良い物を選べば古い製品でも時代遅れにならない、価値が失われない点も天文趣味の奥の深いところで、高性能を謳った新製品に目を光らす一方で、古くても真に価値のある製品を見抜く目も養っていければこの趣味の楽しみの幅もより広がるのではと感じる次第です。

2020年12月13日 月-金星接近 [天文>日記]

12月13日の明け方月齢28の細い月と金星がかなり接近しました。

太陽を覗くと明るさトップ2の天体のランデブーでしたのでスマホコリメートで撮影してみました。以下は時刻5:30頃、鏡筒はFL-90SACクローズアップレンズアイピースを使用。

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地球照もよく見えていました。

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普段は天体写真を撮ろうとは思わない自分ですが、天体イベントに関してはこうして記録に残せるのは嬉しいですね。

Meade SP12.4mm(日本製) [天文>機材>アイピース]

手持ちの多種多様な12mmのクラシックアイピースを見返した時に、プローセル系に限定すると、独自の改良設計で高性能を目指したBrandonニコンO、そして低廉なセレストロンやGSOなどの中華プローセルに対して、日本製の真面目に作られた、言わばリファレンスと呼べるようなプローセルが無い事に気付き、自分の中でこれに該当するのがテレビューのプローセルでしたが12mmはラインナップされていない為、代替と言う訳ではありませんが、既に20mm40mmを使ってきてその基本性能の高さは自分の中では折り紙付きの、この日本製のMeade4000シリーズ、スーパープルーセル(SP)の12.4mmを加える事となりました。

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他のプローセルと比べるとアイレンズ、恐らく視野レンズも凹面となっているのが特徴で、もしかするとテレビューのプローセルを真似た設計なのかも知れません。現にこの当時はテレビューのナグラー(見掛け視界82度)、パンオプティック(68度)、プローセル(50度)のラインナップに対してMeade 4000シリーズはウルトラワイド(84度)、スーパーワイド(67度)、スーパープルーセル(52度)のラインナップで真っ向勝負を仕掛けていた時期でしたので、設計もテレビューを真似ていたとしても不思議ではありません。

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因みに以前の投稿で触れたようにMeade4000シリーズのスーパープルーセルは発売当初は3群5枚の恐らくアストロプラン設計で、ゴム見口の無いこのタイプは海外ではSmooth Sideと呼ばれています。その後標準的な2群4枚構成となり、ゴム見口が装備された今回手に入れたタイプ(画像では見口を外しています)に変更され、更にその後生産国が日本から中国へと変わっていく事になります。日本製か中国製かの区別は鏡胴かバレルに刻まれたJapanかChinaの刻印の違い以外の外観は同一の為、中古で手に入れる際は気を付ける必要があります。現行品は印字が白となりましたので区別が付き易くなりました。

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性能面で日本製と中国製で差があるかどうかは正直分かりません。製造品質は明らかに日本製が上ですが(中華製SPは一見同じ外見に関わらずかなり安っぽく感じます)、手持ちの他社低廉中華プローセルの侮れない光学性能を見る限り、それ程見え味が変わらない可能性は十分にあると思います。それでも造りの丁寧さでは日本製が圧倒的に上ですので、迷光処理など光学性能以外の部分で優位な部分があるかも知れませんので、ここは日本製に拘りたいと思います。

実際の見え味は惑星を見る限りでは当然と言うかとても良く見えます。ただ自分的にはこのアイピースには多大な期待を寄せていたので、自分のランキングで言うところのA+ランク(ペンタO、ニコンOレベル)に入るレベルではと予想していましたが、何度か見比べてそこまでではなさそうな印象で現時点ではAランクとしました。ただ日本製の良質なプローセルが欲しいと言う自分の要求には十分に適う、当初の目的通りリファレンスとしての役割を果たしてくれているアイピースです。

火星デジタルスケッチ2020 [天文>デジタルスケッチ]

今年は火星観望をかなり楽しませてもらっています。火星の場合は木星や土星と違い、固定した地形が存在、視認できる事から模様を適当に描く事ができず、当初スケッチを取る事は考えていなかったのですが、今年の火星はベランダからも手軽に観望できる点でも滅多に無い好条件でしたので、このチャンスを逃すと暫くはスケッチを取れる様な機会は訪れないと思われた為、意を決して一旦紙にラフスケッチを取ってからPCで描く2段戦法を取る事で火星のデジタルスケッチに挑んでみました。

以下がブランカ150SEDで見た火星、

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流石は15cmアポと言った見え味で、10月6日の最接近を過ぎたばかりだった事もあり(視直径22.4秒)、オーロラ湾から延びるマリネリス渓谷が判別できるなど結構細かい模様まで見えていました。笠井のHPに書かれている「400倍を超える過剰倍率でも、余裕でシャープネスを保つハイレベルな結像性を示します」と言う150SEDの宣伝文句も誇大では無いと思いました。

以下は最近久々に引っ張り出したビクセンFL-90Sで見た火星、

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ブランカ150SEDには及びませんが、9cmでも思いの外良く見えました。ステラナビゲーターなどで火星の地形図を確認するとシレーンの海とキンメリア人の海の間は黒い模様が切れている表示になっているのですが、今シーズンの火星を見る限りはこの間は黒く繋がっていて横に長い模様を形成していました。

同じくFL-90Sによる火星、

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この時はこの数日前にマリネリス渓谷周辺から発生したダストストームが周囲に広がり始めたところで、ペルシャの海の上空付近に黄雲が漂っている様子を捉える事ができました。尚スケッチ画像に世界時(UT)と日本標準時(JST)の2つを記述している理由は、自分が火星の地形を確認する際に用いているステラナビゲータとWinJUPOSと言う2つのソフトの時間入力がそれぞれ日本標準時と世界時となっており、時差を暗算するのが面倒なので併記している次第です。

更にFL-90Sによる火星、

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これまで適当に望遠鏡を出していたのでかの有名な大シルチスを拝む機会が中々無かった事から、今回は時間を調べて観望に挑んで正面に捉える事ができました。この時はF9の屈折には明らかに過剰倍率となる6xバローを試しに付けて観望していましたが破綻はしておらず、単位面積当たりの光量が多い火星は倍率を掛け易いとは言え、口径の4倍を耐えるならやはりかなりビクセンFLも優秀な光学系ではないかと思いました。ただこれはアイピースのお陰もあり、国産アイピースよりもZeissのアイピースがやはり一段模様が細かく見えるので、今年の火星のスケッチは最終的にはこのアイピースに頼る事が多かったです。

今回の火星のスケッチでは一旦紙にラフをメモ書きしてからPCで描く方法がまずまず上手く行った気がしましたので、今後は木星や土星のスケッチにも応用していければと思っています。

天体デジタルスケッチのススメ [天文>デジタルスケッチ]

最近萌え絵や夕焼け絵を描く要領で手描きで惑星を見たイメージを再現する事を試みています。但し自分の場合スケッチとは言っても模様を正確に写し取る事はあまり考えておらず、この鏡筒でこの条件では眼視ではこの位見えると言った望遠鏡の性能を知る参考になる事を目的としたスケッチの為、詳細は雰囲気で仕上げています。ソフトはSAIとPhotshop Elements11を行ったり来たりして描いています。

以下は2019年にFC-100DLで見た土星のベストイメージを描いたものです。

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以下は小口径に過剰倍率を掛けたイメージを表現しようと思い、Zeissの5cmアクロ(C50/540)にバロー連結で300倍以上の倍率を掛けたものですが、対物レンズの性能が想像以上に優秀で口径の6倍以上の倍率にも関わらず思った程破綻しませんでした。

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この様なデジタルスケッチを描くきっかけとなったのはシーイングが劣悪の条件で惑星観望をしていた時期に、Twitterでフォロワーさんがアップされた惑星画像にシーイングが悪くてダメダメとコメントされていてもしっかり模様が写っており、自分が悪いシーイングで見る惑星のイメージとはかけ離れていた為、こっちの地域とフォロワーさんの地域では同じ「シーイングの悪い」でも相当な違いがあるのでは?こっちのシーイングの酷さを知って欲しいと考え、伝える方法としてこれを手描きする事を思い付き、出来たのがこちらです。

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もっと酷かった様にも思えますが(下手すると環が判別できない時もあった気がします)これで多少は気が晴れた一方、惑星の見え味を手描きで表現するのは面白いと感じ、風景絵を描くのに比べれば描画する領域が圧倒的に小さいので早い時間で書き上げる事が出来、最近ネットで見掛けるアマチュア天文家の方の惑星写真のレベルが非常に高いが故に、どう見ても眼視ではそこまでは見えないだろうと感じるものも多かった事から、眼視のイメージの忠実再現を目指したデジタルスケッチに挑んでみようと思い立った次第です。

以下、FC-100DLで見た木星、

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以下、ブランカ70EDTで見た木星、

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以下、ブランカ150SEDで見た天王星です。

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何れも「Mirror Image Sketch」となっているのは天頂ミラーを使っているので裏像で見ていますので、左右反転して正像とする事も簡単なのですが、眼視では天頂ミラーを使ってみる事が一般的ではないかと思いますので、自分が見たままのイメージを残そうと思いこの様になっています。

自分は写真が撮れないので観望の成果としてアピールするものがこれまでありませんでしたので、ようやくお絵描き趣味を真っ当に天文趣味に活用できて、またもし当該望遠鏡を覗いて惑星がどの様に見えるのか少しでも参考になれば嬉しい限りです。

Carl Zeiss Jena 12,5-O [天文>機材>アイピース]

12,5は12.5の誤表記ではありません。ドイツ(EU?)圏では小数点はピリオドではなくカンマ表記なのでここでもその様に表記します。

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通称CZJ(オルソ)と略される元祖オルソスコピックなアイピースですが、このアイピースに関してはZeissに関してはニワカな自分が多くを語らない方が良いかも知れません。自分がこのアイピースを入手するに当たって参考とさせて頂いたのは恐らく多くの天文ファンにお馴染みの鈴木さんの『ツァイス望遠鏡の展示室』HPで、この中の「Zeissアイピースの変遷」と言うコーナーにZeissの望遠鏡用アイピースの変遷や特長など詳しく丁寧にまとめられています。

こちらの内容から判断するに、自分が手に入れた2本の12,5-Oは80年代前半のモデル(見口周辺がザラザラの仕上げで12,5-Oの印字が上面)と80年代後半のモデル(見口周辺がザラザラの仕上げで印字が本体側面)と言う事になりそうです。便宜上これらを前期モデル、後期モデルと呼称します。

両方のモデルを見比べると前期モデルがずっしり重く感じられ実測で91g、後期モデルは53gと真鍮素材とアルミ素材の使用の違いが表れています。アイレンズの位置は前期モデルが僅かに浅く、後期モデルは見口上面から深い位置に存在する為クリーニングが難しいです。またアイレンズの曲率にも違いが見受けられ、前期モデルの方が比較的平坦に見えます。コーティング色はどちらもブルーのシングルコートと思われます。

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自分も1年程海外の中古市場を彷徨っていた感想で言えば、CZJオルソ(O-8に関しては東西ドイツ統一後の製品の様ですのでCZ「J」では無いと思われますが)の入手難度は

O-8>>>12,5-O>>4-O、6-O>25-O>10-O、16-O

と言う印象で、12,5-Oの入手難度は非常に高いと感じました(O-8は見た事がありません)。また中古相場も高く、状態が良ければ海外市場でも500ユーロは下らないかも知れません。12mmクラシックアイピースの見比べを行うに当たって、どうしてもツァイスのアイピースを加えたかったと言う想いから入手検討を始めましたが、ZAOには12mmの焦点距離は存在しない為、CZJに目を付けるしかなかったのですが、この時ばかりは12mmに拘っていた自分を呪う事となりましたσ(^_^;)

その様な訳でこれを2本入手するのは骨が折れましたが、当初からいくらなんでも古すぎると言う先入観が拭えず、よって実は見え味にはそれ程期待しておらず、海外の評判は高かったですが、Zeissにはただならぬ想い入れを持ったエンスージアストの方も多いので、一般人から見るとバイアスが掛かった評価なのでは?とやや穿った目線で見ていました。

その一方で同じCZJの望遠鏡用対物レンズのC50/540を手に入れて、その上品な造りと優秀な見え味から古いものでもきちんと作られたものは全く現在でも通用する性能を持っている事も認識していたので、我が家の数多の12mmクラシックアイピースの中でどこまで健闘できるかは楽しみでもありました。正に見せてもらおうか、CZJのオルソスコピックの性能とやらを!と言ったところです。

見比べは主にFC-100DLTSA-120ブランカ150SEDと言った鏡筒で双眼装置バローを付けて行いましたが、他のアイピースからこのアイピースに交換した時にえっ!?と驚きました。それまでシーイングのせいと思っていたややぼんやりとしていた木星や火星の模様の詳細がぐっと浮かび上がってくる感じに見えるのです。やや像が暗く、色合いが黄色っぽい気もしましたが、中心解像度は間違い無くトップクラスで何でこんなに古いアイピースがこんなに良く見えるの?と不可解さを覚えるレベルでした。

他のアイピースより少し劣ると感じたのは迷光処理の部分で、火星や木星などの明るい天体を見ると丸い光芒(ゴースト?)が前面に出てくる感じでもしかすると表面模様のコントラストを下げているかも知れませんが、とにかくそんな事を忘れさせる程模様が良く見えるアイピースで、これであれば苦労して手に入れた甲斐があったと報われた気分でした。また室内環境で周辺像のチェックもした限りでは歪曲の少なさもトップクラスでツァイスのオルソの名は伊達ではないと感じました。

古いCZJでこの見え味であれば、マルチコートされたより設計の新しいZAOが惑星用アイピースとして最強と称されても頷ける気がします。しかしCZJでも十分良く見えますので、ZAO程は高騰しない、数も比較的出回っていて入手し易い10-Oや16-O辺りを狙うのも惑星観望派の方にはアリかも知れません。

12mmクラシックアイピース対決2020 [天文>機材>アイピース]

昨年の12mmクラシックアイピース対決以降順調にアイピースは増え続け、あまつさえ20倍の顕微鏡用接眼レンズが12.5mm相当である事を知ってしまった事で収集に拍車が掛かり、現在はこの様な有様となっています。

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こうして見ると見境無く増やした感がありますが、ここまで同じ焦点距離のアイピースをかき集めている理由を少し説明させて頂くと、当初はどのアイピースが一番優れているか知りたい動機で始めましたが、アイピースの種類が次第に増えていく中で、製造不良でもない限りどのアイピースも良く見える事が分かって、特に中心像に関しては好条件の空で見比べて僅かな差異が感じられるかどうかと言う非常に微妙な違いであり、そこそこの条件の空でも絶えず変動するシーイングの中で大量のアイピースのランク付けを行うのは難しいものがあり、評価に悩む中で次第に自分が観望を楽しめなくなっている事に気づく事になりました。

そうした中でも世界にどんな種類のアイピースが存在するのかを調べる事は面白く、様々な設計の違い、製造国や年代、開発の経緯などを知る事で見え味に大差が無くても楽しめる、例えば望遠鏡で様々な恒星を観望する場合に、見た目はどれも光の点でビジュアル的に大差はありませんが、その星までの距離や大きさ、どのような天体かを頭に入れておくと俄然楽しめるようになるのと同じ様に、アイピースの見比べも知識と想像で見た目を補う眼視観望の楽しみ方に通じるものがある事に気付き、違いを見つける事に余り拘らずに様々なアイピースを覗く事が再び楽しめるようになりました。

なので現在はランク付けは目的としては二の次になり、ファッション感覚でその日の気分で見たいアイピースをピックアップしてこれらの開発者や使ってきた先人の考えに思いを馳せながら見え味を楽しむようになっています。

その様な訳で今回の対決に使用した鏡筒はブランカ70EDTFC-100DLTSA-120ブランカ150SEDなど主にアポ屈折で、Mk-V双眼装置バローの使用を前提に主に木星、土星、火星の見え味を評価したランキングになります。ランキング表の項目は、アイピース名称/形式/レンズ構成/見掛け視界/製造国/バレル径、と言った順に表記しています。

《SSランク》
TMB SuperMono12mmモノセントリック1群3枚30°31.7mm
CZJ PK20x(10)改良ハイゲンス?3群4枚?46°東独 30.0mm
《Sランク》
Brandon 12mmプローセル2群4枚45°米国31.7mm
CZJ 12,5-Oアッベオルソ2群4枚40°東独24.5mm
・ZWG Kpl20x37°西独23.2mm
《A+ランク》
Nikon O-12.5プローセル2群4枚45°日本24.5mm
Pentax O-12アッベオルソ2群4枚42°日本24.5mm
笠井 AP12.5mmアストロプラン3群5枚50°日本31.7mm
笠井 HC-Or12mmアッベオルソ2群4枚42°日本31.7mm
Leica 20x/1255°独?30.0mm
《Aランク》
Meade SP12.4mm(JP)プローセル2群4枚52°日本31.7mm
・タカハシ MC Or12.5mmアッベオルソ2群4枚41°?日本24.5mm
タカハシ LE12.5mmアストロプラン3群5枚52°日本31.7mm
・五藤 MH-12.5mmミッテンゼーハイゲンス 2群2枚43°?日本24.5mm
・谷 Or12.5mmアッベオルソ2群4枚44°日本31.7mm
自作 Dollond12mm(Ver.K) ドロンド1群2枚20°中華31.7mm
Nikon UW20x69°日本30.0mm
・CZJ PK20x(8)37°東独23.2mm
《B+ランク》
Celestron Omni PL12mmプローセル2群4枚52°中華31.7mm
・GSO PL-12mmプローセル2群4枚50°台湾31.7mm
LongPerng PL12.5mmプローセル2群4枚55°台湾31.7mm
EO RKE12mmリバースドケルナー2群3枚45°米国31.7mm
ビクセン HM-12.5mmミッテンゼーハイゲンス2群2枚40°日本24.5mm
Nikon E20x改良ケーニヒ?2群3枚55°日本30.0mm
・Olympus G20x56°日本30.0mm
《Bランク》
・タカハシ NP-12?°日本24.5mm
・Celestron 8-24Zoomズームアイピース40-60°中華31.7mm

※注1)CZJはCarl Zeiss Jenaの略称です。
※注2)ZWGはZeiss West Germanyの略称です。(勝手に付けました)
※注3)EOはEdmund Opticsの略称です。

<Sランク寸評>
惑星用アイピース個人的絶対王者TMB SuperMonoと今回同ランクに付けたのは何とCZJの怪しい顕微鏡接眼レンズでした。CZJ12,5-Oも噂通り、自分の想像以上に非常に良く見えるもののシングルコーティングのせいか迷光が目に付くのに対し、PK20x(10)の方は恐らくマルチコートされている事から12,5-Oより設計が新しく、解像度は同等ながら迷光の少なさでコントラストが良い部分を加味してこのランク付けとなりました。一方西ドイツツァイスの顕微鏡接眼レンズ、Kpl20xも他のアイピースから交換した時により詳細な模様が浮き出てくるこのクラス独特の見え味を有している事からSランク入りとしました。Brandonもやはりどの様なシチュエーションでも安定した高レベルな見え味を発揮しています。

但し今回登場した東西ツァイスの顕微鏡接眼レンズに総じて言えるのは良像範囲が狭く、惑星が画面の端に移動するとかなりの倍率色収差が発生します。これはPKの「P」やKplの「pl」は顕微鏡のプラン(周辺像が補正された)対物レンズと組み合わせる事を前提にした接眼レンズである事を意味している事から望遠鏡の対物レンズとの相性が良くないのではと考えているのですが、視野の中央3割程度は良像ですのでそこを上手く使えば望遠鏡で使用しても問題はありません。これに対して12,5-Oは周辺まで微塵も像が劣化せず、望遠鏡用に作られたツァイスのオルソの名は伊達ではないと思いました。

<A+ランク寸評>
このクラスの日本製のアイピースも非常に良く見えるものの、アイピースを交換した時により細かい模様がぐっと見えてくる感じがあまり得られず、そこがSランクアイピースとの評価の分かれ目になっています。それでもこのクラスはどれも見蕩れる程の見え味で、海外での評価も高いニコンO、ペンタOは勿論、プアマンズZAOとも呼ばれていた笠井のHC-Or(Baader Genuine Ortho、University Optics HD Ortho同等品)、そしてマニアの一部で評価の高いAPも負けていません。顕微鏡接眼レンズであるLeica20x/12も一目見て優秀と判る見え味で、55度の見掛け視界を持ち、このクラス以上で最も広角である事から個人的に経緯台での観望では現在最も出番が多いアイピースかも知れません。

<Aランク寸評>
このクラスもとても良く見えるアイピース揃いで、A+ランクとの違いは僅かですが強いて違いを挙げるとすると惑星を立体的に見せる性能、表現力に僅かに差があるように感じています。解像度の面ではA+ランクと殆ど違いは無く、日本製のMeade SPやタカハシのMC Or、LE、そして谷Orはバランスの良い見え味で自分の中ではアッベ/プローセル/アストロプランのそれぞれの設計に対するリファレンス的な(評価基準となる)存在となっています。五藤MHもハイゲンスながら高レベルな見え味を発揮し、やや覗き難いなど扱いにピーキーな部分もありますがお気に入りです。

ピーキーと言えば自作のDollondで見掛け視界が狭すぎて経緯台では使う気になれませんが、合成Fを30程度にするなど条件を整えてあげれば1群2枚のポテンシャルを感じさせる見え味です。逆に顕微鏡接眼レンズのUW20xは今回見比べたアイピースの中でも圧倒的な見掛け視界の広さを誇り、それでいて見え味も優秀ですので他のアイピースでは真似ができない、この唯一性は高く評価したいところです。PK20x(8)は他のツァイス接眼レンズより低めの評価ですが、これは迷光処理があまり良くない部分で減点した結果で、像質から言えばA+の実力はあると思います。

<Bランク寸評>
このクラスも見え味には何の問題もありません。何となく中華アイピースが下に来てしまった感じになりましたが、低廉なアイピースであるOmni PLやGSOも決して性能が低い訳ではありません。LongPerng(Sterling) PLは望遠鏡アイピースの中では55度と広い見掛け視界が強みでしたが、同程度の見掛け視界を持つ顕微鏡接眼レンズが加わった事で個性がやや失われてしまった感があります。但しSterling PLは丁寧なマルチコートが施されていますので、迷光処理の点ではこれらより優れています。顕微鏡接眼レンズのE20x、G20xに関しては周辺の歪曲の少なさは特筆するものがありますが、迷光が目に付く点がマイナスポイントとなっており、惑星観望より別の使い方が向いているかも知れません。エドモンドのRKEも全然悪くは無いですが、可もなく不可もなくと言った見え味で、個性に乏しい印象です。

タカハシのNP-12は拡大撮影用のアイピースで、ペンタXPのタカハシ版とも言えるアイピースで眼視観望にも使えるとの謳い文句でしたので手に入れてみましたが、思ったよりぱっとしない印象でした。ただ双眼用に揃えた2本の焦点位置が微妙に違っていた可能性があり、ピントが今一つ合わない気がしたのはこのせいかも知れません。セレストロンのズームアイピースはクラシックアイピースでは無いですので本来ここに並ぶ資格がありませんが、たまたま手元にあったので12mmでの見え味をチェックした次第ですが、安価なズームアイピースと言う印象から受ける程見え味は悪く無く、普通に惑星観望に耐える見え味でした。

<総評>
今回の対決で感じたのは顕微鏡用接眼レンズの予想以上の健闘です。どこかの業者の様に顕微鏡用と望遠鏡用ではあまりに性能が違うなどと言うつもりはありませんが、ユニークな性能、設計を持つ接眼レンズが多いのは確かです。使用感に関しては顕微鏡用接眼レンズだからと言って特に特別な準備や覚悟が必要な訳ではなく、バレル径さえ工作すれば後は望遠鏡用アイピースと同じ様に使えます。問題は主に中古でしか手に入らない点ですが、望遠鏡用アイピースの様にプレミアが付いて高騰する様な事が余り無いですので、性能の割に安価に入手できるのも魅力的な部分かも知れません。

一方望遠鏡用アイピースに目を向けると前回と順位に大きな変動は無く、今回加わった個人的に見比べてみたいと思っていた往年の日本製アイピースも総じて優秀な見え味でしたが、名立たる望遠鏡メーカーがクラシックアイピースの開発に鎬を削る時代はとうの昔に過ぎ去って、スマイスレンズを含んだハイアイや広角アイピースが市場を席巻する今となってはこの順位をひっくり返すような新製品が今後出る可能性は薄い様に思われ、その点では個人的な収集も一段落付くだろうと思われますが、少し寂しい気もします。

その一方でクラシックアイピースの需要が完全に無くなる事も考え難いですので、その点で今後注目すべきは低廉な中華アイピースかも知れません。これらの中華アイピースにはプローセルを筆頭にしたクラシックアイピースの現行品が数多く出回っており、その性能も決して侮れず、中には上位陣を脅かす性能を持つものも存在するかも知れません。いわば宝探しの感覚で優れたアイピースを見つける楽しみがありますので、個人的にも面白そうなものがあれば今後も取り上げていければと思っています。